差動式分布型感知器は、周囲の温度の上昇率が一定の率以上になったときに火災信号を発信する熱感知器で、広範囲の熱効果の累積により作動するものです(火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(以下「感知器の規格省令」)第2条第3号)。天井に張りめぐらせた細い空気管の中の空気の膨張で作動する空気管式のほか、熱電対式と熱半導体式があります(消防法施行規則第23条第4項第4号〜第4号の3)。
差動式分布型感知器は、消防設備士甲種4類の構造・機能・製図と、乙種4類の鑑別で学ぶ論点です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法施行規則は2026年6月26日施行の版、感知器の規格省令は2024年7月23日施行の版)と、消防庁の点検要領・試験基準(2024年の改正通知の別添)をもとに書いています。
空気管式の仕組み — ダイヤフラムとリーク孔
空気管式は、天井面に張った空気管と、それをつなぐ検出部でできています。火災で周囲の温度が急に上がると、空気管の中の空気が膨張して検出部のダイヤフラムを押し、接点が閉じて火災信号が出ます。暖房などによるゆるやかな温度上昇では、膨張した空気がリーク孔から少しずつ逃げるため作動しません(一般的な構造の説明です。規格省令第13条は、空気管全体がゆるやかに温度上昇しても作動しないことを求め、点検要領もダイヤフラムの損傷とリーク孔に注意書きで触れています)。
規格省令は、空気管式のものに次のことを求めています(第8条第4号)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験のしやすさ | リーク抵抗と接点水高を容易に試験できること。空気管の漏れとつまりを容易に試験でき、試験後に試験装置を定位置に戻すのを忘れない措置があること |
| 空気管の長さ | 1本(継ぎ目のないもの)が20メートル以上で、内径と肉厚が均一 |
| 肉厚 | 0.3ミリメートル以上 |
| 外径 | 1.94ミリメートル以上 |
感度は種別ごとに決まっていて、作動試験では検出部から最も離れた空気管の部分20メートルが一定の割合で温度上昇したとき1分以内に火災信号を発信し、不作動試験では空気管全体がゆるやかに温度上昇しても作動しないことが求められます(第13条)。
| 種別 | 作動試験の温度上昇率 | 不作動試験の温度上昇率 |
|---|---|---|
| 1種 | 毎分7.5度 | 毎分1度 |
| 2種 | 毎分15度 | 毎分2度 |
| 3種 | 毎分30度 | 毎分4度 |
取付け面の高さ — 15メートル未満まで使える
消防法施行規則第23条第4項第2号の表では、差動式分布型感知器は取付け面の高さ15メートル未満の場所に使えます。この表で8メートル以上15メートル未満の欄にあるのは、差動式分布型と、イオン化式スポット型・光電式スポット型の1種・2種です。表の外では、光電式分離型感知器(天井等の高さ20メートル未満。15メートル以上は1種。同項第7号の3ニ)と炎感知器もこの高さに使えます。熱感知器で使えるのは差動式分布型だけです。
感知区域は、壁または取付け面から0.4メートル以上突き出したはり等で区画された部分ですが、差動式分布型感知器と煙感知器では0.6メートル以上突き出したはり等で区画します(同項第3号ロ)。
空気管式の設置基準の数値
消防法施行規則第23条第4項第4号です。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 露出部分の長さ | 感知区域ごとに20メートル以上 |
| 取付け位置 | 取付け面の下方0.3メートル以内 |
| 壁からの距離 | 感知区域の取付け面の各辺から1.5メートル以内 |
| 相対する空気管の相互間隔 | 特定主要構造部を耐火構造とした防火対象物は9メートル以下、その他の構造は6メートル以下 |
| 一の検出部に接続する空気管の長さ | 100メートル以下 |
| 検出部の傾斜 | 5度以上傾斜させない |
壁からの距離と相互間隔は、感知区域の規模や形状により有効に火災を感知できるときは、この限りではありません。製図で空気管の配置を問われたときの読み方は 消防設備士甲4の製図 で扱っています。
熱電対式・熱半導体式との違い
| 空気管式 | 熱電対式 | 熱半導体式 | |
|---|---|---|---|
| 取付け位置 | 取付け面の下方0.3メートル以内 | 同じ | 感知器の下端を下方0.3メートル以内 |
| 数の決め方 | 露出長20メートル以上・相互間隔 | 床面積72平方メートル(耐火構造は88平方メートル)以下で熱電対部4個以上、超えると18平方メートル(耐火構造は22平方メートル)ごとに1個を加える | 表で定める床面積に応じた感熱部の数 |
| 一の検出部への接続 | 空気管100メートル以下 | 熱電対部20以下 | 感熱部2以上15以下 |
| 規格省令で試験しやすさが求められる項目 | リーク抵抗・接点水高・空気管の漏れとつまり | 作動電圧・熱電対部の断線と導体抵抗 | 作動電圧・断線と導体抵抗 |
根拠は消防法施行規則第23条第4項第4号〜第4号の3と、感知器の規格省令第8条第4号・第5号です。
点検と試験 — 火災作動試験・流通試験・接点水高試験
消防庁の点検要領(自動火災報知設備)の機器点検では、空気管式について次の2つを行います。
| 試験 | 方法 | 判定 |
|---|---|---|
| 火災作動試験(空気注入試験) | 検出部の試験孔に空気注入試験器(5cc用のテストポンプ)をつなぎ、試験コック等を作動試験位置に合わせ、検出部に表示された空気量を注入して作動までの時間を測る | 確実に作動し、作動時間が検出部の諸元表の範囲内。警戒区域の表示が適正 |
| 作動継続試験 | 作動してから復旧するまでの時間を測る | 諸元表の範囲内 |
所定量以上の空気を注入するとダイヤフラムが損傷するおそれがあると、点検要領は注意しています。不作動のときや時間が範囲外のとき、前回の測定値と大きく違うときは、空気管とコックスタンドの接合部の締付けを確かめたうえで、流通試験と接点水高試験を行います。
消防庁の試験基準(工事が終わったときの試験)では、この2つを次のように行います。
| 試験 | 方法 | 判定 |
|---|---|---|
| 流通試験 | 検出部の試験孔または空気管の一端にマノメーターをつなぎ、他端のテストポンプで空気を入れて水位を約100ミリメートルまで上げて止め、送気口を開いて水位が半分まで下がる時間を測る | 空気管の長さに応じて表示された検出部の値の範囲内。水位が止まらないときは漏れのおそれがあるので中止して点検する |
| 接点水高試験 | マノメーターとテストポンプをつなぎ、試験コックを接点水高試験位置に合わせ、微量の空気を徐々に入れて接点が閉じたときの水位を測る | 各検出部に明示された値の範囲内 |
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一の検出部に接続する空気管の長さは、200メートル以下とする | 誤り | 100メートル以下(規則第23条第4項第4号ニ) |
| 空気管の露出部分は、感知区域ごとに20メートル以上とする | 正しい | 同号イ |
| 耐火構造の防火対象物では、相対する空気管の相互間隔を9メートル以下とする | 正しい | 同号ハ(その他の構造は6メートル以下) |
| 差動式分布型感知器は、取付け面の高さ20メートル未満まで使える | 誤り | 15メートル未満(同項第2号) |
| 空気管式の検出部は、45度まで傾斜させて取り付けてよい | 誤り | 5度以上傾斜させない(同項第4号ホ) |
| 空気管の外径は、1.94ミリメートル以上である | 正しい | 感知器の規格省令第8条第4号ホ |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、甲4・乙4 の空気管式の論点を確かめられます。
出典
- 火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令 第2条・第8条・第13条(e-Gov法令検索・2024年7月23日施行の版)
- 消防法施行規則 第23条第4項(e-Gov法令検索・2026年6月26日施行の版)
- 消防庁予防課長通知「消防用設備等の点検要領の一部改正について」(令和6年9月10日付け消防予第412号)別添「第11 自動火災報知設備」
- 消防庁予防課長通知「消防用設備等の試験基準及び点検要領並びに防火対象物点検の点検要領の一部改正について」(令和6年3月29日付け消防予第157号)別添の別紙1(試験基準)「自動火災報知設備」
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