電圧降下は、電線の抵抗(交流ではリアクタンスも)のために、負荷側(受電端)の電圧が電源側(送電端)の電圧より下がることです。電圧降下 e=送電端の電圧 − 受電端の電圧 で表します。電圧降下が大きいと、末端の機器にかかる電圧が下がって照明が暗くなったりモーターの力が落ちたりするので、電線の太さを決めるときの基準の一つになります。
第二種電気工事士の学科では、計算問題(電気に関する基礎理論・配電理論及び配線設計)の範囲に入ります。消防設備士甲種第4類の電気の基礎や、電験三種の電力でも同じ式を使います。この記事は、電線メーカー2社の技術資料(フジクラ・ダイヤケーブル「電圧降下」、三ッ星「電圧降下および電線断面積の算出式」)と、e-Gov法令検索の電気事業法施行規則(2026年4月1日施行の版)をもとに書いています。
配電方式ごとの電圧降下の式
電線1本の抵抗をr(Ω)、線電流をI(A)とし、力率1でリアクタンスを無視したときの式です。
| 配電方式 | 電圧降下 e | 電線の電力損失 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 2Ir(往復2本分) | 2I²r |
| 単相3線式(負荷が平衡、電圧線と中性線の間) | Ir(中性線に電流が流れない) | 2I²r |
| 三相3線式(線間) | √3Ir | 3I²r |
| 三相4線式(各相と中性線の間、平衡) | Ir | 3I²r |
フジクラ・ダイヤケーブルの資料では、この違いを「電気方式による係数K」(単相2線式2、単相3線式の中性線間1・線間2、三相3線式の線間√3)で表しています。
三相3線式に√3が付く理由:平衡した三相では、各相の電線でIrずつ電圧が下がり、相電圧(1相あたりの電圧)がIrだけ下がります。線間電圧は相電圧の√3倍なので、線間電圧の降下は√3Irになります。単相2線式のように「往復で2本」と考えて2Irにしたり、3本あるから3Irにしたりするのは誤りです。
力率cosθや電線のリアクタンスXを考えるときは、Vd=K×I×ℓ×(Rcosθ+Xsinθ)を使います(RとXは1kmあたりの抵抗とリアクタンス、ℓはkm単位の線路の長さ。フジクラ・ダイヤケーブル「電圧降下」)。
電線の抵抗から求める簡易式(35.6・30.8・17.8)
電線1本の抵抗は、r=抵抗率×長さ÷断面積 です。三ッ星の資料は、導体抵抗を、導電率をJIS C 3001の標準軟銅の97%として17.8Ω・mm²/kmで計算しています。これを上の式に入れると、こう長L(m)、電流I(A)、断面積A(mm²)から電圧降下を求める簡易式になります。
| 配電方式 | 簡易式 |
|---|---|
| 単相2線式 | e=35.6×L×I÷(1,000×A) |
| 三相3線式 | e=30.8×L×I÷(1,000×A) |
| 単相3線式・三相4線式(電圧線と中性線の間) | e=17.8×L×I÷(1,000×A) |
35.6は2×17.8、30.8は√3×17.8(≒30.83)です。
- 単相2線式100V、こう長25m、電流15A、断面積3.5mm² → e=35.6×25×15÷3,500≒3.8V(約3.8%)
- 三相3線式200V、こう長50m、電流40A、断面積22mm² → e=30.8×50×40÷22,000=2.8V(1.4%)
電線の太さを決めるときは、式を断面積について解きます。単相2線式で、こう長30m・電流20Aのとき電圧降下を2V以下にしたいなら、A=35.6×30×20÷(1,000×2)=10.68mm²なので、それ以上の太さの電線を選びます。
単相3線式で負荷が平衡していないとき
単相3線式は、両側の負荷が等しければ中性線に電流が流れず、電圧降下はIrです。両側の負荷が違うと、差の電流が中性線に流れ、中性線でも電圧が下がります。
電線1本の抵抗が0.1Ω(中性線も同じ)で、一方の100V負荷Aに20A、もう一方の100V負荷Bに10Aが流れているとします。中性線には差の10Aが流れます。
- 負荷A:100 − 20×0.1 − 10×0.1=97V
- 負荷B:100 − 10×0.1 + 10×0.1=100V
軽い負荷Bの側は、中性線の電圧降下の分だけ電圧が戻ります。中性線が切れるともっと大きく偏るので、中性線には原則として過電流遮断器を入れません(詳しくは 単相と三相の違い)。
電圧降下率と許容の目安
電圧降下率は、電圧降下を基準の電圧で割って百分率にしたものです。たとえば200Vの回路で4V下がれば2%です。何を基準の電圧にするか(標準電圧・送電端・受電端)は、問題文や資料の指定に従います。
法令で決まっているのは、一般送配電事業者など(いわゆる電力会社)が電気を供給する場所で保つべき電圧で、標準電圧100Vは101Vの上下6V以内、200Vは202Vの上下20V以内です(電気事業法施行規則第38条第1項)。建物の中の配線の電圧降下の目安は、日本電気協会の民間規格である内線規程にあり、フジクラ・ダイヤケーブルの資料では次のように紹介されています。
| 引込線取付点などから最も遠い負荷までのこう長 | 電力会社から低圧で受電する場合 | 構内に設けた変圧器から供給する場合 |
|---|---|---|
| 60m以下 | 幹線2%以下・分岐回路2%以下 | 幹線3%以下・分岐回路2%以下 |
| 60m超120m以下 | 合計4%以下 | 合計5%以下 |
| 120m超200m以下 | 合計5%以下 | 合計6%以下 |
| 200m超 | 合計6%以下 | 合計7%以下 |
内線規程は法令ではなく、実際の設計では最新の内線規程と電線メーカーの電気定数の表で確かめます。
計算問題の例と取り違えやすい文
- 送電端の電圧105Vの単相2線式で、電線1本の抵抗0.1Ω、電流30Aのとき:e=2×30×0.1=6V、受電端の電圧は105 − 6=99V
- 三相3線式で、電線1本の抵抗0.08Ω、線電流50Aのとき:e=1.73×50×0.08≒6.9V(200Vに対して約3.5%)
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 単相2線式の電圧降下は、電線1本の抵抗×電流である | 誤り | 往復2本分で2Ir |
| 三相3線式の電圧降下は、3本分なので3Irである | 誤り | 線間で√3Ir |
| 単相3線式で負荷が平衡していれば、中性線には電流が流れない | 正しい | 両側の電流が打ち消し合う |
| 電線を太くすると、電圧降下は小さくなる | 正しい | 断面積が大きいほど抵抗が小さい |
| 電線を2倍の長さにすると、電圧降下は4倍になる | 誤り | 抵抗は長さに比例するので2倍 |
| 内線規程の電圧降下の値は、電気事業法施行規則で決まっている | 誤り | 内線規程は民間規格。省令が決めるのは供給する場所の電圧(第38条) |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、電圧降下の計算を確かめられます。
- 電工2種:単相2線式の往復の電圧降下を求める1問
- 電工2種:三相3線式の電圧降下を求める1問
- 電工2種:電圧降下の記述の誤りを選ぶ1問
- 電工2種:三相3線式の電圧降下率を求める1問
- 甲4:三相3線式の線路の電圧降下を求める1問
計算問題全体の解く順番は 第二種電気工事士学科の計算問題、√3の付き方は 単相と三相の違い で整理しています。
出典
- 株式会社フジクラ・ダイヤケーブル「電圧降下|技術情報」(https://www.fujikura-dia.co.jp/tech/documents/voltage-drop.php 、2026年10月20日に確認)
- 株式会社三ッ星「電圧降下および電線断面積の算出式」(https://www.kk-mitsuboshi.co.jp/product/calc/ 、2026年10月20日に確認)
- 電気事業法施行規則 第38条(e-Gov法令検索・2026年4月1日施行の版)
当サイトの問題は電気工事士試験の問題ではありません。法令や公開資料をもとに独自に作った練習問題です。電気技術者試験センターとは関係ありません。










