消火器の使用期限は、法令で「何年」と決まっているものではありません。法令が決めているのは、メーカーが設計上設定した標準的な使用期間または期限を、本体に表示することです(消火器の技術上の規格を定める省令第38条第1項第19号ハ)。業務用の消火器ではおおむね10年、住宅用消火器ではおおむね5年が目安として案内されています。
もう一つの「10年」は、消防庁の点検要領にあります。製造年から10年を経過した消火器は、本体容器に水圧をかける耐圧性能の点検の対象になります。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版と、消防庁の「消防用設備等の点検要領」の「第1 消火器具」(2010年12月22日付け消防予第557号で改められたもの)をもとに書いています。この年数は、消防設備士乙種6類の構造・機能と実技(鑑別)で学ぶ論点です。
消火器の年数を1枚で
| 年数・時期 | 何が決まっているか | 根拠 |
|---|---|---|
| 設計標準使用期限 | メーカーが設定して本体に表示(業務用はおおむね10年が目安) | 規格省令第38条第1項第19号ハ |
| 住宅用の使用期間・使用期限 | 本体に表示(おおむね5年が目安)。消火剤は再充てんできない | 規格省令第44条第14号ロ・ハ |
| 製造年 | 本体の表示事項 | 規格省令第38条第1項第11号 |
| 6か月ごと | 消火器具の機器点検 | 平成16年消防庁告示第9号(東京消防庁の案内による) |
| 製造年から3年 | 加圧式の消火器の内部及び機能の点検(化学泡消火器は設置後1年) | 点検要領 第1 消火器具 |
| 製造年から5年 | 蓄圧式の消火器の内部及び機能の点検 | 同 |
| 製造年から10年 | 耐圧性能の点検(実施後3年を経過していないものは除く) | 同 |
| 1年に1回・3年に1回 | 点検結果の消防長・消防署長への報告(特定防火対象物は1年、それ以外は3年) | 消防法施行規則第31条の6第3項 |
内部及び機能の点検と耐圧性能の点検は、どちらも二酸化炭素消火器とハロゲン化物消火器を除いた消火器が対象です。
「使用期限」は年数ではなく表示の義務
規格省令第38条第1項は、消火器の本体に表示しなければならない事項を並べています。消火器の区別(粉末・強化液など)、加圧式か蓄圧式か、能力単位、製造年、製造者名などに加えて、第19号の「取扱い上の注意事項」のハに、標準的な使用条件の下で安全上支障なく使える標準的な期間または期限として設計上設定されるものが入っています。これが一般に設計標準使用期限と呼ばれるものです。
住宅用消火器は第44条で表示事項が別に決まっていて、第14号のロに使用期間または使用期限、ハに消火剤の再充てんができない旨があります。どちらも年数そのものは規格省令に書かれていません。長崎市の案内(2024年11月11日更新)は、業務用は「おおむね10年」、住宅用は「おおむね5年」としています。
本体の表示には、廃棄するときの連絡先と安全な取扱いも入っています(第38条第1項第19号ト)。期限を過ぎた消火器をどこへ出すかは、まず本体の表示を見ます。
製造から10年で耐圧性能の点検が要る
点検要領の「第1 消火器具」は、製造年から10年を経過したものと、外形の点検で本体容器に腐食等が認められたものについて、耐圧性能の点検を行うとしています。ただし、この点検を実施してから3年を経過していないものは除かれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 製造年から10年を経過したもの、外形の点検で本体容器に腐食等が認められたもの |
| 除かれるもの | 耐圧性能の点検を実施してから3年を経過していないもの、二酸化炭素消火器、ハロゲン化物消火器 |
| 方法 | 本体容器とキャップに、本体容器に表示された耐圧試験圧力値まで水圧をかける |
| 判定 | 変形、損傷または漏水等がないこと |
製造年から10年を経過したもの(本体容器に腐食等が認められたものを除く)の耐圧性能の点検は、2014年3月31日までは抜取り方式で行うことができましたが、2014年4月1日以降は抜取りができず、製造年から10年を経過したものすべてに実施する必要があると、消防庁は2010年の通知で示しています。設計標準使用期限が10年前後の業務用消火器では、点検と交換のどちらを選ぶかを考える時期が重なります。
内部及び機能の点検は3年・5年
消火器を分解して中を見る内部及び機能の点検は、加圧式と蓄圧式で始まる時期が違います。
| 消火器 | 内部及び機能の点検の対象 | 抜取り方式 |
|---|---|---|
| 加圧式(化学泡消火器を除く) | 製造年から3年を経過したもの | 加圧式の粉末消火器は可 |
| 化学泡消火器 | 設置後1年を経過したもの | — |
| 蓄圧式 | 製造年から5年を経過したもの | 可 |
外形の点検で安全栓や安全栓の封、緊結部等に異常が認められたものは、年数にかかわらず内部及び機能の点検の対象になります(使用済みの表示装置があり、それが脱落していないもの、または作動していないものを除く)。抜取り方式は、外形の点検で安全栓などに異常がなかったものに限って使えます。
期限が切れた消火器と旧規格品
設計標準使用期限を過ぎたことだけを理由に、法令で直ちに使用が禁じられるわけではありません。ただし、自治体の案内でも、使用期限を過ぎた消火器は速やかに取り替えるよう呼びかけられています(長崎市「消火器の廃棄方法」)。
もう一つの期限が旧規格の消火器です。2011年1月1日施行の規格省令の改正の前の規格で型式承認を受けた消火器は、特例で一定期間は旧規格に適合していればよいとされていました。その期間は2011年1月1日から起算して11年で(特例を定める省令)、2021年12月31日に終わっています。消火器の設置義務がある防火対象物に、いまも旧規格の消火器が置かれていれば、交換が要ります。
点検と報告はだれがするか
消火器を置いた防火対象物の関係者は、点検を行い、その結果を報告しなければなりません(消防法第17条の3の3)。報告の間隔は、飲食店・物品販売店舗・病院などの特定防火対象物が1年に1回、共同住宅・事務所などそれ以外が3年に1回です(消防法施行規則第31条の6第3項)。
延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物などは、消防設備士か消防設備点検資格者に点検させなければなりません(消防法施行令第36条第2項)。それ以外の防火対象物では、関係者が自ら点検することもできます。資格ごとの範囲は 消防設備点検資格者と消防設備士の違い に、報告の流れは 消防設備士乙6の点検と報告 にまとめています。どの建物に消火器を置く義務があるかは 消火器の設置基準 で整理しています。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 消火器の使用期限は、法令で10年と決まっている | 誤り | 年数はメーカーが設定し、表示が義務(規格省令第38条第1項第19号ハ) |
| 製造年から10年を経過した消火器は、耐圧性能の点検の対象になる | 正しい | 点検要領 第1 消火器具(実施後3年以内のものなどを除く) |
| 蓄圧式の消火器の内部及び機能の点検は、製造年から3年で始まる | 誤り | 蓄圧式は5年(3年は加圧式) |
| 住宅用消火器は、消火剤を詰め替えて使い続ける | 誤り | 再充てんできない旨の表示が義務(規格省令第44条第14号ハ) |
| 耐圧性能の点検では、本体容器に空気で圧力をかける | 誤り | 水圧をかけて変形・損傷・漏水を見る |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、乙6 の点検と表示の論点を確かめられます。
出典
- 消火器の技術上の規格を定める省令 第1条の2・第38条・第44条(e-Gov法令検索・2019年7月1日施行の版)
- 消火器の技術上の規格を定める省令の一部を改正する省令(平成22年総務省令第111号)の施行に伴う消防法施行令第三十条第二項及び危険物の規制に関する政令第二十二条第二項の技術上の基準に関する特例を定める省令(平成22年総務省令第112号。e-Gov法令検索)
- 消防法 第17条の3の3(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)、消防法施行令 第36条(同・2025年10月1日施行の版)、消防法施行規則 第31条の6(同・2026年6月26日施行の版)
- 消防庁予防課長通知「消防用設備等の点検要領の一部改正について」(平成22年12月22日付け消防予第557号)と別添「第1 消火器具」(その後の2016年・2017年・2019年・2024年・2026年の改正通知は、ほかの章を改めたもので、第1 消火器具は改めていないことを確かめた)
- 東京消防庁「消防用設備等点検報告制度」(機器点検の期間。平成16年消防庁告示第9号を参照)
- 長崎市「消火器の廃棄方法」(2024年11月11日更新)
当サイトの問題は消防設備士試験の問題ではありません。法令をもとに独自に作った練習問題です。消防試験研究センターとは関係ありません。










