相続アドバイザー3級は、銀行業務検定協会が行う銀行業務検定試験の1つです。経済法令研究会の試験案内では、相続の手続、亡くなった顧客の金融取引の実務、税制改正を含めた相続税の相談に必要な知識がどれだけ身についているかを測る試験とされています。受験資格の制限はありません。
受けているのは金融機関の職員が中心で、なかでも 農協・信連(信用農業協同組合連合会)の職員が受験者の約4割 を占めます。民法の相続のルール、相続預金の払戻しなどの窓口の実務、相続税・贈与税の計算までを1つの試験で問うのが特徴です。
成績が公表された直近3回の合格率は33〜42%で、平均点は合格点に届いていません。次の紙の試験は2026年12月6日(個人のWeb申込は10月19日まで)で、テストセンターのパソコンで受けるCBT方式なら2027年3月31日まで受けられます。この記事では、協会と経済法令研究会の公表資料から、試験の形・合格率・繰り返しつまずく論点・受け方の選び方をまとめます。受験料や日程は年度で変わるので、申し込む前に公式の案内も確かめてください。
結論: 50問中30問で合格、合格率は公表された直近3回で33〜42%
- 出題は四答択一式50問(各2点)・120分。100点満点中60点以上で合格(50問中30問の正解)。
- 成績が公表された直近3回の合格率は 33.16%(第160回)→ 35.73%(第162回)→ 41.70%(第163回)。平均点は51〜55点で、合格点の60点に届いていない。
- 協会が公表した苦手論点では、遺留分・特別受益・遺言執行引受予諾業務と遺産整理業務・遺族年金 の4つが、3回のうち2回ずつ挙がっている。
- 2026年度の全国一斉公開試験は7月と12月の年2回。次は 2026年12月6日(日)10:00〜12:00、申込は 10月5日〜10月19日。
- CBT方式なら 2027年3月31日まで、空きのある日時を選んで受けられ(予約は申込日から3日目以降)、合否はその日に分かる。出題範囲と合格基準は公開試験と同じ。
試験の形
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題形式 | 四答択一式〈一部事例付〉50問(各2点) |
| 科目構成 | 基本知識40問/技能・応用(事例付)10問 |
| 分野(公式) | 相続の基礎知識・相続と金融実務・その他周辺知識 |
| 試験時間 | 120分 |
| 合格基準 | 100点満点中60点以上(公開試験は「試験委員会にて最終決定」) |
| 受験料 | 5,500円(税込)。CBT方式は別に事務手数料330円(税込) |
| 受験資格 | 制限なし |
1問あたり2.4分です。事例付の10問にどんな設例が出るかは、公式には公表されていません。
公式が公開している分野は上の3つの名前だけで、分野ごとの出題数は公表されていません。公式テキストの目次は、「相続の基礎知識」(相続人・相続分・遺産分割・遺言・遺留分など)、「相続と金融実務」(相続預金の払戻し・融資や保証と相続など)、「相続税の基礎知識」(相続税と贈与税)、「相続と周辺知識」(生前対策・遺言信託と遺産整理業務・事業承継・遺族年金など)の4編に分かれています。
難易度 — 合格率と平均点
協会の事務局報に載った成績結果をまとめると、次のとおりです。第160回〜第163回では、相続アドバイザー3級は3月と10月の回に実施されました(6月の第161回では実施なし)。第164回(2026年7月)の成績は、10月12日の時点では事務局報に載っていません。
| 回 | 実施日 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 平均点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第160回 | 2025年3月2日 | 1,544人 | 512人 | 33.16% | 51.40点 |
| 第162回 | 2025年10月26日 | 1,517人 | 542人 | 35.73% | 52.49点 |
| 第163回 | 2026年3月1日 | 1,422人 | 593人 | 41.70% | 54.96点 |
合格率は3回続けて上がっていますが、平均点はどの回も60点に届いていません。受験者の8割以上は金融機関・農協などの職員ですが(第163回は1,422人中1,184人)、それでも半分以上が落ちる試験だと考えて、準備の量を決めてください。
受験者の約4割は農協・信連
事務局報には業態ごとの内訳も載っています。第163回では、受験者1,422人のうち 574人が「信連・農協」 で、いちばん多い業態でした(第162回は1,517人中644人、第160回は1,544人中560人)。3回とも、信連・農協からの受験がいちばん多くなっています。
第163回の業態別の合格率は、地銀48.75%・信金40.34%・信連と農協37.11%でした。個人で申し込んだ人を含む「他団体・個人」の区分は、238人が受けて合格率51.26%です。
繰り返しつまずく論点 — 3回の成績発表から
協会は回ごとに「正解率の低かった問題」(第163回は「平均点の低かった問題」)を公表しています。相続アドバイザー3級では次の論点でした。
| 回 | 協会が挙げた論点 |
|---|---|
| 第160回 | 遺言執行引受予諾業務・遺産整理業務/成年後見制度/公的年金の遺族給付と年金税制/相続人の把握/特別受益額の範囲 |
| 第162回 | 贈与税の非課税の特例/遺言執行引受予諾業務・遺産整理業務/遺族年金の請求・アドバイス/生命保険の活用/遺留分制度と遺留分侵害額 |
| 第163回 | 特別受益の対象額の計算/特別寄与制度/保証人または債務者の死亡/遺留分制度と遺留分侵害額/課税遺産総額の計算 |
3回を並べると、2回ずつ挙がっている論点が4つあります。
- 遺留分(第162回・第163回) — 遺留分の割合と、遺留分侵害額の計算。どの生前贈与を遺留分の計算に算入するかで答えが変わります。
- 特別受益(第160回・第163回) — 特別受益にあたる贈与の範囲と、持ち戻した後の具体的な相続分の計算。
- 遺言執行引受予諾業務・遺産整理業務(第160回・第162回) — 金融機関が遺言の執行や遺産の整理を引き受ける業務。民法だけでは答えられない、金融機関の実務の論点です。
- 遺族年金(第160回・第162回) — 遺族年金の受給と請求、年金の税金の扱い。相続の試験ですが、年金の知識も問われます。
遺留分と特別受益は、相続人と法定相続分を書き出してから、持ち戻し・算入する贈与を決める、という手順で解く計算です。遺言執行引受予諾業務と遺族年金は、テキストの後ろの方にある周辺の分野で、後回しにすると点を落としやすいところです。
2026年度の日程 — 12月の公開試験か、CBTか
銀行業務検定協会は、2026年度から全国一斉公開試験を 年3回(6月・10月・3月)から年2回(7月・12月) に変えました。相続アドバイザー3級は7月と12月の両方で実施されます。
| 方式 | 試験日 | 申込 |
|---|---|---|
| 第164回 公開試験 | 2026年7月5日(日)13:30〜15:30 | 終了 |
| 第165回 公開試験 | 2026年12月6日(日)10:00〜12:00 | 10月5日(月)9:00〜10月19日(月)23:30(個人のWeb申込) |
| CBT方式 | 2026年4月27日〜2027年3月31日のうち、申込日から3日目以降の好きな日 | 2027年3月28日まで |
2026年度の公開試験は12月6日が最後で、2027年度の日程はまだ公表されていません(2026年度は7月と12月)。2026年度のうちに紙の試験で受けたい人は、10月19日までに申し込んでください。金融機関や農協にお勤めの人は、勤務先を通した団体申込のことがあり、その方法は所属先に確かめるよう案内されています。個人で申し込んだ後に団体申込へ変えることはできません。
公開試験とCBTの違い
経済法令研究会は、公開試験とCBT方式で出題範囲・テーマ・難易度の水準は同じだとしています。違うのは受け方です。
| 項目 | 全国一斉公開試験(紙) | CBT方式 |
|---|---|---|
| 試験日 | 12月6日の1回 | テストセンターで好きな日時を選ぶ(何回でも予約できる) |
| 電卓 | 1台まで(金融計算・関数・メモ機能つきは不可) | 持ち込めない。画面上の電卓を使う |
| 問題用紙 | 持ち帰れる。間違えた問題を見直せる | 持ち帰れない。終了後にスコアレポートと出題項目一覧を受け取る |
| 合否 | 成績の通知はマークシート式で試験の約4週間後から | その日に分かる |
| 費用 | 5,500円 | 5,500円 + 事務手数料330円 |
ふだん手元の電卓で計算している人は、CBTでは画面の電卓を使うことになります。遺留分や相続税の計算に時間がかかる人は、受ける前に CBT-Solutions の「CBT体験試験」で、試験画面に近い操作を試しておくと安心です。
2級との違い
相続アドバイザーには2級もあります。2026年度の2級は公開試験だけで行われ、CBT方式の一覧には入っていません。
| 項目 | 3級 | 2級 |
|---|---|---|
| 出題形式 | 四答択一式50問(各2点) | 四答択一式25問(各2点)+記述式5題(各10点) |
| 試験時間 | 120分 | 180分 |
| 受験料 | 5,500円 | 8,250円 |
| 受け方 | 公開試験(7月・12月)・CBT | 公開試験(7月・12月)だけ |
| 直近の合格率 | 41.70%(第163回・受験者1,422人) | 36.11%(第163回・受験者900人) |
2級は配点の半分が記述式です。科目構成は、相続知識・相続対策(生前対策)・相続アドバイス・相続手続の4つと案内されています。3級で相続の手続と計算の流れを固めてから2級に進むと、記述の準備に時間を回せます。
12月6日までの進め方(約8週間)
10月12日から12月6日までは約8週間です。公式の案内には勉強時間の目安が載っていないので、平日1時間・休日3時間で計算すると、8週間でおよそ90時間になります。
- 1〜2週目: 相続人と相続分 — 相続人の範囲と順位、代襲相続、法定相続分を、家族関係の図を描いて解く。
- 3〜4週目: 遺産分割・遺言・遺留分 — 特別受益・特別寄与(相続人ではない親族が、無償の療養看護などで寄与したときに特別寄与料を請求できる制度)・遺留分侵害額の計算を、数字を変えて何度も解く。苦手論点の2つがここに入ります。
- 5週目: 金融機関の相続実務 — 相続預金の払戻しに要る書類、債務者や保証人が亡くなったときの扱い。
- 6週目: 相続税と贈与税 — 課税価格 → 基礎控除 → 課税遺産総額 → 相続税の総額、の順に途中式を書く。贈与税の非課税の特例は要件を表にして覚える。
- 7週目: 生前対策と周辺知識 — 遺言信託・遺言執行引受予諾業務・遺産整理業務、遺族年金・生命保険の活用・成年後見。
- 8週目: 50問を120分で通す — 本番と同じ問題数と時間で解き、6割を割った分野だけを戻って解き直す。
ぴよパスの練習問題の使い方
ぴよパスでは、相続アドバイザー3級のオリジナル練習問題を8分野に分けて無料で解けます。本試験の問題の写しではなく、民法・相続税法などの条文にもとづいて独自に作った予想問題です。
- 1〜2週目: 相続の開始と相続人
- 3〜4週目: 相続分・遺産分割・承認と放棄・遺言・遺留分・配偶者居住権
- 5週目: 相続預金と相続手続・融資・担保・保証と相続
- 6週目: 相続税の仕組みと計算・贈与税と生前贈与
- 7週目: 生前対策と周辺知識
遺言信託(信託銀行等が遺言書の保管と遺言の執行を引き受けるサービス)を扱う問題は「生前対策と周辺知識」に1問だけで、遺言執行引受予諾業務・遺産整理業務そのものを扱う問題はまだありません。この2つは公式テキストで補ってください。
本試験と同じ50問・120分の模擬試験(分野の配分はぴよパスの設定)は Premium の機能です。5週目を終えたところで1回、8週目にもう1回通すと、伸びと残った弱点が分かります。
まとめ
- 相続アドバイザー3級は四答択一50問・120分・60点以上で合格。受験資格の制限はない。
- 直近3回の合格率は33.16%・35.73%・41.70%。平均点はどの回も60点に届いていない。受験者の約4割は農協・信連の職員。
- 遺留分・特別受益・遺言執行引受予諾業務と遺産整理業務・遺族年金は、3回の成績発表で2回ずつ苦手論点に挙がっている。
- 次の公開試験は2026年12月6日(申込は10月19日まで)。間に合わなければCBT方式(2027年3月31日まで・合否はその日に分かる)。
- 2級は記述式を含む180分の試験で、公開試験だけで行われる。
関連記事
出典
- 経済法令研究会「相続アドバイザー3級(全国一斉公開試験)」(試験のねらい・第165回の実施日と申込期間・出題形式・合格基準・持込品): https://www.khk.co.jp/exam/exam_detail.php?pid=52165&oid=42
- 経済法令研究会「相続アドバイザー2級」(出題形式・科目構成・試験時間・受験料): https://www.khk.co.jp/exam/exam_detail.php?pid=52167&oid=42
- 経済法令研究会「検定試験」(全国一斉公開試験とCBT方式の違い): https://www.khk.co.jp/exam/
- 経済法令研究会「公式テキスト 相続アドバイザー3級 2026年度受験用」(目次): https://www.khk.co.jp/book/book_detail.php?pid=55058
- 経済法令研究会「FAQ」(成績通知の時期・CBTの予約): https://www.khk.co.jp/faq/
- CBT-Solutions「相続アドバイザー3級」(受験資格・再受験・電卓・試験後のスコアレポート): https://cbt-s.com/examinee/examination/khk-souzoku03.html
- 銀行業務検定協会「2026年度 検定試験 実施概要」(公開試験の日程・試験時間・受験料、CBT方式の実施期間と事務手数料): https://www.kenteishiken.gr.jp/upfiles/pdf/7361.pdf
- 銀行業務検定協会 事務局報 No.349(第160回 成績結果): https://www.kenteishiken.gr.jp/upfiles/pdf/7142.pdf
- 銀行業務検定協会 事務局報 No.352(第162回 成績結果): https://www.kenteishiken.gr.jp/upfiles/pdf/7380.pdf
- 銀行業務検定協会 事務局報 No.354(第163回 成績結果): https://www.kenteishiken.gr.jp/upfiles/pdf/7634.pdf










