着工届は、甲種消防設備士が消防設備士でなければできない工事に着手する日の10日前までに出す届出です(消防法第17条の14)。設置届は、防火対象物の関係者が消防用設備等の工事が完了した日から4日以内に出し、その後に消防長または消防署長の検査を受ける届出です(消防法第17条の3の2、消防法施行規則第31条の3)。どちらも届出先は消防長または消防署長です。
着工届と設置届は、消防設備士の甲種・乙種のどの類でも、試験科目「消防関係法令」(消防法施行規則第33条の10)の範囲に入る論点です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法は2025年6月1日施行、消防法施行令は2025年10月1日施行、消防法施行規則は2026年6月26日施行の版)で条文を確かめて書いています。
着工届と設置届の違いを1枚で
| 項目 | 着工届 | 設置届 |
|---|---|---|
| 根拠 | 消防法第17条の14 | 消防法第17条の3の2 |
| 届け出る人 | 甲種消防設備士 | 防火対象物の関係者(所有者・管理者・占有者) |
| 時期 | 工事に着手しようとする日の10日前まで | 工事が完了した日から4日以内(規則第31条の3第1項) |
| 届出先 | 消防長または消防署長 | 消防長または消防署長 |
| 対象の工事・設備 | 消防設備士でなければ行えない工事(令第36条の2第1項) | 令第35条の防火対象物に、技術上の基準により設置しなければならない消防用設備等を設置したとき(簡易消火用具・非常警報器具を除く) |
| 書類 | 工事整備対象設備等着工届出書に、平面図・配管と配線の系統図・計算書の写し(規則第33条の18) | 届出書に、平面図・配管と配線の系統図・消防用設備等試験結果報告書(規則第31条の3第1項) |
| その後 | — | 消防長または消防署長の検査 → 適合なら検査済証(規則第31条の3第2項・第4項) |
| 怠ったとき | 30万円以下の罰金または拘留(法第44条第8号) | 同じ(法第44条第8号)。検査を拒む・妨げるのも同じ(同条第4号) |
「着工は消防設備士・10日前」「設置は関係者・4日以内」の2組で覚えると、主語と日数の入れ替えに気づきやすくなります。
着工届が要る工事 — 甲種消防設備士の工事だけ
着工届の対象は、消防法第17条の5で消防設備士でなければ行ってはならないとされる工事です。消防法施行令第36条の2第1項が、その設備を次のように決めています。
| 設備 | 対応する甲種の類(規則第33条の3) |
|---|---|
| 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・屋外消火栓設備(電源・水源・配管の部分を除く) | 第1類 |
| 泡消火設備(電源の部分を除く) | 第2類 |
| 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備(電源の部分を除く) | 第3類 |
| 自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・消防機関へ通報する火災報知設備(電源の部分を除く) | 第4類 |
| 金属製避難はしご(固定式)・救助袋・緩降機 | 第5類 |
このほか、必要とされる防火安全性能を持つ設備等や特殊消防用設備等で、これらに類するものとして消防庁長官が定めるものも入ります。
着工届が要らないのは、この表に入っていない設備の工事です。たとえば、消火器・漏電火災警報器(乙種第6類・第7類が整備を行う設備で、設置の工事は消防設備士の独占ではない)、誘導灯・非常警報設備は、着工届の対象外です。表の設備でも、括弧の部分(第1類の設備は電源・水源・配管、第2類〜第4類の設備は電源)の工事は除かれています。第5類の避難器具には、この除外がありません。
設置届と検査が要る建物 — 令第35条
設置届と検査が要るのは、消防法施行令第35条第1項の防火対象物です。
| 号 | 防火対象物 | 面積 |
|---|---|---|
| 1号 | カラオケボックスなど((二)項ニ)、旅館・ホテル((五)項イ)、有床の病院・診療所など((六)項イ(1)〜(3))、特別養護老人ホームなど((六)項ロ)、(六)項ハのうち利用者を入居・宿泊させるもの、これらの用途を含む複合用途の建物・地下街・準地下街 | 面積にかかわらず |
| 2号 | 劇場・集会場((一)項)、キャバレー・遊技場など((二)項イ〜ハ)、飲食店((三)項)、百貨店((四)項)、無床の診療所など((六)項イ(4))、(六)項ハ(1号以外)・ニ、蒸気浴場など((九)項イ)、特定用途を含む複合用途の建物((十六)項イ)・地下街・準地下街(1号以外) | 延べ300m²以上 |
| 3号 | 共同住宅((五)項ロ)、学校、図書館、一般の公衆浴場、駅、神社・寺院、工場、車庫、倉庫、事務所など、(十六)項ロ、文化財、アーケード | 延べ300m²以上で、消防長または消防署長が指定したもの |
| 4号 | 特定用途の部分が避難階以外の階(1階と2階を除く。令第4条の2の2第2号)にあり、そこから避難階か地上に直通する階段が2つ以上ない建物(屋外階段か避難上有効な構造なら1つ) | 面積にかかわらず |
設置届の義務がかかるのは、技術上の基準により設置しなければならない消防用設備等を設置したときです(消防法第17条の3の2)。義務がないのに任意で設置した設備は対象外です。
設置届が要らない設備は、簡易消火用具(水バケツ・水槽・乾燥砂など)と非常警報器具(警鐘・携帯用拡声器など。どちらも令第7条)だけです(令第35条第2項)。消火器は簡易消火用具に入らないので、上の建物で設置が義務づけられている消火器を設置したときは設置届の対象です。誘導灯も同じです。
届出が要らない場合のまとめ
| 場合 | 着工届 | 設置届 |
|---|---|---|
| 消火器・漏電火災警報器・誘導灯・非常警報設備を設置する | 不要(令第36条の2第1項に入っていない) | 令第35条の建物で、設置が義務づけられているものなら必要 |
| 水バケツ・乾燥砂・警鐘などを設ける | 不要 | 不要(令第35条第2項) |
| 屋内消火栓設備の配管だけ・自動火災報知設備の電源だけを工事する | 不要(電源・水源・配管の部分は除かれる) | 令第35条の建物なら、設置を完了したとき必要 |
| 共同住宅・事務所・工場などで、消防長または消防署長の指定がない | 甲種の工事なら必要 | 不要(令第35条第1項第3号は指定があるものだけ) |
| 劇場・飲食店・百貨店などで延べ300m²未満(1号・4号に当たらない) | 甲種の工事なら必要 | 不要 |
着工届は「工事の種類」、設置届は「建物の用途と面積」で決まるので、片方だけが要るという場面が出てきます。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 着工届は、防火対象物の関係者が工事着手の10日前までに出す | 誤り | 甲種消防設備士が出す(法第17条の14) |
| 設置届は、工事が完了した日から4日以内に出す | 正しい | 規則第31条の3第1項 |
| 着工届の届出先は、都道府県知事である | 誤り | 消防長または消防署長(消防本部を置かない市町村では、消防長は市町村長と読む。消防法第3条第1項) |
| 消火器を設置したときは、どの建物でも設置届は要らない | 誤り | 令第35条の建物で、設置が義務づけられている消火器なら必要(不要は簡易消火用具・非常警報器具だけ) |
| 誘導灯の工事には着工届が必要 | 誤り | 令第36条の2第1項の工事に入っていない |
| 旅館・ホテルは延べ300m²以上のときだけ設置届が要る | 誤り | (五)項イは面積にかかわらず(令第35条第1項第1号イ) |
| 着工届を怠ると、30万円以下の罰金または拘留 | 正しい | 法第44条第8号 |
ぴよパスのオリジナル予想問題で確かめられます。
設置した後の点検と報告の周期は 消防設備士乙6 消火器の点検と報告 に、点検ができる人(消防設備士と消防設備点検資格者)の違いは 消防設備点検資格者と消防設備士の違い にまとめています。
出典
- 消防法 第3条・第17条の3の2・第17条の5・第17条の14・第44条(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)
- 消防法施行令 第4条の2の2・第7条・第35条・第36条の2・別表第一(同・2025年10月1日施行の版)
- 消防法施行規則 第31条の3・第33条の3・第33条の10・第33条の18(同・2026年6月26日施行の版)
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