「登録販売者はやめとけ」「資格は意味ない」と言われる理由の多くは、制度の決まりで説明できます。 合格して登録しても管理者の要件を満たすまでは「研修中の登録販売者」として働くこと、事業者が毎年12時間以上の研修を受けさせること、第1類医薬品は売れないこと、登録販売者だけの給与の公的統計は無いこと。一方で、第2類・第3類医薬品は薬剤師か登録販売者でないと売れず、2026年5月からは指定濫用防止医薬品の販売で、確認と情報提供の役割が法律で加わりました。
この記事では、意見や口コミではなく、医薬品医療機器等法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)と施行規則、厚生労働省の通知と公的統計で、言われる理由を一つずつ確かめます。
結論: 「やめとけ」と言われる理由と、制度の事実
| 言われること | 制度で確かめた事実 |
|---|---|
| 合格しても一人前に扱われない | 管理者の要件(原則 過去5年で通算2年)を満たすまでは「研修中の登録販売者」。研修中でない薬剤師・登録販売者の管理及び指導の下で働く |
| 研修が面倒 | 事業者は、従事する登録販売者に毎年度12時間以上の外部の研修を受けさせる義務がある |
| 売れる薬が限られる | 売れるのは第2類・第3類医薬品。第1類と要指導医薬品は薬剤師 |
| 給料が上がらない | 登録販売者だけの年収の公的統計は無い。job tag の年収384.8万円は販売店員全体の数字 |
| 合格者が多すぎる | 合格者は平成27年度以降、毎年約2.2万〜3.0万人(延べ) |
| 意味がない | 第2類・第3類は資格者でないと売れない。2026年5月からは指定濫用防止医薬品の確認と情報提供を担う |
登録販売者が売れる医薬品
医薬品医療機器等法第36条の9は、一般用医薬品を売る人を区分ごとに決めています(要指導医薬品は第36条の5)。
| 区分 | 売れる人 |
|---|---|
| 要指導医薬品 | 薬剤師 |
| 第1類医薬品 | 薬剤師 |
| 第2類医薬品・第3類医薬品 | 薬剤師又は登録販売者 |
- 第2類・第3類は、薬剤師か登録販売者でないと売れません。資格のない人は売れないので、この区分を扱う店には資格者が要ります。
- 第2類医薬品を売るときの情報提供は努力義務、購入者から相談があったときの情報提供は義務で、どちらも薬剤師か登録販売者が行います(第36条の10)。
- 第1類と要指導医薬品は売れません。「扱える薬が限られる」と言われるのはこの点です。
合格しても、しばらくは「研修中の登録販売者」
研修中の登録販売者とは
管理者になれる要件を満たさない登録販売者は、施行規則で「研修中の登録販売者」と呼ばれます(第15条第2項)。店舗販売業では、次の決まりがあります(施行規則第147条の2、厚生労働省の局長通知「登録販売者制度の取扱い等について」)。
- 名札に、研修中と分かる表記をする(通知の例は「登録販売者(研修中)」)。
- その店舗で勤務中の、研修中でない薬剤師か登録販売者の 管理及び指導の下 で働く。
- 店舗管理者の代行者にもなれない。
実務経験のない人は、合格・登録しても、しばらくは一人で売り場を任されない、というのは制度のとおりです。合格前に一般従事者として働いた期間も数えるので(次の表)、その期間が足りている人は、登録した時点で研修中ではありません。
管理者になれる要件(2023年4月から)
店舗管理者(第2類・第3類だけを扱う店舗)になれる登録販売者は、次のどれかに当たる人です(施行規則第140条第1項第2号・局長通知)。
| ルート | 要件 | 期間の数え方(通知) |
|---|---|---|
| 2年 | 過去5年間に、一般従事者としての実務と登録販売者としての業務の期間(従事期間)が通算2年以上 | 1か月に80時間以上働いた月を数える。または、月単位で通算2年以上かつ過去5年間で合計1,920時間以上 |
| 1年 | 過去5年間に従事期間が通算1年以上で、毎年度の研修と、店舗の管理・法令遵守の追加的研修(6時間以上)を修了 | 1か月に160時間以上働いた月を数える。または、月単位で通算1年以上かつ過去5年間で合計1,920時間以上 |
| 管理者経験 | 従事期間が通算1年以上で、店舗管理者か区域管理者の経験がある | 月単位で通算1年以上かつ合計1,920時間以上でもよい |
- 合格の前に、一般従事者として薬剤師か登録販売者の管理及び指導の下で働いた期間も、従事期間に数えられます。
- 1年のルートと管理者経験のルートは、2023年4月1日の施行規則の改正でできました。
管理者の要件と登録の手続きは登録販売者の実務要件と販売従事登録の記事で詳しく説明しています。
毎年12時間以上の研修
店舗販売業者は、その店舗で働く登録販売者に、研修を毎年度受けさせなければなりません(施行規則第147条の11の3。2022年4月1日から省令上の義務)。
- 研修は講義で、総時間数が12時間以上。内容は、医薬品の基本的な知識、人体の働きと医薬品、主な医薬品、薬事の法規、適正使用と安全対策、リスク区分の変更、店舗の管理など。
- 厚生労働省の研修実施要領は、研修を、その販売業者以外の機関(厚生労働大臣に届け出た研修実施機関)が行う研修とし、対面のほか、オンライン研修なども認めています。
- 義務を負うのは雇う側の事業者です。研修実施機関は受講者から実費相当の負担金を取れます(施行規則第15条の11の3第5項を準用)が、その費用を事業者と本人のどちらが負担するかは、法令と通知には定めが見当たりません。
登録は勤め先が決まってから
試験に合格しただけでは、まだ売り場には立てません。都道府県知事の販売従事登録が要ります(法第36条の8第2項)。
- 申請先は、働く店舗の所在地の都道府県知事です。雇われて働く場合は、勤め先(薬局開設者・販売業者)との使用関係を証する書類が要ります(施行規則第159条の7)。勤め先が決まってから申請します。
- 登録できるのは1つの都道府県だけですが、登録した都道府県以外でも働けます(局長通知)。
- 手数料は都道府県で違います。東京都は7,300円、大阪府は7,100円です(各都府のページ)。
- 大阪府は「登録販売者試験の合格通知書に期限はありません」としています。合格者名簿は都道府県が永年保管します(局長通知)。
給与と求人の公的な数字
登録販売者だけの年収や資格手当の公的統計は、見つかりませんでした。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の「医薬品販売/登録販売者」のページには次の数字がありますが、ページ自身が「必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」と注記しています。
| 項目 | 数字 | 何の数字か |
|---|---|---|
| 賃金(年収) | 384.8万円 | 販売店員全体(令和7年賃金構造基本統計調査を加工) |
| 1時間あたりの賃金(短時間労働者) | 1,238円 | 同上 |
| 求人賃金(月額) | 22.4万円 | ハローワークの求人統計(令和7年度・このページの値) |
| 有効求人倍率 | 3.28 | 同上 |
年収の384.8万円は、同じサイトの化粧品販売や衣料品販売のページと同じ値で、医薬品の販売に限った数字ではありません。求人統計の値はページごとに違い、有効求人倍率は医薬品販売のページがいちばん高く(3.28。化粧品販売0.79、衣料品販売1.89)、求人賃金(月額)は逆にいちばん低い値でした(22.4万円。化粧品販売23.8万円、衣料品販売22.7万円)。どちらも、登録販売者の資格が要る求人だけの数字かどうかは書かれていません。資格手当の有無や額は勤め先ごとに違うので、求人票で確かめます。
合格者は毎年2万人以上
厚生労働省の「登録販売者試験実施状況」では、合格者は平成27年度以降、毎年約2.2万〜3.0万人です(最少は令和2年度の21,953人)。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 61,070人 | 30,082人 | 49.3% |
| 令和4年度 | 55,606人 | 24,707人 | 44.4% |
| 令和5年度 | 52,214人 | 22,814人 | 43.7% |
| 令和6年度 | 54,526人 | 25,459人 | 46.7% |
| 令和7年度 | 58,996人 | 24,004人 | 40.7% |
- 受験者数と合格者数は延べ人数です(同じ人が複数の試験で合格していることがある)。
- 都道府県に登録されている登録販売者の数が試験実施状況の資料に載っているのは平成24年度末(121,137人)までで、今の全国の登録者数の公的な数字は見つけられませんでした。
- 平成27年4月1日から、受験に実務経験が要らなくなりました。代わりに、管理者になるには過去5年のうち2年の実務・業務経験が要り、それまでは管理者などの管理・指導の下で働く形になりました(平成26年厚生労働省令第92号・附則第1条、厚生労働省「登録販売者試験の実務経験等の省令改正の概要」)。
「意味ない」とは言えない制度の変化
2026年5月から — 指定濫用防止医薬品の確認と情報提供
2026年5月1日に、改正された医薬品医療機器等法第36条の11が施行されました。濫用のおそれがある成分(エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、プソイドエフェドリン、ブロモバレリル尿素、メチルエフェドリンの8成分。外用剤と、生薬が主な有効成分の製剤を除く)を含む「指定濫用防止医薬品」を売るときは、次のことが義務になりました。
- 薬剤師か登録販売者が、購入者の年齢や、ほかの医薬品の使用・購入の状況などを確かめ、書面などで情報を提供する。
- 18歳未満には、厚生労働大臣が定める数量(1包装で、成分ごとに5日分か7日分まで)を超える製品や、複数個は売れない。
- 18歳未満への定める数量までの製品の販売と、18歳以上への定める数量を超える製品・複数個の販売は、薬剤師か登録販売者が対面か映像つきのオンライン(ビデオ通話)で情報を提供して売る。電話・書面・チャットだけでは売れない。
厚生労働省の通知は、薬剤師と登録販売者に、支援が必要な購入希望者を支援につなげる「ゲートキーパー」としての役割も期待するとしています。
2027年5月から — 登録受渡店舗(遠隔管理の下での受け渡し)
2027年5月20日に施行される改正では、薬剤師などが常駐しない「登録受渡店舗」で、委託元の薬局・店舗が売った一般用医薬品を受け渡せるようになります。受け渡しを委託する薬局・店舗には「受渡管理者」を置き、第2類・第3類医薬品なら、薬剤師か、従事期間が通算2年以上、または1年以上で研修を修了しているなどの要件を満たす登録販売者でなければなりません。一方で、登録受渡店舗の責任者には、薬剤師・登録販売者の資格の要件はありません(薬局・店舗が自ら登録を受けたとみなされる場合は、その管理者が担います)。この仕組みが働き口にどう影響するかは、まだ分かりません。
取る前に確かめること
- 管理者になるまでの期間: 働く予定の時間で、月80時間(2年のルート)や月160時間(1年のルート)に届くか。届かない月が多いなら、合計1,920時間の数え方も確かめる。
- 研修: 勤め先が、毎年度12時間以上の研修をどう受けさせるか(勤務時間の扱い・費用)。
- 扱う薬: 第1類医薬品を扱う店では、登録販売者は第1類を売れない。
- 給与: 公的な数字は販売店員全体のもの。資格手当や管理者手当は求人票で確かめる。
試験の難しさは登録販売者試験の難易度、合格率の推移は登録販売者試験の合格率の記事にまとめています。
例題: ぴよパスの登録販売者の問題から
ぴよパスのオリジナル予想問題から2問です(本試験の問題ではありません)。
例題1(薬事関係法規) 第2類・第3類医薬品だけを販売する店舗で、登録販売者が店舗管理者になるための要件として、正しいものを選ぶ問題です。
答え: 過去5年間のうちに、薬局・店舗販売業等において一般用医薬品の販売等の業務に従事した期間が通算して2年以上あること等の実務経験が必要である。合格しただけで実務経験のない人(研修中の登録販売者)は、店舗管理者になれません。 この問題を解く →
例題2(薬事関係法規) 指定濫用防止医薬品を18歳に満たない人が買おうとしたときの対応として、正しいものを選ぶ問題です。
答え: 18歳未満の者への販売は原則として禁止されるが、厚生労働大臣が定める数量の範囲内であるなど一定の場合には、対面等により情報の提供を行ったうえで販売できる。本人確認をすれば数量の制限が外れる、というものではありません。 この問題を解く →
練習問題と模擬試験
ぴよパスの登録販売者試験の練習問題は、出題範囲の分野ごとに解け、全問に解説があります。令和8年4月の手引きの改訂(指定濫用防止医薬品など)に合わせた問題もあります。本試験の形で通しで解く模擬試験は Premium の機能です。
まとめ
- 登録販売者が売れるのは第2類・第3類医薬品。第1類と要指導医薬品は薬剤師。第2類・第3類は資格者でないと売れない。
- 合格・登録しても、管理者の要件(原則 過去5年で通算2年)を満たすまでは研修中の登録販売者として、管理及び指導の下で働く。2023年4月から1年のルートもある。
- 事業者は、毎年度12時間以上の研修を受けさせる義務がある。
- 登録販売者だけの年収の公的統計は無い。job tag の384.8万円は販売店員全体の数字。
- 合格者は平成27年度以降、毎年約2.2万〜3.0万人(延べ)。
- 2026年5月から、指定濫用防止医薬品の確認と情報提供を薬剤師か登録販売者が担う。2027年5月からは、登録受渡店舗に受け渡しを委託する薬局・店舗の受渡管理者にもなれる。
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出典
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第36条の5・第36条の8〜第36条の11、同法施行規則 第15条・第15条の11の3・第140条・第147条の2・第147条の11の3・第159条の7・第159条の10・第159条の18の5・第159条の18の6(e-Gov法令検索・2026年10月20日に確認)、改正後の同法・施行規則(2027年5月20日施行の版。第29条の5・第29条の6・第29条の8・第147条の22・第147条の25)、平成26年厚生労働省令第92号 附則第1条
- 厚生労働省 医薬・生活衛生局長通知「登録販売者制度の取扱い等について」(令和5年3月31日 薬生発0331第16号、最終改正 令和8年6月26日): https://www.mhlw.go.jp/content/001729093.pdf
- 厚生労働省「登録販売者に対する研修の実施要領について」(最終改正 令和8年3月19日): https://www.mhlw.go.jp/content/001676754.pdf
- 厚生労働省「登録販売者試験の実務経験等の省令改正の概要」: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/gaiyou_3.pdf
- 厚生労働省「これまでの登録販売者試験実施状況等について」(平成20年度〜令和7年度)
- 厚生労働省「令和7年改正法の概要」: https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001492021.pdf 、局長通知「指定濫用防止医薬品の販売等について」(令和7年12月26日): https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001628299.pdf 、指定成分の通知(医薬発0213第1号): https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001655325.pdf 、数量の通知(医薬発0213第2号): https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001655157.pdf
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「医薬品販売/登録販売者」(2026年10月20日に確認)
- 東京都保健医療局「登録販売者販売従事登録について」、大阪府「販売従事登録申請」(2026年10月20日に確認)










