低圧電気取扱業務特別教育は、交流600V以下(直流750V以下)の充電電路の敷設・修理や、配電盤室・変電室などで充電部分が露出した低圧の開閉器の操作をする労働者に、事業者が行わなければならない特別教育です(労働安全衛生法第59条第3項、労働安全衛生規則第36条第4号)。内容は、学科7時間と実技7時間(開閉器の操作だけを行う人は1時間)です(安全衛生特別教育規程第6条)。
特別教育は感電を防ぐための労働安全衛生法の教育で、電気工事士法の「電気工事をしてよい資格」とは別の制度です。電気工事士の作業の範囲は、第二種電気工事士の学科試験の科目「一般用電気工作物等の保安に関する法令」(電気工事士法施行令第8条)に入ります。この記事は、e-Gov法令検索の2026年10月時点の版(労働安全衛生法と労働安全衛生規則は2026年10月1日施行の版)と、厚生労働省の法令等データベースの安全衛生特別教育規程(2026年10月20日に確認)をもとに書いています。
低圧電気取扱業務特別教育を1枚で
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 義務を負う人 | 事業者(労働者をその業務につかせるとき) | 労働安全衛生法第59条第3項 |
| 対象の業務 | 低圧の充電電路の敷設・修理の業務、区画された場所の低圧の開閉器(充電部分が露出したもの)の操作の業務 | 労働安全衛生規則第36条第4号 |
| 低圧の定義 | 直流750V以下、交流600V以下 | 同号 |
| 対象から除かれる電路 | 対地電圧50V以下のもの、電信用・電話用など感電の危害のおそれがないもの | 同号 |
| 学科教育 | 5科目・合計7時間以上 | 安全衛生特別教育規程第6条第2項 |
| 実技教育 | 低圧の活線作業と活線近接作業の方法を7時間以上(開閉器の操作の業務だけなら1時間以上) | 同条第3項 |
| 科目の省略 | 十分な知識と技能があると認められる労働者は、その科目を省略できる | 労働安全衛生規則第37条 |
| 記録 | 受講者・科目などの記録を作成して3年間保存 | 同規則第38条 |
| 違反したとき | 違反行為をした者に6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法人や事業主にも罰金。両罰規定) | 労働安全衛生法第119条第1号・第122条 |
学科と実技の中身 — 7時間+7時間(または1時間)
特別教育の時間などの細目は厚生労働大臣が定めます(労働安全衛生規則第39条)。安全衛生特別教育規程第6条第2項の学科教育の科目と時間です。
| 科目 | 範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| 低圧の電気に関する基礎知識 | 低圧の電気の危険性、短絡、漏電、接地、電気絶縁 | 1時間以上 |
| 低圧の電気設備に関する基礎知識 | 配電設備、変電設備、配線、電気使用設備、保守及び点検 | 2時間以上 |
| 低圧用の安全作業用具に関する基礎知識 | 絶縁用保護具、絶縁用防具、活線作業用器具、検電器、その他の安全作業用具、管理 | 1時間以上 |
| 低圧の活線作業及び活線近接作業の方法 | 充電電路の防護、作業者の絶縁保護、停電電路に対する措置、作業管理、救急処置、災害防止 | 2時間以上 |
| 関係法令 | 労働安全衛生法・同法施行令・労働安全衛生規則の関係条項 | 1時間以上 |
実技教育は、低圧の活線作業と活線近接作業の方法について7時間以上です。ただし、開閉器の操作の業務だけを行う人は1時間以上です(同条第3項)。学科と合わせると、開閉器の操作だけなら8時間以上、敷設・修理もするなら14時間以上になります。講習の日数を比べるときは、どちらの業務の時間で組まれているかを見ます。
電気工事士との違い — 「教育」と「資格」は別の法律
| 低圧電気取扱業務特別教育 | 第二種電気工事士 | |
|---|---|---|
| 法律と目的 | 労働安全衛生法(この教育の目的は、労働者の感電による災害の防止) | 電気工事士法(電気工事の欠陥による災害の発生の防止。第1条) |
| 何か | 事業者が労働者に行う教育 | 都道府県知事が交付する免状 |
| 対象 | 低圧の充電電路の敷設・修理、露出した開閉器の操作の業務 | 一般用電気工作物等の電気工事の作業 |
| 取り方 | 事業者が行う | 第二種電気工事士試験の合格か、経済産業大臣が指定する養成施設の課程の修了など(電気工事士法第4条第4項) |
| 期限 | 定めはない(記録は3年保存) | 免状に有効期限の定めはない |
特別教育を受けても、電気工事士でなければできない電気工事(一般住宅のコンセントの増設や屋内配線の工事など)はできません(電気工事士法第3条第2項)。逆に、電気工事士の免状を持つ労働者でも、事業者が対象の業務につかせるなら、特別教育を行うか、労働安全衛生規則第37条で科目を省略するかを判断します。
電気工事士でなくてもできる軽微な作業は電気工事士法施行規則第2条が決めています。資格ごとに電気工事の範囲がどう分かれるかは 認定電気工事従事者とは に、電気工作物の区分は 電気工作物の区分 にまとめています。
高圧・特別高圧の特別教育との違い
同じ労働安全衛生規則第36条第4号には、高圧(交流600V超7,000V以下)・特別高圧(7,000V超)の充電電路やその支持物の敷設・点検・修理・操作の業務も入っています。教育の時間は安全衛生特別教育規程第5条で別に決まっています。
| 低圧 | 高圧・特別高圧 | |
|---|---|---|
| 対象の業務 | 充電電路の敷設・修理、露出した開閉器の操作 | 充電電路と支持物の敷設・点検・修理・操作 |
| 学科 | 7時間以上(5科目) | 11時間以上(5科目) |
| 実技 | 7時間以上(開閉器の操作のみは1時間以上) | 15時間以上(充電電路の操作のみは1時間以上) |
| 根拠 | 特別教育規程第6条 | 特別教育規程第5条 |
対地電圧が50Vを超える蓄電池を内蔵する自動車(電気自動車など)の整備の業務は、第36条第4号の2に分けられていて、特別教育規程第6条の2の別の科目(学科は6時間、実技は電気自動車などの整備作業の方法について1時間以上)になります。
進む 2027年4月1日からの改正: 労働者を使う小規模の事業者や個人事業者で自ら作業をする人(法人ならその代表者・役員。改正後の法第42条第3項の「作業従事役員等」)も、労働者と同じ場所で特別教育の対象の業務に就くときは、特別教育を受けなければならなくなります(令和7年法律第33号による改正後の労働安全衛生法第59条第4項)。
取り違えやすい文
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 低圧電気取扱業務特別教育を受ければ、一般住宅の屋内配線工事ができる | 誤り | 電気工事士の免状が要る(電気工事士法第3条第2項) |
| 低圧とは、交流では600V以下の電圧をいう | 正しい | 労働安全衛生規則第36条第4号(直流は750V以下) |
| 開閉器の操作の業務だけを行う人は、1時間以上の実技教育でよい | 正しい | 特別教育規程第6条第3項 |
| 特別教育の記録は、5年間保存する | 誤り | 3年間(労働安全衛生規則第38条) |
| 特別教育は、受講してから5年ごとに受け直さなければならない | 誤り | 有効期限・再受講の定めはない |
| 特別教育を行う義務を負うのは、労働者本人である | 誤り | 事業者(労働安全衛生法第59条第3項) |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、電気工事士の学科の法令を確かめられます。
出典
- 労働安全衛生法 第59条・第119条・第122条(e-Gov法令検索・2026年10月1日施行の版。第42条第3項・第59条第4項は2027年4月1日施行の版)
- 労働安全衛生規則 第36条〜第39条(同・2026年10月1日施行の版)
- 安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第5条・第6条・第6条の2(厚生労働省 法令等データベース。2026年10月20日に確認)
- 電気工事士法 第1条・第3条・第4条(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)、同法施行令 第8条(同・2025年11月14日施行の版)、同法施行規則 第2条(同・2023年12月28日施行の版)
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