消防設備士甲種第1類の受験を考えたとき、多くの人が最初に調べるのが科目免除です。甲4を持っている、第二種電気工事士を持っている、ビルメン4点セットを揃えた —— そうした手持ちの資格で試験がどれだけ軽くなるのかは、学習計画そのものを左右します。
ただ、免除の情報は「電気工事士があれば免除される」といった断片で語られがちです。実際に消防試験研究センターが公開している一覧表を開くと、甲種第1類には免除資格の組み合わせで8通りのパターンがあり、消える科目も試験時間も全部違います。そして8通りすべてに共通する、あまり語られない事実がひとつあります。
どのパターンを選んでも、実技試験は1問も免除されません。
この記事では公式の一覧表をそのまま読み解いて、自分がどのパターンに当たるのか、免除を使うと何が起きるのかを整理します。合格基準そのものの分解は甲1の配点と合格基準の記事にまとめてあるので、そちらと合わせて読むと判断が固まります。
免除なしの甲1は「筆記45問 + 実技7問」
まず基準となる免除なしの姿を押さえます。甲種の筆記は3科目ですが、集計上はさらに細かく分かれています。
| 科目 | 内訳 | 問題数 |
|---|---|---|
| 消防関係法令 | 共通 | 8 |
| 類別 | 7 | |
| 基礎的知識 | 機械 | 6 |
| 電気 | 4 | |
| 構造・機能・工事・整備 | 機械 | 10 |
| 電気 | 6 | |
| 規格 | 4 | |
| 筆記 合計 | 45 | |
| 実技試験 | 鑑別等 | 5 |
| 製図 | 2 |
試験時間は3時間15分です。免除で消えるのはこの表の行のどれかで、消えた行のぶんだけ時間も短縮される、という構造になっています。
甲1が機械系と電気系の両方を持っているのがポイントです。水系消火設備はポンプや配管という機械の世界であると同時に、起動制御や非常電源という電気の世界でもあります。だからこそ、機械寄りの資格と電気寄りの資格で免除される場所が違います。
免除の全8パターン一覧
消防試験研究センターが公開している「試験の一部免除・試験時間・試験問題数一覧表 (甲種)」から、甲種第1類の行をそのまま整理したものです。
| 持っている資格 | 免除される科目 | 残る筆記 | 試験時間 |
|---|---|---|---|
| なし (一般受験者) | — | 45問 | 3時間15分 |
| 甲種4類 または 5類 | 法令(共通) | 37問 | 3時間00分 |
| 甲種2類 または 3類 | 法令(共通)、基礎(機械)、基礎(電気) | 27問 | 2時間30分 |
| 電気工事士 または 電気主任技術者 | 基礎(電気)、構造(電気) | 35問 | 3時間00分 |
| 甲種4類/5類 + 電工/電主 | 法令(共通)、基礎(電気)、構造(電気) | 27問 | 2時間30分 |
| 甲種2類/3類 + 電工/電主 | 法令(共通)、基礎(機械)、基礎(電気)、構造(電気) | 21問 | 2時間30分 |
| 技術士(機械部門/衛生工学部門) または検定協会等職員 | 基礎(機械・電気)、構造(機械・電気・規格) | 15問 | 1時間45分 |
| 上記の技術士等 + 甲種2〜5類のいずれか | 法令(共通)、基礎(機械・電気)、構造(機械・電気・規格) | 7問 | 1時間30分 |
「電工」は第一種・第二種いずれの電気工事士も該当し、「電主」は電気主任技術者を指します。
甲4持ちは意外と免除が小さい
甲4から甲1へ進む人は多いのですが、免除されるのは法令の共通部分8問だけです。時間短縮も15分にとどまります。甲4で学んだ知識のうち、甲1でそのまま流用できる範囲が制度上は共通法令に限られている、ということです。
一方で甲種2類または3類を持っていると基礎的知識が丸ごと消えます。2類は泡消火設備、3類は不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備で、いずれも甲1と同じ「消火設備を設置する側」の系統だからです。同じ他類免状でも、どの類かで免除の厚みが倍以上違います。
電気工事士は「電気だけ」を抜く
電気工事士または電気主任技術者の免除は、基礎的知識の電気4問と構造機能の電気6問、合わせて10問です。法令にも機械系にも触れません。ビルメン系の資格を先に取った人が甲1に来ると、電気は軽くなるが水系設備の機械知識と法令はまるごと残るという形になります。
なお甲4の受験資格として電気工事士を使った人は、その電気工事士免状で甲1の科目免除も受けられます。受験資格と科目免除は別の制度なので、一方に使ったからもう一方に使えない、ということはありません。
どのパターンでも実技は免除されない
一覧表の実技試験の欄は、甲種第1類の8パターンすべてで「免除なし」です。鑑別等5問・製図2問は、技術士と他類免状を両方持っていて筆記が7問まで減る人でも、そのまま受験します。
これが甲1の免除を考えるうえで一番重要な点です。合格基準は筆記と実技が独立しており、実技だけで60%以上が必要です。7問中60%ということは、部分点を含めて4問以上に相当する得点を実技で取らなければ、筆記が満点でも不合格になります。
つまり免除を厚く使うほど、合否の重心は実技側に寄ります。筆記21問・2時間30分まで絞った人の学習時間は、その分だけ製図と鑑別に振り向けるのが理にかなっています。製図の対策は甲1の製図対策の記事に、鑑別は鑑別対策の記事にまとめてあります。
免除すると1問の重みはどう変わるか
免除された科目は「満点扱い」ではなく「出題されない」だけです。合格に必要な正解率は変わらないので、母数が減れば1問あたりの重みが増します。
| パターン | 筆記の問題数 | 60%に必要な正解数 | 1問の重み |
|---|---|---|---|
| 免除なし | 45問 | 27問 | 約2.2% |
| 甲4/5持ち | 37問 | 23問 | 約2.7% |
| 電工持ち | 35問 | 21問 | 約2.9% |
| 甲2/3持ち | 27問 | 17問 | 約3.7% |
| 甲2/3 + 電工 | 21問 | 13問 | 約4.8% |
免除を最大限使うと、1問の重みは免除なしの2.2倍になります。45問なら3問落としても他で取り返せますが、21問では1問が全体の5%近くを占め、取りこぼしの余地がほとんどありません。
加えて、筆記には各科目40%以上という足切りもあります。免除を使うと残る科目の問題数が少なくなるため、1科目あたりで許される誤答数も連動して減ります。
免除を使うべきか — 3つの判断軸
免除は受験申請の時点で選び、あとから変更できません。次の3点で決めるのが実務的です。
1. その科目が今も得点源かどうか
甲4に合格した直後で共通法令が頭に入っているなら、免除せずに受けたほうが有利なことがあります。8問の得点源を自分から手放す形になるからです。逆に合格から数年経って忘れているなら、免除して学習範囲を削るほうが効率的です。
2. 学習に使える時間
免除は「勉強しなくてよい範囲」を作る制度です。時間が足りない人ほど価値が大きくなります。特に甲2/3 + 電工のパターンは筆記が21問・2時間30分まで縮むので、限られた時間を構造機能(機械)と規格、そして実技に集中できます。
3. 実技にどれだけ回せるか
前述のとおり実技は免除されません。免除で浮いた時間を製図・鑑別に回す前提が立つなら免除の価値は高く、「筆記が減ったぶん総学習時間も減らす」つもりなら、合否が実技一本に集約されて危険度が上がります。
判断がつかない場合は、免除なしの範囲で一度甲1の練習問題を解いてみて、免除候補の科目で何割取れるかを測ってから決めるのが確実です。ぴよパスでは甲1のオリジナル予想問題126問を法令・基礎知識・構造機能・実技の知識問題まで公開しているので、免除する科目の現在地を測る材料になります。本番形式で通しで確認したい場合は甲1の模擬試験も使えます。
申請の実務 — 願書の時点で決める
免除は受験申請時に申請します。書面申請なら願書の該当欄に記入し、免除資格を証明する書類 (電気工事士免状や消防設備士免状の写しなど) を添えて提出します。電子申請の場合も申請画面で免除の選択を行います。
注意点は3つです。
- 申請後の追加・取り消しはできない。迷っている段階で締切を迎えないよう、早めに決める
- 証明書類の不備は免除が認められない原因になる。免状の写しは有効期限や記載面を確認する
- 試験時間が変わるため、集合時刻や退室可能時刻の扱いが一般受験者と異なる場合がある
申請方法や必要書類の細部は都道府県支部ごとに案内が異なります。最新の内容は受験する支部の受験案内で必ず確認してください。この記事で示した免除の範囲と試験時間は、消防試験研究センターが公開している「試験の一部免除・試験時間・試験問題数一覧表 (甲種)」に基づいています。
免除しても残る範囲をどう固めるか
免除を使うと、残るのは水系消火設備そのものの知識 —— 構造機能(機械)、規格、類別法令、そして実技です。ここは免除でどうにもならない甲1の本体で、合格率24.1%という数字を作っている部分でもあります。
体系から入るなら弘文社のテキストが定番です。576ページで甲種・乙種を併用でき、屋内消火栓1号/2号/広範囲型のように似た規格値が並ぶ箇所を図解で区別できます。
テキストで体系を作ったあとの演習量を確保するなら、同じ資格研究会KAZUNOの問題集が対応しています。規格数値の区別と計算の型は、読むだけでは定着しにくい部分です。
免除の有無にかかわらず、甲1で最後に効いてくるのは実技です。免除で筆記の負担を下げられた人こそ、その余力を製図と鑑別に振り向けてください。
なお甲4から甲1へ進むルート全体の設計は甲4の次は甲1への記事で扱っています。担当できる設備がどう広がるかを含めて検討したい場合はそちらもどうぞ。











