甲1の計算は式が多いのではなく、覚え方が悪いだけ
甲種1類の計算で問われるのは、水源水量・全揚程・落差・ポンプ吐出量の4つです。設備が屋内消火栓4種・屋外消火栓・スプリンクラー・ドレンチャーとあるため、掛け算の係数だけで20個以上あるように見えます。
しかし条文の値を全部並べると、そのうち水源水量はひとつも覚える必要がありません。放水量から計算で出るからです。
水源水量は「放水量 × 20分」— 水系の設備すべてで成立する
消防法施行令・消防法施行規則の値を並べて検算した結果です。
| 設備 | 放水量 | ×20分 | 条文の水源水量(1個・1ヘッド当たり) |
|---|---|---|---|
| 屋内消火栓 1号 | 130L/min | 2,600L | 2.6m³ |
| 屋内消火栓 2号 | 60L/min | 1,200L | 1.2m³ |
| 屋内消火栓 広範囲型2号 | 80L/min | 1,600L | 1.6m³ |
| 屋外消火栓 | 350L/min | 7,000L | 7m³ |
| SP 閉鎖型 標準型ヘッド | 80L/min | 1,600L | 1.6m³ |
| SP 閉鎖型 小区画型ヘッド | 50L/min | 1,000L | 1m³ |
| SP 閉鎖型 側壁型ヘッド | 80L/min | 1,600L | 1.6m³ |
| SP 開放型ヘッド | 80L/min | 1,600L | 1.6m³ |
| ドレンチャー設備 | 20L/min | 400L | 0.4m³ |
9個すべてで一致します。 根拠は屋内消火栓が令第11条第3項、屋外消火栓が令第19条第3項、スプリンクラーが規則第13条の6第1項・第2項、ドレンチャーが規則第15条です。
つまり手順はこうなります。
- その設備の放水量を思い出す
- 20分ぶんにしてリットルを立方メートルに直す(÷1,000)
- 同時に使う個数を掛ける
⚠️ 例外は特定施設水道連結型スプリンクラー設備です。水道に直結する特殊な方式で別の数値が定められているので、この関係を当てはめないでください。
⚠️ ラック式倉庫も乗数が変わります(標準型ヘッドで、水平遮蔽板がある等級Ⅲ・Ⅳは2.28m³、その他は3.42m³)。ここは素直に覚えます。
「個数」には上限がある
掛ける個数は無制限ではありません。
| 設備 | 掛ける個数 |
|---|---|
| 屋内消火栓 | 設置個数が最も多い階の設置個数(2を超えるときは2) |
| 屋外消火栓 | 設置個数(2を超えるときは2) |
| ドレンチャー | 設置個数(5を超えるときは5) |
| スプリンクラー | 防火対象物の区分ごとの表の個数(標準型で10・15・20・30 等) |
⚠️ 「2を超えるときは2」は設置できる個数の上限ではありません。 水源水量やポンプ吐出量を計算するときに2で頭打ちにするという規定です。「屋内消火栓は1フロアに2個までしか設置できない」と読むのは誤りです。
⚠️ 乾式・予作動式の流水検知装置があるスプリンクラー設備は、表の個数に1.5を乗じた個数で計算します(規則第13条の6第1項)。
全揚程・落差は「圧力 × 100」で出る
放水圧力と、加圧送水装置に必要な換算水頭は100倍で対応しています。
| 種別 | 放水圧力 | 換算水頭 |
|---|---|---|
| 屋内消火栓 1号・広範囲型2号 | 0.17MPa | 17m |
| 屋内消火栓 2号 | 0.25MPa | 25m |
| 屋外消火栓 | 0.25MPa | 25m |
式の形は方式ごとに決まっています。
| 方式 | 式 |
|---|---|
| 高架水槽(落差) | h1 + h2 + 換算水頭 |
| 圧力水槽(圧力) | p1 + p2 + p3 + 放水圧力 |
| ポンプ(全揚程) | h1 + h2 + h3 + 換算水頭 |
項の数で見分けます。 落差は2項+換算水頭、圧力は3項+放水圧力、全揚程は3項+換算水頭。圧力水槽だけが「p」で、単位がMPaのまま足されます。
⚠️ 広範囲型2号の揚程は「2号」ではなく1号と同じ17m系です。消防法施行規則第12条第3項の柱書が第2項の該当号を適用除外しているため、第1項(1号消火栓)の規定が適用されます。名前が「2号」なので25mだと思い込むのが定番の失点です。
ポンプ吐出量は個別に覚える
ここは計算で出せないので素直に覚えます。
| 設備 | 1個・1ヘッド当たりのポンプ吐出量 |
|---|---|
| 屋内消火栓 1号 | 150L/min |
| 屋内消火栓 2号 | 70L/min |
| 屋内消火栓 広範囲型2号 | 90L/min |
| 屋外消火栓 | 400L/min |
| SP 標準型・側壁型・開放型 | 90L/min |
| SP 小区画型 | 60L/min |
| SP ラック式倉庫 | 130L/min |
根拠は屋内消火栓が規則第12条、屋外消火栓が規則第22条第10号ハ、スプリンクラーが規則第14条です。
放水量より少し大きい(130→150、60→70、80→90、350→400、80→90、50→60)という関係で覚えると、放水量と組で思い出せます。
ポンプの性能に関する数値
| 項目 | 値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 過負荷特性 | 吐出量が定格の150%のとき、全揚程は定格全揚程の65%以上 | 規則第12条第1項第7号ハ(ハ) |
| 配管の耐圧 | 締切圧力の1.5倍以上の水圧に耐える | 規則第12条第1項第6号リ |
| 圧力水槽の水量 | 水槽の体積の3分の2以下 | 規則第12条第1項第7号ロ(ロ) |
| 放水圧力の上限(屋内) | 0.7MPaを超えない措置 | 規則第12条第1項第7号ホ |
| 放水圧力の上限(屋外) | 0.6MPaを超えない措置 | 規則第22条第10号ニ |
| 放水圧力の上限(SP) | 1MPaを超えない措置 | 規則第14条 |
150%と65%は他の類でも共通して出ます。上限は屋内0.7・屋外0.6・SP1.0と3つあるので、まとめて覚えてください。
計算問題の解き方の順序
問題を見たら、この順で処理します。
- 設備と種別を特定する(1号か2号か広範囲型2号か/閉鎖型の標準型か小区画型か)
- 放水量を思い出す
- 水源水量 = 放水量 × 20分 × 個数(個数は上限で頭打ち)
- 揚程が要るなら 圧力 × 100 を足す(方式で項の数を選ぶ)
- ポンプ吐出量が要るなら 個別の値 × 個数
種別の特定を飛ばすと、以降が全部ずれます。問題文の「1号」「2号」「広範囲型」「小区画型」を最初に丸で囲むくらいの意識で読んでください。
例で確かめる
例1: 1号消火栓が最も多い階に3個設置されている。必要な水源水量は。 → 種別は1号(放水量130L/min)。個数は3だが2で頭打ち。 → 130 × 20分 = 2,600L = 2.6m³。2.6 × 2 = 5.2m³以上。
例2: 2号消火栓のポンプ方式で、h1=10m、h2=5m、h3=8mのときの全揚程は。 → 種別は2号(放水圧力0.25MPa → 換算水頭25m)。 → 10 + 5 + 8 + 25 = 48m以上。
例3: 閉鎖型の小区画型ヘッドで、算出個数が8のときの水源水量は。 → 小区画型の放水量は50L/min。50 × 20分 = 1,000L = 1m³。 → 1 × 8 = 8m³以上。
手を動かして確かめる
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