危険物乙4の計算は、求める量を決める→単位をそろえる→式に代入する→検算すると、どこでつまずいたかを確認できます。ここでは指定数量、熱量、濃度、比重、燃焼の例題を途中式つきで解きます。いずれも学習用の独自例題で、実際の試験問題の転載ではありません。
すぐに問題を解きたい方は乙4の計算問題をまとめた演習ページへ進めます。読みながら解きたい方は、次の表から苦手な計算を選んでください。
何を求める問題かで式を選ぶ
| 求めるもの | 最初に書く関係 | 単位・条件の確認 |
|---|---|---|
| 指定数量の倍数 | 各数量÷各指定数量を合計 | 同一の場所か、Lとm³が混ざっていないか |
| 熱量 | 質量×比熱×温度差 | 比熱がg基準かkg基準か |
| 質量パーセント濃度 | 溶質の質量÷溶液全体の質量×100 | 分母に水だけを入れない |
| 液体の質量 | 密度×体積 | 比重と密度を区別する |
| 燃焼に必要な酸素 | 反応式の係数比から計算 | 物質量の比と質量の比を区別する |
これは本記事で扱う例題の分類です。乙4の計算範囲をこの5つだけに限定するものではありません。サイト内の計算演習には、体膨張や蒸気濃度などの問題もあります。
指定数量の倍数:品目ごとに割ってから足す
同一の場所で複数の危険物を貯蔵・取り扱う場合は、それぞれの数量を指定数量で割り、その値を合計します。指定数量そのものは危険物の品名・性状に応じて決まります。消防法第10条第2項・危険物政令第1条の11、別表第三が根拠です。
例題1:ガソリン600Lの倍数
ガソリンの指定数量を200Lとして計算します。
- 倍数=600L÷200L=3倍
- 検算:200L×3=600L
例題2:ガソリン400L・灯油3,000L・重油2,000Lの合算
同一の場所で貯蔵し、指定数量は順に200L・1,000L・2,000Lとします。
| 危険物 | 数量÷指定数量 | 倍数 |
|---|---|---|
| ガソリン | 400÷200 | 2 |
| 灯油 | 3,000÷1,000 | 3 |
| 重油 | 2,000÷2,000 | 1 |
合計は2+3+1=6倍です。数量を先に全部足して1つの指定数量で割る方法では、品目ごとの基準量の違いを反映できません。
例題3:アルコール類200L・特殊引火物25Lの合算
同一の場所で貯蔵し、指定数量はアルコール類400L・特殊引火物50Lとします。
- 200÷400+25÷50=0.5+0.5=1倍
- 「1以上」には1ちょうども含まれます。
倍数は、指示がなければ途中で四捨五入しません。1倍未満の値を丸めて1倍にすると、数量区分の判定まで変わってしまいます。法的な扱いは指定数量表と規制の境目、手順を丁寧に確認したい方は倍数計算の7ステップへ。
比熱と熱量:温度そのものではなく温度差を使う
状態変化や外部への熱の損失を考えず、比熱を一定とする例題です。式は Q=m×c×ΔT。mは質量、cは比熱、ΔTは上昇後と上昇前の温度の差です。
例題4:2kgの水を20℃から60℃へ温める
水の比熱を4.2kJ/(kg・K)とします。
- 温度差=60−20=40K
- Q=2×4.2×40=336kJ
- 検算:336÷(2×4.2)=40K
温度差の1℃と1Kは同じ大きさです。60℃をそのまま代入すると、上昇前の20℃を無視してしまいます。
例題5:5kgの液体を10℃から30℃へ温める
比熱を2.0kJ/(kg・K)とします。
- 温度差=30−10=20K
- Q=5×2.0×20=200kJ
kg×kJ/(kg・K)×Kで、答えの単位はkJになります。ただし、単位が合うだけでは計算の正しさは確定しません。温度差や代入した数字も逆算して確認します。比熱がJ/(g・℃)で与えられたら、質量をgへそろえる必要があります。
質量パーセント濃度:分母は溶液全体
溶質がすべて溶け、混合中に物質が失われない条件で、溶質の質量÷溶液全体の質量×100を使います。
例題6:水180gに溶質20gを溶かす
- 溶液全体=180+20=200g
- 濃度=20÷200×100=10%
20÷180では、分母が水だけになっています。表現が「水180g」なのか「水溶液180g」なのかを区別してください。
例題7:濃度20%の水溶液500gに含まれる溶質
- 溶質=500×0.20=100g
- 溶媒=500−100=400g
- 検算:100÷500×100=20%
この%は質量の割合です。体積の割合を表すvol%と置き換えて計算することはできません。
比重と質量:水の密度を含めて考える
例題8:比重0.80の液体250Lの質量
基準となる水の密度を1.0kg/Lとする条件です。
- 液体の密度=0.80×1.0=0.80kg/L
- 質量=0.80kg/L×250L=200kg
比重は基準物質に対する密度の比で、単位がありません。体積に比重だけを掛けてよいと覚えるのではなく、基準の水の密度まで含めて式を確認します。
燃焼反応式:左右の原子数をそろえる
例題9:メタンの完全燃焼
骨組みはCH₄+O₂→CO₂+H₂O。炭素を1個、水素を4個にそろえると、右辺はCO₂+2H₂Oになります。右辺の酸素原子は合計4個なので、左辺のO₂は2分子分です。
CH₄+2O₂→CO₂+2H₂O
左右ともCが1個、Hが4個、Oが4個で一致します。
例題10:エタノールの完全燃焼
C₂H₅OHには炭素2個・水素6個・酸素1個が含まれます。
- 炭素2個に合わせ、右辺を2CO₂にする。
- 水素6個に合わせ、右辺を3H₂Oにする。
- 右辺の酸素は4+3=7個。エタノール自身が酸素1個を含むため、O₂で補うのは6個。
C₂H₅OH+3O₂→2CO₂+3H₂O
係数比から、エタノール1molに必要な酸素は3molと分かります。この1:3は質量比ではありません。質量へ進む場合は、それぞれのモル質量を使います。
解けなかった式を選んで練習する
答えを隠して、式を選ぶところから自分で解いてみてください。間違えたら「公式」「単位」「条件」「計算」のどこで止まったかを一言残すと、次に確認する箇所が決まります。
- 式の選び方から確認したい:計算が苦手な人の復習手順
- 違う論点も解いてみたい:乙4の計算問題一覧
- 科目全体へ戻りたい:危険物乙4の練習問題
出典・確認日:2026年9月11日
- 消防法 第10条第2項:同一場所の倍数合算。
- 危険物の規制に関する政令 第1条の11・別表第三:指定数量。
- 稲城市消防本部「指定数量とは」:代表物質の指定数量。
- 九州産業大学「熱・統計力学」1.4 比熱と熱容量:比熱と熱量の関係。例題の数値・途中式は本記事の独自設定です。








