乙種3類は「水をかけられない場所」の設備を扱う
消防設備士 乙種第3類は、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の整備と点検を行える国家資格です。
これらは、通信機器室・電気設備室・駐車場・ボイラー室のように、水をかけると被害が大きくなる場所や水が効かない火災に使われます。他の類が水や泡で消すのに対し、3類はガスと粉末で消します。
甲種第3類との違いは業務範囲です。甲種は工事と整備の両方ができますが、乙種は整備だけで工事はできません。試験の科目名にもそれが表れており、甲種は「構造・機能・工事・整備」、乙種は「構造・機能・整備」です。
3つの設備を1つの類でまとめて問われる
3類の特徴は、性質の違う3設備が1つの類に入っていることです。他の類は1設備(4類なら自動火災報知設備、5類なら避難器具)なので、覚える数値の量が単純に3倍になります。
しかも似た規定が3つ並ぶため、取り違えが最大の失点源になります。
| 項目 | 不活性ガス | ハロゲン化物 | 粉末 |
|---|---|---|---|
| 移動式のホース接続口までの水平距離 | 15メートル以下 | 20メートル以下 | 15メートル以下 |
| 噴射ヘッドの放射圧力 | 二酸化炭素 高圧式1.4/低圧式0.9、窒素等1.9メガパスカル以上 | ハロン2402 0.1/1211 0.2/1301 0.9、HFC-23 0.9/HFC-227ea・FK-5-1-12 0.3メガパスカル以上 | 0.1メガパスカル以上 |
| 全域放出方式の放射時間 | 二酸化炭素は通信機器室3.5分・指定可燃物7分・その他1分/窒素等は消火剤量の10分の9以上を1分以内 | ハロン系30秒以内/代替ガス10秒以内 | 30秒以内 |
根拠は消防法施行令第16〜18条、消防法施行規則第19〜21条です。移動式の水平距離はハロゲン化物だけが20メートル、というように「仲間外れ」を先に押さえると混ざりません。
受験資格がなく、電気も出る
| 項目 | 乙種3類 | 甲種3類 |
|---|---|---|
| 受験資格 | なし(誰でも受験できる) | あり |
| 業務範囲 | 整備・点検 | 工事・整備 |
| 受験料 | 4,400円 | 6,600円 |
| 試験時間 | 1時間45分 | 3時間15分 |
| 筆記 | 30問 | 45問 |
| 実技 | 鑑別等5問のみ(製図なし) | 鑑別等5問+製図2問 |
筆記30問の内訳は、消防関係法令10問(共通6+類別4)、基礎的知識5問(機械3+電気2)、構造・機能・整備15問(機械8+電気4+規格3)です。
出典: 試験科目・問題数(乙種) / 受験の手引き
乙種3類は電気も出ます。 同じ乙種でも、乙種5類・乙種6類は電気の出題がゼロ、乙種4類・乙種7類は機械の出題がゼロですが、乙種1類・2類・3類は両方出ます。そのぶん範囲が広くなります。
受験者1,193人・合格率23.6%は13区分で最低
令和6年度の実績です。
| 区分 | 申請者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 乙種3類 | 1,414 | 1,193 | 282 | 23.6% |
| 甲種3類 | 5,185 | 4,080 | 1,045 | 25.6% |
出典: 令和6年度 試験実施状況
乙種3類の23.6%は消防設備士13区分で最も低い数字です(次いで甲種1類24.1%、乙種2類26.3%)。しかも甲種3類(25.6%)より低い。「乙種のほうが簡単」という一般論は3類では成立しません。
理由は2つ考えられます。3設備を1つの類でまとめて覚える負担と、受験資格がないぶん準備が十分でない層も母集団に入ることです。
規格3問の根拠は「規格省令」ではなく告示
学習で最初につまずくのが、探している数値がどの法令にあるかです。
🚨 3類には「技術上の規格を定める省令」が存在しません。 消火器(乙6)や金属製避難はしご・緩降機(5類)には規格省令がありますが、3類の機器(容器弁・選択弁・放出弁・噴射ヘッド・定圧作動装置・制御盤など)には無く、すべて消防庁告示で定められています。
制度的な理由もはっきりしています。規格省令は消防法施行令第37条の検定対象機械器具等(12号)と第41条の自主表示対象(6号)の計18品目に対応して置かれており、3類の機器はそのどちらにも入っていないためです。
したがって「3類の規格省令によれば」という説明は誤りになります。正しくは次の告示です。
| 機器 | 根拠 |
|---|---|
| 容器弁・安全装置・破壊板 | 昭和51年消防庁告示第9号 |
| 移動式のホース・ノズル | 昭和51年消防庁告示第2号 |
| 放出弁 | 平成7年消防庁告示第1号 |
| 選択弁 | 平成7年消防庁告示第2号 |
| 音響警報装置 | 平成7年消防庁告示第3号 |
| 定圧作動装置(粉末) | 平成7年消防庁告示第4号 |
| 噴射ヘッド | 平成7年消防庁告示第7号 |
| 制御盤 | 平成13年消防庁告示第38号 |
| 閉止弁 | 令和4年消防庁告示第8号 |
3設備で「ある/ない」が分かれる機器
鑑別で最も価値が高い論点です。
| 機器 | 不活性ガス | ハロゲン化物 | 粉末 |
|---|---|---|---|
| 定圧作動装置 | — | — | あり |
| 自動冷凍機 | 二酸化炭素の低圧式のみ | — | — |
| 閉止弁 | あり(不活性ガスのみ) | — | — |
| 制御盤の基準(告示) | あり | あり | 対象外 |
制御盤の基準(平成13年消防庁告示第38号)が粉末を対象外にしているのは、消防法施行規則第21条に制御盤の委任規定が無いためです。閉止弁は他の弁と逆に常時開放である点も特徴です。











