指定数量は、危険物の危険性を考えて政令で決められた量です(消防法第9条の4)。指定数量以上の危険物は、許可を受けた製造所・貯蔵所・取扱所でなければ貯蔵・取り扱えません(消防法第10条)。指定数量未満は、市町村の火災予防条例で規制されます。
よく聞かれる物質の答えを先に書きます。ガソリン200L、灯油・軽油1,000L、重油2,000L、アセトン・エタノール・メタノール400Lです(危険物の規制に関する政令別表第三)。
この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法は2025年6月1日施行、危険物の規制に関する政令は2026年4月4日施行、同規則は2026年6月30日施行の版)と、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のGHSモデルSDS(2026年10月19日に確認)をもとに書いています。
身近な物質の早見表 — 何類で、指定数量はいくつか
「類・品名」はモデルSDSの「15. 適用法令」の消防法の欄、「引火点」は「9. 物理的及び化学的性質」の値です。指定数量はSDSには書かれていないので、政令別表第三で当てています。
| 物質 | 類・品名 | 水溶性 | 指定数量 | 引火点(モデルSDS) |
|---|---|---|---|---|
| ガソリン | 第4類 第1石油類 | 非水溶性 | 200L | -45℃ |
| トルエン | 第4類 第1石油類 | 非水溶性 | 200L | 4.4℃ |
| 酢酸エチル | 第4類 第1石油類 | 非水溶性 | 200L | -4℃ |
| ノルマルヘキサン | 第4類 第1石油類 | 非水溶性 | 200L | -22℃(密閉式・ICSC)など |
| アセトン | 第4類 第1石油類 | 水溶性 | 400L | -20℃ |
| エタノール | 第4類 アルコール類 | — | 400L | 13℃ |
| メタノール | 第4類 アルコール類 | — | 400L | 12℃ |
| 2-プロパノール(イソプロピルアルコール) | 第4類 アルコール類 | — | 400L | 12℃ |
| 灯油 | 第4類 第2石油類 | 非水溶性 | 1,000L | 37〜85℃(資料で分かれる) |
| 軽油 | 第4類 第2石油類 | 非水溶性 | 1,000L | 資料で値が分かれる(21〜55℃・71℃以上) |
| キシレン | 第4類 第2石油類 | 非水溶性 | 1,000L | 25℃(混合物) |
| 酢酸 | 第4類 第2石油類 | 水溶性 | 2,000L | 39℃ |
| ジエチルエーテル | 第4類 特殊引火物 | — | 50L | -45℃ |
| 二硫化炭素 | 第4類 特殊引火物 | — | 50L | -30℃ |
| 重油 | 第4類 第3石油類(法の例示) | 非水溶性 | 2,000L | (モデルSDSは確認していない) |
| 硫黄 | 第2類 硫黄 | — | 100kg | 207℃ |
| 硝酸 | 第6類 硝酸 | — | 300kg | 不燃性 |
| 過酸化水素 | 第6類 過酸化水素 | — | 300kg | 情報なし |
| グリセリン | 製品で分かれる | — | 第3石油類・水溶性なら4,000L | モデルSDSなし |
表の読み方の注意が3つあります。
- 第1〜第3石油類では、水に溶けるかで指定数量が2倍違います。 アセトン(第1石油類・水溶性)は400Lで、ガソリン(第1石油類・非水溶性)の200Lの2倍です。酢酸(第2石油類・水溶性)も2,000Lで、灯油の2倍です
- グリセリンは製品で区分が分かれます。 富士フイルム和光純薬の99.0重量%品のSDSは「危険物第四類 第三石油類 危険等級Ⅲ 水溶性」、健栄製薬の約85%品のSDSは「該当しない」としています。手元の製品のSDSで確かめてください
- 硝酸と過酸化水素は、薄い水溶液だと危険物に当たらないことがあります。 第6類(酸化性液体)は、政令で定める燃焼時間の試験で性状を示すものです(消防法別表第一の備考第二十号・危険物の規制に関する政令第1条の8)。モデルSDSには濃度の条件が書かれていないので、この記事では数値の線を書きません
第4類(引火性液体)の指定数量
第4類は、引火点の範囲で品名が決まり(消防法別表第一の備考)、品名と水溶性で指定数量が決まります(政令別表第三)。
| 品名 | 定義(1気圧での引火点など) | 法の例示 | 非水溶性 | 水溶性 |
|---|---|---|---|---|
| 特殊引火物 | 発火点100℃以下、または引火点-20℃以下で沸点40℃以下 | ジエチルエーテル、二硫化炭素 | 50L | 50L |
| 第1石油類 | 引火点21℃未満 | アセトン、ガソリン | 200L | 400L |
| アルコール類 | 炭素数1〜3の飽和一価アルコール(変性アルコールを含む) | — | 400L | 400L |
| 第2石油類 | 引火点21℃以上70℃未満 | 灯油、軽油 | 1,000L | 2,000L |
| 第3石油類 | 引火点70℃以上200℃未満 | 重油、クレオソート油 | 2,000L | 4,000L |
| 第4石油類 | 引火点200℃以上250℃未満 | ギヤー油、シリンダー油 | 6,000L | 6,000L |
| 動植物油類 | 動物の脂肉等・植物の種子や果肉から抽出したもので、引火点250℃未満 | — | 10,000L | 10,000L |
特殊引火物・アルコール類・第4石油類・動植物油類は、水溶性で数量を分けていません。水溶性液体とは、1気圧・20℃で同じ量の純水と緩やかにかき混ぜ、流れが収まった後も混合液が均一な外観を保つものをいいます(政令別表第三の備考第十号)。
第4類の数字の覚え方は 危険物乙4 指定数量の覚え方 にまとめています。
アルコールは「60%」が線になる
エタノールやメタノールのような炭素数1〜3の飽和一価アルコールは、第4類のアルコール類です。ただし、規則第1条の3第4項が、次のものをアルコール類から除いています。
- 炭素数1〜3の飽和一価アルコールの含有量が60%未満の水溶液
- 可燃性液体量が60%未満で、引火点がエタノールの60%水溶液の引火点を超えるもの(燃焼点がエタノールの60%水溶液の燃焼点以下のものを除く)
アルコールの含有量が60%以上の水溶液は1に当たらないので、アルコール類(400L)として扱われます。
この60%は重量%(wt%)です。消防庁危険物保安室の事務連絡(令和2年4月23日)は、酒造などで使われる容量%(vol%)とは違うので注意が要るとしたうえで、容量%では概ね67vol%以上が消防法上のアルコール類に当たると示しています。消毒用のアルコール製品が危険物に当たるかは、表示の濃度が重量%か容量%かを見たうえで、製品のSDSで確かめます。
同じように、第2石油類・第3石油類・第4石油類にも、塗料類などで可燃性液体量が40%以下のものを除く定めがあります(規則第1条の3第5項・第6項。第2石油類は引火点40℃以上で燃焼点60℃以上のものに限る)。
第1類〜第6類の指定数量
第4類以外の類は、試験の結果で決まる「第一種・第二種…」の区分と、品名ごとの数量の組み合わせです(政令別表第三)。第6類だけは区分も品名ごとの数量もなく、一律300kgです。
| 類 | 区分・品名 | 指定数量 |
|---|---|---|
| 第1類(酸化性固体) | 第一種酸化性固体/第二種/第三種 | 50kg/300kg/1,000kg |
| 第2類(可燃性固体) | 硫化りん・赤りん・硫黄・第一種可燃性固体 | 100kg |
| 鉄粉・第二種可燃性固体 | 500kg | |
| 引火性固体 | 1,000kg | |
| 第3類(自然発火性物質及び禁水性物質) | カリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウム・第一種 | 10kg |
| 黄りん | 20kg | |
| 第二種/第三種 | 50kg/300kg | |
| 第4類(引火性液体) | 上の表 | 50L〜10,000L |
| 第5類(自己反応性物質) | 第一種自己反応性物質/第二種 | 10kg/100kg |
| 第6類(酸化性液体) | すべて | 300kg |
第4類だけがリットル、ほかの類はキログラムです。
指定数量の倍数の計算
倍数は「貯蔵・取り扱う量 ÷ 指定数量」です。品名や指定数量が違う危険物を同じ場所で貯蔵・取り扱うときは、それぞれの値を足し、和が1以上なら指定数量以上を扱っているとみなします(消防法第10条第2項)。
| 例 | 計算 | 倍数 | 扱い |
|---|---|---|---|
| ガソリン100L+灯油500L | 100÷200+500÷1,000 | 1.0 | 指定数量以上(許可が要る) |
| ガソリン30L+灯油100L | 30÷200+100÷1,000 | 0.25 | 指定数量未満(市町村条例)。5分の1以上なので少量危険物 |
| 灯油の18Lポリタンク10個(180L) | 180÷1,000 | 0.18 | 指定数量未満で、5分の1(0.2)にも届かない |
| アセトン200L+トルエン100L | 200÷400+100÷200 | 1.0 | 指定数量以上 |
最後の例は、同じ第1石油類でも水溶性(アセトン)と非水溶性(トルエン)で割る数が違う点を見ます。計算の手順は 指定数量の倍数計算の7ステップ で練習できます。
量で変わる規制の段階
| 量 | 何が要るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 指定数量以上 | 許可を受けた製造所・貯蔵所・取扱所で貯蔵・取扱い(10日以内の仮貯蔵・仮取扱いは消防長または消防署長の承認で可) | 消防法第10条 |
| 指定数量の5分の1以上〜指定数量未満 | 市町村の火災予防条例の基準と届出(「少量危険物」と呼ぶ条例がある) | 消防法第9条の4・各市町村の条例 |
| 指定数量の5分の1未満 | 市町村の火災予防条例の一般的な基準(火気・容器・転倒防止など) | 同上 |
| 指定数量以上を車両で運搬 | 車両に「危」の標識、適応する消火設備 | 危険物の規制に関する政令第30条 |
| 量にかかわらず運搬 | 容器・積載方法・運搬方法の基準 | 消防法第16条 |
指定数量の5分の1以上を扱う場所の基準と届出は 少量危険物とは に、「危」の標識の大きさは 危険物の標識と掲示板 にまとめています。
正誤の文で確かめる — ひっかけの型
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第1石油類の指定数量は、水溶性液体が200L、非水溶性液体が400L | 誤り | 逆。非水溶性200L・水溶性400L |
| アルコール類の指定数量は400L | 正しい | 政令別表第三 |
| 灯油と軽油は第2石油類で、指定数量は1,000L | 正しい | 法別表第一の備考・政令別表第三 |
| 重油は第2石油類 | 誤り | 第3石油類(法の例示) |
| 品名が違う危険物は、倍数を合算しない | 誤り | 合算する(法第10条第2項) |
| 指定数量未満の危険物は、どの法令の規制も受けない | 誤り | 市町村条例の規制を受ける(法第9条の4)。運搬の基準(法第16条)も量にかかわらずかかる |
| 第6類の指定数量は300kg | 正しい | 政令別表第三 |
ぴよパスのオリジナル予想問題で確かめられます。
- 乙4 法令の練習問題・乙4 計算問題
- 甲種 法令の練習問題(第1類〜第6類の区分を含む)
- 丙種 法令の練習問題
出典
- 消防法 第9条の4・第10条・第16条・別表第一とその備考(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)
- 危険物の規制に関する政令 第1条の8・第30条・別表第三とその備考(同・2026年4月4日施行の版)
- 危険物の規制に関する規則 第1条の3(同・2026年6月30日施行の版)
- 消防庁危険物保安室 事務連絡「新型コロナウイルス感染症対応に伴う高濃度エタノール製品の使用について(情報提供)」(令和2年4月23日)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」GHSモデルSDS:アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、酢酸、酢酸エチル、ヘキサン、灯油、軽油、ガソリン、硝酸、過酸化水素、硫黄、ジエチルエーテル、二硫化炭素(2026年10月19日に確認)
- 富士フイルム和光純薬「グリセリン」SDS(版2.03)、健栄製薬「グリセリン」SDS(第3版)(2026年10月19日に確認)
当サイトの問題は危険物取扱者試験の問題ではありません。法令をもとに独自に作った練習問題です。消防試験研究センターとは関係ありません。










