消火器の設置基準は、どの建物に置くかが消防法施行令第10条、どれだけ・どこに置くかが消防法施行規則第6条〜第9条で決まっています。劇場や地下街は延べ面積にかかわらず、火を使わない飲食店・物品販売店・共同住宅などは延べ150m²以上、学校・図書館・事務所などは延べ300m²以上で設置義務が生じます。置く量は「延べ面積 ÷ 算定基準面積」で出す能力単位の合計で決まり、各階のどこからでも歩行距離20m以内に1つ届くように並べます。
消火器の設置基準は、消防設備士乙種第6類の試験科目「消防関係法令」(消防法施行規則第33条の10)の範囲に入る論点です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法施行令は2025年10月1日施行、消防法施行規則は2026年6月26日施行の版)で条文を確かめて書いています。
消火器の設置基準を1枚で
| 項目 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 置く建物 | 用途ごとに「面積にかかわらず」「延べ150m²以上」「延べ300m²以上」 | 消防法施行令第10条第1項第1号〜第3号 |
| 上の用途以外でも置く場所 | 少量危険物・指定可燃物を扱う建物、地階・無窓階・3階以上の階で床面積50m²以上の階 | 同項第4号・第5号 |
| 置く量 | 能力単位の合計 ≧ 延べ面積(床面積)÷ 算定基準面積(50・100・200m²) | 消防法施行規則第6条第1項 |
| 耐火構造+難燃材料の内装 | 算定基準面積を2倍として計算する | 同条第2項 |
| 配置 | 各階の各部分から歩行距離20m以下 | 同条第6項 |
| 大型消火器 | 指定可燃物を500倍以上扱う場所に、歩行距離30m以下 | 規則第7条第1項 |
| 高さ・標識 | 床面から1.5m以下、「消火器」の標識 | 規則第9条第1号・第4号 |
設置義務のある建物の早見表
消防法施行令第10条第1項は、建物の用途を別表第一の「項」で指定しています。用途ごとに、設置が必要になる面積と、本数の計算に使う算定基準面積(消防法施行規則第6条第1項)を並べると次のとおりです。
| 用途(令別表第一の項) | 設置が必要になる面積 | 算定基準面積 |
|---|---|---|
| 劇場・映画館・演芸場・観覧場((一)項イ) | 面積にかかわらず | 50m² |
| キャバレー・遊技場・ダンスホール・カラオケボックスなど((二)項) | 面積にかかわらず | 50m² |
| 地下街((十六の二)項)・準地下街((十六の三)項) | 面積にかかわらず | 50m² |
| 重要文化財などの建造物((十七)項) | 面積にかかわらず | 50m² |
| 入院施設のある病院・有床診療所・入所施設のある助産所((六)項イ(1)〜(3)) | 面積にかかわらず | 100m² |
| 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・乳児院など((六)項ロ) | 面積にかかわらず | 100m² |
| 飲食店・料理店など((三)項)で、火を使用する設備・器具があるもの | 面積にかかわらず | 100m² |
| 飲食店・料理店など((三)項)で、上に当たらないもの | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 公会堂・集会場((一)項ロ) | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 物品販売店・展示場((四)項) | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 旅館・ホテル、寄宿舎・共同住宅((五)項) | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 入院施設のない診療所・助産所((六)項イ(4))、老人デイサービス・保育所など((六)項ハ)、幼稚園・特別支援学校((六)項ニ) | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 公衆浴場((九)項) | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 工場・作業場・スタジオ((十二)項) | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 自動車車庫・駐車場・格納庫((十三)項) | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 倉庫((十四)項) | 延べ150m²以上 | 100m² |
| 学校((七)項)・図書館・博物館((八)項) | 延べ300m²以上 | 200m² |
| 駅・空港などの旅客の建物((十)項)・神社・寺院・教会((十一)項) | 延べ300m²以上 | 200m² |
| 上のどれにも当たらない事業場(事務所など。(十五)項) | 延べ300m²以上 | 200m² |
覚えるときは、面積の線(なし・150・300)と算定基準面積(50・100・200)がほぼ対応していることを使うと整理しやすくなります。ずれるのは、面積にかかわらず必要なのに算定基準面積が100m²になる(三)項(火気のある飲食店)と(六)項イ(1)〜(3)・ロです。
進む 飲食店の「火を使用する設備又は器具」からは、調理油過熱防止装置・自動消火装置などを設けたものが除かれます(令第10条第1項第1号ロ、規則第5条の4)。複合用途の建物((十六)項)は、用途ごとの部分をそれぞれの項の建物とみなして判定します(令第9条)。
用途にかかわらず置く場所 — 少量危険物と地階・無窓階・3階以上
上の表に当たらない建物でも、次の場合は消火器具が要ります。
- 少量危険物(指定数量の5分の1以上・指定数量未満の危険物)や指定可燃物を貯蔵・取り扱う別表第一の建築物その他の工作物(令第10条第1項第4号)
- 地階・無窓階・3階以上の階で、床面積が50m²以上のもの(同項第5号)
少量危険物の量の線(ガソリン40L・灯油200Lなど)は 少量危険物とは にまとめています。
能力単位の計算 — 本数ではなく合計の数値で決まる
置く量は、消火器の能力単位の合計で決まります。能力単位は、規則第6条第1項が引く消火器の技術上の規格を定める省令(第3条・第4条)の方法で測った数値で、消火器のラベルの「A-3」「B-7」のような表示の数字です。
必要な能力単位 = 延べ面積(または床面積)÷ 算定基準面積(消防法施行規則第6条第1項)
この数以上になるように、適応する消火器具を設けます。主要構造部(特定主要構造部)を耐火構造とし、壁と天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料にした建物は、表の算定基準面積を2倍にして計算します(同条第2項)。
| 例 | 計算 | 必要な能力単位 |
|---|---|---|
| 飲食店((三)項ロ)・延べ300m² | 300 ÷ 100 | 3以上 |
| 同じ飲食店で、耐火構造+難燃材料の内装 | 300 ÷ 200 | 1.5以上 |
| 事務所((十五)項)・延べ600m² | 600 ÷ 200 | 3以上 |
| 物品販売店((四)項)・延べ450m² | 450 ÷ 100 | 4.5以上 |
計算で出るのは「この数値以上」という下限です。たとえばA-3の消火器1本で3単位を満たしても、建物が広ければ、次の歩行距離20mの条件を満たすためにさらに本数が要ることがあります。
付加して置くもの — 危険物・電気設備・多量の火気
床面積から出す分に加えて、場所に応じた消火器具を足します(消防法施行規則第6条第3項〜第5項)。
| 場所 | 足す量 | 根拠 |
|---|---|---|
| 少量危険物を貯蔵・取り扱う | 数量 ÷ 指定数量 以上の能力単位(危険物に適応するもの) | 規則第6条第3項 |
| 指定可燃物を貯蔵・取り扱う | 数量 ÷(政令の数量の50倍)以上の能力単位 | 同上 |
| 変圧器・配電盤などの電気設備がある | 電気設備のある場所の床面積100m²以下ごとに、電気設備に適応する消火器を1個 | 規則第6条第4項 |
| 鍛造場・ボイラー室・乾燥室など多量の火気を使う | その場所の床面積 ÷ 25m² 以上の能力単位 | 規則第6条第5項 |
| 指定可燃物を政令の数量の500倍以上扱う | 大型消火器を歩行距離30m以下ごとに | 規則第7条第1項 |
規則第6条第3項〜第5項の付加のうち、電気設備だけは「能力単位」ではなく個数(100m²以下ごとに1個)で決まります。
延べ150m²未満で火を使う設備・器具のある飲食店(規則の言葉で「小規模特定飲食店等」)には、多量の火気を使う場所の付加は原則としてかかりません。少量危険物・指定可燃物を扱う場合と、地階・無窓階・3階以上の階で床面積50m²以上の階がある場合は除きます(規則第6条第5項ただし書)。
置き方の基準 — 歩行距離・高さ・標識・転倒防止
| 項目 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 歩行距離 | 防火対象物の階ごとに、各部分から1つの消火器具まで20m以下 | 規則第6条第6項 |
| 大型消火器の歩行距離 | 30m以下 | 規則第7条第1項 |
| 高さ | 床面から1.5m以下の箇所 | 規則第9条第1号 |
| 置く場所 | 凍結・変質・噴出のおそれが少ない箇所。通行や避難に支障がなく、すぐ持ち出せる箇所 | 規則第9条第2号、令第10条第2項第2号 |
| 転倒防止 | 地震などで倒れないような措置(粉末消火器など、倒れても漏れないものは不要) | 規則第9条第3号 |
| 標識 | 消火器は「消火器」、水バケツは「消火バケツ」、水槽は「消火水槽」、乾燥砂は「消火砂」 | 規則第9条第4号 |
歩行距離は、壁や家具を避けて実際に歩く道のりで測る距離です。半径20mの円で考えると、間仕切りの多い階で足りなくなることがあります。
減らせる場合と置けない消火器
- 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備を技術上の基準に従って設けた部分は、適応性が同じなら、その有効範囲内で、規則第6条第1項〜第5項で出した能力単位の合計から3分の1を限度として減らせます(減らした後も元の3分の2以上が要る。規則第8条第1項)
- 水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の消火設備で減らせるのは、付加分(規則第6条第3項〜第5項)の能力単位だけで、限度は同じく3分の1です(規則第8条第2項)。床面積から出す分(同条第1項)は減りません
- この2つの減少は、11階以上の部分に置く消火器具には適用しません(規則第8条第4項)
- 大型消火器を設けた部分は、適応性が同じなら、大型消火器の有効範囲内で、規則第6条で出した能力単位の合計から2分の1を限度として減らせます(規則第7条第2項)
- 能力単位の合計が2以上になる場合、水バケツや乾燥砂などの簡易消火用具の能力単位は、消火器の能力単位の合計の2分の1を超えてはなりません(規則第6条第7項。アルカリ金属の過酸化物や禁水性物品などに乾燥砂などを設けるときは除く)
- 二酸化炭素やハロゲン化物を放射する消火器は、地下街・準地下街と、換気に有効な開口部が床面積の30分の1以下で床面積20m²以下の地階・無窓階・居室には置けません。ただし、ハロゲン化物のうちブロモトリフルオロメタン(ハロン1301)を放射する消火器は除かれます(令第10条第2項第1号ただし書、規則第11条)
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 事務所は延べ面積150m²以上で消火器の設置義務が生じる | 誤り | (十五)項は延べ300m²以上(令第10条第1項第3号) |
| 地下街は延べ面積にかかわらず消火器が必要 | 正しい | 令第10条第1項第1号イ |
| 能力単位の合計は、延べ面積を算定基準面積で割った数以上にする | 正しい | 規則第6条第1項 |
| 耐火構造で内装を難燃材料にすると、算定基準面積は2分の1になる | 誤り | 2倍になる(必要な能力単位は少なくなる)(規則第6条第2項) |
| 消火器は、各階の各部分から歩行距離30m以下に置く | 誤り | 大型消火器以外は20m以下(規則第6条第6項) |
| 電気設備のある場所には、床面積100m²以下ごとに消火器を1個足す | 正しい | 規則第6条第4項 |
| スプリンクラー設備を設けた部分は、11階以上の部分でも、能力単位の合計から3分の1を限度として減らせる | 誤り | 11階以上の部分には適用しない(規則第8条第4項) |
| 屋内消火栓設備を設けた部分では、能力単位の合計を元の3分の1にまで減らせる | 誤り | 減らせるのは3分の1が限度で、元の3分の2以上は残る(規則第8条第1項) |
ぴよパスのオリジナル予想問題で確かめられます。
- 乙6:延べ面積にかかわらず消火器具が必要な建物を問う1問
- 乙6:耐火構造の建物の算定基準面積を問う1問
- 乙6:工場に消火器具が必要になる延べ面積を問う1問
- 乙6:飲食店の床面積から能力単位を計算する1問
- 乙6 法令の練習問題・乙6 鑑別の練習問題
消火器の見分け方と鑑別での数値の書き方は 消防設備士乙6 鑑別対策 に、点検と報告の周期は 消防設備士乙6 消火器の点検と報告 にまとめています。
出典
- 消防法施行令 第9条・第10条・別表第一・別表第二(e-Gov法令検索・2025年10月1日施行の版)
- 消防法施行規則 第5条の4・第6条〜第9条・第11条・第33条の10(同・2026年6月26日施行の版)
- 消火器の技術上の規格を定める省令 第3条・第4条(規則第6条第1項が能力単位の測り方として引く省令)
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