少量危険物は、指定数量の5分の1以上・指定数量未満の危険物を指す言葉です。たとえば東京都火災予防条例第31条は「指定数量の五分の一以上指定数量未満の危険物(以下「少量危険物」という。)」と定めています。指定数量未満の危険物の貯蔵・取扱いの基準は、消防法ではなく市町村の火災予防条例で決まります(消防法第9条の4)。
答えを先に書くと、少量危険物になるのはガソリン40L、灯油・軽油200L、重油400L、アルコール類80Lからです。届出の時期や基準の細かいところは市町村ごとに違うので、この記事は総務省消防庁が示す火災予防条例(例)(2026年1月1日施行の版)と、実際の条例の例として東京都火災予防条例を並べて整理します。東京都火災予防条例は、特別区の区域と、消防事務を東京都に委託した市町村の区域に適用される条例です(同条例第1条)。消防法は e-Gov法令検索の2025年6月1日施行の版で確かめています。
量で変わる規制の段階
| 量 | 規制 | 根拠 |
|---|---|---|
| 指定数量以上 | 許可を受けた製造所・貯蔵所・取扱所でなければ貯蔵・取り扱えない | 消防法第10条 |
| 指定数量の5分の1以上〜指定数量未満(少量危険物) | 市町村の火災予防条例の基準と届出 | 消防法第9条の4、条例(例)第31条・第46条 |
| 指定数量の5分の1未満 | 市町村の火災予防条例の一般的な基準(動植物油類を除く) | 条例(例)第30条・第31条の9 |
進む 5分の1未満でも「規制なし」ではありません。 条例(例)第30条は、指定数量未満の危険物(動植物油類を除く)に、みだりに火気を使わない・整理と清掃・漏れやあふれの防止・性質に合った傷みのない容器・容器を乱暴に扱わない・地震などで容器が落ちたり倒れたりしないようにする、の6つを求めています。
少量危険物になる量 — 物質ごとの早見表
| 危険物 | 指定数量 | 5分の1(少量危険物の下限) | 条例(例)で個人の住居の届出の線(2分の1) |
|---|---|---|---|
| ガソリン(第1石油類・非水溶性) | 200L | 40L | 100L |
| アセトン(第1石油類・水溶性) | 400L | 80L | 200L |
| エタノール・メタノールなど(アルコール類) | 400L | 80L | 200L |
| 灯油・軽油(第2石油類・非水溶性) | 1,000L | 200L | 500L |
| 重油(第3石油類・非水溶性) | 2,000L | 400L | 1,000L |
| ギヤー油・シリンダー油(第4石油類) | 6,000L | 1,200L | 3,000L |
指定数量は危険物の規制に関する政令別表第三、品名は消防法別表第一の備考の例示によります。物質ごとの類と指定数量は 危険物の指定数量一覧 に19種の表でまとめています。
進む 動植物油類は、条例(例)では扱いが別です。第31条の9が、指定数量未満の動植物油類には第30条〜第31条の8をかけないとし、5分の1以上は第33条(可燃性液体類等)で扱います。
2種類以上を置くときは合算する
品名や指定数量が違う危険物を同じ場所で貯蔵・取り扱うときは、それぞれの量を「指定数量の5分の1の数量」で割って足し、和が1以上なら少量危険物を扱っているとみなします(条例(例)第32条。東京都の第32条も同じ趣旨です)。
| 例 | 計算 | 和 | 扱い |
|---|---|---|---|
| ガソリン20L+灯油100L | 20÷40+100÷200 | 1.0 | 少量危険物 |
| ガソリン10L+灯油80L | 10÷40+80÷200 | 0.65 | 5分の1未満 |
| 軽油150L+重油200L | 150÷200+200÷400 | 1.25 | 少量危険物 |
指定数量そのもので割った和が1以上になれば、少量危険物ではなく指定数量以上(消防法の許可が要る量)です(消防法第10条第2項)。
届出 — 条例(例)は「あらかじめ」、東京都は「10日前まで」
| 消防庁の火災予防条例(例) | 東京都火災予防条例 | |
|---|---|---|
| 条 | 第46条 | 第58条 |
| 届出が要る量 | 指定数量の5分の1以上(個人の住居は2分の1以上)指定数量未満 | 少量危険物貯蔵取扱所(5分の1以上)を設置しようとする者 |
| 時期 | あらかじめ(日数の定めはない) | 設置する日(工事を伴う場合は工事に着手する日)の10日前まで |
| 届出先 | 消防長(消防署長) | 消防署長 |
| 変更 | — | 届出の内容の変更(軽微な変更を除く)も同様 |
| 使い始める前 | — | 消防署長の検査を受ける(第58条第4項) |
| 廃止 | 届け出る(第46条第2項) | 遅滞なく届け出る(第58条第5項) |
「10日前まで」は東京都の条例の定めで、条例(例)には日数がありません。所轄の消防本部の条例と案内で確かめるのが確実です。
置き場所の基準(条例(例)の要点)
5分の1以上・指定数量未満には、第30条の一般的な基準に、第31条の2〜第31条の8の基準が上乗せされます(条例(例)第31条)。
| 項目 | 条例(例)の要点 | 条 |
|---|---|---|
| 標識・掲示板 | 危険物を貯蔵・取り扱っている旨の標識と、類・品名・最大数量・防火に関し必要な事項の掲示板を見やすい箇所に | 第31条の2第2項第1号 |
| 容器の積み重ね | 高さ3mまで(第4類の第3石油類・第4石油類の容器だけなら4m) | 第31条の2第1項第17号 |
| 屋外の空地 | 周囲に空地を取るか、防火上有効な塀を設ける。空地の幅は、タンク・金属製容器で指定数量の2分の1以上なら1m以上。その他の場合は5分の1以上2分の1未満で1m以上、2分の1以上で2m以上(開口部のない防火構造の壁などに面するときは例外) | 第31条の3第2項第1号 |
| 屋外の架台 | 高さ6mを超えて容器を貯蔵しない | 第31条の3第1項 |
| 屋内 | 壁・柱・床・天井は不燃材料、窓と出入口に防火戸、液体は浸透しない床・傾斜・ためます、採光・照明・換気、可燃性蒸気の排出 | 第31条の3の2 |
| タンク | 容量に応じた厚さの鋼板(40L以下1.0mm以上〜2,000L超3.2mm以上)、水張試験・水圧試験、容量を超えて入れない | 第31条の4 |
標識の大きさと色 — 東京都は「少量危険物貯蔵取扱所」・600×300mm以上
条例(例)は、移動タンク(車両に固定されたタンク)の「危」の標識(0.3m平方・黒地に黄色の反射材)以外、標識の大きさや色を定めていません。東京都は火災予防条例施行規則の別表第1で、「少量危険物貯蔵取扱所」と書いた、600mm以上×300mm以上の白地に黒字の標識と決めています。掲示板の注意事項(「火気厳禁」など)も同規則の別表第2にあります。
「600×300mm・白地黒字」は東京都の規則の定めで、全国共通の決まりではありません。製造所等(指定数量以上)の標識と掲示板の決まりは 危険物の標識と掲示板 にまとめています。
罰則(条例(例)の場合)
条例(例)第49条は、30万円以下の罰金を定めています。対象は、第30条に違反して指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵・取り扱った者、第31条に違反した者などです。条例(例)では届出の条(第46条)は第49条の各号に挙がっていません。実際の罰則は市町村の条例ごとに違うので、所轄の条例で確かめます。
危険物取扱者の試験との関係
指定数量未満の危険物の貯蔵・取扱いの技術上の基準を市町村条例で定めること(消防法第9条の4)は、試験科目「危険物に関する法令」(危険物の規制に関する規則第55条)の範囲に入る論点で、甲種・乙種・丙種に共通です。「都道府県の条例」「消防庁長官の告示」「規制を受けない」といった言い換えの肢が誤りになります。
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 指定数量未満の危険物の技術上の基準は、都道府県の条例で定める | 誤り | 市町村条例(法第9条の4) |
| 指定数量未満の危険物は、どの法令の規制も受けない | 誤り | 市町村条例の規制を受ける。運搬の基準(法第16条)も量にかかわらずかかる |
| 品名の違う危険物は、それぞれの倍数が1未満なら合算しない | 誤り | 合算する(法第10条第2項) |
ぴよパスのオリジナル予想問題で確かめられます。
出典
- 消防法 第9条の4・第10条・第13条・第16条(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)
- 危険物の規制に関する政令 別表第三(同・2026年4月4日施行の版)
- 危険物の規制に関する規則 第55条(同・2026年6月30日施行の版)
- 総務省消防庁「○○市(町・村)火災予防条例(例)」第30条・第31条〜第31条の9・第32条・第33条・第46条・第49条(消防庁の法令のページに掲載の令和8年1月1日施行の版。2026年10月19日に確認)
- 東京都火災予防条例 第1条・第31条・第31条の2・第32条・第58条、同施行規則 第5条・別表第1・別表第2(東京都例規集。2026年10月19日に確認)
当サイトの問題は危険物取扱者試験の問題ではありません。法令をもとに独自に作った練習問題です。消防試験研究センターとは関係ありません。










