製図2問が、甲種4類の合否を最後に分ける
消防設備士甲種4類の実技試験は、鑑別等5問と製図2問の合わせて7問です。このうち製図2問が、多くの受験者にとって最後の関門になります。
理由は合格基準の構造にあります。甲種4類は筆記45問(消防関係法令15問・基礎的知識10問・構造機能20問)と実技7問が、それぞれ独立した合格ラインを持ちます。筆記で各科目40%以上かつ全体60%以上を取っても、実技で60%に届かなければ不合格です。実技7問のうち製図は2問。平面図・系統図という慣れない図面を白紙に近い状態から仕上げるため、ここで失点すると実技全体が一気に苦しくなります。
⚠️ 採点方法は公表されていません。 「記述式だから部分点がある」という説明をよく見かけますが、消防法施行規則にも消防試験研究センターの公表資料にも根拠は見当たりません (規則第33条の11の2第2項が定めているのは「実技試験は60%以上」という基準だけです)。部分点を当てにした「途中まででも書く」戦略は前提が確認できないので、2問とも完成させるつもりで練習してください。
製図でつまずく人の共通点は、「製図」をひとつの勉強だと思っていることです。実際には製図2問は、問われる力がはっきり違う2タイプに分かれます。
| 製図の種類 | 何をする問題か | 問われる力 |
|---|---|---|
| 平面図問題 | 建物の間取り図に感知器を配置する | 警戒区域の区画・感知器の選定・個数の算定 |
| 系統図問題 | 受信機と感知器をつなぐ配線図を読む・描く | 受信機の種別判定・配線本数・電線種別 |
平面図は「どこに、どの感知器を、何個置くか」を決める配置設計。系統図は「それらをどうつなぐか」を決める配線設計です。同じ製図でも、平面図でつまずく人と系統図でつまずく人は、対策すべき場所が違います。だからこの記事も、2タイプを分けて整理します。
まず、自分が受ける試験の合格ラインを数字で押さえておくと、製図にどれだけ時間を割くべきかが見えてきます。
平面図問題 ―― 「どこに、どの感知器を、何個」で3回つまずく
平面図問題は、与えられた建物の間取り図に感知器を書き込みます。解く順番はほぼ決まっていて、(1)警戒区域を区画する → (2)各部屋に置く感知器を選ぶ → (3)必要な個数を出す、の3ステップです。このステップごとに、つまずきポイントが1つずつあります。
つまずき1:警戒区域の面積条件を見落とす
警戒区域は、火災の発生場所を特定するための区画です。根拠は消防法施行令第21条第2項第2号で、1つの警戒区域は面積600㎡以下、一辺の長さ50m以下(別表第三に定める光電式分離型感知器を設置する場合は100m以下)にします。ただし当該防火対象物の主要な出入口からその内部を見通すことができる場合は、面積を1,000㎡以下まで広げられます。緩和されるのは面積だけで、一辺の長さの制限は残ります。
ここで多いミスが、面積条件だけを覚えて「見通せる場合の例外」を忘れることです。便所を警戒区域の面積から差し引くのも誤りで、令第21条第2項第2号には感知器を設けない室を面積から控除する規定がありません。規則第23条第6項第3号の括弧書き(廊下、便所その他これらに類する場所を除く)は、第5項各号にも第6項第1号・第2号にも当たらない「その他の場所」を定めた受け皿規定の中でだけ働くもので、地階・無窓階・11階以上の階にある便所には同項第2号により感知器が必要です。区画の数を1つ間違えると、後の系統図の配線本数まで連鎖して狂います。
つまずき2:天井の高さと場所で感知器を選び間違える
感知器は「どこでも同じものを置く」わけではありません。場所の条件で選ぶ種別が変わります。
| 場所の条件 | 選ぶ感知器の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般的な事務室・居室(取付け面8m未満) | 差動式スポット型 | 温度の急な上昇で早く感知できる |
| 厨房(正常時に煙が滞留する場所)・ボイラー室(著しく高温となる場所) | 定温式(特種または一種) | 規則別表第一の二の三で適応するのは定温式特種・一種のみ(二種は不可)。厨房の定温式は公称作動温度75度以下(同表備考三)。いずれも正常時の最高周囲温度より公称作動温度が20度以上高いものを選ぶ(規則第23条第4項第6号) |
| 取付け面の高さが8m以上15m未満 | 差動式分布型・イオン化式スポット型(1種/2種)・光電式スポット型(1種/2種) | 差動式スポット型・補償式スポット型・定温式が使えるのは8m未満まで |
| 階段・傾斜路 | 煙感知器 | 規則第23条第5項第1号。用途の限定はない |
| 廊下・通路(令別表第一(一)〜(六)項、(九)項、(十二)項、(十五)項、(十六)項イ等に限る) | 煙感知器または熱煙複合式スポット型感知器 | 規則第23条第5項第2号。列挙されていない用途の廊下はこの規定の対象外 |
🔴 地階・無窓階・11階以上は用途で扱いが分かれます。 規則第23条第5項第6号はこれらの部分に煙感知器・熱煙複合式スポット型・炎感知器を義務付けていますが、対象は令別表第一(一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十五)項、(十六)項イ、(十六の二)項、(十六の三)項に限られます。事務所は(十五)項なので該当し、地階・無窓階の事務室に差動式スポット型は選べません。
一方、工場(十二)項・倉庫(十四)項・学校(七)項・共同住宅(五)項ロなどは列挙の外なので第5項の対象にならず、第6項第2号が適用されます。同号は差動式・補償式の一種または二種、定温式の特種・一種(公称作動温度75度以下)、イオン化式・光電式の一種〜三種、炎感知器を認めているので、差動式スポット型も選べます。「無窓階なら必ず煙感知器」と丸暗記すると、工場・倉庫の無窓階で誤答します。
つまずきやすいのは、厨房に差動式を置いてしまうケースと、天井の高い倉庫・工場に差動式スポット型を置いてしまうケースです。ただし覚え方を「差動式」でひとくくりにしないでください。正しくは「差動式スポット型は高温の場所と取付け面8m以上には使えない。差動式分布型なら15m未満まで使える」です(規則第23条第4項第2号)。高天井の倉庫・工場でむしろ正解になるのは差動式分布型(空気管式など)のほうです。
つまずき3:はりで区切られた感知区域を数え落とす
感知器の個数は、感知区域ごとに必要数を出して合計します。感知区域とは、壁または取付け面から0.4m以上(差動式分布型感知器または煙感知器を設ける場合は0.6m以上)突出したはり等によって区画された部分です(規則第23条第4項第3号ロ)。0.6mになるのは煙感知器だけでなく、空気管などの差動式分布型も同じ扱いです。
平らな一部屋だと思って1区域で数えると、はりで実際には2区域に分かれていて感知器が1個足りない――という失点が起きます。図面にはりが描かれていたら、まず感知区域の分割を疑うのが安全です。
系統図問題 ―― P型1級か2級かで配線本数が変わる
系統図問題は、受信機・感知器・地区音響装置(ベル)をつなぐ配線の概略図を読み、本数や記号を答えます。ここでの最初の分岐は、受信機がP型1級かP型2級かの判定です。これを取り違えると、その後の配線がすべてずれます。
つまずき4:P型1級と2級の配線ルールを混同する
P型1級とP型2級では、必要な配線が違います。
| 項目 | P型1級 | P型2級 |
|---|---|---|
| 接続できる回線数 | 制限なし(多回線対応) | 5回線以下 |
| 発信機の電話線(T)・応答線(A) | 多回線のものは必要(1回線用は不要) | 不要 |
| 感知器回路の末端に置くもの | 終端器(終端抵抗) | 発信機または押しボタン(回路試験器) |
共通線は感知器回路をまとめる線です。条文は「共通線を設ける場合の共通線は、一本につき七警戒区域以下とすること」(規則第24条第1号ヘ)という上限の規定で、共通線を必ず設けよという義務ではありません。警戒区域が8つになれば共通線は2本以上必要になります。この上限を忘れて1本のままにするミスが頻出します。
⚠️ 同号にはただし書があります。 「R型受信機及びGR型受信機に接続される固有の信号を有する感知器又は中継器が接続される感知器回路にあつては、この限りでない」。R型の系統図に7警戒区域の制限をそのまま当てはめると誤答します。
回線数が多い建物ではP型1級が前提になりやすく、終端に置くものと電話線・応答線の有無を最初に固定しておくと混乱しません。
つまずき5:ベル線とその他の電線種別を取り違える
配線には電線種別と工事方法の指定もあります。受信機から地区音響装置(ベル)までの配線は、規則第24条第5号ホにより規則第12条第1項第5号に準じて設けます。その中身は2つセットで、(1)600V二種ビニル絶縁電線(HIV)またはこれと同等以上の耐熱性を有する電線を使い、(2)金属管工事・可とう電線管工事・金属ダクト工事・ケーブル工事(不燃性のダクトに布設するものに限る)で施工する、というものです。ただし消防庁長官が定める基準に適合する電線を使う場合は(2)の工事方法の制約が外れます。一方、P型受信機の感知器回路は一般の電線(IV)で構いませんが、「感知器回路なら常にIV」ではありません。規則第24条第1号ホにより、R型・GR型受信機に接続される固有の信号を有する感知器および中継器から受信機までの配線も、同じく第12条第1項第5号に準じた耐熱配線になります。
地区音響装置の鳴動方式が区分鳴動になると、階ごとに制御する配線が増えます。区分鳴動の対象は地階を除く階数が5以上で、かつ延べ面積が3,000㎡を超える防火対象物で、鳴らす範囲は「出火階とその周辺」ではなく条文で決まっています(規則第24条第5号ハ)。出火階が2階以上なら出火階およびその直上階、1階なら出火階・その直上階・地階、地階なら出火階・その直上階・その他の地階で、直下階は入りません。さらに一定の時間が経過した場合または新たな火災信号を受信した場合は、全区域に自動的に警報を発するように措置されている必要があります。鳴動方式の指定を読み飛ばすと、本数を少なく答えてしまいます。
製図で実技60%を超えるための学習手順
製図は、知識を覚えるだけでは点になりません。白紙の図面に手を動かして再現できて初めて得点になります。次の順番で進めると、平面図・系統図の両方を無理なく仕上げられます。
手順1:筆記の「構造・機能」と一緒に覚える
製図で使う感知器の種別・設置基準・受信機の知識は、筆記の構造・機能20問とほぼ同じです。製図を切り離さず、構造・機能を学ぶときに「これは製図でどう描くか」を意識すると、二度手間がなくなります。
手順2:平面図は「区画→選定→個数」を手で繰り返す
平面図は、警戒区域の区画・感知器の選定・個数算定の3ステップを、同じ手順で何度も描きます。建物の用途が変わっても、判断の流れは同じです。用途ごとの正解配置を丸暗記するのではなく、「この天井高なら何を選ぶか」を毎回自分で判断する練習が効きます。
手順3:系統図は受信機の種別判定から固定する
系統図は、まず受信機がP型1級か2級かを判定し、そこから配線本数を順番に出す流れを体に入れます。受信機の級は、回線数が6以上かどうか、または応答線・電話線の有無で判定します。級が決まったら末端に置くもの(1級=終端器/2級=発信機か押しボタン)を固定し、続けてベル線の耐熱指定を確認します。
⚠️ 共通線の本数から級は判別できません。 「1本につき7警戒区域が上限」は規則第24条第1号ヘの規定で、P型1級・2級を区別していません(除外されるのはR型・GR型だけ)。共通線は級の判定材料ではなく、級を判定したあとに本数を数える項目です。
手順4:時間を計って2問を通しで解く
🔴 「実技は60分」と区切って考えないでください。 甲種4類の試験時間は筆記と実技を合わせて3時間15分で、消防試験研究センターの受験案内は「筆記試験と実技試験は同時間内に行います」と明記しています。区分別の目安として筆記2時間15分・実技1時間00分という数字は示されていますが、時計が別々に動くわけではありません。
つまり筆記を早く終えた分は、そのまま製図に回せます。筆記は四肢択一45問なので、慣れれば目安の2時間15分より短く済みます。仕上げ段階では実技だけを計るのではなく、筆記を通しで解いてから製図に入る練習をして、自分が製図に何分残せるかを実測しておくのが有効です。
つまずき5点の早見表とまとめ
製図で失点が集中する5点を、回避策とあわせて整理します。
| # | つまずき | 回避策 |
|---|---|---|
| 1 | 警戒区域の面積条件(600㎡・一辺50m。光電式分離型なら一辺100m。見通せれば面積のみ1,000㎡) | 根拠は施行令21条2項2号。緩和されるのは面積だけで一辺は残る |
| 2 | 厨房・高天井での感知器選定ミス | 「差動式スポット型は高温と8m以上に使えない。差動式分布型は15m未満まで可」 |
| 3 | はりによる感知区域の数え落とし | 図面にはりがあれば感知区域の分割を疑う |
| 4 | P型1級・2級の配線本数の混同 | 受信機種別を先に判定。共通線は1本につき7警戒区域が上限(R型は除外) |
| 5 | ベル線(耐熱)と一般配線の取り違え | 受信機→地区音響装置は耐熱(電線種別+工事方法の2点セット)。R型の感知器配線も耐熱 |
製図は、建物の用途を暗記する科目ではなく、決まった判断を図面の上で再現する科目です。平面図は「区画→選定→個数」、系統図は「種別判定→本数」という固定の手順を、白紙から書けるところまで持っていけば、実技60%の壁は越えられます。練習問題を解くときも、答えを覚えるのではなく、毎回この判断手順をなぞることを意識してみてください。
出典
- 一般財団法人 消防試験研究センター「試験科目及び問題数」 ― 甲種4類の筆記45問・実技7問の構成
- 一般財団法人 消防試験研究センター「試験の方法」 ― 合格基準(各科目40%以上・筆記全体60%以上・実技60%以上)
- 消防法施行令 第21条 (e-Gov) ― 警戒区域の面積600㎡・一辺50m (光電式分離型は100m)・見通せる場合1,000㎡ は第2項第2号
- 消防法施行規則 第23条 (e-Gov) ― 感知器の種別選定(第4項第2号の高さ区分)・感知区域(第4項第3号ロ)・階段/廊下/地階・無窓階 (第5項・第6項)
- 消防法施行規則 第24条 (e-Gov) ― 送り配線と末端機器 (第1号イ)・共通線7警戒区域 (第1号ヘ)・区分鳴動 (第5号ハ)・受信機→地区音響装置の配線 (第5号ホ)
- 消防法施行規則 第12条第1項第5号 (e-Gov) ― 耐熱配線の実体規定 (600V二種ビニル絶縁電線+金属管工事等)
- 消防法施行規則 別表第一の二の三 ― 厨房・ボイラー室など場所ごとの適応感知器
- 感知器の図記号や配線の細かな表記は、市販の対策テキストおよび消防試験研究センターが公開する例題で確認してください。
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