甲種でいちばん低い合格率には理由がある
令和6年度の甲種の合格率を並べると、1類だけが沈んでいます(消防試験研究センター公表値)。
| 区分 | 受験者数 | 合格率 |
|---|---|---|
| 甲種特類 | 1,079人 | 34.9% |
| 甲種1類 | 12,086人 | 24.1% |
| 甲種2類 | 3,890人 | 27.3% |
| 甲種3類 | 4,080人 | 25.6% |
| 甲種4類 | 19,767人 | 34.0% |
| 甲種5類 | 3,681人 | 35.0% |
甲4より10ポイント低く、受験者数は甲種で2番目に多い。つまり甲1は「人が多く集まって、多く落ちる」区分です。
原因は合格基準にあります。甲1は次の三重の関門を同時に越える必要があります。
- 筆記全体で 60%以上
- 筆記の各科目で40%以上(足切り)
- 実技で60%以上
筆記が7割取れていても、実技が5割なら不合格です。そして落ちる人の大半は実技で崩れています。以下は、その崩れ方を4つに分けたものです。
パターン1: 規格数値を「なんとなく」で覚えている
甲1でいちばん多い失点源です。似た数値が並ぶため、単独で暗記すると本番で取り違えます。
| 設備 | 放水圧力 | 放水量 |
|---|---|---|
| 屋内消火栓 1号 | 0.17MPa以上 | 130L/min以上 |
| 2号 | 0.25MPa以上 | 60L/min以上 |
| 広範囲型2号 | 0.17MPa以上 | 80L/min以上 |
| 屋外消火栓 | 0.25MPa以上 | 350L/min以上 |
| 閉鎖型スプリンクラーヘッド | 0.1MPa以上 | 80L/min以上 |
さらにポンプの吐出量は放水量とは別規定で、屋内消火栓(1号)は設置個数(最大2)×150L/min以上です(消防法施行規則第12条)。130はノズル先端で確保する放水量、150はポンプが出す量で、意味がまったく違います。
潰し方: 個別に覚えず、上のように表で並べて差分を覚えます。テキストを閉じた状態でこの表を書けるかどうかが、合否の分かれ目です。書けないうちは演習に進んでも取りこぼしが止まりません。
パターン2: 製図を「後回し」にしたまま本番を迎える
甲1の実技は鑑別5問と製図2問。製図は配点が重く、白紙だと実技60%に届きません。それなのに、製図は最後に手を付ける人が多い分野です。
製図で問われる計算の中心は全揚程です。
H = h1 + h2 + h3 + 17m
h1(ホースの摩擦損失)、h2(配管の摩擦損失)、h3(落差)に、必要放水圧力0.17MPaの水頭換算17mを足します。スプリンクラー(0.1MPa)なら+10m、屋外消火栓(0.25MPa)なら+25mに変わります。
潰し方: 末尾の数字を3つ暗記するのではなく、「必要放水圧力を水頭に換算して足している」という1つの原理として理解します。原理で持てば設備が変わっても導けます。手順は甲1の製図対策にまとめました。
パターン3: 鑑別を軽く見て、名称だけ書いて減点される
鑑別は記述式です。名称だけでは不十分な設問があり、設置位置や目的まで書かないと点が伸びません。
- △「末端試験弁」
- ◎「末端試験弁で、流水検知装置が正常に作動して警報を発するかを試験するため、放水圧力が最も低くなると予想される配管部分に設ける」
知っているのに書き方で落とすのは、最ももったいない失点です。
潰し方: 「◯◯(名称)で、△△するために□□に設ける」という型を固定し、機器ごとにこの1文を作っておきます。機器の一覧と混同しやすいペアは甲1の鑑別対策に整理しています。鑑別で覚えた機器はそのまま製図の系統図の部品になるので、鑑別→製図の順で進めると効率がよくなります。
パターン4: 甲4の成功体験をそのまま持ち込む
甲1受験者には甲4取得者が多く、ここに落とし穴があります。甲4は自動火災報知設備=電気の試験ですが、甲1は水系消火設備=機械の試験です。
- 甲4の製図:感知器の配線・警戒区域の設定
- 甲1の製図:系統図の読み取り・全揚程と水源水量の計算
甲4で通用した「配線を追う」やり方は甲1では機能しません。基礎的知識も機械分野の比重が上がります。
潰し方: 甲4の資産として持ち込めるのは法令の共通部分と受験の段取りだけと割り切り、機械・水理は新規に積む前提で計画を立てます。移行の具体的な差分は甲4から甲1へのステップアップで解説しています。
落ちない人がやっている順序
4つのパターンは独立ではなく、規格数値が固まっていないことが全ての根になっています。順序は次が安全です。
- 規格数値の表を白紙に書けるようにする(ここが最大の投資対効果)
- 鑑別で機器の名称・用途・設置位置を1文で書けるようにする
- 製図で全揚程と水源水量を原理から導けるようにする
- 本試験形式で通し、製図に残す時間を決める
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