危険物保安講習は、製造所・貯蔵所・取扱所で危険物の取扱作業に従事している危険物取扱者が受けなければならない講習です(消防法第13条の23)。期限は、取扱作業に従事してから1年以内、受講した後は受講日以後の最初の4月1日から3年以内ごとです(危険物の規制に関する規則第58条の14)。免状を持っているだけで取扱作業をしていない人には、受講義務はありません。
保安講習は、実際に危険物を扱う危険物取扱者の義務であると同時に、試験科目「危険物に関する法令」(危険物の規制に関する規則第55条)の範囲に入る論点でもあります(甲種・乙種・丙種に共通)。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法は2025年6月1日施行、危険物の規制に関する政令は2026年4月4日施行、同規則は2026年6月30日施行の版)で条文を確かめて書いています。
保安講習の要点を1枚で
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 受ける人 | 製造所等で危険物の取扱作業に従事している危険物取扱者(甲種・乙種・丙種) | 消防法第13条の23 |
| 受けなくてよい人 | 免状はあるが取扱作業に従事していない人/免状を持たない作業者 | 同上 |
| 最初の期限 | 従事することになった日から1年以内 | 規則第58条の14第1項 |
| 最初の期限の特例 | 従事する日の前2年以内に免状の交付か講習を受けていれば、その日以後の最初の4月1日から3年以内 | 同項ただし書 |
| 2回目以降 | 受講日以後の最初の4月1日から3年以内(以後も同じ) | 同条第2項 |
| 行う者 | 都道府県知事(総務大臣が指定する市町村長その他の機関を含む) | 消防法第13条の23 |
| 講習の中身 | 科目・時間などの細目は消防庁長官が定める | 規則第58条の14第3項 |
受けなければならない人・受けなくてよい人
条文の主語は「製造所、貯蔵所又は取扱所において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者」です。条件は2つで、どちらも満たす人だけが対象です。
- 危険物取扱者であること(甲種・乙種・丙種の免状の交付を受けている)
- 製造所等で危険物の取扱作業に従事していること
| 人 | 受講義務 |
|---|---|
| ガソリンスタンド(給油取扱所)で給油作業をしている乙4・丙種の人 | ある |
| 工場の危険物製造所で作業している甲種の人 | ある |
| 乙4の免状を持っているが、事務職で危険物を扱っていない人 | ない |
| 免状を持たず、危険物取扱者の立会いのもとで作業している人 | ない(そもそも危険物取扱者ではない) |
つまり保安講習は「免状の更新」ではありません。消防法と政令には免状の有効期限の定めがなく、写真を10年ごとに書き換える手続き(書換え)は保安講習とは別の制度です。写真の書換えは 危険物取扱者の更新 にまとめています。
期限の数え方 — 「最初の4月1日から3年以内」
規則第58条の14の期限は、起点が2種類あります。
- 従事を始めた日から1年以内(新しく取扱作業に就いた場合の原則)
- 免状の交付日・講習の受講日以後の最初の4月1日から3年以内(特例と2回目以降)
「最初の4月1日」を起点にする期限(特例と2回目以降)は、いつも3月31日で終わります。日付の例で確かめます。
| 例 | いつまでに受けるか |
|---|---|
| 2026年11月に講習を受けた | 次は2027年4月1日から3年以内 → 2030年3月31日まで |
| 2025年7月に乙4の免状の交付を受け、2026年6月に給油取扱所で働き始めた(交付から2年以内) | 交付日以後の最初の4月1日(2026年4月1日)から3年以内 → 2029年3月31日まで |
| 2018年に免状の交付を受けたが、ずっと危険物を扱わず、2026年10月に初めて取扱作業に就いた(講習も受けていない) | 交付が2年より前で、講習も受けていないので特例は使えない → 従事を始めた日から1年以内 |
進む 次の期限は、受講日ではなく「その後の最初の4月1日」から3年です。3月の終わりに受けると次の期限まで3年と少し、4月の半ばに受けると4年近くになります。受講した時期によって長さが変わるのはこのためです。
受けないとどうなるか
- 保安講習を受けないことは、消防法第13条の23の違反です
- 危険物取扱者が消防法や命令の規定に違反しているときは、免状を交付した都道府県知事が免状の返納を命じることができます(消防法第13条の2第5項)
- 返納を命じられた日から1年を経過しない人には、免状を交付しないことができるとされています(同条第4項第1号)
消防法の罰則の条(第38条以降)を見ると、保安講習の受講義務(第13条の23)の違反そのものを罰金などで罰する規定は見当たりません。ただ、返納を命じられて免状を失えば、危険物取扱者として取扱作業をしたり、無資格者の作業に立ち会ったりすることはできなくなります。期限を過ぎていることに気づいたら、先延ばしにせず受講の手続きを進めるのが現実的です。
どこで受けるか — 都道府県と指定講習機関
保安講習を行うのは都道府県知事で、総務大臣が指定する市町村長その他の機関も含まれます(消防法第13条の23)。条文は「免状を交付した都道府県」に限っていません。
総務大臣が指定する機関(指定講習機関)は一般社団法人か一般財団法人で、全国の受講希望者に、映像と音声の送受信による方法やこれに準ずる方法(オンライン)か、それと対面を組み合わせて講習を行える体制を持つことが指定の要件です(規則第58条の15第3項第4号・第4項第1号)。指定講習機関の講習の手数料は5,300円と政令で決まっています(危険物の規制に関する政令第40条第2項)。
都道府県が行う講習の手数料は都道府県の条例で決まりますが、国が示す標準額(地方公共団体の手数料の標準に関する政令)も5,300円です。この標準額は令和6年5月1日に4,700円から上がりました。国の標準額としての4,700円は、令和6年4月30日までの額です。
2026年10月19日に確かめた、2つの実施者の案内は次のとおりです。
| 全国危険物安全協会(指定講習機関) | 東京消防庁 | |
|---|---|---|
| 形 | 完全オンライン(動画の視聴と効果測定) | 会場(対面。午前9時から午後1時まで)とオンライン |
| 手数料 | 5,300円(非課税) | 5,300円(非課税)。オンラインはクレジットカード決済のみ |
| 講習区分 | 給油取扱所・コンビナート・一般 | 対面は給油取扱所・一般(オンラインはコンビナートの回もある) |
| 受けられる期間 | 令和8年度の申込みは令和8年5月7日〜令和9年2月15日。受講は申込受付を完了した日から30日間(令和9年3月31日まで) | 回ごとの日程 |
| 修了の扱い | すべての課程(動画の視聴・効果測定など)を修了すると修了証が出る。修了証を免状と一緒に持つ | オンラインの修了証は免状と一緒に持てば裏面の処理は必須ではない |
全国危険物安全協会の案内には、受講者の住所の都道府県を限る記載はありません。ただし、東京消防庁は「東京消防庁以外が実施するオンライン講習を修了した際に交付される「修了証」は東京消防庁では処理することができません。」としているので、修了証の扱い(免状の裏面への記載など)は講習を受けた実施者に問い合わせます。日程・申込方法は年度ごとに変わるので、受ける前に実施者の最新の案内で確かめてください。
講習の中身
講習の科目・講習時間などの細目は、消防庁長官が定めます(規則第58条の14第3項)。都道府県知事が決めるのではありません。試験では「講習を行う都道府県知事が定める」と入れ替えた文が誤りになります。
正誤の文で確かめる — ひっかけの型
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 危険物取扱者免状の交付を受けている者は、すべて保安講習を受けなければならない | 誤り | 対象は取扱作業に従事している危険物取扱者だけ |
| 取扱作業に従事する者は、免状を持たない者も保安講習を受けなければならない | 誤り | 対象は危険物取扱者 |
| 丙種危険物取扱者は保安講習の対象ではない | 誤り | 従事していれば丙種も対象 |
| 講習を受けた者は、受講日以後の最初の4月1日から3年以内に次の講習を受ける | 正しい | 規則第58条の14第2項 |
| 保安講習は5年ごとに受ける | 誤り | 3年。5年は消防設備士の講習 |
| 新たに取扱作業に従事する者は、従事した日から1年以内に受ける | 正しい | 規則第58条の14第1項 |
| 講習の科目・時間などの細目は、講習を行う都道府県知事が定める | 誤り | 消防庁長官が定める |
| 保安講習は免状を交付した都道府県でしか受けられない | 誤り | 条文にそのような限定はない |
ぴよパスのオリジナル予想問題で確かめられます。
消防設備士の講習との違い
同じ消防法の講習でも、消防設備士の講習は対象も周期も違います。
| 危険物保安講習 | 消防設備士の講習 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 消防法第13条の23・規則第58条の14 | 消防法第17条の10・消防法施行規則第33条の17 |
| 受ける人 | 取扱作業に従事している危険物取扱者だけ | 消防設備士の全員(従事しているかを問わない) |
| 最初の期限 | 従事してから1年以内(特例あり) | 免状の交付日以後の最初の4月1日から2年以内 |
| 2回目以降 | 最初の4月1日から3年以内 | 最初の4月1日から5年以内 |
消防設備士の講習の数え方は 消防設備士の講習 にまとめています。危険物保安監督者に選任されている人の要件や業務は 危険物保安監督者とは で扱っています。
出典
- 消防法 第13条の2・第13条の23・第16条の4(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)
- 危険物の規制に関する政令 第40条第2項(同・2026年4月4日施行の版)
- 危険物の規制に関する規則 第55条・第58条の14・第58条の15(同・2026年6月30日施行の版)
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令 本則の表二十一の項(e-Gov法令検索・2025年4月1日施行の版。令和5年政令第347号附則で保安講習の額は令和6年5月1日から)
- 一般財団法人全国危険物安全協会「オンライン保安講習(指定講習機関)」・「保安講習の概要」(2026年10月19日に確認)
- 東京消防庁「危険物取扱者保安講習」・令和8年度 講習案内(2026年10月19日に確認)
当サイトの問題は危険物取扱者試験の問題ではありません。法令をもとに独自に作った練習問題です。消防試験研究センターとは関係ありません。










