甲1の水理計算では、何の量を求めるのかを決めてから、設備と種別に合う値を選びます。たとえば屋内1号消火栓の放水量は130L/min以上ですが、ポンプの吐出量を計算するときの値は1個につき150L/min以上です。同じ単位でも、使う場面が違います。
ここでは通常の屋内・屋外消火栓と、閉鎖型スプリンクラーを中心に整理します。放水型ヘッドや特定施設水道連結型などは別条件です。表を設備全体へ一律に当てはめず、問題文の条件を先に確認してください。
水源水量とポンプ吐出量を分ける
| 求めるもの | 意味 | 計算結果の単位 |
|---|---|---|
| 水源水量 | 必要な水の量 | m³またはL |
| ポンプ吐出量 | ポンプが単位時間に送り出す量 | L/min |
| 全揚程 | 損失・高さ・必要な圧力に対応する水頭の合計 | m |
水源水量に使う係数と、ポンプ吐出量に使う係数を並べると違いが分かります。いずれも通常の消火栓設備の算定値です。
| 設備 | 水源水量の係数 | ポンプ吐出量の係数 |
|---|---|---|
| 屋内1号消火栓 | 1個につき2.6m³ | 1個につき150L/min |
| 屋内2号消火栓 | 1個につき1.2m³ | 1個につき70L/min |
| 広範囲型2号消火栓 | 1個につき1.6m³ | 1個につき90L/min |
| 屋外消火栓 | 1個につき7m³ | 1個につき400L/min |
水源水量は消防法施行令第11条第3項・第19条第3項、ポンプ吐出量は消防法施行規則第12条・第22条に規定されています。1m³=1,000Lなので、2.6m³は2,600Lです。
1号の放水量130L/minと水源の係数2,600Lには、130×20分=2,600という関係があります。ただし、すべての水系設備が20分で計算できるわけではありません。覚える補助として使い、該当する規定の係数を確認してください。
設置個数をそのまま掛けない
屋内消火栓では、設置個数が最も多い階の個数を使い、2を超えるときは2として算定します。屋外消火栓は設置個数を使い、こちらも2を超えるときは2です。
「2」は設置できる上限ではありません。算定に使う個数の上限です。屋内の各階にある消火栓を全部足したり、最多階に3個あるからそのまま3倍したりすると、水源水量や吐出量の計算を取り違えます。
例題:屋内2号消火栓が最も多い階に4個ある場合、水源水量はいくら以上必要か。
最多階は4個ですが、算定には2個を使います。
1.2m³/個 × 2個 = 2.4m³以上
次は種別を変えて、1号消火栓の水源水量を求める練習問題 を解いてみてください。
全揚程は、損失・高さ・種別の定数を足す
ポンプ方式の通常の屋内・屋外消火栓では、次の形で全揚程を求めます。
全揚程の下限=ホースの摩擦損失水頭+配管の摩擦損失水頭+落差+種別ごとの定数
| 消火栓の種別 | 式で加える定数 |
|---|---|
| 屋内1号・広範囲型2号 | 17m |
| 屋内2号 | 25m |
| 屋外 | 25m |
広範囲型2号は名前に「2号」が入りますが、この定数は1号と同じ17mです。規則第12条第3項の適用関係を確認してください。
この17m・25mは法令に書かれた式の定数として使います。「MPaの数字を100倍すれば厳密にmへ換算できる」と覚えると、物理的な換算と法定式を混同します。
例題:屋内2号消火栓のポンプ方式で、ホース損失10m、配管損失6m、落差9mのとき、必要な全揚程は。
10m + 6m + 9m + 25m = 50m以上
式へ入れる前に、全項がmで与えられていることを確認します。次は 1号消火栓の全揚程を計算する練習問題 で、定数を選び直してみてください。
ポンプ吐出量は放水量で代用しない
例題:屋内2号消火栓が最も多い階に3個ある場合、ポンプ吐出量の下限は。
算定個数は2個です。ポンプの係数70L/minを使います。
70L/min/個 × 2個 = 140L/min以上
放水量の60L/minを使う計算ではありません。1号消火栓ではポンプの係数が変わります。1号のポンプ吐出量を求める練習問題 で確認してください。
なお、規則第12条第1項第7号ハ(ハ)の「定格吐出量の150%における全揚程が定格全揚程の65%以上」は、ポンプの性能条件です。設備に必要な吐出量を求める式や、運転範囲の上限を示す値とは分けて読みます。
スプリンクラーではヘッド・方式・算定個数を確認
閉鎖型スプリンクラーは、消火栓と同じ「上限2個」を使いません。水源水量は規則第13条の6第1項の区分から個数を選びます。ポンプ吐出量は、規則第14条第1項第11号ハ(イ)が参照する第13条の6第2項の個数を使います。
| 閉鎖型ヘッドの区分 | 水源水量の係数 | ポンプ吐出量の係数 |
|---|---|---|
| 標準型(ラック式倉庫を除く) | 1個につき1.6m³ | 1個につき90L/min |
| 小区画型 | 1個につき1m³ | 1個につき60L/min |
| 側壁型 | 1個につき1.6m³ | 1個につき90L/min |
| ラック式倉庫 | 条件により1個につき2.28m³または3.42m³ | 1個につき130L/min |
ラック式は、等級Ⅲ・Ⅳで規則第13条の5第5項第4号に従って水平遮蔽板を設けたものが2.28m³、それ以外が3.42m³です。114L/minとの関係では20分相当と30分相当があり、「全部20分」とはまとめられません。
標準型・側壁型で乾式または予作動式の流水検知装置がある場合は、まず表の個数に1.5を乗じ、その値と実際の設置個数の少ない方を使います。設置個数そのものを必ず1.5倍する規定ではありません。この乗数を、小区画型を含む全方式へ広げないでください。
通常のスプリンクラーのポンプ全揚程は、配管損失水頭+落差+10mです。消火栓のホース損失を加える式とは項が違います。補助散水栓を設ける場合は、規則第14条第1項第11号のただし書に従い、2号消火栓の規定の例で求めた値とも比較して、大きい方以上を確保します。
開放型では水源算定の個数と放水性能を確認する際の個数を分けます。放水型ヘッドや特定施設水道連結型も別の規定があるため、上の閉鎖型の表をそのまま適用しません。
解いたあと、どこで取り違えたかを分ける
- 係数が違った:放水量とポンプ吐出量、1号と2号などを確認する。
- 個数が違った:最多階か総数か、算定の上限や乗数があるかを確認する。
- 単位が違った:Lとm³、流量と水量、MPaとmを分ける。
- 足す項が違った:消火栓かスプリンクラーか、ポンプ方式かを確認する。
消防設備士甲種1類の練習問題 は全220問を無料で公開しています。法令上の値を知っていることが必要な問題もあるため、解説で係数と条件を確認しながら進めてください。
数値を思い出す補助には 語呂合わせと数値の関係、図と記述を含む練習には 製図対策 を使えます。
出典
- 消防法施行令 第11条第3項・第19条第3項
- 消防法施行規則 第12条・第13条の6・第14条・第22条
- 消防試験研究センター:消防設備士試験のFAQ — 法令改正後の出題について
数値・条件は2026年9月10日時点の施行条文で確認しています。法令は改正の施行日以降の試験で改正後の内容が出題されるため、将来の受験に使うときは受験日までの改正も確認してください。











