この記事で分かること
- 冷凍3種の保安管理技術で出る計算の全体像(冷凍能力・成績係数・圧縮機動力)
- p-h線図の4状態点(h1〜h4)の位置と各プロセスの変化方向
- 各計算式の「意味」から導く覚え方と、試験問題への当てはめ手順
- 計算問題でよくある間違いパターンと対処法
- ぴよパスの練習問題・模擬試験での演習ルート
冷凍3種で出る計算問題の全体像
第三種冷凍機械責任者の保安管理技術は15問・90分のマークシート試験だ。「計算問題がほぼない」と説明されることも多いが、正確には計算式を使った問題が1〜3問程度、p-h線図の読み取りを使った定性的な問題が3〜5問程度出題される。
| 問われる内容 | 問題数の目安 | 難易度 |
|---|---|---|
| p-h線図の読み方(領域・状態点の特定) | 2〜3問 | 中級 |
| 冷凍効果(冷凍能力)の計算 | 1〜2問 | 初級〜中級 |
| 成績係数(COP)の計算 | 1問 | 中級 |
| 圧縮機の理論動力計算 | 0〜1問 | 中級 |
「数値を計算する」問題よりも「p-h線図のどの部分がどの量を表すか」を判断する問題のほうが多い。つまり計算力よりも、4状態点とエンタルピー差の意味を正確に理解しているかどうかが問われているといえる。
p-h線図の読み方ガイド──4状態点を起点に理解する
p-h線図の2軸の意味
p-h線図(モリエル線図)は縦軸に絶対圧力P(MPa)、横軸に比エンタルピーh(kJ/kg)を取るグラフだ。冷凍サイクルの4つのプロセスがこの2次元平面上に図示され、各プロセスの終点が「状態点」として定義される。
- 縦軸(圧力P)が上がる:圧縮機が冷媒ガスを圧縮している(高圧側に移行)
- 縦軸(圧力P)が下がる:膨張弁で冷媒が膨張している(低圧側に移行)
- 横軸(比エンタルピーh)が右に増加:冷媒が熱を吸収している(蒸発器)
- 横軸(比エンタルピーh)が左に減少:冷媒が熱を放出している(凝縮器)
4つの状態点(h1〜h4)の位置
冷凍サイクルを構成する4台の機器(圧縮機・凝縮器・膨張弁・蒸発器)の出口を順番にh1→h2→h3→h4と定義する。
| 状態点 | 位置 | 冷媒の状態 | 圧力と温度 |
|---|---|---|---|
| h1(蒸発器出口=圧縮機入口) | p-h線図の左寄り・低圧側 | 低圧の過熱蒸気 | 低圧・低温 |
| h2(圧縮機出口=凝縮器入口) | p-h線図の右寄り・高圧側 | 高圧の過熱蒸気 | 高圧・高温 |
| h3(凝縮器出口=膨張弁入口) | p-h線図の左寄り・高圧側 | 高圧の過冷却液 | 高圧・低温 |
| h4(膨張弁出口=蒸発器入口) | p-h線図の左寄り・低圧側 | 低圧の湿り蒸気 | 低圧・低温 |
ポイントは「h3とh4は比エンタルピーが等しい」ことだ。膨張弁は断熱膨張(等エンタルピー変化)なので、p-h線図上では横軸が変わらずに縦軸(圧力)だけが下がる。したがってh3の真下にh4が位置する。
4プロセスのp-h線図上の変化方向
| プロセス | 機器 | 変化の種類 | p-h線図上の動き |
|---|---|---|---|
| 圧縮(h1→h2) | 圧縮機 | 断熱圧縮(等エントロピー変化) | 斜め右上へ移動 |
| 凝縮(h2→h3) | 凝縮器 | 等圧変化 | 左水平に移動(hが減少) |
| 膨張(h3→h4) | 膨張弁 | 等エンタルピー変化 | 垂直下へ移動(hは不変、Pが低下) |
| 蒸発(h4→h1) | 蒸発器 | 等圧変化 | 右水平に移動(hが増加) |
4プロセスのうち「圧縮だけが等エントロピー変化(斜め移動)」で、残り3つは等圧または等エンタルピー変化(水平・垂直移動)という非対称の構造を覚えるだけで、試験問題の大半に対応できる。
公式・計算手順
1. 冷凍効果(冷凍能力)
冷凍効果は「蒸発器が冷媒1kgあたり吸収する熱量」だ。
冷凍効果(kJ/kg) = h1 − h4
蒸発器はh4(入口)→h1(出口)の向きに冷媒が流れ、等圧状態でhが増加する。h1とh4のエンタルピー差がそのまま「外部から奪う熱量」になる。これが冷凍の本体であり、「冷凍効果=蒸発器のエンタルピー差」と一対一で対応している。
2. 凝縮熱量(放熱量)
凝縮器での放熱量を「凝縮熱量」という。
凝縮熱量(kJ/kg) = h2 − h3
凝縮器はh2(入口)→h3(出口)の向きに流れ、等圧状態でhが減少する。h2とh3のエンタルピー差が外部(大気や冷却水)に捨てる熱量だ。
3. 理論断熱圧縮動力(圧縮仕事量)
圧縮機が冷媒1kgあたりに加えるエネルギーだ。
圧縮仕事量(kJ/kg) = h2 − h1
圧縮機はh1(入口)→h2(出口)の向きに等エントロピー変化させる。p-h線図上では斜め右上への移動量がこの差に相当する。
装置全体の動力(kW)が必要な場合は、冷媒循環量(kg/s)を掛ける。
理論断熱圧縮動力(kW) = 冷媒循環量(kg/s) × (h2 − h1)
4. 成績係数(COP:Coefficient of Performance)
COPは「投入した圧縮動力に対して得られる冷凍効果の割合」だ。
冷凍用COP = 冷凍効果 ÷ 圧縮仕事量 = (h1 − h4) ÷ (h2 − h1)
式の意味を分解すると「分子が欲しいもの(冷凍効果)、分母が払うもの(圧縮に使うエネルギー)」という構造だ。COPが大きいほど省エネな冷凍機といえる。一般的なCOPは2〜5程度で、投入エネルギーの2〜5倍の冷凍効果が得られる。
ヒートポンプのCOP(参考)
ヒートポンプは凝縮器の熱を暖房に利用するため、分子が冷凍効果ではなく凝縮熱量になる。
ヒートポンプCOP = 凝縮熱量 ÷ 圧縮仕事量 = (h2 − h3) ÷ (h2 − h1)
冷凍3種の試験では冷凍用COPが主に問われるが、ヒートポンプCOPの式との違いを問う問題も出ることがある。
計算問題の解き方手順(まとめ)
- 問題文から各状態点の比エンタルピー値(h1〜h4)を読み取る
- 求めたいものに対応する公式を選ぶ
- エンタルピー差を計算する(引き算のみ)
- 必要に応じて冷媒循環量を掛けて装置全体の値を求める
よくある間違い
間違い1:冷凍能力に「凝縮器のエンタルピー差」を使ってしまう
最も多い誤りだ。蒸発器のエンタルピー差(h1−h4)と凝縮器のエンタルピー差(h2−h3)を混同するパターンで、どちらもp-h線図上では「水平方向の変化」として見えるため混乱しやすい。
対処法:「冷凍=蒸発器で冷やす」という定義に戻る。冷凍効果は蒸発器だけのエンタルピー差(h1−h4)だと定義から記憶する。
間違い2:COPの分子と分母を逆にしてしまう
「COPは冷凍効果÷圧縮動力なのか、圧縮動力÷冷凍効果なのか」が分からなくなるパターンだ。
対処法:COPは「効率の良さ」を示す値なので、「得るもの(冷凍効果)が分子、払うもの(圧縮動力)が分母」と覚える。COP<1になる式は間違いのサインだ。
間違い3:h3とh4が異なるエンタルピー値だと思い込む
膨張弁では「等エンタルピー変化」が起きるため、h3とh4の比エンタルピー値は理論上同じだ。それにもかかわらず「h4は蒸発器入口だから別の値を使う」と思い込むパターンがある。
対処法:膨張弁のキーワードは「等エンタルピー変化」と「h3=h4」をセットで記憶する。
間違い4:圧縮機の動力を「冷凍能力÷冷媒循環量」で求めようとする
圧縮機の動力は(h2−h1)×冷媒循環量で求める。冷凍能力(h1−h4)を冷媒循環量で割っても圧縮動力は出てこない。
対処法:各公式を機器ごとに整理したうえで、「圧縮機に関係するエンタルピー差はh2−h1」と機器名と公式を対応づけて覚える。
ぴよパスで演習する
保安管理技術の練習問題(80問)
保安管理技術の練習問題には、p-h線図の状態点・計算式・冷凍サイクルの各プロセスに関連する問題が多数収録されている。問題ごとに「なぜ正解か」「なぜ他の選択肢が誤りか」を解説しており、計算問題も手順を追って理解できる。
演習の進め方
ステップ1(初級):p-h線図の領域と4状態点の位置を確認する問題から着手する。「h1は低圧側にある」「膨張弁は等エンタルピー変化」など定性的な理解を固める段階だ。
ステップ2(中級):冷凍効果・COP・圧縮動力の計算式を使った問題に進む。数値が与えられた問題で公式を正しく当てはめる練習をする。
ステップ3(上級):蒸発温度・凝縮温度の変化がCOPに与える影響など、複数の概念を組み合わせた問題で対応力を高める。
模擬試験で仕上げる
練習問題でp-h線図と計算式を習熟したら、実試験と同じ形式での通し練習が欠かせない。模擬試験では保安管理技術15問を90分の制限時間内で解く形式を体験できる。
時間内に計算問題を解ききるためには、「公式を思い出す時間」をゼロに近づける必要がある。模擬試験で計算問題が出た際に、h1〜h4の位置を瞬時に特定して式を当てはめる流れが自動化されれば、本番で時間不足に陥るリスクはほぼなくなる。
目標は保安管理技術を11問以上(75%程度)安定して取れる状態だ。合格ライン(9問)をギリギリ狙う戦略は、1〜2問の読み誤りで足切りに直結するリスクがある。余裕を持った目標設定で本番に臨んでほしい。