指定数量を覚えたつもりが、翌週には灯油と重油の数字が入れ替わっている。引火点の数値が、似たもの同士で混ざってしまう——危険物乙4の勉強で「覚えられない」と感じる原因は、頭の悪さではなく、覚え方が暗記に向いていないことがほとんどです。
乙4は法令15問・物理化学10問・性質消火10問の計35問で、試験時間は2時間、各科目60%以上 (法令9問・物化6問・性消6問) が合格の条件です。指定数量や品名の区切り、保安距離のように「数字を覚えていれば取れる問題」が多く、1科目でも落とすと不合格になるので、暗記の精度がそのまま合否を分けます。
この記事では、まず覚える数字を1枚にまとめた暗記表 (印刷できるPDFつき) を置き、そのあとで表を記憶に定着させる手順を説明します。暗記だけで合格できるわけではなく、法令の読み取りや計算問題もあるので、問題演習と組み合わせて使ってください。
危険物乙4の暗記表 (暗記シートPDF)
暗記シートPDFをダウンロード (A4・2ページ) — 1ページ目が答えつき、2ページ目は数字を空欄にした確認用です。数字はすべて、消防法・危険物の規制に関する政令・同規則の条文 (e-Gov 法令検索で2026年9月25日に施行されている版) で確かめました。
第4類の品名と指定数量
| 品名 | 決まり方 (1気圧) | 法の例示 | 指定数量 (非水溶性) | 指定数量 (水溶性) |
|---|---|---|---|---|
| 特殊引火物 | 発火点100℃以下、または引火点−20℃以下で沸点40℃以下 | ジエチルエーテル・二硫化炭素 | 50L | (区別なし) |
| 第1石油類 | 引火点21℃未満 | アセトン・ガソリン | 200L | 400L |
| アルコール類 | 炭素数1〜3の飽和1価アルコール (変性アルコールを含む) | — | 400L | (区別なし) |
| 第2石油類 | 引火点21℃以上70℃未満 | 灯油・軽油 | 1,000L | 2,000L |
| 第3石油類 | 引火点70℃以上200℃未満 | 重油・クレオソート油 | 2,000L | 4,000L |
| 第4石油類 | 引火点200℃以上250℃未満 | ギヤー油・シリンダー油 | 6,000L | (区別なし) |
| 動植物油類 | 動植物から抽出・引火点250℃未満 | — | 10,000L | (区別なし) |
出典: 品名の決まり方と例示は消防法 別表第一 備考、指定数量は危険物の規制に関する政令 別表第三。
覚え方の芯は2つです。引火点の区切りは「21・70・200・250」、第1〜第3石油類の水溶性は非水溶性の2倍。品名が違う危険物を同じ場所に置くときは、それぞれの「貯蔵量 ÷ 指定数量」を足し、和が1以上なら指定数量以上とみなされます (消防法 第10条第2項)。
製造所の保安距離と保有空地
| 相手 | 保たなければならない距離 |
|---|---|
| 住居 (同じ敷地内のものを除く) | 10m以上 |
| 学校・病院・劇場など多数の人を収容する施設 | 30m以上 |
| 重要文化財などの建造物 | 50m以上 |
| 高圧ガスの施設 (規則で定めるもの) | 20m以上 |
| 特別高圧架空電線 7,000V超〜35,000V以下 | 水平距離3m以上 |
| 特別高圧架空電線 35,000V超 | 水平距離5m以上 |
保有空地 (製造所) は、指定数量の倍数が10以下なら3m以上、10を超えるなら5m以上です。出典: 危険物の規制に関する政令 第9条第1項第1号・第2号、高圧ガスの施設の距離は危険物の規制に関する規則 第12条第2項。
期限と回数の数字
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 危険物保安監督者になれる実務経験 (甲種・乙種) | 6か月以上 |
| 保安講習 (取扱作業に従事し始めてから) | 1年以内 |
| 保安講習 (受講した後) | 受講日以後の最初の4月1日から3年以内 |
| 定期点検 | 1年に1回以上 |
| 免状の写真 | 過去10年以内に撮影したもの |
| 仮貯蔵・仮取扱い (消防長等の承認) | 10日以内 |
出典: 消防法 第10条第1項・第13条第1項、危険物の規制に関する規則 第51条第2項・第58条の14・第62条の4。
法令が改正された場合、施行日以降に行われる試験は原則として改正後の内容で出題されます (消防試験研究センターのよくある質問)。改正の前後に受ける人は、受験する回の案内も確認してください。
この記事で分かること
- バラバラの数字を「塊」にして暗記量そのものを減らすチャンク化のやり方
- 引火点・指定数量など、混同しやすい数値を取り違えなくする比較表の作り方
- 忘れる前に回す「当日・1週間・1か月」の反復スケジュール
- 暗記が苦手な人がやりがちな失敗と、その直し方
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チャンク化: 7品名を「塊」で覚える
人間が一度に覚えられる数字の量には限りがあります。第4類の指定数量を1個ずつ丸暗記しようとすると破綻するので、意味のまとまり(チャンク)に分けて覚えます。
第4類の代表的な指定数量を、性質でグルーピングするとこうなります。
| 区分 | 代表品目 | 指定数量 |
|---|---|---|
| 第一石油類(非水溶性) | ガソリン | 200L |
| 第二石油類(非水溶性) | 灯油・軽油 | 1,000L |
| 第三石油類(非水溶性) | 重油 | 2,000L |
ここで覚えるのは「200 → 1,000 → 2,000」という増えていく流れです。バラバラの3つの数字ではなく、「石油類は階段状に増える」という1つのルールとして頭に入れると、覚える負荷が一気に下がります。アルコール類や水溶性は別チャンクとして切り分けると混ざりません。語呂で固めたい人は 危険物乙4 語呂合わせ も併用すると定着が速いです。
比較表: 似た数値を「並べて」混同を消す
暗記で取り違えが起きるのは、似た項目を別々の場所で覚えているからです。引火点のように「どっちがどっちだったか」が混ざりやすいものは、必ず1枚の表に並べてください。
| 物質 | 品名 | 引火点の区切り (1気圧) | 覚えるポイント |
|---|---|---|---|
| ガソリン | 第1石油類 | 21℃未満 | 常温 (20℃前後) で引火しうる側 |
| 灯油 | 第2石油類 | 21℃以上70℃未満 | 常温では引火しにくい側 |
| 軽油 | 第2石油類 | 21℃以上70℃未満 | 灯油と同じ品名 (指定数量も同じ1,000L) |
縦に並べると「ガソリンは21℃未満の第1石油類、灯油・軽油は21℃以上の第2石油類」という対比が一目で見えます。バラバラに覚えた数字は混ざるが、並べて覚えた数字は混ざらない——これが比較表の効果です。自分で手を動かして1枚作るほど記憶に残るので、テキストの表を眺めるより、白紙に書き起こすことをおすすめします。表づくりの具体例は 危険物乙4 ノートの作り方 にもまとめています。
反復スケジュール: 忘れる前に3回戻る
どんなに上手く覚えても、人は翌日には大半を忘れます。これは意志の問題ではなく仕組みなので、忘れる前に戻る回数を決めておきます。
- 1回目: 覚えた当日(または翌日) — 寝る前に同じ表をもう一度見る
- 2回目: 1週間後 — 思い出せなかった項目だけ印をつけて再確認
- 3回目: 1か月後 — 印のついた弱点だけを高速で回す
この「当日・1週間・1か月」の3回を通すと、短期記憶が長期記憶に移ります。コツは、毎回ゼロから全部やり直さないこと。2回目以降は思い出せた項目を消し込み、残った弱点に時間を集中させます。復習のタイミング設計は 危険物乙4 復習のタイミング でさらに詳しく扱っています。
暗記を「思い出す練習」に変える具体的な手順
暗記が定着しない最大の原因は、テキストを「眺めるだけ」で終わっていることです。眺めるのはインプット、思い出すのはアウトプット。本番で問われるのはアウトプットなので、覚える段階から「思い出す練習」にしておく必要があります。具体的には次の手順で1テーマ5分の自己テストを回します。
- テキストの数値を隠す(指定数量なら品名だけ見えるようにする)
- 数値を声に出すか紙に書いて答える
- 答え合わせをして、間違えた行に印をつける
- 印のついた行だけ、もう一度隠して答える
このとき大事なのは、思い出せずに3秒つまったら、すぐ答えを見て次へ進むこと。思い出そうと粘る時間はムダで、見て覚え直し、回数を増やすほうが速く定着します。たとえば指定数量なら「ガソリンは?」と自問して「200L」と即答できなければ印、というように、問い→即答の往復をひたすら繰り返します。
| 状態 | 判定 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 3秒以内に即答できた | 定着済み | 次サイクルでは飛ばす |
| 3秒つまった/間違えた | 弱点 | 印をつけて重点反復 |
| 全く出てこない | 未定着 | チャンク化・語呂から作り直す |
この「即答できるか」を基準にすると、自分がどこまで覚えたかが客観的に分かります。なんとなく「だいたい覚えた」で終わらせないことが、本番での取りこぼしを防ぎます。
暗記だけでは届かない場面
暗記術を駆使しても、以下の場面では別の対策が必要です。
- 法令の読み取り問題: 選択肢の文章を正確に読む力が必要。演習量で補う。
- 計算問題(指定数量の倍数など): 解法フローを理解していないと暗記だけでは解けない。
- 性質科目の理由問題: 「なぜそうなるか」の理解がないと引っかけ選択肢に負ける。
残り時間が少ない人ほど、新しいことを増やすより反復回数を増やすほうが効きます。直前期は新規インプットを止め、作った比較表を1日1周する運用に切り替えてください。
暗記が苦手な人がやりがちな失敗
- バラバラに丸暗記する: 数字を孤立させると覚える量が膨れ上がる。必ずチャンクにまとめる。
- 似た数値を別々に覚える: 引火点や指定数量は比較表で並べて、対比で覚える。
- 1回覚えて満足する: 復習なしでは1週間後にほぼ消える。反復をカレンダーに先に入れておく。
まとめ: まず指定数量の表を1枚、自分で書く
危険物乙4の暗記は、チャンク化で量を減らし、比較表で混同を消し、反復スケジュールで忘却を防ぐ——この3つを回せば、暗記が苦手でも数字問題を得点源にできます。才能ではなく、覚え方の設計の問題です。
今日の一手は、上の指定数量の表を見ずに白紙へ書き出してみること。書けなかった行が、あなたの最初の弱点です。書けるようになったら、危険物乙4のオリジナル予想問題345問で同じ数値が問われる問題を解き、暗記が本番形式で通用するか確認してください。
「書いて隠す」を何度も繰り返すなら、消して書き直せる卓上ホワイトボードが手軽です。選び方は勉強用ホワイトボードのおすすめにまとめています。
出典:
- 一般財団法人 消防試験研究センター 危険物取扱者試験 — 試験概要・出題範囲
- 消防法 (昭和23年法律第186号)








