甲種5類は「避難器具の工事」ができる資格
消防設備士 甲種第5類は、金属製避難はしご・救助袋・緩降機といった避難器具について、工事と整備の両方を行える国家資格です。乙種第5類は同じ設備を扱いますが、できるのは整備だけで工事はできません。
避難器具は、火災時に階段が使えなくなったときに人が実際に降りてくる設備です。他の類の消火設備が「火を消す」のに対し、5類だけが「人を逃がす」設備を扱います。
甲種で唯一「電気が1問も出ない」類
甲種5類の最大の特徴は、電気の出題がゼロであることです。
| 科目 | 内訳 | 問題数 |
|---|---|---|
| 消防関係法令 | 共通8+類別7 | 15問 |
| 基礎的知識 | 機械10(電気の出題なし) | 10問 |
| 構造・機能・工事・整備 | 機械12+規格8(電気の出題なし) | 20問 |
| 筆記合計 | 45問 | |
| 実技 | 鑑別等5+製図2 | 7問 |
甲種1類・2類・3類は機械6問+電気4問という配分で両方が出ますし、甲種4類は逆に電気だけ(機械の出題がゼロ)です。甲4と甲5は鏡像の関係にあります。
出典: 試験科目・問題数(甲種)
このため、電気工事士や電気主任技術者を持っていても甲種5類では科目免除がありません。試験時間も3時間15分のまま短縮されません。「電気工事士があれば消防設備士は免除で楽になる」という一般論は、5類には当てはまりません。
一方で、機械系の素養がある人には最も範囲が狭い甲種です。機械保全・設備・配管の経験がある人は、基礎的知識10問と構造・機能12問がまるごと得意分野になります。
もうひとつの特徴は規格の比重です。構造・機能20問のうち8問が規格で、甲種1〜3類(4問)の倍あります。避難器具は「金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令」「緩降機の技術上の規格を定める省令」という規格省令が実在する数少ない設備で、そこから直接出題されます。
受験者3,681人・合格率35.0%という位置
令和6年度の実績です。
| 区分 | 申請者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 甲種5類 | 4,692 | 3,681 | 1,288 | 35.0% |
| 乙種5類 | 1,458 | 1,166 | 374 | 32.1% |
甲種5類の35.0%は、甲種6区分で最も高い合格率です(甲5 35.0% > 特類 34.9% > 甲4 34.0% > 甲2 27.3% > 甲3 25.6% > 甲1 24.1%)。
出典: 令和6年度 試験実施状況
合格率が高いのは、範囲が半分だからという構造的な理由が大きいと考えられます。両方が出る甲1(24.1%)・甲3(25.6%)・甲2(27.3%)が下位に固まり、片方だけの甲5・甲4が上位に来る、という並びは他の類でも一貫しています。
ただし「易しい」わけではありません。合格には筆記の各科目40%以上・筆記全体60%以上・実技60%以上を同時に満たす必要があり、得意科目で稼いで苦手を捨てる戦略は取れません。
試験の概要
| 項目 | 甲種5類 | 乙種5類 |
|---|---|---|
| 受験料 | 6,600円 | 4,400円 |
| 試験時間 | 3時間15分 | 1時間45分 |
| 出題 | 筆記45問+実技7問(鑑別5・製図2) | 筆記30問+実技5問(鑑別のみ) |
| 受験資格 | あり | なし(誰でも受験できる) |
| 科目名 | 構造・機能・工事・整備 | 構造・機能・整備 |
乙種5類に製図はありません。 公式の乙種の一覧には「製図」の列そのものが存在せず、実技は鑑別等5問だけです。
科目免除は、甲種1類〜4類のいずれかを持っていると法令共通が免除されて3時間になります。技術士(機械部門)は基礎的知識と構造・機能・規格がまとめて免除されます。前述のとおり電気工事士・電気主任技術者単独では免除がありません。
⚠️ 免除の対象は年度や資格の種別で変わることがあります。申込前に公式の試験科目・免除の一覧で自分の資格の行を必ず確認してください。
学習の中心は「設置個数の算定」と「規格の数値」
甲種5類の学習は、大きく2つに割れます。
① 設置個数の算定(法令類別+製図) 避難器具は「収容人員が何人以上の階に、何個必要か」が消防法施行令第25条で決まっています。収容人員が100人ごと・200人ごと・300人ごとに1個ずつ増える3系統があり、どの防火対象物にどの系統が適用されるかを引き分ける必要があります。さらに消防法施行規則第26条に緩和(読み替え)と減算と免除があり、製図はここに集約されます。
② 器具の規格と設置の細目(構造・機能+鑑別) 金属製避難はしごと緩降機には規格省令があり、横桟の間隔や最大使用荷重といった数値が定められています。降下空間・操作面積といった設置側の数値は、令や規則ではなく平成8年消防庁告示第2号にあります。条文がどこにあるかを把握しておくと、テキストの記述の裏が取りやすくなります。
他の類との関係
甲種5類は、甲種特類の受験資格に必須です。特類を受けるには「甲種1類〜3類のいずれか+甲種4類+甲種5類」の3種類以上の免状が要ります。つまり甲種4類と甲種5類は、特類まで見据えるなら必ず両方取ることになる組み合わせです。
機械分野という点では乙種6類(消火器)が最も近い類です。乙6も電気の出題がゼロで、基礎的知識と構造・機能が機械だけで構成されます。











