熱感知器は、火災の熱を利用して自動的に火災の発生を感知し、受信機などに火災信号を送る感知器です。法令上の「感知器」は、熱・煙・炎のどれを利用するかで分かれ(火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(以下「規格省令」)第2条第1号)、熱を利用するものには差動式・定温式・補償式などがあります。
熱感知器の種類と設置基準は、消防設備士甲種4類・乙種4類の構造・機能と実技(鑑別・製図)で学ぶ論点です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(規格省令は2024年7月23日施行の版、消防法施行規則(以下「規則」)は2026年6月26日施行の版)と、日本火災報知機工業会の「消防機器早わかり講座 感知器」をもとに書いています。
熱感知器の種類を1枚で
| 種類 | 作動するとき(規格省令第2条) | 種別 |
|---|---|---|
| 差動式スポット型 | 周囲の温度の上昇率が一定以上になったとき。一局所の熱効果で作動 | 1種・2種 |
| 差動式分布型 | 周囲の温度の上昇率が一定以上になったとき。広範囲の熱効果の累積で作動 | 1種・2種・3種 |
| 定温式スポット型 | 一局所の周囲の温度が一定以上になったとき。外観が電線状以外 | 特種・1種・2種 |
| 定温式感知線型 | 一局所の周囲の温度が一定以上になったとき。外観が電線状 | 特種・1種・2種 |
| 補償式スポット型 | 差動式スポット型と定温式スポット型の性能を併せもち、一の火災信号を発信 | 1種・2種 |
| 熱複合式スポット型 | 差動式スポット型と定温式スポット型の性能を併せもち、二以上の火災信号を発信 | — |
| 熱アナログ式スポット型 | 周囲の温度が一定の範囲内になったとき、その温度に応じた火災情報信号を発信 | — |
「スポット型」は一か所で熱を受けるもの、「分布型」「感知線型」は空気管や電線状の感知部を天井に張りめぐらせるものです。差動式分布型は 差動式分布型感知器 で詳しく扱っています。以下では、教室や事務室の天井でよく見るスポット型を中心に見ます。
差動式スポット型感知器 — 温度の上がり方で作動する
代表的な差動式スポット型感知器は、感知部の空気室の空気が火災の熱で膨張し、ダイヤフラムを押し上げて接点を閉じる構造です。半導体(サーミスター等)の電気抵抗の変化を利用するものもあります(消防機器早わかり講座)。同講座の図には空気を逃がすリーク孔が描かれており、温度がゆっくり上がるときは膨張した空気がここから逃げるので作動しにくくなります。
規格省令第12条は、急な温度上昇では作動し、ゆるやかな温度上昇では作動しないことを、次の試験で確かめるよう決めています。
| 試験 | 加える気流 | 1種 | 2種 |
|---|---|---|---|
| 作動試験(階段上昇) | 室温よりK度高い垂直気流 | 20度・風速70cm/秒で30秒以内に作動 | 30度・風速85cm/秒で30秒以内に作動 |
| 作動試験(直線上昇) | 室温から直線的に上昇する水平気流 | 毎分10度で4.5分以内に作動 | 毎分15度で4.5分以内に作動 |
| 不作動試験(階段上昇) | 室温よりk度高い垂直気流 | 10度・風速50cm/秒で1分以内に作動しない | 15度・風速60cm/秒で1分以内に作動しない |
| 不作動試験(直線上昇) | 室温から直線的に上昇する水平気流 | 毎分2度で15分以内に作動しない | 毎分3度で15分以内に作動しない |
1種のほうが小さな温度変化で作動し(感度が高い)、同じ取付け面の高さなら1種のほうが1個で受け持てる床面積(感知面積)も広く決められています(規則第23条第4項第3号ロ)。
定温式スポット型感知器 — 一定の温度で作動する
定温式スポット型感知器には、感熱部のバイメタルが歪む・反転することで接点を閉じるもの、膨張係数の違う金属の熱膨張で接点を閉じるもの、サーミスター等の半導体の電気抵抗の変化を利用するものがあります(消防機器早わかり講座)。
| 決まり | 内容 | 根拠(規格省令) |
|---|---|---|
| 公称作動温度 | 60度以上150度以下。60度以上80度以下は5度刻み、80度を超えるものは10度刻み | 第14条第1項 |
| 作動試験 | 公称作動温度の125パーセントの温度・風速1m/秒の垂直気流に入れたとき、室温0度で特種40秒、1種120秒、2種300秒以内に作動(室温が0度以外のときは式で換算) | 第14条第2項第1号 |
| 不作動試験 | 公称作動温度より10度低い風速1m/秒の垂直気流に入れたとき、10分以内に作動しない | 第14条第2項第2号 |
設置するときは、正常時の最高周囲温度が公称作動温度より20度以上低い場所に設けます(規則第23条第4項第6号)。最高周囲温度が45度のボイラー室なら、公称作動温度は65度以上が必要です。
補償式スポット型感知器は、差動式スポット型の性能と定温式スポット型の性能を併せもち、どちらで感知しても一の火災信号を発信します。定温の側の目安は「公称定温点」と呼び、区分は定温式の公称作動温度と同じです(規格省令第15条の2)。
取付け面の高さと感知面積
規則第23条第4項第2号の表から、熱感知器の欄を抜き出すと次のとおりです。
| 取付け面の高さ | 使える熱感知器 |
|---|---|
| 4メートル未満 | 差動式スポット型、差動式分布型、補償式スポット型、定温式(特種・1種・2種) |
| 4メートル以上8メートル未満 | 差動式スポット型、差動式分布型、補償式スポット型、定温式の特種・1種 |
| 8メートル以上15メートル未満 | 差動式分布型 |
| 15メートル以上 | 熱感知器は使えない(煙感知器・炎感知器を使う) |
スポット型の熱感知器は、感知区域ごとに、次の表の床面積につき1個以上を設けます(規則第23条第4項第3号ロ)。
| 取付け面の高さ | 構造 | 差動式1種 | 差動式2種 | 補償式1種 | 補償式2種 | 定温式特種 | 定温式1種 | 定温式2種 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4m未満 | 特定主要構造部が耐火構造 | 90㎡ | 70㎡ | 90㎡ | 70㎡ | 70㎡ | 60㎡ | 20㎡ |
| 4m未満 | その他の構造 | 50㎡ | 40㎡ | 50㎡ | 40㎡ | 40㎡ | 30㎡ | 15㎡ |
| 4m以上8m未満 | 特定主要構造部が耐火構造 | 45㎡ | 35㎡ | 45㎡ | 35㎡ | 35㎡ | 30㎡ | — |
| 4m以上8m未満 | その他の構造 | 30㎡ | 25㎡ | 30㎡ | 25㎡ | 25㎡ | 15㎡ | — |
たとえば、特定主要構造部を耐火構造とした天井高3メートル・床面積180平方メートルの事務室(はりによる区画なし)に差動式スポット型2種を付けるなら、180÷70=2.57…で、端数を切り上げて3個以上です。
スポット型の熱感知器を設けるときの決まり
| 決まり | 内容 | 根拠(規則第23条第4項) |
|---|---|---|
| 取付けの位置 | 感知器の下端を、取付け面の下方0.3メートル以内に | 第3号イ |
| 感知区域 | 壁または取付け面から0.4メートル以上突き出したはり等で区画された部分ごとに数える | 第3号ロ |
| 吹出し口からの距離 | 換気口等の空気吹出し口から1.5メートル以上離す | 第8号 |
| 傾斜 | 45度以上傾斜させない | 第9号 |
| 設けない場所 | 取付け面の高さ20メートル以上、天井と上階の床との間が0.5メートル未満の天井裏など | 第1号イ・ハ |
階段・傾斜路、エレベーターの昇降路などと、一部の用途の廊下・通路((一)〜(六)項・(九)項・(十二)項・(十五)項など)や地階・無窓階・11階以上の部分(特定用途・(十五)項・(十六)項イなど)には、熱感知器ではなく煙感知器などを設けなければなりません(規則第23条第5項)。それ以外の用途の地階・無窓階・11階以上の階には、差動式・補償式の1種・2種、定温式の特種・1種(公称作動温度75度以下)も使えます(同条第6項第2号)。どこに煙感知器が要るかは 煙感知器の種類と設置基準 にまとめています。
逆に、厨房のように煙がふだんから滞留する場所や、結露・水蒸気が多い場所には煙感知器を設けません(規則第23条第4項第1号ニ)。そうした場所が、規則第23条第5項第6号の用途(特定用途や(十五)項の事業場など)の地階・無窓階・11階以上の部分にあるときは、規則第23条第6項第1号と別表第一の二の三で適応する熱感知器が決まっています。
| 場所(規則第23条第4項第1号) | 差動式スポット型(1種・2種) | 差動式分布型(1種・2種) | 定温式特種・1種 | 補償式スポット型(1種・2種) |
|---|---|---|---|---|
| 腐食性ガスが発生するおそれのある場所 | — | ○ | ○(耐酸型または耐アルカリ型) | — |
| 厨房その他正常時に煙が滞留する場所 | — | — | ○ | — |
| 著しく高温となる場所 | — | — | ○ | — |
| 煙が多量に流入するおそれのある場所 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 結露が発生する場所 | — | ○ | ○(防水型) | — |
| 水蒸気が多量に滞留する場所 | — | ○(2種に限る) | ○(防水型) | — |
この表の定温式は、「著しく高温となる場所」以外では公称作動温度75度以下のものに限られます(規則別表第一の二の三備考)。感知器の見分け方は 消防設備士乙4の感知器の見分け方 に、取付け面の高さと感知面積の覚え方は 消防設備士乙4 感知器の設置基準の覚え方 にまとめています。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 差動式スポット型感知器は、周囲の温度が一定の温度以上になったときに作動する | 誤り | それは定温式。差動式は温度の上昇率で作動(規格省令第2条) |
| 定温式スポット型感知器の公称作動温度は、60度以上150度以下である | 正しい | 規格省令第14条第1項 |
| 定温式スポット型2種は、取付け面の高さ6メートルの場所にも使える | 誤り | 2種は4メートル未満だけ(規則第23条第4項第2号) |
| 取付け面の高さ10メートルの場所には、差動式スポット型感知器を使える | 誤り | 8メートル以上15メートル未満の熱感知器は差動式分布型だけ |
| 最高周囲温度が50度の場所には、公称作動温度60度の定温式を使える | 誤り | 20度以上の差が要るので70度以上(規則第23条第4項第6号) |
| 補償式スポット型感知器は、差動式と定温式の性能を併せもち、一の火災信号を発信する | 正しい | 規格省令第2条第5号の2 |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、熱感知器の論点を確かめられます。
出典
- 火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令 第2条・第12条・第14条・第15条の2(e-Gov法令検索・2024年7月23日施行の版)
- 消防法施行規則 第23条・別表第一の二の三(e-Gov法令検索・2026年6月26日施行の版)
- 一般社団法人日本火災報知機工業会「消防機器早わかり講座 感知器」
当サイトの問題は消防設備士試験の問題ではありません。法令をもとに独自に作った練習問題です。消防試験研究センターとは関係ありません。


![第4類消防設備士 過去問題集 製図編 [大改訂版]](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/P/4770329210.09.LZZZZZZZ.jpg)







