銀行業務検定 財務3級は、五答択一式50問のうち 財務諸表30問・財務分析20問 で、100点満点の60点以上が合格です。財務分析の20問は、決算書の数字から比率や回転期間を計算して読む問題が中心です。
財務分析の公式は、安全性・収益性・生産性・損益分岐点・資金とキャッシュ・フロー の5つのまとまりに分けると、30本の式に整理できます。この記事では一覧と、丸暗記に頼らない覚え方を4つまとめます。財務省の法人企業統計や日本政策金融公庫の小企業の経営指標調査に載っている指標は、その式にそろえました。
結論: 4つの覚え方で30本を「意味」から思い出す
- 分子と分母を言葉で言う: 「自己資本比率=総資本のうち自己資本の割合」のように、何を何で割るかを文で覚える。
- 高いほどよいか、低いほどよいかで分ける: 固定比率・固定長期適合率・借入金依存度・損益分岐点比率は 低いほど安全。流動比率などと向きが逆になる。
- 対になる式でまとめる: 回転率と回転期間は逆数、損益分岐点比率+安全余裕率=100%、総資本経常利益率=売上高経常利益率×総資本回転率。
- 定義が資料で違う指標は、問題文の式に従う: 付加価値・自己資本・回転期間の分母は、資料によって中身が違う。問題文に式が添えられていれば、それで計算する。
- 事務局報に財務3級の成績が載っている直近3回の「正解率の低かった問題」には、毎回 キャッシュ・フロー計算書 の問題が入っている。間接法の「足す・引く」の向きは別に練習する。
財務分析は20問。正解率が低いのは計算とキャッシュ・フロー
銀行業務検定協会は、回ごとの成績発表で「正解率の低かった問題」を5つずつ公表しています。事務局報に成績が載っている財務3級の直近3回(2026年10月19日時点)のうち、財務分析とキャッシュ・フローにあたる論点は次のとおりです。
| 回(実施日) | 財務分析・キャッシュ・フローの論点 |
|---|---|
| 第160回(2025年3月2日) | 労働生産性の算出/投資活動によるキャッシュ・フローの区分に記載されるもの |
| 第161回(2025年6月1日) | 営業活動によるキャッシュ・フローの額の算出(間接法)/売掛金残高の算出 |
| 第163回(2026年3月1日) | 安全性諸指標の算出/営業活動によるキャッシュ・フローの額の算出(間接法) |
キャッシュ・フロー計算書の問題は3回とも入りました(うち2回は間接法の営業活動によるキャッシュ・フローの計算)。ほかは指標の 算出、つまり式を正しく当てはめられるかで点を落としています。公式は「見たことがある」では足りず、数字を入れて計算できるところまで練習します。
財務分析の公式一覧
比率は「×100」で%にします。回転期間の「月商」は、売上高÷12です。
安全性(返済の力・資金のバランス)
| 指標 | 式 | 向き | 練習する分野 |
|---|---|---|---|
| 流動比率 | 流動資産÷流動負債×100 | 高いほど安全 | 安全性の分析 |
| 当座比率 | 当座資産÷流動負債×100 | 高いほど安全 | 同上 |
| 自己資本比率 | 自己資本÷総資本×100 | 高いほど安全 | 同上 |
| 固定比率 | 固定資産÷自己資本×100 | 低いほど安全(100%を超えた分は、負債で固定資産を持っている) | 同上 |
| 固定長期適合率 | 固定資産÷(自己資本+固定負債)×100 | 低いほど安全(100%を超えると、固定資産の一部を流動負債でまかなっている) | 同上 |
| 借入金依存度 | 借入金÷総資本×100(借入金に何を含めるかは問題文の定義に従う) | 低いほど安全 | 同上 |
| 借入金回転期間 | 借入金(短期借入金+長期借入金)÷月商(か月) | 短いほど負担が軽い | 同上 |
当座資産は、流動資産から棚卸資産などを除いた、すぐ現金にしやすい資産(現金預金・受取手形・売掛金など)です。当座資産は流動資産の一部なので、当座比率が流動比率を上回ることはありません。
収益性(もうける力・資本の使い方)
| 指標 | 式 | 向き | 練習する分野 |
|---|---|---|---|
| 総資本経常利益率 | 経常利益÷総資本×100 | 高いほどよい | 収益性・生産性の分析 |
| 自己資本利益率(ROE) | 当期純利益÷自己資本×100 | 高いほどよい | 同上 |
| 売上高総利益率 | 売上総利益÷売上高×100 | 高いほどよい | 同上 |
| 売上高営業利益率 | 営業利益÷売上高×100 | 高いほどよい | 同上 |
| 売上高経常利益率 | 経常利益÷売上高×100 | 高いほどよい | 同上 |
| 総資本回転率 | 売上高÷総資本(回) | 高いほど資本を効率よく使っている | 同上 |
| 売上債権回転期間 | 売上債権÷月商(か月) | 短いほど回収が早い | 同上 |
| 棚卸資産回転期間 | 棚卸資産÷月商(か月) | 短いほど在庫が少ない | 同上 |
生産性(1人あたり・付加価値)
| 指標 | 式 | 練習する分野 |
|---|---|---|
| 付加価値 | 資料により定義が違う(下の「覚え方4」) | 収益性・生産性の分析 |
| 労働生産性 | 付加価値÷従業員数 | 同上 |
| 付加価値率 | 付加価値÷売上高×100 | 同上 |
| 労働分配率 | 人件費÷付加価値×100 | 同上 |
| 資本装備率(法人企業統計の呼び方は労働装備率) | 有形固定資産÷従業員数 | 同上 |
| 資本生産性(設備投資効率) | 付加価値÷有形固定資産×100 | 同上 |
損益分岐点(売上がいくらで利益がゼロになるか)
| 指標 | 式 | 練習する分野 |
|---|---|---|
| 限界利益 | 売上高−変動費 | 損益分岐点分析 |
| 限界利益率 | 限界利益÷売上高(=1−変動費率) | 同上 |
| 損益分岐点売上高 | 固定費÷限界利益率 | 同上 |
| 損益分岐点比率 | 損益分岐点売上高÷売上高×100(低いほど安全) | 同上 |
| 安全余裕率 | (売上高−損益分岐点売上高)÷売上高×100 | 同上 |
| 目標利益を出す売上高 | (固定費+目標利益)÷限界利益率 | 同上 |
資金とキャッシュ・フロー
| 指標 | 式 | 練習する分野 |
|---|---|---|
| 所要運転資金 | 売上債権+棚卸資産−仕入債務 | 資金繰り・キャッシュ・フローの分析 |
| 所要運転資金(回転期間で) | 月商×(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間−仕入債務回転期間)(3つの回転期間をどれも月商で出したとき) | 同上 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー(間接法) | 税引前当期純利益に、資金の動かない損益・営業の資産と負債の増減・投資活動と財務活動の区分に入る損益を足し引きして小計を出し、利息・法人税等の受払いを加減する | 同上 |
覚え方1: 分子と分母を言葉で言う
公式を「A÷B」の形で覚えると、分子と分母を取り違えます。「Bのうち、Aはどれだけか」「Aは、Bの何倍(何か月分)か」 と文で言えるようにします。
| 指標 | 言葉にすると |
|---|---|
| 自己資本比率 | 総資本のうち、返さなくてよいお金(自己資本)はどれだけか |
| 固定比率 | 固定資産を、自己資本でどれだけまかなえているか(はみ出した分は借りたお金で買っている) |
| 固定長期適合率 | 固定資産を、自己資本と長く借りるお金(固定負債)でまかなえているか |
| 売上債権回転期間 | まだ回収していない売上は、月の売上の何か月分か |
| 労働分配率 | 生み出した付加価値のうち、人件費に回したのはどれだけか |
| 損益分岐点比率 | いまの売上の何%まで落ちると、利益がゼロになるか |
「自己資本比率は総資本で割る」「固定比率は自己資本で割る」のように、分母に来るのは「基準にするもの」 です。固定比率と固定長期適合率は、分子がどちらも固定資産で、分母が「長く使えるお金」です。
覚え方2: 高いほどよいか、低いほどよいかで分ける
肢の「〜が高いほど安全性が高い」を判断する問題は、向きを覚えていれば計算せずに解けます。
| 高いほどよい | 低い(短い)ほどよい |
|---|---|
| 流動比率・当座比率・自己資本比率 | 固定比率・固定長期適合率 |
| 総資本経常利益率・ROE・売上高利益率 | 借入金依存度・借入金回転期間 |
| 総資本回転率 | 売上債権回転期間・棚卸資産回転期間 |
| 安全余裕率 | 損益分岐点比率 |
右の列は、分子が「固定資産」「借入金」「売上債権」「損益分岐点売上高」のように、大きいと身動きが取りにくくなるもの です。分母が同じでも、分子が重荷なら低いほどよい、と覚えます。
覚え方3: 対になる式でまとめる
別々に覚える数を減らせる組み合わせです。
| 対になる式 | 関係 |
|---|---|
| 回転率と回転期間 | 回転期間(か月)=12÷回転率(年の売上高で数えた回転率のとき) |
| 損益分岐点比率と安全余裕率 | 損益分岐点比率+安全余裕率=100% |
| 総資本経常利益率の分解 | 総資本経常利益率=売上高経常利益率×総資本回転率 |
| 労働生産性の分解(売上高で) | 労働生産性=付加価値率×従業員1人当たり売上高 |
| 労働生産性の分解(設備で) | 労働生産性=資本生産性×資本装備率 |
| 労働分配率と1人当たり人件費 | 労働分配率=1人当たり人件費÷労働生産性 |
分解の式は、間の項目が約分されることを確かめると忘れません。たとえば「経常利益÷売上高」×「売上高÷総資本」は、売上高が消えて「経常利益÷総資本」になります。
損益分岐点は、数字を入れて一度計算しておくと式の形が残ります。売上高1,000・変動費600・固定費300(単位は千円)なら、限界利益率は(1,000−600)÷1,000=40%、損益分岐点売上高は300÷0.4=750、損益分岐点比率は750÷1,000=75%、安全余裕率は100%−75%=25%です。利益は1,000×40%−300=100で、売上高が25%(250)減ると、ちょうど利益がゼロになります。
覚え方4: 定義が資料で違う指標は、問題文の式に従う
同じ名前でも、資料によって中身が違う指標があります。ここを1つの式で丸暗記すると、問題文の条件と食い違ったときに迷います。
| 指標 | 違いの例 |
|---|---|
| 付加価値 | 足す項目が資料で違う。財務省の法人企業統計は、人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益の5項目を足す。日本政策金融公庫の小企業の経営指標調査の粗付加価値額は、人件費+減価償却費+支払利息割引料+税引前当期純利益の4項目を足す |
| 自己資本 | 法人企業統計の自己資本比率は、純資産から新株予約権を除いた額で計算する。同じ法人企業統計でも、固定比率は純資産(新株予約権を除かない)で割る |
| 借入金依存度 | ぴよパスの問題には、分子に社債と受取手形割引高を入れ、分母の総資本にも受取手形割引高を足す形がある。式が添えられていれば、それに従う |
| 有形固定資産を使う指標 | 法人企業統計の労働装備率・設備投資効率は、有形固定資産から建設仮勘定を除き、期首・期末の平均を使う |
| 当座資産 | 有価証券を入れるか。法人企業統計は現金預金+受取手形+売掛金+有価証券、小企業の経営指標調査は現金・預金+受取手形+売掛金 |
| 回転期間 | 棚卸資産を期末の額にするか、期首・期末の平均にするか。仕入債務は月商ではなく仕入高÷12で割ることもある(小企業の経営指標調査の支払勘定回転期間) |
ぴよパスの財務3級の練習問題は、定義が資料で分かれる指標には問題文に式を書いています。たとえば付加価値を「売上高−外部購入価値」(足すのではなく引く形)で求める問題や、受取勘定回転期間の分子に割引手形を含める問題(小企業の経営指標調査と同じ形)があります。本番でも 式が添えられていれば、覚えた式より問題文の式を優先 します。式が無いときに備えて、上の一覧の形は覚えておきます。
間接法のキャッシュ・フローは「足す・引く」の向きで覚える
正解率の低かった問題に2回入った間接法は、税引前当期純利益から出発して、利益とお金の動きのずれ を直す計算です。向きは次の表で覚えます。
| 項目 | 足すか引くか | 理由 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 足す | 費用として引いたが、お金は出ていない |
| 貸倒引当金の増加 | 足す | 費用として引いたが、お金は出ていない |
| 固定資産売却益 | 引く | 利益に入っているが、売った代金は投資活動の区分に入る |
| 売上債権の増加 | 引く | 売上に入っているが、まだ回収していない |
| 棚卸資産の増加 | 引く | 在庫の仕入れにお金を使った |
| 仕入債務の増加 | 足す | 仕入れたが、まだ払っていない |
資産(売上債権・棚卸資産)は 増えたら引く、負債(仕入債務)は 増えたら足す です。減ったときは向きが逆になります。小計を出したあと、法人税等の支払額などを加減して、営業活動によるキャッシュ・フローになります。小計のままで答えないように注意します。
電卓と計算の手順
全国一斉公開試験(紙)では、電卓を1台まで持ち込めます(金融計算・関数・メモの機能が付いたものは使えません)。テストセンターで受けるCBT方式は電卓を持ち込めず、画面上の電卓を使います。CBTで受ける人は、画面の電卓で%や小数の四捨五入を扱う練習もしておきます。
計算問題は、次の順で解くと取り違えが減ります。
- 問題文の 式の定義と単位(千円・%・か月・回)と、四捨五入の位 に線を引く
- 分子と分母に入れる数字を、資料から先に書き出す(自己資本なら新株予約権を除くか、など)
- 計算してから、肢の数字が「別の式で出した値」になっていないかを見る(純資産をそのまま使った値・小計のままの値など)
練習の順番
- 損益分岐点分析(16問): 式の数が少なく、数字を入れて練習しやすい。
- 安全性の分析(16問): 7つの比率の分子と分母を、言葉で言えるようにする。
- 収益性・生産性の分析(24問): 分解の式と、付加価値の定義の違いを確かめる。
- 資金繰り・キャッシュ・フローの分析(24問): 間接法の向きと、所要運転資金を計算で確かめる。
- 財務諸表の5分野(120問)とあわせて、模擬試験で財務諸表30問・財務分析20問を120分で通す。
模試は Premium(月980円)の機能で、本試験と同じ50問・120分、財務諸表30問・財務分析20問の配分で出題します(分野の中の配分はぴよパスの設定・問題はオリジナルの予想問題です)。分野ごとの練習問題200問は無料で解けます。試験の形と正解率の低かった論点の全体は財務3級の練習問題の記事にまとめています。
まとめ
- 財務3級の財務分析(20問)の公式は、安全性・収益性・生産性・損益分岐点・資金とキャッシュ・フローの5つ、30本に整理できる。
- 分子と分母を言葉で言う。固定比率・固定長期適合率・借入金依存度・損益分岐点比率は低いほど安全。
- 回転率と回転期間、損益分岐点比率と安全余裕率、利益率の分解は、対の式でまとめて覚える。
- 付加価値・自己資本・回転期間は資料で定義が違う。問題文に式があれば、それに従う。
- 事務局報に載っている直近3回の正解率の低かった問題には、3回ともキャッシュ・フロー計算書の問題が入った。間接法は「資産が増えたら引く・負債が増えたら足す」。
関連記事
出典
- 経済法令研究会「財務3級」(出題形式・科目構成・合格基準・持込品): https://www.khk.co.jp/exam/exam_detail.php?pid=52133&oid=42
- 経済法令研究会「よくあるご質問」(CBTは電卓を持ち込めず、電卓を使う種目は画面上の電卓を使う): https://www.khk.co.jp/faq/
- 銀行業務検定協会「事務局報」No.349(第160回)・No.350(第161回)・No.354(第163回)の成績結果と正解率の低かった問題: https://www.kenteishiken.gr.jp/upfiles/pdf/7142.pdf ・ https://www.kenteishiken.gr.jp/upfiles/pdf/7247.pdf ・ https://www.kenteishiken.gr.jp/upfiles/pdf/7634.pdf
- 財務総合政策研究所「法人企業統計からみえる企業の財務指標」(総資本経常利益率・固定比率・自己資本比率・当座資産・設備投資効率・労働生産性・付加価値率・労働装備率・付加価値額の5項目): https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/zaimu/index.htm (全体のPDF: https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/zaimu/zaimu_all.pdf )
- 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」の解説(参考1 経営指標の算出式。資本装備率・資本生産性・労働分配率・借入金回転期間・固定長期適合率・当座比率・粗付加価値額): https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings2_01.pdf
- 企業会計審議会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(間接法の定義と様式2の加減の向き): https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a909b2.htm
上の公的な資料に載っている指標は、その式にそろえました。資料によって定義が違う指標は、「覚え方4」に違いを書いています。2026年10月19日に確認しました。











