スプリンクラー設備をどの建物に設けるかは、消防法施行令第12条第1項の12の号で決まっています。大きく分けると、11階以上の階、特別養護老人ホームや、特定診療科名と病床を持つ病院などの避難が難しい人のいる施設、劇場の舞台部、床面積の大きい特定用途の建物(百貨店・病院は3,000m²以上、劇場・飲食店・ホテルなどは6,000m²以上)、延べ1,000m²以上の地下街、地階・無窓階・4階〜10階の大きな階です。
スプリンクラー設備の設置基準は、消防設備士甲種第1類・乙種第1類の試験科目「消防関係法令」(消防法施行規則第33条の10)の範囲に入る論点です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法施行令は2025年10月1日施行、消防法施行規則は2026年6月26日施行の版)で条文を確かめて書いています。
設置義務のある建物 — 第12条第1項の12の号
「特定用途」は、条文で何度も出てくる別表第一の(一)項〜(四)項(劇場・集会場、キャバレー・遊技場、飲食店、百貨店)・(五)項イ(旅館・ホテル)・(六)項(病院・福祉施設・保育所・幼稚園など)・(九)項イ(蒸気浴場など)を、この記事でまとめて呼ぶ言葉です。
| 号 | 対象 | 設置が必要になる条件 |
|---|---|---|
| 1号イ | 特定診療科名と療養病床・一般病床を持つ病院、特定診療科名を持ち4人以上入院させる診療所((六)項イ(1)(2)) | 面積にかかわらず |
| 1号ロ | 特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・介護老人保健施設など、避難が困難な要介護者を主として入居させる軽費老人ホーム・有料老人ホーム((六)項ロ(1))、乳児院(同(3)) | 面積にかかわらず |
| 1号ハ | 救護施設・障害児入所施設・障害者支援施設((六)項ロ(2)(4)(5)) | 介助がなければ避難できない人を主として入所させるものは面積にかかわらず、それ以外は延べ275m²以上 |
| 2号 | 劇場・映画館・公会堂など((一)項) | 舞台部の床面積が、地階・無窓階・4階以上にあるものは300m²以上、その他の階にあるものは500m²以上 |
| 3号 | 特定用途の建物と、特定用途を含む複合用途の建物((十六)項イ) | 地階を除く階数が11以上(建物全体) |
| 4号 | 特定用途の建物(平屋建を除く) | 床面積の合計が、百貨店((四)項)と有床の病院など((六)項イ(1)〜(3))は3,000m²以上、その他は6,000m²以上 |
| 5号 | ラック式倉庫((十四)項) | 天井の高さが10mを超え、かつ延べ700m²以上 |
| 6号 | 地下街((十六の二)項) | 延べ1,000m²以上 |
| 7号 | 準地下街((十六の三)項) | 延べ1,000m²以上で、特定用途の部分が500m²以上 |
| 8号 | 指定可燃物(可燃性液体類を除く)を扱う別表第一の建築物など | 政令の数量の1,000倍以上 |
| 9号 | 地下街のうち、(六)項イ(1)(2)・ロ((1)〜(5))の用途の部分(延焼を抑制する構造のものを除く) | 6号に当たらない地下街でも |
| 10号 | 特定用途を含む複合用途の建物((十六)項イ) | 特定用途の部分の床面積の合計が3,000m²以上のとき、その部分がある階 |
| 11号 | 地階・無窓階・4階〜10階の階 | 下の表 |
| 12号 | 11階以上の階 | 別表第一のすべての用途 |
1号の施設でも、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を持つものは除かれます。延べ275m²の線がかかるのは救護施設・障害児入所施設・障害者支援施設(1号ハ)で、特別養護老人ホームなどの老人ホーム(1号ロ)は面積にかかわらず対象です。3号・4号・10号〜12号には「総務省令で定める部分を除く」という除外があります。
地階・無窓階・4階〜10階の階(11号)
| 用途 | 地階・無窓階 | 4階〜10階 |
|---|---|---|
| 劇場など((一)項)・飲食店((三)項)・ホテル((五)項イ)・病院や福祉施設((六)項)・蒸気浴場など((九)項イ) | 床面積1,000m²以上の階 | 床面積1,500m²以上の階 |
| キャバレー・遊技場など((二)項)・百貨店((四)項) | 床面積1,000m²以上の階 | 床面積1,000m²以上の階 |
| 特定用途を含む複合用途の建物((十六)項イ) | 特定用途の部分が1,000m²以上の階 | 特定用途の部分が1,500m²以上の階((二)項・(四)項の用途の部分がある階は1,000m²以上) |
数字を覚えるときは「11階以上は全部」「3,000と6,000」「地下街1,000」「舞台300と500」「救護施設・障害児入所施設・障害者支援施設の275」の5つを軸にし、11号の1,000・1,500を後から足すと整理しやすくなります。
乙1:舞台部が地階・無窓階・4階以上にあるときの床面積を問う1問 →
ヘッドの水平距離 — 1.7m・2.1m・2.3m
スプリンクラーヘッドは、天井(天井のない場合は屋根の下面)の各部分から1つのヘッドまでの水平距離が、次の距離以下になるように設けます(消防法施行令第12条第2項第2号イ)。
| 部分 | 水平距離 |
|---|---|
| 劇場など((一)項)の舞台部 | 1.7m以下 |
| 指定可燃物を1,000倍以上扱う建物(8号) | 1.7m以下(高感度型ヘッドは性能に応じた総務省令の距離) |
| 3号・4号・10号〜12号の建物(舞台部を除く)で、耐火建築物以外 | 2.1m以下(高感度型ヘッドは同上) |
| 同じく耐火建築物 | 2.3m以下(高感度型ヘッドは同上) |
このほか、開口部には上枠の長さ2.5m以下ごとに1つのヘッドを設けます(10階以下の部分では延焼のおそれのある部分の開口部に限り、防火戸などの防火設備がある開口部は不要。同項第3号)。福祉施設など(1号)・ラック式倉庫・地下街などは、総務省令で定める種別のヘッドを総務省令で定めるところにより設けます(同項第2号ハ)。
ヘッドの種類ごとの取付けの細目は 消防設備士甲種1類 スプリンクラーヘッドの取付け基準 にまとめています。
設置しなくてよい場合・水道連結型
- 水噴霧消火設備・泡消火設備・不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備を技術上の基準に従って設けたときは、その有効範囲内の部分にはスプリンクラー設備を設置しないことができます(令第12条第3項)
- 水源として水道の水管に直接つなぐ特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、1号と9号の施設で、防火上有効な措置が講じられた部分以外の床面積の合計が1,000m²未満のものに限って設置できます(同条第2項第3号の2)
- ラック式倉庫(5号)には、屋内消火栓設備の「倍読み」の規定(令第11条第2項)が準用されます(令第12条第4項)。屋内消火栓の倍読みは 消防設備士甲種1類の設置基準 で扱っています
設備としての基準(第12条第2項)
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 水源 | 用途・構造・規模・ヘッドの種別に応じて総務省令で算出した水量以上を貯留する(水道連結型を除く) |
| 放水性能 | 用途・構造・規模・ヘッドの種別に応じて総務省令で定める性能 |
| 加圧送水装置 | 点検に便利で、災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に(総務省令で定める水道連結型を除く) |
| 非常電源・送水口 | 非常電源を附置し、消防ポンプ自動車が容易に接近できる位置に双口形の送水口(水道連結型を除く) |
| 補助散水栓 | 総務省令で定めるところにより設けることができる |
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 11階以上の階には、用途にかかわらずスプリンクラー設備が必要 | 正しい | 令第12条第1項第12号(総務省令で定める部分を除く) |
| 地下街は、延べ面積にかかわらずスプリンクラー設備が必要 | 誤り | 延べ1,000m²以上(6号。ただし福祉施設などの部分は9号) |
| 百貨店は、平屋建以外で床面積の合計が6,000m²以上のとき必要 | 誤り | 百貨店は3,000m²以上(4号) |
| 劇場の舞台部が1階(無窓階でない)にあるときは、舞台部の床面積500m²以上で必要 | 正しい | 2号(地階・無窓階・4階以上なら300m²以上) |
| 耐火建築物の一般の部分では、ヘッドまでの水平距離を2.1m以下にする | 誤り | 耐火建築物は2.3m以下(耐火建築物以外が2.1m以下) |
| 泡消火設備を基準どおりに設けた部分には、スプリンクラー設備を設置しないことができる | 正しい | 令第12条第3項 |
ぴよパスのオリジナル予想問題で確かめられます。
出典
- 消防法施行令 第11条・第12条・別表第一(e-Gov法令検索・2025年10月1日施行の版)
- 消防法施行規則 第33条の10(同・2026年6月26日施行の版)
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