危険物保安監督者は、政令で定める製造所・貯蔵所・取扱所で、危険物の取扱作業の保安を監督する人です。所有者・管理者・占有者が、甲種か乙種の危険物取扱者で、6か月以上の実務経験がある人の中から選び、市町村長等に届け出ます(消防法第13条)。丙種危険物取扱者はなれません。
試験科目「危険物に関する法令」(危険物の規制に関する規則第55条)の範囲に入る論点で、甲種・乙種・丙種に共通です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法は2025年6月1日施行、危険物の規制に関する政令は2026年4月4日施行、同規則は2026年6月30日施行の版)で条文を確かめて書いています。
3つの役の違いを1枚で
危険物の保安にかかわる役は3つあり、根拠の条も、置く施設も、資格の要件も違います。
| 危険物保安統括管理者 | 危険物保安監督者 | 危険物施設保安員 | |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 消防法第12条の7 | 消防法第13条 | 消防法第14条 |
| 役目 | 事業所全体の危険物の保安業務を統括管理する | 取扱作業の保安を監督する | 製造所等の構造と設備の保安業務(点検など)を行う |
| 置く施設 | 第4類を扱う製造所・移送取扱所・一般取扱所で、第4類が指定数量の3,000倍以上の事業所(移送取扱所は省令で定める数量。政令第30条の3) | 製造所等のうち、政令第31条の2の除外に当たらないもの | 指定数量の倍数が100以上の製造所・一般取扱所と、移送取扱所(政令第36条) |
| 資格 | 免状の要件はない。事業の実施を統括管理する人を充てる(政令第30条の3第3項) | 甲種か乙種の免状+6か月以上の実務経験 | 法律に免状・実務経験の要件はない |
| 届出 | 選任・解任とも遅滞なく(第12条の7第2項) | 選任・解任とも遅滞なく(第13条第2項) | 届出の規定はない |
| 解任命令 | あり(第13条の24) | あり(第13条の24) | 規定なし |
保安統括管理者と施設保安員には、規則で置かなくてよい施設が別に決められています(規則第47条の4・第60条。ボイラーやバーナーで危険物を消費する一般取扱所、容器に詰め替える一般取扱所など)。
進む 誤りになる文の例は「保安統括管理者は甲種の免状が必要」「施設保安員は丙種以上の免状が必要」です。どちらも、免状の要件は条文にありません。
なれる人 — 甲種か乙種で、実務経験6か月以上
消防法第13条第1項の要件は次の2つです。
- 甲種危険物取扱者か乙種危険物取扱者であること(免状の交付を受けていること)
- 6か月以上の危険物取扱いの実務経験があること。この実務経験は製造所等での実務経験に限られます(規則第48条の2)
さらに条文は「その者が取り扱うことができる危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない」と書いています。乙種の人が取り扱えるのは免状に指定された類だけなので(規則第49条)、乙4の人が監督できるのは第4類の取扱作業です。甲種はすべての類の危険物を扱えます。
| 免状 | 保安監督者になれるか | 監督できる範囲 |
|---|---|---|
| 甲種 | なれる(実務経験6か月以上) | すべての類 |
| 乙種 | なれる(実務経験6か月以上) | 免状に書かれた類だけ |
| 丙種 | なれない | — |
丙種で扱えるのはガソリン・灯油・軽油・第3石油類(重油・潤滑油・引火点130℃以上のもの)・第4石油類・動植物油類で(規則第49条)、無資格者の取扱いに立ち会うこともできません。丙種でできることの線引きは 危険物丙種でできることの範囲 にまとめています。
選任が必要な施設 — 「除外の一覧」に無ければ必要
政令第31条の2は、選任が要らない施設を列挙する書き方です。一覧に出てこない施設は、規模にかかわらず選任が必要です。
| 施設 | 選任しなくてよい場合(政令第31条の2) | それ以外 |
|---|---|---|
| 製造所 | 除外なし | 常に必要 |
| 屋内貯蔵所 | 指定数量の倍数が30以下で、引火点40℃以上の第4類だけを貯蔵・取扱い | 必要 |
| 屋外タンク貯蔵所 | 除外なし | 常に必要 |
| 屋内タンク貯蔵所 | 引火点40℃以上の第4類だけを貯蔵・取扱い | 必要 |
| 地下タンク貯蔵所 | 指定数量の倍数が30以下で、引火点40℃以上の第4類だけを貯蔵・取扱い | 必要 |
| 簡易タンク貯蔵所 | 引火点40℃以上の第4類だけを貯蔵・取扱い | 必要 |
| 移動タンク貯蔵所 | 常に不要 | — |
| 屋外貯蔵所 | 指定数量の倍数が30以下(類や引火点の条件はない) | 必要 |
| 給油取扱所 | 除外なし | 常に必要 |
| 第一種・第二種販売取扱所 | 引火点40℃以上の第4類だけを取扱い | 必要 |
| 移送取扱所 | 除外なし | 常に必要 |
| 一般取扱所 | 指定数量の倍数が30以下で、引火点40℃以上の第4類だけを取り扱い、しかもボイラー・バーナーなどで消費するか、容器に詰め替えるもの | 必要 |
覚えるときは、表を全部覚えるより次の2点に絞ると間違えにくくなります。
- 常に必要な4つ: 製造所・屋外タンク貯蔵所・給油取扱所・移送取扱所
- 常に不要な1つ: 移動タンク貯蔵所
残りは「引火点40℃以上の第4類だけ」「倍数30以下」という条件の組み合わせで決まります(一般取扱所は、ボイラー・バーナーなどでの消費か容器への詰替えという条件も加わります)。屋外貯蔵所だけは引火点の条件がなく、倍数30以下なら不要になる点が、ほかの施設と違います。ガソリンのように引火点が40℃より低い危険物を1つでも扱えば、「引火点40℃以上の第4類だけ」の条件から外れます。
業務 — 規則第48条の5項目
所有者等が危険物保安監督者に行わせなければならない業務は、規則第48条に5つ書かれています。
| 業務の中身(規則第48条) | |
|---|---|
| 1 | 取扱作業が技術上の基準と予防規程などに合うように、作業者(立ち会う危険物取扱者を含む)に必要な指示を与える |
| 2 | 火災などの災害が起きたら、作業者を指揮して応急の措置をとり、直ちに消防機関などに連絡する |
| 3 | 施設保安員を置く施設では施設保安員に必要な指示をし、置かない施設では施設保安員の業務(規則第59条)を自分で行う |
| 4 | 災害の防止のため、隣接する製造所等や関連する施設の関係者と連絡を保つ |
| 5 | そのほか取扱作業の保安に必要な監督業務 |
3の「施設保安員がいない施設では、保安監督者が施設保安員の業務を行う」という決まりもあります。施設保安員の業務は、構造と設備の定期・臨時の点検、点検の記録と保存、異常を見つけたときの連絡と措置、計測装置・制御装置・安全装置などの保安管理などです(規則第59条)。
届出と解任命令
- 届出: 選任したときも解任したときも、所有者等が遅滞なく市町村長等に届け出ます(消防法第13条第2項)。届出書は規則第48条の3の様式で、選任の届出書には別記様式第二十の二の書類を添えます。期限は「遅滞なく」で、「10日前まで」のような日数は条文にありません
- 解任命令: 市町村長等は、保安監督者が消防法や命令に違反したとき、または業務を続けさせると公共の安全や災害の防止に支障があると認めるときは、所有者等に解任を命じられます(消防法第13条の24)。命じられるのは保安監督者本人ではなく所有者等です
保安監督者も、取扱作業に従事する危険物取扱者として保安講習の対象になるのが一般的なので、受講の時期にも気をつけます。期限の数え方は 危険物保安講習とは にまとめています。
正誤の文で確かめる — ひっかけの型
条文に照らして、正誤を確かめられる文を並べます。
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 丙種危険物取扱者で実務経験が6か月以上あれば、保安監督者に選任できる | 誤り | 第13条第1項は甲種・乙種に限る |
| 乙種第4類の保安監督者は、第1類の取扱作業も監督できる | 誤り | 監督できるのは自分が扱える類だけ |
| 移動タンク貯蔵所には保安監督者を定めなければならない | 誤り | 政令第31条の2第3号で除外 |
| 給油取扱所は、扱う量が少なければ保安監督者は不要 | 誤り | 給油取扱所は除外の一覧にない |
| 指定数量の倍数が20の屋外貯蔵所には保安監督者が必要 | 誤り | 倍数30以下の屋外貯蔵所は除外 |
| 保安監督者を解任したときは届出は不要 | 誤り | 解任も遅滞なく届け出る |
| 施設保安員を置かない施設では、保安監督者が施設保安員の業務を行う | 正しい | 規則第48条第3号 |
| 保安統括管理者は危険物取扱者でなければならない | 誤り | 事業の実施を統括管理する人を充てる |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、条文に沿った文で確かめられます。
乙種の法令全体の論点は 危険物乙種 法令の共通論点、甲種は 危険物甲種 法令の攻略 で整理しています。
出典
- 消防法 第12条の7・第13条・第13条の24・第14条(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)
- 危険物の規制に関する政令 第30条の3・第31条の2・第36条(同・2026年4月4日施行の版)
- 危険物の規制に関する規則 第47条の4・第48条・第48条の2・第48条の3・第49条・第55条・第59条・第60条(同・2026年6月30日施行の版)
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