ガソリンの引火点は−40℃以下です。ENEOSのレギュラーガソリンの安全データシート(SDS)では、引火点が「−40℃以下(タグ密閉式)(推定値)」、自然発火点が「約300℃」とされています。引火点がとても低いので、冬の屋外のような低い温度でも、火を近づければ燃えるだけの蒸気を出しています。
ガソリン・灯油・軽油・重油の性質は、危険物取扱者の乙種第4類・甲種・丙種の「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」の範囲に入る、第4類の代表的な物品です。この記事は、ENEOSが公開している各製品のSDS(いずれも2024年2月1日改定)と、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法は2025年6月1日施行の版、危険物の規制に関する政令(以下「危政令」)は2026年4月4日施行の版)、東京消防庁(西新井消防署)の注意喚起をもとに書いています。
ガソリン・灯油・軽油・重油の引火点と発火点(SDSの値)
| 項目 | レギュラーガソリン | 灯油 | 軽油(3号) | A重油(一般品) |
|---|---|---|---|---|
| 引火点 | −40℃以下(推定値) | 40〜75℃ | 45〜110℃ | 60〜120℃ |
| 自然発火点 | 約300℃ | 約240℃ | 約240℃ | 約240℃ |
| 爆発限界(燃焼範囲) | 1〜7容量%(推定値) | 1〜7容量%(推定値) | 1〜7容量%(推定値) | 1〜7容量%(推定値) |
| 蒸気の重さ(空気=1) | 3〜4 | 4〜5 | 5以上 | 5以上 |
| 液の密度(15℃) | 0.70〜0.78g/cm³ | 0.76〜0.83g/cm³ | 0.80〜0.86g/cm³ | 0.82〜0.90g/cm³ |
| 色 | オレンジ系 | 無色透明 | 淡黄色透明 | 淡褐色・黒褐色 |
| 消防法の品名 | 第1石油類 | 第2石油類 | 第2石油類 | 第3石油類 |
(ENEOS「レギュラーガソリン」「灯油」「軽油(3号)」「A重油一般品」の各SDSより。引火点の測り方は、ガソリンと灯油がタグ密閉式、軽油と重油がペンスキーマルテンス密閉式)
ガソリンや灯油は多くの成分が混ざった混合物なので、値には幅があり、資料によって代表値が少し違います。「ガソリン−40℃以下、灯油40℃以上、軽油45℃以上」という覚え方も、上のSDSの値と合っています。重油は種類(A重油・B重油・C重油)で値に幅があり、上の表はENEOSのA重油(一般品)の値です。
引火点と発火点の違い(ガソリンは発火点が高い)
| 用語 | 意味 | ガソリンの値 |
|---|---|---|
| 引火点 | 火を近づけたとき、液面の近くの蒸気に火がつく最低の液温 | −40℃以下 |
| 発火点(自然発火点) | 火を近づけなくても、加熱するだけで自ら燃え出す最低の温度 | 約300℃ |
ENEOSのSDSでは、ガソリンは引火点はいちばん低いのに、発火点(約300℃)は灯油・軽油・A重油(約240℃)より高いのが特徴です。「引火点が低いものほど発火点も低い」とは限らないので、取り違えやすい点です。
ただし、発火点は資料と製品で幅があります。灯油は、厚生労働省のモデルSDSでは220℃・229℃・254℃と、資料ごとの値が並んでいます(約220℃とする資料もあります)。重油は種類で違い、ENEOSのSDSではA重油が約240℃、LSC重油(C重油)が約250℃ですが、国際化学物質安全性カード(ICSC 1774、C重油)は407℃としていて、ガソリンより高い資料もあります。引火点・発火点・燃焼範囲の考え方と覚え方は 危険物乙4 引火点・発火点・燃焼範囲 で詳しく整理しています。
消防法の区分と指定数量
消防法は、ガソリン・灯油・軽油・重油を、別表第一の備考で名前を挙げて区分しています。
| 品名 | 定義(消防法別表第一備考) | 名前が挙がっているもの | 指定数量(非水溶性液体) |
|---|---|---|---|
| 第1石油類 | 1気圧で引火点が21度未満のもの(第12号) | アセトン、ガソリン | 200リットル |
| 第2石油類 | 1気圧で引火点が21度以上70度未満のもの(第14号) | 灯油、軽油 | 1,000リットル |
| 第3石油類 | 1気圧で引火点が70度以上200度未満のもの(第15号) | 重油、クレオソート油 | 2,000リットル |
指定数量は危政令別表第三によります。重油は第3石油類として名前が挙がっているので、A重油のSDSは引火点を60〜120℃としつつ、品名を第3石油類としています。ガソリン200リットル・灯油1,000リットル・重油2,000リットルは、いずれも指定数量の1倍です。指定数量の倍数の計算や、少量危険物の扱いは 危険物の指定数量一覧 と 少量危険物とは で整理しています。第4類のほかの品名は 第4類危険物の品名一覧 にまとめています。
ガソリンの危険な性質と取扱い・消火
- 蒸気は空気より重い:蒸気の重さは空気の3〜4倍で、低いところやくぼみにたまり、離れた火源まで流れていくことがあります
- 燃焼範囲:SDSでは下限が約1容量%(推定値)です。灯油・軽油・A重油の下限もほぼ同じで、厚生労働省のモデルSDSでは灯油が0.7容量%とガソリンより低いくらいです。ガソリンの燃焼範囲を1.4〜7.6容量%とする資料もあり(ぴよパスの 引火点・発火点・燃焼範囲の記事 もこの値)、資料で幅があります。どちらにしても、ガソリンが危ないのは下限が低いからではなく、引火点が低くて、常温でも燃える濃さの蒸気をすぐに出すからです
- 水に溶けず、水より軽い:密度は0.70〜0.78g/cm³(資料によって幅がある)で水に浮きます。SDSは、棒状の水は火災を広げて危険な場合があるとしています
- 静電気に注意:SDSは、静電気の放電に対する予防措置を講じ、ほかの容器に移すときは容器を接地してアースをとるよう求めています
- 消火:SDSでは、霧状の強化液、粉末、炭酸ガス、泡が有効で、初期の火災には粉末・炭酸ガス、大規模な火災には泡で空気を断つのが有効とされています
ガソリンが混ざった灯油は使わない
灯油にガソリンが混ざると、灯油よりずっと低い温度で燃える蒸気が出るようになります。東京消防庁(西新井消防署)は、ガソリンが混入した灯油をファンヒーターで使ったことによると思われる火災が他県で起きたことを紹介し、使い始めてすぐに異常燃焼するとは限らないこと、臭い・色・燃え方で「何か変だ」と感じたらすぐに使用を止め、必要に応じて消防署や販売店に相談することを呼びかけています。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| ガソリンの引火点は約40℃なので、常温では引火しにくい | 誤り | −40℃以下。約40℃以上は灯油(ENEOSのSDS) |
| ガソリンは引火点が低いので、発火点も灯油より低い | 誤り | 発火点はガソリン約300℃、灯油約220〜254℃で灯油のほうが低い |
| ガソリンは灯油より燃焼範囲の下限が低いので、薄い蒸気でも燃える | 誤り | 下限はどちらも約1容量%で、灯油のほうが低い資料もある(厚生労働省のモデルSDSで0.7容量%) |
| ガソリンの蒸気は空気より軽いので、天井付近にたまる | 誤り | 空気の3〜4倍の重さで、低いところにたまる |
| ガソリンの液は水より重い | 誤り | 密度0.70〜0.78g/cm³で水に浮く |
| 灯油と軽油は、どちらも第2石油類である | 正しい | 消防法別表第一備考第14号 |
| ガソリンの指定数量は400リットルである | 誤り | 第1石油類(非水溶性)なので200リットル。400リットルは水溶性の第1石油類とアルコール類 |
| ガソリンの火災には、棒状の水をかけて冷やすのがよい | 誤り | 棒状の水は火災を広げて危険な場合がある(SDS) |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、ガソリンの性質を確かめられます。
出典
- ENEOS株式会社「安全データシート」レギュラーガソリン・灯油・軽油(3号)・A重油一般品(いずれも2024年2月1日改定。https://www.eneos.co.jp/business/sds/gasoline/ 、2026年10月20日に確認)
- 消防法 別表第一・同表備考第12号・第14号・第15号(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)
- 危険物の規制に関する政令 別表第三(e-Gov法令検索・2026年4月4日施行の版)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」モデルSDS 灯油(CAS 8008-20-6。https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/8008-20-6.html 、2026年10月20日に確認)
- ENEOS株式会社「安全データシート」LSC重油(2024年2月1日改定。https://www.eneos.co.jp/business/sds/gasoline/pdf/lsc_heavy_oil_r.pdf )
- ILO「International Chemical Safety Cards」ICSC 1774 Bunker fuel(https://chemicalsafety.ilo.org/dyn/icsc/showcard.display?p_version=2&p_card_id=1774&p_lang=en 、2026年10月20日に確認)
- 東京消防庁 西新井消防署「ガソリンが混入した灯油の使用によると思われる火災が発生!」(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000098139.pdf 、2026年10月20日に確認)
当サイトの問題は危険物取扱者試験の問題ではありません。法令や公開資料をもとに独自に作った練習問題です。消防試験研究センターとは関係ありません。










