単相は1つの交流電圧を使う方式、三相は大きさが同じで位相が120度ずつずれた3つの交流電圧を組み合わせて使う方式です。日本の低圧の配電では、住宅の照明・コンセントやエアコンには単相3線式100/200V、ビルや工場のモーター(動力)には三相3線式200Vが使われます。
第二種電気工事士の学科では、電気に関する基礎理論(三相の電力・結線)、配電理論及び配線設計(配電方式)、施工方法(対地電圧)、検査方法(絶縁抵抗)の範囲に入ります。消防設備士甲種第4類の電気の基礎や、電験三種の電力でも同じ考え方を使います。この記事は、e-Gov法令検索の版(電気事業法施行規則は2026年4月1日施行の版、電気設備に関する技術基準を定める省令(以下「電技省令」)は2023年3月20日施行の版)と、2026年9月29日に経済産業省のサイトから取得した電気設備の技術基準の解釈(以下「電技解釈」。令和7年11月20日改正の版)をもとに書いています。
単相と三相の違い(早見表)
| 項目 | 単相2線式 | 単相3線式 | 三相3線式 |
|---|---|---|---|
| 電線の本数 | 2本 | 3本(電圧線2本+中性線) | 3本 |
| とり出せる電圧 | 主に100V(200Vの単相2線式もある) | 100Vと200V | 200V |
| 主な用途 | 小さな住宅・機器 | 住宅(照明・コンセントは100V、エアコン・IH調理器などは200V) | モーター、業務用エアコン、ポンプなどの動力 |
| 電力の式 | P=V×I×cosθ | 100Vの負荷・200Vの負荷それぞれ P=V×I×cosθ | P=√3×V×I×cosθ(Vは線間電圧、Iは線電流) |
| 対地電圧 | 100V(1線が接地) | 100V(中性線が接地) | 1線を接地すれば、他の2線は200V |
一般送配電事業者など(いわゆる電力会社)が供給する標準電圧100Vと200Vは、供給する場所で、それぞれ101Vの上下6V、202Vの上下20Vを超えない値に保つよう努めることになっています(電気事業法第26条第1項、電気事業法施行規則第38条第1項)。
単相3線式100/200Vと中性線
単相3線式は、変圧器の低圧側の巻線の中央から中性線を出し、両端の2本を電圧線にした方式です。中性線と各電圧線の間が100V、2本の電圧線の間が200Vになるので、3本の電線で100Vと200Vの両方を使えます。中性線には、変圧器の低圧側の中性点でB種接地工事を施します(電技解釈第24条第1項第1号イ)。このため、200Vの回路でも電線と大地の間の電圧(対地電圧)は100Vにとどまります。200Vのエアコン専用回路は、2本の電圧線からとり、中性線はつなぎません。
なお、住宅の屋内では、中性線を持つ低圧分岐回路(100Vと200Vを1つの分岐回路でとる形)は、1つの機器への専用の配線にする場合、中性線が切れても機器に異常な電圧がかからないようにする場合、中性線が切れたら自動的に確実に遮断する装置を付ける場合のどれかでないと施設できません(電技解釈第149条第3項)。中性線が切れたときの危険(次の段)を避けるための決まりです。
100Vの負荷が両側で同じ大きさ(平衡)なら、中性線には電流が流れません。片側が大きいと、その差の電流が中性線に流れます。
中性線が切れると、両側の100Vの負荷が200Vの電圧線の間に直列につながる形になります。たとえば100V 200Wの負荷(抵抗50Ω)と100V 800Wの負荷(抵抗12.5Ω)では、電流は200÷62.5=3.2Aで、200Wの負荷に160V、800Wの負荷に40Vがかかります。消費電力の小さい負荷の側に100Vを超える電圧がかかり、機器が壊れるおそれがあります。そのため、多線式電路の中性線には過電流遮断器を施設しないことになっています(各極が同時に遮断される場合を除く。電技解釈第35条)。
三相3線式とY結線・Δ結線(√3の付き方)
三相では、電源や負荷の3つの相をY結線(スター結線)かΔ結線(デルタ結線)でつなぎます。線と線の間の電圧を線間電圧、1つの相にかかる電圧を相電圧、線を流れる電流を線電流、1つの相を流れる電流を相電流といいます。
| 結線 | 電圧の関係 | 電流の関係 |
|---|---|---|
| Y結線 | 線間電圧=√3×相電圧 | 線電流=相電流 |
| Δ結線 | 線間電圧=相電圧 | 線電流=√3×相電流 |
「Yは電圧に√3、Δは電流に√3」と覚えます。三相の電力は、どちらの結線でも次の式です。
- 有効電力 P=√3×線間電圧×線電流×力率(=1相の電力の3倍)
- 皮相電力 S=√3×線間電圧×線電流
たとえば線間電圧200V、線電流20A、力率0.8の三相負荷は、P=1.73×200×20×0.8=5,536W(約5.5kW)です。同じ抵抗3個を同じ電源につなぐとき、Δ結線からY結線に変えると、各相の電圧が1/√3になり、電力は電圧の2乗に比例するので、全消費電力は1/3になります。三相誘導電動機の回転の向きは、電源の3本のうち2本を入れ替えると逆になります。
三相が動力や送電に使われる理由
同じ電力を、同じ線間電圧・力率・電力損失・距離で送るとき、三相3線式は単相2線式より電線が少なくて済みます。単相2線式の電流をI₁とすると、三相3線式の線電流はI₁÷√3です。損失を同じにすると、単相2線式の 2×I₁²×R₁ と三相3線式の 3×(I₁÷√3)²×R₃ が等しいので R₃=2×R₁ となり、電線1本の断面積は半分で済みます。電線の量は、単相2線式の「2本×1」に対して三相3線式は「3本×1/2」なので、3/4(75%)です。三相誘導電動機は、三相の電流がつくる回転磁界で回るので、構造が簡単で丈夫です。
対地電圧と住宅の制限、絶縁抵抗の値
住宅の屋内電路の対地電圧は、150V以下が原則です(電技解釈第143条第1項)。単相3線式の200V回路は対地電圧が100Vなので、この原則の範囲で使えます。
中性点のないΔ結線の三相3線式200Vでは、変圧器の低圧側の1端子にB種接地工事を施すことができ(電技解釈第24条第1項第1号ロ)、その場合、他の2線の対地電圧は200Vです。住宅でこうした三相200Vの機器を使えるのは、定格消費電力2kW以上の機器に、その機器だけに電気を送る屋内配線を直接つなぎ、対地電圧300V以下、簡易接触防護措置、専用の開閉器と過電流遮断器、漏電遮断器(地絡遮断装置)などの条件を満たすときです(同項第1号。太陽電池の配線など、ほかの号の例外もある)。
低圧の電路の絶縁抵抗の最低値も、対地電圧で変わります(電技省令第58条)。
| 電路の区分 | 例 | 絶縁抵抗の最低値 |
|---|---|---|
| 使用電圧300V以下で、対地電圧150V以下 | 単相2線式100V、単相3線式100/200V(200Vの回路を含む) | 0.1MΩ |
| 使用電圧300V以下で、対地電圧150V超 | 1線を接地した三相3線式200V(対地電圧200V) | 0.2MΩ |
| 使用電圧300V超 | 三相4線式400V級など | 0.4MΩ |
単相3線式の200V回路は「使用電圧200V」でも対地電圧は100Vなので、0.1MΩの区分です。絶縁抵抗の測り方は 絶縁抵抗の基準と測定 で整理しています。
単相と三相の見分け方
- 電圧を測る:単相3線式100/200Vは、中性線と他の2本の間がそれぞれ100V、その2本の間が200V。三相3線式200Vは、3本のどの2本の間も200V
- 本数で決めない:単相3線式も三相3線式も3本。三相4線式(Y結線の中性点から1本を出した方式)もある
- 検相器で相順を確かめる:三相のモーターをつなぐときは、相順(回転の向き)を検相器で確かめる
電線の色分けは配線の慣行で、建物によって違うことがあります。色だけで決めず、電圧を測ってから作業します。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 単相3線式の200V回路は、対地電圧も200Vである | 誤り | 中性線が接地されているので対地電圧は100V(電技解釈第24条) |
| Y結線では、線電流=√3×相電流である | 誤り | Y結線は線間電圧=√3×相電圧。電流に√3が付くのはΔ結線 |
| 三相の電力は、P=3×線間電圧×線電流×力率である | 誤り | P=√3×線間電圧×線電流×力率 |
| Δ結線の抵抗負荷を同じ電源のままY結線に変えると、電力は1/√3倍になる | 誤り | 1/3倍(各相の電圧が1/√3、電力は電圧の2乗に比例) |
| 単相3線式の中性線には、ヒューズを入れて保護する | 誤り | 中性線には原則として過電流遮断器を施設しない(電技解釈第35条) |
| 住宅の屋内電路の対地電圧は原則150V以下で、2kW以上の機器などは条件つきで300V以下にできる | 正しい | 電技解釈第143条第1項 |
| 同じ条件で送るとき、三相3線式の電線の量は単相2線式の3/4で済む | 正しい | 電流がI÷√3、断面積が半分、本数が3本 |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、単相と三相の論点を確かめられます。
- 電工2種:中性線が断線したときの負荷の電圧を求める1問
- 電工2種:Y結線の線間電圧と相電圧の関係を選ぶ1問
- 電工2種:三相誘導電動機の消費電力を求める1問
- 電工2種:Δ結線からY結線に変えたときの電力を求める1問
- 電工2種:住宅で対地電圧300V以下にできる機器の下限を選ぶ1問
- 甲4:Δ結線の線電流と相電流の関係を選ぶ1問
三相の電圧降下の求め方は 電圧降下の計算式、計算問題の解く順番は 第二種電気工事士学科の計算問題 で整理しています。
出典
- 電気事業法 第26条(e-Gov法令検索・2026年8月3日施行の版)
- 電気事業法施行規則 第38条(e-Gov法令検索・2026年4月1日施行の版)
- 電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条(e-Gov法令検索・2023年3月20日施行の版)
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」第24条・第35条・第143条・第149条(令和7年11月20日改正の版。経済産業省の内規で、法令ではない)
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