避難器具の設置基準は、消防法施行令第25条にあります。用途と収容人員に応じて避難器具を置かなければならない階が決まり、避難階と11階以上の階は除かれます。どの器具を使えるかは、用途の区分と階ごとに同条第2項第1号の表で決まっています。
避難器具の設置基準は、消防設備士甲種5類の法令と製図、乙種5類の法令で学ぶ論点です。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(消防法施行令は2025年10月1日施行の版、消防法施行規則は2026年6月26日施行の版)と、消防庁の告示「避難器具の基準」(昭和53年消防庁告示第1号・令和元年改正まで)をもとに書いています。
避難器具が必要な階の早見表
令第25条第1項の各号です。収容人員は、消防法施行規則第1条の3の方法で用途ごとに算定します。
| 号 | 防火対象物(令別表第一) | 対象の階 | 収容人員 |
|---|---|---|---|
| 第1号 | (六)項(病院・診療所・社会福祉施設・幼稚園など) | 2階以上の階・地階 | 20人以上(下階に(一)〜(四)項・(九)項・(十二)項イ・(十三)項イ・(十四)項・(十五)項の用途があれば10人以上) |
| 第2号 | (五)項(旅館・ホテル・寄宿舎・共同住宅など) | 2階以上の階・地階 | 30人以上(下階の条件は第1号と同じで10人以上) |
| 第3号 | (一)〜(四)項・(七)〜(十一)項(劇場・飲食店・物品販売店舗・学校・図書館など) | 2階以上の階(特定主要構造部を耐火構造とした建築物の2階を除く)・地階 | 50人以上 |
| 第4号 | (十二)項(工場・作業場など)・(十五)項(事務所など) | 3階以上の階・地階 | 3階以上の無窓階と地階は100人以上、その他の階は150人以上 |
| 第5号 | 別表第一の防火対象物 | 3階以上の階((二)項・(三)項と、2階にその用途がある(十六)項イは2階以上)のうち、避難階または地上に直通する階段が2以上ない階(避難上有効な開口部のない壁で区画された部分があれば、その部分ごと) | 10人以上 |
何個置くか — 100人・200人・300人ごと
| 該当する号 | 収容人員と個数(令第25条第2項第1号) | 耐火構造+避難階段2以上のとき(規則第26条第1項) |
|---|---|---|
| 第1号・第2号・第5号 | 100人以下で1個、100人までを増すごとに1個を加える | 200人ごとに読み替え |
| 第3号 | 200人以下で1個、200人までを増すごとに1個を加える | 400人ごとに読み替え |
| 第4号 | 300人以下で1個、300人までを増すごとに1個を加える | 600人ごとに読み替え |
このほか、建築基準法施行令で必要な直通階段を屋外避難階段などにした場合はその数を引けること(規則第26条第2項)、耐火構造か鉄骨造の渡り廊下や、避難橋を設けた屋上広場がある場合の減算(同条第3項・第4項)、避難器具を設置しないことができる階の条件(同条第5項など)があります。減算の順番と計算の例は 消防設備士甲種5類の製図対策 にまとめています。
階ごとに使える避難器具
令第25条第2項第1号の表です。表の「—」は、その階が対象にならないため欄が空白のものです。
| 区分 | 地階 | 2階 | 3階 | 4階・5階 | 6階以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1号((六)項) | 避難はしご・避難用タラップ | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋・避難用タラップ | 滑り台・救助袋・緩降機・避難橋 | 滑り台・救助袋・緩降機・避難橋 | 滑り台・救助袋・避難橋 |
| 第2号・第3号 | 避難はしご・避難用タラップ | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋・滑り棒・避難ロープ・避難用タラップ | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋・避難用タラップ | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋 | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋 |
| 第4号 | 避難はしご・避難用タラップ | — | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋・避難用タラップ | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋 | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋 |
| 第5号 | — | 第2号・第3号の2階と同じ | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋・避難用タラップ | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋 | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋 |
病院や社会福祉施設などの(六)項は、3階以上で避難はしごが外れ、6階以上でさらに緩降機が外れます。滑り棒と避難ロープは、第2号・第3号・第5号の2階だけに出てきます。避難用タラップが出てくるのは、第1号は地階と2階、第2号・第3号は地階・2階・3階、第4号は地階と3階、第5号は2階と3階です。
避難器具の種類 — 救助袋・緩降機・滑り台など
消防庁告示「避難器具の基準」第二と、緩降機の技術上の規格を定める省令第2条の定義です。
| 器具 | 定義 |
|---|---|
| すべり台 | 勾配のある直線状またはらせん状の固定された滑り面を滑り降りるもの |
| すべり棒 | 垂直に固定した棒を滑り降りるもの |
| 避難ロープ | 上端部を固定しつりさげたロープを使用し降下するもの |
| 避難用タラップ | 階段状のもので、使用の際、手すりを用いるもの |
| 避難橋 | 建築物相互を連絡する橋状のもの |
| 救助袋 | 使用の際、垂直または斜めに展張し、袋本体の内部を滑り降りるもの |
| 緩降機 | 使用者が他人の力を借りずに自重により自動的に連続交互に降下することができる機構を有するもの |
救助袋は、垂直に展張して使う垂直式と、斜めに展張して使う斜降式に分かれます。どちらも入口金具・袋本体・緩衝装置・取手・下部支持装置等で構成されますが、垂直式は下部支持装置を設けないことができます。斜降式は、平均毎秒7メートル以下の速度で途中で止まらずに滑り降りられることなどが求められます(同告示第九)。
緩降機は、調速器・調速器の連結部・ロープ・着用具で構成され(同省令第3条)、常時取付け具に固定する固定式と、使うときに取付け具に取り付ける可搬式があります。可搬式の調速器は質量10キログラム以下です。
避難はしごのうち固定はしごは、横さんを防火対象物から10センチメートル以上離し、降下口は直径50センチメートル以上の円が内接する大きさにします。4階以上に固定はしごを設けるときは金属製とし、原則として安全かつ容易に避難できる構造のバルコニー等に設けます(消防法施行規則第27条第4号)。
置き方の決まり
| 決まり | 根拠 |
|---|---|
| 避難に際して容易に接近でき、階段・避難口などから適当な距離にあり、安全な構造の開口部に設置する | 令第25条第2項第2号 |
| 開口部に常時取り付けておくか、必要に応じて速やかに取り付けられる状態にしておく | 同項第3号 |
| 特定一階段等防火対象物では、バルコニー等に設ける・常時使える状態で設置する・一動作で使える、のいずれか | 規則第27条第1号 |
| 開口部は相互に同一垂直線上にない位置にする(すべり棒・避難ロープ・避難橋・避難用タラップを除く。避難上支障のないものは除く) | 同条第2号 |
| 設置場所に、避難器具である旨と使用方法の標識を設ける | 同条第3号ロ |
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 避難器具は、地階には設置しなくてよい | 誤り | 除かれるのは避難階と11階以上の階(令第25条第1項) |
| (六)項の防火対象物の6階には、緩降機が適応する | 誤り | 6階以上は滑り台・救助袋・避難橋 |
| 第3号の階で収容人員が450人なら、避難器具は3個以上 | 正しい | 200人以下で1個、200人までを増すごとに1個(令第25条第2項第1号) |
| 垂直式の救助袋は、下部支持装置を設けないことができる | 正しい | 避難器具の基準 第九 |
| 緩降機は、使用者が他人の力を借りて降下する機構のもの | 誤り | 他人の力を借りずに自重により自動的に連続交互に降下できる機構(緩降機の規格省令第2条) |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、甲5 の避難器具の論点を確かめられます。
出典
- 消防法施行令 第25条(e-Gov法令検索・2025年10月1日施行の版)
- 消防法施行規則 第1条の3・第26条・第27条(e-Gov法令検索・2026年6月26日施行の版)
- 緩降機の技術上の規格を定める省令 第2条・第3条(e-Gov法令検索・2019年7月1日施行の版)
- 避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号。令和元年消防庁告示第2号による改正まで。消防庁ウェブサイトの告示)第二・第九
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