乙種5類は「避難器具の整備・点検」ができる資格
消防設備士 乙種第5類は、金属製避難はしご・救助袋・緩降機といった避難器具の整備と点検を行える国家資格です。
甲種第5類との違いは業務範囲です。甲種は工事と整備の両方ができますが、乙種は整備だけで工事はできません。試験の科目名にもそれが表れており、甲種は「構造・機能・工事・整備」、乙種は「構造・機能・整備」で工事が入りません。
避難器具は、火災時に階段が使えなくなったときに人が実際に降りてくる設備です。他の類が「火を消す」設備を扱うのに対し、5類だけが「人を逃がす」設備を扱います。
受験資格がない — ここが甲種5類との最大の違い
| 項目 | 乙種5類 | 甲種5類 |
|---|---|---|
| 受験資格 | なし(誰でも受験できる) | あり(国家資格・学歴・実務経験のいずれか) |
| 業務範囲 | 整備・点検 | 工事・整備 |
| 受験料 | 4,400円 | 6,600円 |
| 試験時間 | 1時間45分 | 3時間15分 |
| 筆記 | 30問 | 45問 |
| 実技 | 鑑別等5問のみ(製図なし) | 鑑別等5問+製図2問 |
出典: 受験資格 / 試験科目・問題数(乙種) / 受験料
消防設備士の乙種は全類で受験資格がありません。学歴も実務経験も要らないので、これから設備管理の仕事に入る人が最初に取る資格として選べます。
乙種に製図はありません。 公式の乙種の問題数一覧には「製図」の列そのものが存在せず、実技は鑑別等5問だけです。甲種で最も対策に時間がかかるのが製図なので、この差は学習負担に直結します。
電気の出題がゼロ
乙種5類のもうひとつの特徴は、電気の出題が1問もないことです。
| 科目 | 内訳 | 問題数 |
|---|---|---|
| 消防関係法令 | 共通6+類別4 | 10問 |
| 基礎的知識 | 機械5(電気の出題なし) | 5問 |
| 構造・機能・整備 | 機械9+規格6(電気の出題なし) | 15問 |
| 筆記合計 | 30問 | |
| 実技 | 鑑別等5 | 5問 |
乙種1類・2類・3類は機械3問+電気2問という配分で両方が出ますし、乙種4類・7類は逆に電気だけ(機械の出題がゼロ)です。乙種5類は乙種6類と同じ「機械だけ」のグループに入ります。
🔴 このため、電気工事士や電気主任技術者を持っていても乙種5類では免除される科目がありません。試験時間も1時間45分のまま短縮されません。「電気工事士があれば消防設備士は免除で楽」という一般論は5類には当てはまりません。
一方で、乙種5類と乙種6類だけは「特定の消防団員」の免除があり、乙種で唯一 実技(鑑別等)まで免除されます(5年以上勤務し消防学校の専科教育機関科を修了した人が対象)。
受験者1,166人・合格率32.1%という位置
令和6年度の実績です。
| 区分 | 申請者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 乙種5類 | 1,458 | 1,166 | 374 | 32.1% |
| 甲種5類 | 4,692 | 3,681 | 1,288 | 35.0% |
出典: 令和6年度 試験実施状況
13区分の中では乙7(63.9%)、乙6(36.2%)、甲5(35.0%)、特類(34.9%)、甲4(34.0%)に次ぐ6番目です。受験者数は13区分で下から3番目で、乙2(761人)、特類(1,079人)に次ぐ小ささになります。
⚠️ 「乙種のほうが甲種より簡単」は5類では成立しますが(乙5 32.1% < 甲5 35.0%)、2類・3類では逆転しています(乙2 26.3% < 甲2 27.3%、乙3 23.6% < 甲3 25.6%)。乙種は受験資格がないぶん準備不足の層も受けるためと考えられます。
学習の中心は「規格」と「設置の細目」
乙種5類は構造・機能・整備の15問のうち6問が規格で、比重は4割です(乙種1類〜3類は3問で2割)。
規格の根拠になるのは次の2つの省令です。
- 金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令(昭和40年自治省令第3号)
- 緩降機の技術上の規格を定める省令(平成6年自治省令第2号)
条文で寸法・荷重・材料・表示が決まっているので、覚えれば確実に得点になる領域です。
⚠️ 救助袋には規格省令がありません。 避難器具の規格省令はこの2つだけで、救助袋の基準は昭和53年消防庁告示第1号にあります。消防法施行規則第27条第1項第11号が「避難器具(金属製避難はしご及び緩降機を除く)は消防庁長官が定める基準に適合すること」と書いているのはそのためです。
もうひとつ、降下空間・操作面積・避難空地は令にも規則にも数値がありません。これらは平成8年消防庁告示第2号にあります。テキストで「操作面積は0.5平方メートル」と読んで施行規則を探しても見つからないのは、そもそも規則に書かれていないからです。











