危険物施設は、指定数量以上の危険物を貯蔵したり取り扱ったりする施設で、消防法では「製造所、貯蔵所及び取扱所」と書かれ、危政令などではまとめて製造所等と呼ばれます(危政令第6条)。指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所で貯蔵し、製造所等以外の場所で取り扱ってはいけません(消防法第10条第1項)。ただし、消防長または消防署長の承認を受ければ、10日以内の期間、仮に貯蔵し、取り扱うことができます(同項ただし書)。
製造所等の区分と基準は、危険物取扱者試験の「危険物に関する法令」で学ぶ論点です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法は2025年6月1日施行の版、危険物の規制に関する政令(以下「危政令」)は2026年4月4日施行の版)をもとに書いています。
製造所等の区分を1枚で
| 区分 | どんな施設か(危政令第2条・第3条) | 主な数字・決まり |
|---|---|---|
| 製造所 | 危険物を製造する施設 | 保安距離と保有空地が要る(第9条) |
| 屋内貯蔵所 | 屋内の場所で貯蔵・取扱い | 基本の形は、独立した専用の平家建ての貯蔵倉庫で、軒高6メートル未満(第2類・第4類だけの倉庫で総務省令の要件を満たすものは20メートル未満)、床面積1,000平方メートル以下(第10条第1項)。一部の第2類・第4類だけなら平家建て以外(第2項)、倍数20以下ならほかの用途の建築物の1階か2階(第3項)にも設けられる |
| 屋外タンク貯蔵所 | 屋外にあるタンクで貯蔵・取扱い | 液体の危険物のタンクの周囲に防油堤(第11条) |
| 屋内タンク貯蔵所 | 屋内にあるタンクで貯蔵・取扱い | 基本の形は、平家建の建築物のタンク専用室に設置(第12条第1項)。容量は指定数量の40倍以下で、第4石油類・動植物油類以外の第4類は、40倍が2万リットルを超えるときは2万リットル以下(例: ガソリンは40倍の8,000リットル) |
| 地下タンク貯蔵所 | 地盤面下に埋没したタンクで貯蔵・取扱い | 基本の形は、タンク室に設置し、タンクとタンク室の内側は0.1メートル以上離す。タンクの頂部は地盤面から0.6メートル以上下(第13条第1項。二重殻タンクなどは第2項・第3項) |
| 簡易タンク貯蔵所 | 簡易タンクで貯蔵・取扱い | タンク1基600リットル以下、1つの貯蔵所に3基以内、同一品質の危険物のタンクは2基以上設けない(第14条) |
| 移動タンク貯蔵所 | 車両に固定したタンクで貯蔵・取扱い(タンクローリーなど) | 容量3万リットル以下、4,000リットル以下ごとに間仕切り(第15条) |
| 屋外貯蔵所 | 屋外の場所で、決められた危険物だけを貯蔵・取扱い | 柵等で区画し、周囲に保有空地(第16条) |
| 給油取扱所 | 給油設備で自動車等の燃料タンクに直接給油する施設(ガソリンスタンド) | 間口10メートル以上・奥行6メートル以上の給油空地(第17条) |
| 第一種販売取扱所 | 店舗で容器入りのまま販売。指定数量の倍数15以下 | 建築物の1階に設置(第18条) |
| 第二種販売取扱所 | 店舗で容器入りのまま販売。指定数量の倍数15を超え40以下 | 第18条第2項 |
| 移送取扱所 | 配管・ポンプなどで危険物を移送する施設(パイプライン) | 一の事業所の敷地内にとどまるものは除く |
| 一般取扱所 | 給油・販売・移送以外の取扱所 | 製造所の基準を準用(第19条) |
指定数量の倍数の計算は 危険物の指定数量一覧 に、第4類の品名の分け方は 第4類危険物の品名一覧 にまとめています。
7つの貯蔵所の見分け方
貯蔵所は、どこで貯蔵するかと、タンクを使うかで見分けられます。
| 場所 | タンクを使う | タンクを使わない |
|---|---|---|
| 屋内 | 屋内タンク貯蔵所 | 屋内貯蔵所(容器に入れて倉庫に置くなど) |
| 屋外 | 屋外タンク貯蔵所 | 屋外貯蔵所(決められた危険物だけ) |
| 地盤面下 | 地下タンク貯蔵所 | — |
| 車両 | 移動タンク貯蔵所 | — |
| 屋内・屋外どちらも | 簡易タンク貯蔵所(簡易タンクを使うもの) | — |
簡易タンクは、屋内に置いても屋内タンク貯蔵所ではなく簡易タンク貯蔵所です。簡易タンクは原則として屋外に設置し、周囲に1メートル以上の幅の空地を保有します。決められた構造の専用室内に設置するときは、タンクと専用室の壁との間に0.5メートル以上の間隔を保ちます(危政令第14条第1号・第4号)。
移動タンク貯蔵所の「車両」には、被牽引自動車のうち、前車軸がなく、その一部が牽引自動車に載せられて重量の相当部分を支えられる構造のもの(セミトレーラー)が含まれ、被牽引自動車はこの構造のものに限られます(危政令第2条第6号)。
屋外貯蔵所に置ける危険物
屋外貯蔵所で貯蔵し、取り扱えるのは次の危険物だけです(危政令第2条第7号)。
| 類 | 置けるもの |
|---|---|
| 第2類 | 硫黄、硫黄のみを含有するもの、引火性固体(引火点が0度以上のものに限る) |
| 第4類 | 第一石油類(引火点が0度以上のものに限る)、アルコール類、第二石油類、第三石油類、第四石油類、動植物油類 |
第4類のうち置けないのは、特殊引火物と、引火点が0度未満の第一石油類です。厚生労働省のモデルSDSでは、アセトンの引火点は−20度、ベンゼンは−11度、トルエンは4.4度なので、同じ第一石油類でもトルエンは置け、アセトンとベンゼンは置けません。
屋外貯蔵所は、湿潤でなく排水のよい場所に設け、柵等で区画し、柵等の周囲に指定数量の倍数に応じて3メートル以上〜30メートル以上の空地を保有します(危政令第16条第1項第2号〜第4号)。空地の幅の表は 保安距離と保有空地 にまとめています。
4つの取扱所の見分け方
| 取扱所 | 見分けるポイント | 根拠(危政令第3条) |
|---|---|---|
| 給油取扱所 | 給油設備で自動車等の燃料タンクに直接給油する。あわせて、給油設備からガソリンを容器に詰め替えたり軽油を車両に固定した4,000リットル以下のタンクに注入したり、固定した注油設備から灯油・軽油を容器に詰め替えたり4,000リットル以下のタンクに注入したりできる(ガソリンはタンクに注入できない) | 第1号 |
| 販売取扱所 | 店舗で容器入りのまま販売する。倍数15以下が第一種、15を超え40以下が第二種 | 第2号 |
| 移送取扱所 | 配管とポンプなどで移送する。移送が一の事業所の敷地内にとどまるものは除く | 第3号 |
| 一般取扱所 | 上の3つ以外のすべての取扱所 | 第4号 |
一般取扱所には、吹付塗装、洗浄、焼入れの作業を専ら行うもの、危険物を消費するボイラーやバーナー以外では危険物を取り扱わないもの、車両に固定したタンクへの注入や容器への詰め替えを専ら行うもの、油圧装置・切削装置・熱媒体油循環装置・蓄電池設備などで危険物を使うものなどがあり、総務省令で基準の特例を定めることができるとされています(危政令第19条第2項)。
保安距離と保有空地が要る施設
| 施設 | 保安距離 | 保有空地 | 根拠(危政令) |
|---|---|---|---|
| 製造所 | 要る | 要る | 第9条第1項第1号・第2号 |
| 屋内貯蔵所(第10条第1項の形) | 要る | 要る | 第10条第1項第1号・第2号 |
| 屋外タンク貯蔵所 | 要る | 要る | 第11条第1項第1号・第2号 |
| 屋外貯蔵所 | 要る | 要る | 第16条第1項第1号・第4号 |
| 一般取扱所 | 要る | 要る | 第19条第1項(第9条第1項を準用) |
| 簡易タンク貯蔵所(屋外に設けるもの) | — | タンクの周囲に1メートル以上 | 第14条第4号 |
屋内タンク・地下タンク・移動タンク貯蔵所、給油取扱所、販売取扱所には、この表のような保安距離と保有空地の定めはありません(給油取扱所には給油空地が別にあります)。倍数20以下でほかの用途の建築物に設ける屋内貯蔵所(第10条第3項)にも、保安距離と保有空地はかかりません。
製造所等を設置するときは、製造所等ごとに市町村長等の許可を受け、完成したら市町村長等の完成検査を受けて、技術上の基準に適合していると認められてから使います(消防法第11条第1項・第5項)。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 屋内に設置した簡易タンクで危険物を貯蔵する施設は、屋内タンク貯蔵所である | 誤り | 簡易タンクを使うものは簡易タンク貯蔵所(危政令第2条) |
| 移動タンク貯蔵所のタンクの容量は、2万リットル以下である | 誤り | 3万リットル以下(危政令第15条第1項第3号) |
| 簡易貯蔵タンク1基の容量は、600リットル以下である | 正しい | 危政令第14条第5号 |
| 指定数量の倍数が20の危険物を容器入りのまま販売する店舗は、第一種販売取扱所である | 誤り | 15を超え40以下は第二種販売取扱所 |
| 屋外貯蔵所では、引火点0度以上の第一石油類を貯蔵できる | 正しい | 危政令第2条第7号 |
| 指定数量以上の危険物は、消防長等の承認を受ければ10日以内に限り仮に貯蔵できる | 正しい | 消防法第10条第1項ただし書 |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、製造所等の論点を確かめられます。










