本記事のポイント
- 第二種電気工事士学科試験の合格率は約58.2%(令和6年度・一般財団法人 電気技術者試験センター公表データ)
- 直近の推移は55〜65%のレンジで安定。受験者層の変動により年度差が生まれやすい
- ビルメン4点セット内では危険物乙4・冷凍3種より合格率が高く、学科だけ見れば「取り組みやすい」部類。ただし技能試験を含めると総合難易度は最高水準
- 計算問題が最大の壁。これをどう扱うかが合格率58%の「内側と外側」を分ける
- ぴよパスは学科試験のみ対応。技能試験は対象外
- 第二種電気工事士(学科)オリジナル練習問題で、今日から演習を積もう
合格率約58%という数字を正直に読む
一般財団法人 電気技術者試験センターが公表する令和6年度のデータによると、第二種電気工事士の学科試験(上期・下期合計)の受験者数は132,462名で、合格者数は77,045名、合格率は58.2%だった。
(出典:一般財団法人 電気技術者試験センター https://www.shiken.or.jp/)
この数字だけを見ると「受験者の6割近くが合格する、比較的取りやすい試験」という印象になる。確かにその印象は間違いではない。しかしこの合格率58.2%には、もう一つの側面がある——年間13万人超が受験し、約4万人が不合格になっているという現実だ。
絶対数で考えると、令和6年度の学科試験だけで約55,000人以上が不合格になった計算になる(技能試験不合格者を含めるとさらに多い)。「合格率が高い試験だから対策しなくて大丈夫」という判断は危険だ。
本記事では学科試験の合格率推移・ビルメン4点セット内での相対的な位置づけ・合格率が高くても落とされる理由・確実に合格するための戦略を順番に解説する。
なお、ぴよパスが対応しているのは学科試験(筆記)のみだ。技能試験(実際の配線作業を行う実技試験)はコンテンツの対象外であることを最初に明記しておく。
合格率の推移データ(直近年度)
年度別データ
一般財団法人 電気技術者試験センターが公表するデータをもとにした、第二種電気工事士学科試験(上期・下期合計)の直近の合格率推移を示す。
| 年度 | 受験者数(概算) | 合格者数(概算) | 合格率(概算) |
|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 約128,000人 | 約75,000人 | 約59% |
| 令和5年度 | 約130,000人 | 約74,000人 | 約57% |
| 令和6年度 | 約132,462人 | 約77,045人 | 約58.2% |
| 令和7年度 | 約139,087人 | 約78,700人 | 約56.6% |
(出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「電気工事士試験結果一覧」公表データに基づく概算値。年度・実施回によって数値は変動する。最新のデータは公式サイトで確認すること。)
推移から読み取れること
直近4年間を見ると、学科試験の合格率は55〜60%前後のレンジで推移している。二級ボイラー技士(50〜55%で非常に安定)と比べると年度間のブレがやや大きい。これは電工2種の受験者層の幅広さを反映していると考えられる。
電工2種の受験者は電気工事の職人志望者・高校生・転職者・ビルメン志望者など属性が多様だ。年度によって受験者の準備度合いや層が変わりやすく、合格率が5〜8%程度の範囲で変動する。
合格基準は「50問中30問以上の正解(正答率60%以上)」で、科目別の足切りはない。この点は二級ボイラー技士(各科目40%以上の足切りあり)と大きく異なる設計だ。一科目で苦手な分野があっても他で補える柔軟性がある一方、「全体で60%を確実に超える実力」がないと合格できない。
ビルメン4点セット内での難易度比較
第二種電気工事士はビルメン(建物設備管理)の現場で必須とされる「ビルメン4点セット」の1つだ。学科試験の合格率をもとに、同じセット内の他の資格と比較する。
| 資格名 | 学科合格率の目安 | 計算問題 | 受験機会 | 受験資格 |
|---|---|---|---|---|
| 危険物取扱者乙4 | 約31% | 少量あり | 年複数回 | なし |
| 第三種冷凍機械責任者 | 約36% | ほぼなし | 年1回のみ | なし |
| 二級ボイラー技士 | 約54% | 少量あり | 年複数回 | なし(免許申請時に実務要件) |
| 第二種電気工事士(学科) | 約58% | 電気計算あり | 年2回+CBT | なし |
(数値は各実施機関の公表データをもとにした目安であり、年度によって変動する)
学科の合格率だけを見ると、電工2種はビルメン4点セットの中で最も合格しやすい位置にある。危険物乙4の約31%・冷凍3種の約36%と比べると、差は歴然だ。
しかし「学科合格率が高い = 電工2種が一番簡単」とは言い切れない。理由は2つある。
理由1:技能試験がある。 電工2種は学科合格後に技能試験(制限時間40分の配線作業)が課される。技能試験の合格率は約65%であり、学科を突破した受験者の35%が技能で落とされている。工具の購入・施工練習の時間・材料コストなど、技能試験には学科にはない準備負担がある。ぴよパスはこの技能試験を対象外としているが、資格の取得難易度を総合的に見るうえでは技能試験の存在を無視できない。
理由2:計算問題の壁がある。 電工2種の学科試験にはオームの法則・合成抵抗・コンデンサの電荷計算・三相交流の線間電圧と電流の計算など、数式処理が必要な問題が複数含まれる。「計算が全く苦手」という受験者にとっては、他の3資格(記憶中心)より対策が困難だと感じるケースも多い。
ビルメン4点セット完全ガイド|4資格の難易度・受験料・合格率を徹底比較
合格率58%でも落ちる理由:計算問題という壁
電工2種学科の不合格原因を一言で表すなら「計算問題の放棄」だ。
学科試験50問のうち、計算問題は例年10〜12問程度出題される。ここには次のようなテーマが含まれる。
- オームの法則(電圧・電流・抵抗の関係)
- 直列・並列合成抵抗の計算
- 消費電力・電力量の計算
- コンデンサの合成静電容量の計算
- 三相交流の線電流・線間電圧・消費電力の計算
- 幹線の許容電流・遮断器の容量算定
「計算問題は難しそうだから全部飛ばす」という判断を下すと、10〜12問分の失点が確定する。合格基準は30問以上正解(正答率60%)であり、50問中10問を最初から捨てれば残り40問で30問以上を取らなければならない。残りの問題が全て文系的な暗記問題とは限らないため、計算問題を完全放棄する戦略は数学的にも危険だ。
実際の計算問題の難易度は「中学1〜2年の数学レベル」が中心だ。分数・比・平方根(電気の計算では√3がよく登場する)を理解していれば、公式に数値を代入するだけで解ける問題が大半を占める。「計算が苦手」と決めつけず、頻出の計算パターンを3〜5問ずつ練習するだけで、計算問題を得点源に変えることができる。
合格率が年度によってブレる理由
二級ボイラー技士は50〜55%で非常に安定しているのに対し、電工2種の学科合格率は55〜65%程度で比較的ブレが大きい。この差はどこから来るのか。
理由1:受験者層の多様性
電工2種は高校生・大学生・社会人転職者・現役電気工事士の補助職員・ビルメン志望者など、受験者の属性が幅広い。年度によって高校の実習授業や卒業資格要件との連動でまとめて受験する学生が増えたり、コロナ禍後のビルメン業界の採用増で転職者が急増したりという外部要因が合格率に反映されやすい。
理由2:上期・下期の受験層の差
電工2種の学科試験は年2回(上期:5〜6月、下期:10〜11月)実施される。上期と下期では受験者の準備度合いに差が生まれやすい。上期は「年度初めに受験しようと決意した層」が多く準備度が高い傾向があり、下期は「上期を落ちてリベンジする層」と「スケジュールの都合で下期を選んだ層」が混在する。この上期・下期の層の差が、年度合計の合格率に微妙な影響を与える。
理由3:CBT方式の導入
近年、電工2種の学科試験にCBT(コンピュータ試験)方式が導入された。CBT方式では会場や日程の選択肢が広がるため、「気軽に受験してみる」層が増える可能性がある。この層は準備が不十分な場合が多く、合格率の分母を押し下げる方向に働く。
確実に合格するための3つの戦略
合格率58%の「内側に入る」ための学習戦略を3点にまとめる。
戦略1:計算問題を8割得点できるようにする
計算問題を確実に得点するには、「頻出パターンを絞って反復練習する」ことが最も効率的だ。試験に頻出する計算問題のパターンは10〜15種類程度に収束しており、それぞれのパターンを3〜5問ずつ練習すれば十分に対応できる。
オームの法則(V = IR)と消費電力の計算(P = VI = I²R = V²/R)は必須の2公式だ。この2つを完全に使いこなせるだけで、計算問題の半数程度はカバーできる。残りの三相交流・合成容量・幹線容量については、公式の意味を理解したうえで数値代入の練習を繰り返せば十分だ。
戦略2:配線図問題を得点源にする
学科試験50問のうち配線図問題は10問出題される(問41〜50)。配線図問題は「図面に登場する器具・材料の名称と図記号の対応」を覚えていれば解ける問題が多く、純粋な記憶力で得点できる。
図記号の暗記には体系的な一覧表が効果的だ。コンセント・スイッチ・照明器具・配電盤等の図記号を分類ごとにまとめて覚えると、「見たことがある形」として記憶に定着しやすい。配線図問題10問のうち7〜8問を安定して取れるようになると、合格ラインの確保がぐっと楽になる。
戦略3:科目の偏りをなくして全体60%をコントロールする
電工2種の学科試験には科目別足切りがないため、得意分野で稼いで苦手分野をカバーするという戦略も成立する。しかし「特定の分野を全捨て」にすると、合格ラインの60%(30問以上)を超えることが難しくなる。
学習の方針としては、「各分野で最低50〜60%の正解率を確保して、計算問題と配線図問題で得点を積み上げる」という考え方が現実的だ。全体のバランスを意識しながら模試を繰り返し、苦手な分野を早めに発見して集中補強することが合格確度を高める。
他の試験との合格率比較リンク
同じビルメン4点セットの合格率・難易度記事も参考にしてほしい。
- 第三種冷凍機械責任者の合格率と難易度の実態 — 合格率36%の背景と対策
- 二級ボイラー技士の合格率と難易度 — 合格率53%で安定する理由
- ビルメン4点セット完全ガイド — 4資格の総合比較
まとめ:合格率58%の「内側に入る」ために
第二種電気工事士の学科試験は、合格率約58%という数字が示す通り、きちんと対策した受験者が合格できる試験だ。しかし計算問題の放棄・配線図問題の暗記不足・全体的な準備不足が不合格の主な原因になっており、「難しくないから大丈夫」という甘い見積もりが失敗を招く。
ぴよパスでは学科試験の重要分野である基礎理論・配線図を中心に、オリジナル練習問題を提供している。計算問題を含む基礎理論と、図記号暗記が必要な配線図の両方で演習を積み、合格率の「内側」に入る準備をしよう。