鑑別5問を先に固める理由
甲種5類の実技は鑑別等5問+製図2問です。製図(算定)は鑑別で覚えた器具の知識の上に乗るので、順序としては鑑別が先です。どの器具がどの階に適応するかを知らないまま算定だけ練習しても、適応表の設問で落とします。
しかも鑑別で問われる部品名と数値は、そのまま筆記の構造・機能20問(うち規格8問)と重なります。鑑別を仕上げると筆記の得点も同時に上がるのが5類の構造です。
8種類の避難器具を役割で分ける
消防法施行令第25条が列挙している避難器具は8種類です。
| 器具 | 降り方 | 特徴 |
|---|---|---|
| すべり台 | 滑り降りる | 自力での操作がほぼ不要。適応範囲が最も広い |
| 避難はしご | 自分で降りる | 固定式・立てかけ式・つり下げ式の3形態 |
| 救助袋 | 袋の中を降りる | 垂直式と斜降式がある |
| 緩降機 | 自重で交互に降りる | 調速器で速度を一定に保つ |
| 避難橋 | 隣の建物へ渡る | 降下しない |
| 避難用タラップ | 階段状に降りる | 地階にも適応する |
| すべり棒 | 棒を伝って降りる | 2階のみ |
| 避難ロープ | ロープで降りる | 2階のみ |
地階に適応するのは避難はしごと避難用タラップだけ、すべり棒と避難ロープは2階のみという2点は、適応表の設問で最も問われる箇所です。
緩降機は4部品を先に言えるようにする
緩降機の技術上の規格を定める省令(平成6年自治省令第2号)第3条第1項第2号は、緩降機を調速器・調速器の連結部・ロープ・着用具の4つで構成すると定めています。
| 部品 | 役割(同令第2条の定義) |
|---|---|
| 調速器 | 緩降機の降下速度を一定の範囲に調節する装置 |
| 調速器の連結部 | 取付け具と調速器を連結する部分 |
| 着用具 | 使用者が着用することにより身体を保持する用具 |
| 緊結金具 | ロープと着用具を連結する金具 |
| リール | ロープ及び着用具を収納するために巻き取る用具 |
緊結金具とリールは「構成」の4つには入っていません。第3条が挙げるのは調速器・連結部・ロープ・着用具の4つで、緊結金具とリールは第4条で別に規定されています。ここは「構成部品を選べ」という設問で狙われます。
固定式緩降機は常時取付け具に固定されて使用するもの、可搬式緩降機は使用時に取付け具に取り付けて使用するものです。可搬式には追加の要件があります。
- 調速器の質量が10kg以下であること
- 取付け具に安全環により確実かつ容易に取り付けられること
緩降機の数値 — 「最大使用荷重は1,000Nではない」
同令第5条は次のように定めています。
緩降機の最大使用荷重は、最大使用者数に千ニュートンを乗じた値以上でなければならない。
最大使用荷重は固定値ではなく掛け算です。最大使用者数が2人なら2,000N以上になります。「最大使用荷重は1,000N」と覚えていると、最大使用者数を絡めた設問で外します。
| 項目 | 値 | 条 |
|---|---|---|
| 最大使用荷重 | 最大使用者数 × 1,000N 以上 | 第5条 |
| ベルトの引張試験 | 最大使用荷重÷最大使用者数 × 6.5 の引張荷重を5分間保持して破断・著しい変形なし | 第4条第4項第9号 |
| 着用具の連結 | ロープの両端にそれぞれ最大使用者数に相当する数 | 第4条第4項第7号 |
| ロープの外装 | 金剛打ち又は同等以上のねじれを生じない構造 | 第4条第3項第3号 |
| 降下速度 | 16cm/s以上150cm/s以下(第9条第1号の試験条件下) | 第9条第1号 |
⚠️ 降下速度には2つの基準があります。 16〜150cm/sは第9条第1号の値で、第9条第2号は「20回の平均降下速度の80%以上120%以下」という別の判定基準です。混同しないでください。
材料も出ます。ロープのしんはJIS G3525(ワイヤロープ)で耐食加工、外装とベルトは綿糸又はポリエステル、リング・緊結金具・安全環はJIS G3101で耐食加工、リベットはJIS G3104です。「繊維の部位に金属の規格を当てる」誤答が定番なので、金属部品と繊維部品を分けて覚えてください。
金属製避難はしごの寸法
金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令(昭和40年自治省令第3号)から出ます。
| 項目 | 値 | 条 |
|---|---|---|
| 横桟の間隔 | 25cm以上35cm以下(同一間隔) | 第3条第6項 |
| 縦棒の間隔(2本以上) | 内法寸法で30cm以上50cm以下 | 第3条第4項 |
| 横桟の断面 | 直径14mm以上35mm以下の円形断面又は同等の握り太さ | 第3条第5項 |
| 縦棒1本のものの突子 | 横桟の先端に、縦棒の軸と平行に長さ5cm以上の横滑り防止突子 | 第3条第3項第1号 |
| 収納式固定はしご | 保安装置に至る動作を除き2動作以内で使用可能な状態にできる | 第4条第2号 |
| 立てかけはしご | 上部支持点(先端から60cm以内)に滑り・転倒防止の安全装置、下部支持点に滑り止め | 第5条第1号・第2号 |
| つり下げはしご | 使用の際、防火対象物から10cm以上の距離を保つ有効な突子を横桟の位置ごとに | 第6条第1号 |
| 繰り返し試験 | 100回の展開収納で著しい変形・亀裂・破損なし | 第9条第1項 |
表示事項は9項目です(第11条)。種別/区分/製造者名又は商標/製造年月/製造番号/長さ/立てかけ・つり下げはしごは自重/型式番号/ハッチ用つり下げはしごは「ハッチ用」の文字。緩降機の表示にある「最大使用者数」は避難はしごの表示には入りません。表示事項の比較は取り違えを誘う設問の定番です。
降下空間と操作面積は「告示」にある
避難はしごの設置側の数値は、令にも規則にもありません。平成8年消防庁告示第2号(避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目)にあります。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 操作面積 | 0.5㎡以上(器具の水平投影面積を除く)かつ一辺0.6m以上 |
| 降下空間 | 縦棒の中心線から外方向に各0.2m以上、器具の前面から奥行0.65m以上の角柱形 |
| 取付部の開口部(壁面) | 高さ0.8m以上かつ幅0.5m以上、又は高さ1m以上かつ幅0.45m以上 |
| 取付部の開口部(床面) | 直径0.5m以上の円が内接 |
| 壁面開口部の下端 | 床面から1.2m以下 |
| 最下部横桟から降着面等まで | 0.5m以下 |
| 降下空間と架空電線の間隔 | 1.2m以上 |
| はしご上端と架空電線の間隔 | 2m以上 |
| 避難通路の幅 | 避難空地の最大幅員以上(1mを超える場合は1m) |
架空電線との間隔は2つあります。 降下空間は1.2m、はしごの上端は2mです。片方だけ覚えていると必ず外します。
なお救助袋には規格省令がありません。避難器具の規格省令は金属製避難はしごと緩降機の2本だけで、救助袋の基準は昭和53年消防庁告示第1号にあります。「救助袋の規格省令によれば」という選択肢はそれ自体が誤りです。
答え方の型
鑑別は「見た目 → 名称 → 用途 → 根拠の数値」の順で答えられる状態を作ります。
- 器具の名称を言えるか
- その器具がどの階・どの防火対象物に適応するかを言えるか
- 部品名を言えるか(緩降機なら調速器・連結部・ロープ・着用具)
- その部品に数値の規定があるかを言えるか
3と4まで言えると、筆記の構造・機能と規格の20問がそのまま得点になります。
演習で取り違えを洗い出す
当サイトの甲種5類 練習問題 126問は実技の知識問題を36問、構造・機能・工事・整備を46問そろえています。写真は使わず「この特徴をもつ器具はどれか」という文章の形にしてあるので、名称と特徴の結びつきを直接確認できます。











