取付け基準は「ヘッドの周りをどれだけ空けるか」に集約される
甲種1類の構造・機能・工事・整備20問で、水平距離や水源水量を覚えたのに落とすのがスプリンクラーヘッドの取付けです。出てくる数字が 0.15・0.3・0.4・0.45・0.9・1.2・1.8・2.5 と多く、どれがどの部材の話なのか結び付かないまま丸暗記になりがちです。
整理すると、この数字は3つの役割にしか使われていません。
- ヘッド自体をどこに付けるか (取付け面からの距離)
- ヘッドの周りに何を置いてはいけないか (散水の妨げ)
- ヘッドを追加しなければならない境目 (区画とみなす条件)
役割で束ねると、覚える組が一気に減ります。
標準型ヘッドの取付け寸法
消防法施行規則第13条の2第4項第1号が定める寸法です。
| 項目 | 数値 | 役割 |
|---|---|---|
| デフレクターと取付け面との距離 | 0.3m以下 | ヘッドの位置 |
| ヘッドの軸心 | 取付け面に対して直角 | ヘッドの向き |
| デフレクター周りに確保する空間 | 下方0.45m以内 かつ 水平方向0.3m以内には何も設けられ、置かれていないこと (易燃性の可燃物を収納する部分は下方0.9m) | 散水の妨げ |
| 開口部に設けるヘッド | 上枠より0.15m以内の高さの壁面 | ヘッドの位置 |
🔴 「下方0.45m」と「水平0.3m」は別々の禁止ではありません。 条文は「下方〇・四五メートル…以内で、かつ、水平方向〇・三メートル以内には、何も設けられ、又は置かれていないこと」と書いています。禁止されるのは両方を同時に満たす範囲、つまりデフレクターを中心とした半径0.3m・下方0.45mの円柱状の空間だけです。
この読み違いは実際の判定を変えます。デフレクターの真下2mにある物は、水平0.2mしかずれていなくても条文上は適法です (下方0.45mを超えているため)。逆に0.4m下にあっても水平に3m離れていれば適法です。「下方0.45m以内には何も置けない」と覚えていると、どちらも違反と判定してしまいます。
📌 易燃性の可燃物では下方だけが0.45→0.9に倍になります。水平方向の0.3は変わりません。「両方2倍」と覚えると外します。
📌 0.3が2回出てきますが別物です。 ひとつはデフレクターと天井の距離 (ヘッドをどこに付けるか)、もうひとつは円柱の半径 (何を置かないか)。問題文が「取付け面との距離」と言っているか「何も設けられていないこと」と言っているかで読み分けます。
⚠️ 乾式・予作動式の流水検知装置の二次側に設けるヘッドは、デフレクターが取付け部より上方になる向き (上向き型) で使います。二次側の配管が空 (乾式) または空気加圧されているため、放水前に配管内へ残った水が凍結・滞留するのを避けるためです。凍結するおそれのない場所では適用されません。
ヘッドを追加しなければならない3つの条件
「水平距離を満たしていればそれでよい」わけではありません。次のいずれかに当たると、追加のヘッドが必要になります。
| 条件 | 判定 | 根拠 |
|---|---|---|
| はり等 | 取付け面から0.4m以上突き出したはり等で区画された部分ごとに設ける | 規則第13条の2第4項第1号イ |
| └ 例外 | はり等の相互間の中心距離が1.8m以下なら区画とみなさない | 同 (ただし書) |
| ダクト等 | 給排気用ダクト・棚等で幅または奥行が1.2mを超えるものは、その下面にも設ける | 同 ロ |
| 開口部 | 上枠に、その長さ2.5m以下ごとに1個設ける | 令第12条第2項第3号 |
「0.4で区切られ、1.8で許され、1.2で下に増え、2.5で並べる」という順で、はり→ダクト→開口部と部材が変わります。数字を単独で覚えず、部材とセットにしてください。
🔴 1.8mの免除が効くのは標準型ヘッドだけです。 ここはヘッドの種別で扱いが3つに分かれます。
| ヘッド | はり等の扱い |
|---|---|
| 標準型 | 0.4m以上突出で区画ごとに設ける。中心距離1.8m以下なら免除される |
| 小区画型 | 0.4m以上突出で区画ごとに設ける。1.8mの免除は適用されない |
| 側壁型 | はりの規定そのものが適用されない |
根拠は準用の書き方にあります。規則第13条の3第2項は小区画型について「前条第四項第一号 (イただし書及びトを除く。) の規定の例による」と書いており、イ本文 (区画ごとに設ける) は生きたまま、ただし書 (1.8mの免除) だけを外しています。同条第3項は側壁型について「(イ及びハを除く。)」としており、イごと外れます。
括弧の中が「イただし書」か「イ」かで結論が反転するので、条文を引くときはここだけ必ず見てください。
⚠️ ダクトは「幅または奥行」で、どちらか一方が1.2mを超えれば対象です。「幅かつ奥行」と読むと、細長いダクトを取りこぼします。
⚠️ 開口部のヘッドは省略できる場合があります。 10階以下の部分にある開口部で、建築基準法第2条第9号の2ロの防火設備 (防火戸等) が設けられているものは不要です。また10階以下の部分では、そもそも延焼のおそれのある部分にある開口部に限られます。11階以上ではこの限定がありません。
小区画型・側壁型は寸法が別に決まる
令別表第一(五)項 (旅館・ホテル・宿泊所・寄宿舎・下宿・共同住宅) や(六)項 (病院・診療所・助産所・社会福祉施設・幼稚園・特別支援学校) では、標準型に代えて小区画型ヘッド・側壁型ヘッドを設けることができます (規則第13条の3第1項)。どちらも感度種別が一種のものに限られます。
🔴 ただし「(五)項・(六)項なら必ず選べる」ではありません。 規則第13条の3第1項が対象にしているのは「令第12条第2項第2号イの表の上欄に掲げる防火対象物又はその部分」で、その上欄は同号イ本文により 令第12条第1項の第1号・第5号〜第7号・第9号が除かれています。
つまり 自力避難が困難な人が入る福祉施設・病院 (令第12条第1項第1号) は、そもそも第13条の3の対象外です。この用途は規則第13条の5第1項の表が種別そのものを指定します。
| その部分 | 使えるヘッド |
|---|---|
| 天井高3m未満・基準面積1,000㎡未満 | 小区画型 |
| 天井高3m未満・基準面積1,000㎡以上 | 小区画型 または 標準型 |
| 天井高3m以上10m以下・基準面積1,000㎡未満 | 小区画型 または 開放型 |
| 天井高3m以上10m以下・基準面積1,000㎡以上 | 小区画型・標準型 または 開放型 |
| 天井高10m超 | 放水型ヘッド等 |
同じ「小区画型を使う」でも、(五)項の共同住宅は選択、(六)項の福祉施設は指定という違いがあります。ここを取り違えると「設けることができる」「設けなければならない」の言い回しで引っかかります。
以下は規則第13条の3が適用される場面 (上の除外に当たらない (五)項・(六)項) の寸法です。
| 小区画型ヘッド | 側壁型ヘッド | |
|---|---|---|
| 設ける部分 (規則第13条の3) | 宿泊室・病室その他これらに類する部分 (第2項第1号) | 宿泊室等 + 廊下・通路 (第3項第1号) |
| 取り付ける面 | 天井の室内に面する部分 | 壁の室内に面する部分 |
| 防護の範囲 | 水平距離2.6m以下 かつ 防護面積13㎡以下 | 両側それぞれ1.8m以内 かつ 前方3.6m以内 |
| 取付け面からの距離 | (標準型の例による) | ヘッドは取付け面から0.15m以内 |
| デフレクターの位置 | (標準型の例による = 取付け面から0.3m以下) | 天井面から0.15m以内 |
| 何も置かない範囲 | 下方0.45m かつ 水平0.3m 以内 | 下方0.45m かつ 水平0.45m 以内 |
📌 側壁型は通常の設置で0.15mが2回出ます。 壁に付けるヘッドなので、取付け面からの出っ張り (0.15m以内) と天井面からの下がり (0.15m以内) の両方を押さえます。
⚠️ ただし「0.15m=側壁型」と単純化すると落とします。 標準型にも0.15mはあり、規則第13条の2第4項第1号ヘが「開口部に設けるスプリンクラーヘッドは、当該開口部の上枠より0.15m以内の高さの壁面に設けること」と定めています。標準型の0.15mは開口部限定、側壁型の0.15mは常時、と場面で区別してください。
📌 水平方向に空ける範囲は標準型0.3m・側壁型0.45mで違います。側壁型は横方向へ飛ばす設計なので、手前を広く空けます。ここは条文が別なので、標準型の数値を当てはめると誤りになります。
🔴 「小区画型は宿泊室等のみ」も無条件ではありません。 宿泊室等に限っているのは規則第13条の3第2項第1号ですが、規則第13条の5第2項がこの第1号を明文で外しています。
条文はこうです ——「令第12条第1項第1号及び第9号に掲げる防火対象物又はその部分には、… 小区画型ヘッドにあつては第十三条の三第二項(第一号を除く。)の例により…設けなければならない」。
第1号・第9号は自力避難が困難な人が入る福祉施設・病院と、地下街のうちその用途の部分です。ここでは宿泊室等の限定が外れ、廊下を含めて小区画型を設けます。逃げ遅れが直結する用途なので、居室だけ守れば足りるという設計にしていない、という理屈です。
📌 判定の順序は「まず令第12条第1項第1号・第9号か」を見る、です。当たれば規則第13条の5 (種別は指定・宿泊室等の限定なし)、当たらなければ規則第13条の3 (種別は選択・小区画型=宿泊室等 / 側壁型=宿泊室等+廊下・通路) で処理します。準用の括弧書きが1つ違うだけで結論が変わるので、条文を引くときは括弧の中を必ず読んでください。
各ヘッドの放水量・水源水量の係数は甲1の計算対策、水平距離Rと有効散水半径の関係は語呂合わせにまとめています。
標示温度は最高周囲温度で4段
閉鎖型ヘッドは、取り付ける場所の正常時における最高周囲温度に応じた標示温度のものを選びます (規則第14条第1項第7号)。
| 取り付ける場所の最高周囲温度 | 標示温度 |
|---|---|
| 39℃未満 | 79℃未満 |
| 39℃以上64℃未満 | 79℃以上121℃未満 |
| 64℃以上106℃未満 | 121℃以上162℃未満 |
| 106℃以上 | 162℃以上 |
覚え方は左右の対応です。周囲温度の境目が 39・64・106、標示温度の境目が 79・121・162。 前の段の上限が次の段の下限になっているので、区切りの数字を3つずつ覚えれば表が復元できます。
📌 周囲温度が上がると標示温度も上がる方向です。厨房やボイラー室のように普段から暑い場所に低い標示温度のヘッドを付けると、火災でないのに作動してしまうためです。「暑い場所ほど鈍いヘッド」と意味で押さえると、逆に並べる誤りを防げます。
⚠️ これは閉鎖型ヘッドの規定です。 開放型ヘッドには感熱体が無いので標示温度そのものがありません。開放型は一斉開放弁または手動式開放弁で放水区域ごとに開きます。
図で問われる場所ほど手で解く
取付け基準は鑑別と製図の両方で出ます。断面の図に「この位置は適切か」と問う形が多く、数値を覚えていても図と結び付かないと答えられません。
消防設備士甲種1類の練習問題は全126問を無料で公開していて、構造・機能・工事・整備に取付け基準の問題がまとまっています。数値は問題文の中で完結しているので、この記事の表を閉じたまま解けます。
設置義務そのもの (どの建物にスプリンクラーが要るか) は設置基準、実技での問われ方は鑑別対策と製図対策にまとめています。
出典: 消防法施行規則 第13条の2・第13条の3・第14条 (e-Gov) / 消防法施行令 第12条 (e-Gov)
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