甲種3類は「水をかけられない場所」の資格
甲種3類が扱うのは、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の3つです。他の類が1つの設備を扱うのに対し、3類だけは3設備をまとめて問われます。
3つに共通するのは、水をかけられない場所を守るという役割です。
| 守る場所 | 水が使えない理由 |
|---|---|
| 通信機器室・電算室 | 通電中の機器に水をかけると二次被害が出る |
| 発電機室・変圧器室 | 感電と機器損傷のおそれ |
| 駐車場・自動車整備工場 | 油火災に注水すると燃焼面が広がる |
| ボイラー室・鍛造場・乾燥室 | 高温部への注水は危険 |
消防法施行令第13条は、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の5設備について、防火対象物の区分ごとにどれを設置できるかを表で定めています。3類の3設備はこの表の中で、水系が選べない区分の受け皿になっています。
3設備の役割の違い
同じ「水を使わない」でも、消火の仕方と適する場所が違います。
不活性ガス消火設備は二酸化炭素・窒素・IG-55・IG-541を放出して酸素濃度を下げます。二酸化炭素は消火能力が高い一方で人体に危害を及ぼすため、規制が最も厳しい設備です。消防法施行規則第19条第5項第1号は、全域放出方式を設けるのは駐車の用に供される部分及び通信機器室であって常時人がいない部分とし、続く第1号の2で常時人がいない部分以外には全域放出方式・局所放出方式を設けてはならないと定めています。
ハロゲン化物消火設備はハロン1301などを放出して燃焼の連鎖反応を止めます。消火剤の量が少なくて済み、放射時間もハロン系で30秒以内と短いのが特徴です。
粉末消火設備は炭酸水素ナトリウム等の粉末を放出します。放射圧力は0.1メガパスカル以上と3設備で最も低く、屋外や開放的な場所にも使えます。ただし道路の用に供される部分には全域放出方式・局所放出方式を設けてはならない(規則第21条第4項第1号の2)という制限があります。
試験の構成
甲種3類は甲種1類・2類と同じ枠組みで実施されます。
| 科目 | 内訳 | 問題数 |
|---|---|---|
| 消防関係法令 | 共通8問+類別7問 | 15問 |
| 基礎的知識 | 機械6問+電気4問 | 10問 |
| 構造・機能・工事・整備 | 機械10問+電気6問+規格4問 | 20問 |
| 筆記合計 | 45問 | |
| 実技 | 鑑別等5問+製図2問 | 7問 |
- 試験時間: 3時間15分
- 受験料: 6,600円(甲種は類別を問わず一律)
- 合格基準: 筆記全体で60%以上、かつ筆記の各科目で40%以上、かつ実技で60%以上
3つの条件を同時に満たす必要があります。筆記が7割取れていても実技が5割なら不合格、逆に実技が満点でも法令が4割を切れば不合格です。
受験者4,080人・合格率25.6%という位置
令和6年度の実績(消防試験研究センター公表値)を甲種6区分で並べます。
| 区分 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 甲種5類 | 3,681人 | 1,288人 | 35.0% |
| 甲種特類 | 1,079人 | 377人 | 34.9% |
| 甲種4類 | 19,767人 | 6,715人 | 34.0% |
| 甲種2類 | 3,890人 | 1,061人 | 27.3% |
| 甲種3類 | 4,080人 | 1,045人 | 25.6% |
| 甲種1類 | 12,086人 | 2,914人 | 24.1% |
甲3は6区分中5番目で、甲1に次いで低い合格率です。受験者数は甲2と同程度で、甲4の5分の1ほどの市場です。
低い理由は「ガスや粉末が難解だから」ではなく、3設備ぶんの数値を取り違えずに覚え切れるかにあります。放射圧力・放射時間・消火剤量・充てん比が3設備でそれぞれ違い、しかも似た数値が並びます。
取り違えやすい数値の例
たとえば移動式のホース接続口の水平距離は、次のとおりです。
| 設備 | 水平距離 | 根拠 |
|---|---|---|
| 不活性ガス消火設備 | 15メートル以下 | 令第16条第3号 |
| ハロゲン化物消火設備 | 20メートル以下 | 令第17条第2号 |
| 粉末消火設備 | 15メートル以下 | 令第18条第2号 |
ハロゲン化物だけが20メートルです。3つ並べて「ハロゲン化物だけ20」と覚えると取り違えません。この型の識別が甲3の学習の中心になります。
他の甲種との関係
甲1(屋内消火栓・スプリンクラー等の水系)と甲2(泡)は水系で、ポンプ・配管・水源・全揚程という共通の土台があります。甲3はここから外れ、貯蔵容器・放出弁・選択弁・起動用ガス容器という別系統の機器を扱います。
一方で、全域放出方式・局所放出方式・移動式という方式の枠組みは甲2と共通です。噴射ヘッドの設置基準も、ハロゲン化物(令第17条第1号)と粉末(令第18条第1号)はいずれも不活性ガス(令第16条第1号・第2号)の例によるとされており、令第16条を軸に整理できます。
甲4(自動火災報知設備)は電気中心なので、甲3とは重なりが小さい類です。











