「電気工事士はやめとけ」と言われる理由には、電気工事の仕事の働き方(危険・暑さ・長時間労働)の話が多く、覚えることが多いという試験の話も混じっています。どれも一部は統計や法令で確かめられ、一部は職場によって違います。
この記事では、よく挙がる理由を、厚生労働省の「令和7年 労働災害発生状況(確定)」(令和8年4月7日現在)と、e-Gov法令検索の労働基準法(2026年7月17日施行の版)・労働安全衛生規則(2026年10月1日施行の版)・電気工事士法(2025年6月1日施行の版)で確かめます(2026年10月20日に確認)。年収や離職率など、この記事で電気工事士だけの公的な数字を確かめていないものは、数字を書いていません。
「やめとけ」と言われる理由と、確かめられること
| よく挙がる理由 | 公的な資料で確かめられること |
|---|---|
| 感電・墜落の危険がある | 令和7年の感電による死亡者10人のうち6人が建設業。建設業の死亡者214人のうち91人が墜落・転落(厚生労働省) |
| 夏の作業が暑い | 熱中症のおそれのある作業での報告体制と悪化防止の手順づくりが、2025年6月1日から事業者の義務(労働安全衛生規則第612条の2) |
| 繁忙期に長時間労働になる | 建設の事業にも、2024年4月1日から時間外労働の上限がかかっている(労働基準法第36条・第139条) |
| 覚えることが多い | 学科試験は電気の基礎理論から法令まで7分野、技能試験は作品に欠陥がないことが合格基準(電気技術者試験センター) |
| 見習いの間の給料が低い | 職場によって違い、電気工事士だけの公的な数字はこの記事では確かめていない |
危険:感電と墜落の労働災害(令和7年)
厚生労働省の「令和7年 労働災害発生状況(確定)」の業種・事故の型別の表では、次のようになっています。
| 項目 | 全産業 | うち建設業 |
|---|---|---|
| 労働災害による死亡者 | 700人 | 214人 |
| うち墜落・転落による死亡者 | 186人 | 91人 |
| うち感電による死亡者 | 10人 | 6人 |
| 休業4日以上の死傷者のうち、建設業の墜落・転落 | ― | 4,343人 |
| 休業4日以上の死傷者のうち、建設業の感電 | ― | 43人 |
統計は「建設業」全体の数で、電気工事業だけを分けた数ではありません。読み取れるのは、建設業の死亡災害でいちばん多いのが墜落・転落であることと、感電で亡くなった人の半数以上が建設業で働いていたことまでです。電気工事業だけの内訳は、この統計では分かりません。
危険を小さくする仕組みも法令で決まっています。低圧の充電電路の敷設や修理などの業務に就かせるとき、事業者は低圧電気取扱業務の特別教育を行わなければなりません(労働安全衛生法第59条第3項、労働安全衛生規則第36条第4号)。内容は 低圧電気取扱業務特別教育とは で整理しています。
暑さと長時間労働:熱中症対策の義務と残業の上限
熱中症:2025年6月1日から、暑熱な場所で連続して行う作業など熱中症を生ずるおそれのある作業をさせるとき、事業者は次のことを前もって決めて、作業する人に知らせなければならなくなりました(労働安全衛生規則第612条の2)。
- 熱中症の自覚症状がある人や、熱中症が疑われる人を見つけた人が報告する体制
- 作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察を受けさせることなど、症状の悪化を防ぐ措置の内容と手順(作業場ごと)
時間外労働:労働基準法は、時間外労働の協定(36協定)で延ばせる時間を原則として月45時間・年360時間とし、臨時の場合も年720時間以内、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月の平均80時間以内に抑えるよう定めています(第36条第4項〜第6項)。工作物の建設の事業には、令和6年(2024年)3月31日まで、これらの上限(第36条第3項〜第5項と第6項第2号・第3号)が適用されない猶予がありました(第139条第2項。3月31日と4月1日をまたぐ協定は、協定の初日から1年まで)。2024年4月1日以後は上限がかかっています。例外は、災害の復旧・復興の事業で、月100時間未満・2〜6か月の平均80時間以内の規制が当分の間適用されないことです(第139条第1項)。
上限があることと、実際の職場で守られているかは別の話です。働く前に、その会社の36協定の時間を確かめる意味があります。
資格を取る条件と費用
働き方の話と分けて、第二種電気工事士の資格を取る条件と費用を見ると、受験資格・実務経験・定期講習の縛りはありません。費用は受験手数料のほかに、技能試験の工具・練習材料がかかります。
| 項目 | 第二種電気工事士 |
|---|---|
| 受験資格 | 制限なし(誰でも受験できる) |
| 受験手数料 | インターネット申込みで11,100円(令和8年度) |
| 工具・練習材料 | 技能試験の練習に要る。総額の目安は 第二種電気工事士の費用まとめ |
| 免状の交付手数料 | 都道府県に払う(標準は5,300円) |
| 免状の条件 | 試験に合格すれば都道府県知事に申請できる(実務経験は不要) |
| 定期講習 | 義務なし(講習の義務は第一種だけ) |
| できること | 600V以下で受電する住宅・小規模な店舗などの電気工事の作業 |
電気工事の会社のほか、建物の設備を管理する仕事でも、配線器具の交換などの作業に資格が要る場面があります。免状を取った後に3年以上の実務経験か講習で認定電気工事従事者になると、最大電力500kW未満の自家用電気工作物のうち600V以下の部分の工事にも従事できます。できることの範囲は 第二種電気工事士とは、使い道は 第二種電気工事士を取るメリット で整理しています。
第一種電気工事士は「やめとけ」?
「第一種はやめとけ」と言われる理由として、取るまでと取った後の手間があります。
- 実務経験が要る:第一種電気工事士試験に合格しても、経済産業省令で定める実務経験がないと免状を受けられません(電気工事士法第4条第3項第1号。ほかに、同等以上の知識と技能があると都道府県知事が認定した人が受ける道もあります。同項第2号)。
- 5年ごとの講習:免状の交付を受けた日から5年以内に、経済産業大臣の指定する者が行う自家用電気工作物の保安に関する講習を受け、その後も同じように受け続ける義務があります(同法第4条の3)。
その分、第一種は第二種の範囲に加えて、自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備など)の工事の作業に従事できます(同法第3条第1項)。高圧で受電するビルや工場の工事に関わるかどうかで、必要性が変わります。詳しくは 第一種電気工事士と第二種の違い で比べています。
後悔しないために確かめること
「やめとけ」と言われる理由には、会社ごとに違うものもあります。求人票や面接で、次の点を確かめる方法があります。
| 確かめる点 | 理由 |
|---|---|
| 36協定の時間(月・年の上限) | 法律の上限の範囲で、会社ごとに決めている |
| 低圧電気取扱業務の特別教育などの安全教育 | 事業者が行うことが法令で決まっている |
| 夏の熱中症対策の手順 | 2025年6月から、報告体制と手順の周知が事業者の義務 |
| 資格取得の支援 | 受験の費用や、第一種の実務経験の積み方に関わる |
| 主な仕事の中身 | 新築の配線・改修・設備の保守など、現場の種類で働き方が変わる |
資格の勉強から始める人は、受験資格がないので、まず第二種電気工事士の学科の範囲を一通り解いてみると、自分に合うかを確かめやすくなります。勉強の進め方は 第二種電気工事士の勉強法 にまとめています。
取り違えやすい点
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 建設業の時間外労働には、今も上限がない | 誤り | 2024年4月1日から上限がかかっている(災害の復旧・復興の事業の一部の例外を除く) |
| 熱中症対策は、事業者の努力に任されている | 誤り | 2025年6月1日から報告体制と悪化防止の手順づくり・周知が義務 |
| 第二種電気工事士にも5年ごとの講習の義務がある | 誤り | 講習の義務は第一種電気工事士だけ |
| 令和7年に感電で亡くなった労働者の半数以上は建設業だった | 正しい | 10人のうち6人(厚生労働省。建設業全体の数) |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、電気工事士の義務と安全に関わる範囲を確かめられます。
出典
- 厚生労働省「令和7年 労働災害発生状況(確定)」業種・事故の型別の死亡災害・死傷災害の表(令和8年4月7日現在。https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/ 、2026年10月20日に確認)
- 労働基準法 第36条・第139条(e-Gov法令検索・2026年7月17日施行の版)
- 労働安全衛生法 第59条第3項(e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の版)
- 労働安全衛生規則 第36条・第612条の2(e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の版。第612条の2は2025年6月1日施行の版から)
- 電気工事士法 第3条・第4条・第4条の3(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令 別表(第二種電気工事士免状の交付の手数料。e-Gov法令検索・2025年4月1日施行の版)
- 一般財団法人電気技術者試験センター「令和8年度第二種電気工事士下期試験受験案内」「令和8年度電気工事士試験の実施日程等のご案内」「第二種電気工事士の試験概要」
当サイトの問題は電気工事士試験の問題ではありません。法令や公開資料をもとに独自に作った練習問題です。電気技術者試験センター・厚生労働省とは関係ありません。










