保安距離と保有空地は、危険物施設(製造所等)の位置と周囲について決められた距離と空地です。保安距離は、住居・学校・病院・文化財など施設の外の建築物等から施設までの間に保つ距離、保有空地は、危険物を扱う建築物などの周囲に空けておく空地の幅です。どちらも、危険物の規制に関する政令(以下「危政令」)が施設の種類ごとに決めています。
保安距離と保有空地は、危険物取扱者試験の「危険物に関する法令」で学ぶ論点です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(危政令は2026年4月4日施行の版、危険物の規制に関する規則(以下「危規則」)は2026年6月30日施行の版)をもとに書いています。
保安距離の一覧(危政令第9条第1項第1号)
製造所は、次の建築物等から、製造所の外壁またはこれに相当する工作物の外側までの間に、それぞれの距離を保ちます。
| 保安対象物 | 距離 | 根拠 |
|---|---|---|
| 住居(製造所と同じ敷地内のものを除く) | 10メートル以上 | 危政令第9条第1項第1号イ |
| 学校・病院・劇場など多数の人を収容する施設 | 30メートル以上 | 同号ロ、危規則第11条 |
| 重要文化財・重要有形民俗文化財・史跡・重要美術品などの建造物 | 50メートル以上 | 同号ハ |
| 高圧ガスなどの施設 | 20メートル以上 | 同号ニ、危規則第12条 |
| 使用電圧7,000ボルトを超え35,000ボルト以下の特別高圧架空電線 | 水平距離3メートル以上 | 同号ホ |
| 使用電圧35,000ボルトを超える特別高圧架空電線 | 水平距離5メートル以上 | 同号ヘ |
30メートルの対象になる「学校・病院・劇場など」は、危規則第11条で細かく決まっています。
| 区分 | 対象 | 対象にならないものの例 |
|---|---|---|
| 学校 | 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校 | 大学 |
| 病院 | 医療法の病院 | 診療所 |
| 劇場など | 劇場、映画館、演芸場、公会堂など300人以上を収容できるもの | 収容人員300人未満のもの |
| 福祉施設など | 児童福祉施設、老人福祉施設、有料老人ホーム、介護老人保健施設、障害者支援施設などで20人以上を収容できるもの | 収容人員20人未満のもの |
住居・学校等・文化財(イ〜ハ)については、不燃材料で造った防火上有効な塀を設けることなどにより市町村長等が安全であると認めた場合、市町村長等が定めた距離をその距離とすることができます(危政令第9条第1項第1号ただし書)。高圧ガスの施設との20メートルも、耐火構造の塀の設置などの措置をとった場合は告示の要件を満たす距離にできます(危規則第12条第2項)。
保有空地の一覧
製造所と一般取扱所の保有空地は、指定数量の倍数で2段階です(危政令第9条第1項第2号、第19条第1項で一般取扱所に準用)。
| 区分 | 空地の幅 |
|---|---|
| 指定数量の倍数が10以下 | 3メートル以上 |
| 指定数量の倍数が10を超える | 5メートル以上 |
屋内貯蔵所は、貯蔵倉庫の壁・柱・床が耐火構造かどうかでも幅が変わります(危政令第10条第1項第2号)。
| 指定数量の倍数 | 壁・柱・床が耐火構造 | それ以外 |
|---|---|---|
| 5以下 | 空欄(空地の定めなし) | 0.5メートル以上 |
| 5を超え10以下 | 1メートル以上 | 1.5メートル以上 |
| 10を超え20以下 | 2メートル以上 | 3メートル以上 |
| 20を超え50以下 | 3メートル以上 | 5メートル以上 |
| 50を超え200以下 | 5メートル以上 | 10メートル以上 |
| 200を超える | 10メートル以上 | 15メートル以上 |
屋外タンク貯蔵所(危政令第11条第1項第2号)と屋外貯蔵所(危政令第16条第1項第4号)は、次のとおりです。
| 屋外タンク貯蔵所の指定数量の倍数 | 空地の幅 | 屋外貯蔵所の指定数量の倍数 | 空地の幅 |
|---|---|---|---|
| 500以下 | 3メートル以上 | 10以下 | 3メートル以上 |
| 500を超え1,000以下 | 5メートル以上 | 10を超え20以下 | 6メートル以上 |
| 1,000を超え2,000以下 | 9メートル以上 | 20を超え50以下 | 10メートル以上 |
| 2,000を超え3,000以下 | 12メートル以上 | 50を超え200以下 | 20メートル以上 |
| 3,000を超え4,000以下 | 15メートル以上 | 200を超える | 30メートル以上 |
| 4,000を超える | タンクの水平断面の最大直径(横型は横の長さ)または高さのうち大きいもの以上(15メートル未満にはできない) | — | — |
屋外に設ける簡易タンク貯蔵所は、タンクの周囲に1メートル以上の幅の空地を保有します(危政令第14条第4号)。
屋外タンク貯蔵所で引火点を持つ液体を扱うものには、保有空地とは別に、敷地の境界線からタンクの側板までの距離の決まりもあります。引火点21度未満はタンクの直径等の1.8倍、21度以上70度未満は1.6倍、70度以上は1倍(それぞれ、その値がタンクの高さより小さいときは高さ)以上で、石油コンビナートの第一種・第二種事業所にある1,000キロリットル以上のタンクは、さらに50・40・30メートル以上です。塀の設置などで市町村長等が安全と認めたときは、市町村長等が定めた距離にできます(危政令第11条第1項第1号の2)。
2026年4月4日施行の改正 — 空地を減らせる場合
2026年4月4日施行の危政令の改正で、保有空地のただし書(空地の幅を減らしたり、保有しなかったりできる場合)が改められました。空地の幅の表の数字は変わっていません。同じ日に施行された危規則の改正では、高圧ガスの施設との保安距離(20メートル以上)に、耐火構造の塀の設置その他の防火上有効な措置を講じた場合は告示の要件を満たす距離にできるただし書が入りました(危規則第12条第2項。改正前の第12条は施設ごとに20メートル以上と書くだけでした)。
| 施設 | 改正前(2026年4月3日まで) | 改正後(2026年4月4日から) |
|---|---|---|
| 製造所・一般取扱所(第9条第1項第2号) | 防火上有効な隔壁を設けたときは、空地を保有しなくてよい | 隔壁の設置その他の防火上有効な措置として総務省令で定める措置を講じたときは、空地の幅を減じ、または保有しないことができる |
| 屋内貯蔵所(第10条第1項第2号) | 2以上を隣接して設置するときは、空地の幅を減ずることができる | 隣接して設置するときに加え、耐火構造の塀の設置などの措置を講じたときは、幅を減じ、または保有しないことができる |
| 屋外タンク貯蔵所(第11条第1項第2号) | 2以上を隣接して設置するときは、空地の幅を減ずることができる | 隣接して設置するときに加え、耐火構造の塀の設置などの措置を講じたときは、幅を減じ、または保有しないことができる |
| 屋外貯蔵所(第16条第1項第4号) | 硫黄等のみを貯蔵し、取り扱うときは、空地の幅を減ずることができる | 硫黄等のみを扱うときに加え、耐火構造の塀の設置などの措置を講じたときは、幅を減じ、または保有しないことができる |
製造所・一般取扱所で総務省令が定める措置は、作業工程が連続する場所との間に小屋裏に達する防火上有効な隔壁を設けること、または、空地をとれない部分に耐火構造の塀などを設けて散水設備等で冷却できるようにし、主要な出入口の周辺に消防活動のための空地を保有することです(危規則第13条第1項)。消防試験研究センターは、法令が改正された場合、施行日以降に実施される試験では原則として改正後の内容で出題するとしています(危険物取扱者試験のよくある質問)。
保安距離と保有空地が要る施設
| 施設 | 保安距離 | 保有空地 |
|---|---|---|
| 製造所・一般取扱所 | 要る | 要る(3・5メートル) |
| 屋内貯蔵所(第10条第1項の形) | 要る | 要る(構造と倍数で0〜15メートル) |
| 屋外タンク貯蔵所 | 要る | 要る(3〜15メートル以上) |
| 屋外貯蔵所 | 要る | 要る(3〜30メートル) |
| 簡易タンク貯蔵所(屋外) | — | タンクの周囲1メートル |
| 屋内タンク・地下タンク・移動タンク貯蔵所、給油取扱所、販売取扱所 | — | — |
屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所・屋外貯蔵所の位置は製造所の位置の例による(危政令第10条第1項第1号、第11条第1項第1号、第16条第1項第1号)ので、保安距離は製造所と同じです。ただし、倍数20以下でほかの用途の建築物に設ける屋内貯蔵所(第10条第3項)は第1項第1号・第2号の例によらないので、この表の保安距離・保有空地はかかりません。一般取扱所にも総務省令の特例の形があります(第19条第2項)。施設ごとの違いは 危険物施設の区分 に、暗記用の1枚表は 危険物乙4の暗記表 にまとめています。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 製造所は、同じ敷地内にある住居からも10メートル以上の保安距離が要る | 誤り | 同じ敷地内の住居は除かれる(危政令第9条第1項第1号イ) |
| 大学は学校なので、30メートル以上の保安距離の対象である | 誤り | 対象の学校に大学は入っていない(危規則第11条第1号) |
| 重要文化財の建造物からの保安距離は、50メートル以上である | 正しい | 危政令第9条第1項第1号ハ |
| 指定数量の倍数が10を超える製造所の保有空地は、3メートル以上である | 誤り | 5メートル以上。3メートルは10以下 |
| 指定数量の倍数が10以下の屋外貯蔵所の保有空地は、3メートル以上である | 正しい | 危政令第16条第1項第4号 |
| 2026年4月の改正で、保有空地の幅の表の数字が広げられた | 誤り | 改正されたのはただし書。表の数字は同じ |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、保安距離と保有空地の論点を確かめられます。
出典
- 危険物の規制に関する政令 第9条〜第11条・第14条・第16条・第19条(e-Gov法令検索・2026年4月4日施行の版と、改正前の2026年4月3日時点の版)
- 危険物の規制に関する規則 第11条〜第13条(e-Gov法令検索・2026年6月30日施行の版)
- 一般財団法人消防試験研究センター「危険物取扱者試験について よくある質問」(Q29)
当サイトの問題は危険物取扱者試験の問題ではありません。法令をもとに独自に作った練習問題です。消防試験研究センターとは関係ありません。










