給与計算実務能力検定2級は40問・120分で、そのうち計算問題は5問・各6点の計30点です。知識問題(各2点)と同じ四肢択一のマークシート方式で、合格基準は出題のうち7割以上の得点です(協会の試験概要)。1問の重さが知識問題の3倍あるので、計算で2問落とすと知識問題6問ぶんを失います。
計算問題では電卓を使え、保険料額表や源泉徴収税額表などをまとめた「資料集」が配られます。料率や税額の数字そのものを覚える必要はありません。点差がつくのは、どの金額にどの率を掛けるかと、どの順番で引くかの取り違えです。この記事では、よく出る5つの計算を、条文で確かめた手順とオリジナルの例題で追います。例題の料率や税額は説明のために置いた値で、実際の年度の率ではありません。
| 求めるもの | 取り違えやすい点 | 根拠 |
|---|---|---|
| 差引支給額 | 雇用保険料は通勤手当を含む総支給額に掛ける/所得税は社会保険料を引いた後の額で引く | 徴収法 第2条第2項・所得税法 第188条 |
| 割増賃金 | 家族手当・通勤手当などを基礎から除く/時間外と深夜が重なると5割 | 労働基準法 第37条・同法施行規則 第19条〜第21条 |
| 賞与の控除 | 社会保険料は標準賞与額(1,000円未満切捨て)、雇用保険料は賞与の実額 | 健康保険法 第45条・厚生年金保険法 第24条の4 |
| 標準報酬月額(定時決定) | 支払基礎日数が17日未満の月を除いて平均する | 健康保険法 第41条 |
| 年度更新の確定保険料 | 賃金総額の1,000円未満を切り捨ててから率を掛ける | 徴収法 第11条・第19条 |
法令は、11月の試験なら同じ年の9月1日、3月の試験なら同じ年の1月1日に施行されているものが前提です(協会の試験概要の注記)。料率は年度で変わるので、試験では問題文か資料集の値を使います。
差引支給額は「総支給 → 社会保険料 → 所得税 → 住民税」の順
例題1:次の条件で、従業員(32歳)の当月の差引支給額を求めます。
- 支給:基本給250,000円、時間外手当15,000円、通勤手当10,000円(所得税は全額非課税)
- 健康保険・厚生年金保険:標準報酬月額260,000円。被保険者負担の率は健康保険5.0%、子ども・子育て支援金0.115%、厚生年金保険9.15%(この例の値)
- 雇用保険:被保険者負担の率5/1,000
- 所得税:資料集の月額表で引いた額が4,500円だったとする/住民税(特別徴収):11,000円
- 保険料の1円未満は、50銭以下を切り捨て、50銭を超えたら切り上げる
① 総支給額 250,000+15,000+10,000=275,000円
② 社会保険料
- 健康保険 260,000×5.0%=13,000円
- 子ども・子育て支援金 260,000×0.115%=299円
- 厚生年金保険 260,000×9.15%=23,790円
- 雇用保険 275,000×5/1,000=1,375円
計38,464円です。32歳なので介護保険料はかかりません。介護保険料を負担するのは40歳以上65歳未満の第2号被保険者です。
健康保険と厚生年金は標準報酬月額に掛けますが、雇用保険料はその月に支払う賃金に掛けます。徴収法第2条第2項は、賃金を「名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」としているので、通勤手当も含めた275,000円が対象です。
③ 所得税 月額表で引くのは、総支給額から非課税の通勤手当と社会保険料を引いた額です(所得税法第188条)。275,000−10,000−38,464=226,536円を資料集の月額表に当て、扶養親族等の数の列から税額を読みます。この例では4,500円とします。
④ 差引支給額 275,000−38,464−4,500−11,000=221,036円
通勤手当は、雇用保険料の計算では「含める」、所得税の計算では非課税の部分を「除く」。同じ手当の扱いが控除ごとに変わるところが、選択肢の誤りとして最もよく作られます。
割増賃金は「除く手当を抜いてから」時間単価を出す
例題2:月給制の従業員の当月の割増賃金の合計を求めます。
- 月給:基本給236,000円、役職手当20,000円、家族手当15,000円(扶養家族の人数に応じて支給)、通勤手当12,000円
- 1年間の月平均所定労働時間:160時間
- 実績:法定時間外労働30時間(うち4時間は午後10時〜午前5時)、法定休日の労働8時間(深夜にかからない)
- 率:時間外25%、法定休日35%、深夜25%
① 基礎の賃金 労働基準法第37条第5項と施行規則第21条は、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を、割増賃金の基礎に入れないと定めています。基礎は236,000+20,000=256,000円です。
② 時間単価 月給は、月の所定労働時間数(月によって違う場合は1年間の月平均所定労働時間数)で割ります(施行規則第19条第1項第4号)。256,000÷160=1,600円。
③ 割増賃金
- 時間外 1,600×1.25×30時間=60,000円
- 時間外のうち深夜に及んだ分の上乗せ 1,600×0.25×4時間=1,600円
- 法定休日 1,600×1.35×8時間=17,280円
合計78,880円です。時間外労働が深夜に及んだ時間は、時間外の25%と深夜の25%を合わせて5割以上になります(施行規則第20条)。上の計算は、その4時間を時間外の30時間に含めたうえで、深夜の25%だけを上乗せしています。
時間外の率25%と法定休日の率35%は、労働基準法第37条第1項の政令(割増賃金令)が定める下限です。月60時間を超える時間外労働は、超えた時間について5割以上になります(同項ただし書)。家族手当は「扶養家族の人数に応じて」支給されるから除けるのであって、全員に同じ額を払う手当は名前が家族手当でも除けません(愛知労働局「割増賃金の基礎となる賃金について」。通勤手当・住宅手当も同じ考え方です)。問題文の支給の条件まで読みます。
賞与は「標準賞与額」と「賞与の額」を使い分ける
例題3:従業員(45歳)の賞与の差引支給額を求めます。
- 賞与の額:600,700円
- 率:健康保険(介護保険料を含む)5.8%、子ども・子育て支援金0.115%、厚生年金保険9.15%、雇用保険5/1,000(この例の値)
- 所得税:前月の給与などから決まる賞与の算出率を4.084%とし、1円未満は切り捨てる
① 標準賞与額 健康保険法第45条と厚生年金保険法第24条の4により、賞与の額の1,000円未満を切り捨てて600,000円。
② 社会保険料
- 健康保険(介護を含む) 600,000×5.8%=34,800円
- 子ども・子育て支援金 600,000×0.115%=690円
- 厚生年金保険 600,000×9.15%=54,900円
- 雇用保険 600,700×5/1,000=3,003.5円 → 50銭以下なので3,003円
計93,393円です。雇用保険料だけは切り捨てる前の賞与の額に掛けます。
③ 所得税 所得税法第188条により、社会保険料を引いた額に算出率を掛けます。(600,700−93,393)×4.084%=507,307×4.084%=20,718.41…→20,718円。
④ 差引支給額 600,700−93,393−20,718=486,589円
標準賞与額には上限があり、厚生年金保険は1か月150万円、健康保険は年度(4月〜翌年3月)の累計573万円です(同じ条文)。高額の賞与の問題では、上限で頭打ちにするかどうかも確かめます。算出率は、前月に支払った給与の金額(社会保険料を引いた後)と扶養親族等の数で資料集の表から引きます(所得税法第186条)。
定時決定は「17日未満の月」を除いてから平均する
例題4:継続して使用されている従業員の、4〜6月の報酬と支払基礎日数が次のとおりのとき、定時決定の標準報酬月額を求めます。
| 月 | 報酬 | 支払基礎日数 |
|---|---|---|
| 4月 | 305,000円 | 31日 |
| 5月 | 318,000円 | 30日 |
| 6月 | 262,000円 | 16日 |
健康保険法第41条第1項は、7月1日前3か月間の報酬の平均で報酬月額を決め、報酬の支払基礎日数が17日未満の月を除くとしています。6月を除いて、(305,000+318,000)÷2=311,500円。等級表で「310,000円以上330,000円未満」の行に当たるので、標準報酬月額は320,000円です。
3か月で割ると295,000円になり、1つ下の等級(300,000円)を選んでしまいます。決まった標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの各月に使います(同条第2項)。短時間労働者などは除く月の日数の定めが違うので、問題文で被保険者の区分を確かめてから計算します。
年度更新は「1,000円未満を切り捨ててから」率を掛ける
例題5:労災保険と雇用保険の両方が成立している事業で、前年度の賃金総額が36,480,500円だったとします。率は労災保険3/1,000、雇用保険13.5/1,000、概算保険料590,000円は納付済みです。
- 賃金総額の1,000円未満を切り捨てて36,480,000円(厚生労働省「労働保険の年度更新とは」の記入のしかた)
- 一般保険料の率は労災保険率と雇用保険率を合わせた16.5/1,000(徴収法第12条第1項第1号)
- 確定保険料 36,480,000×16.5/1,000=601,920円
納付済みの概算保険料との差11,920円は精算で納める額で、確定保険料そのものではありません(徴収法第19条)。選択肢には、この差額や、切り捨てる前の賃金総額に掛けた値が並びます。
練習のしかた
計算問題の誤りの選択肢は、ほとんどが「手順のどこか1か所を取り違えた値」です。解いた後は、正解の数字だけでなく、ほかの3つの選択肢がどの取り違えから出る値かを説明できるかを確かめると、本番で同じ罠に気づけます。
- 差引支給額:通勤手当の扱い・介護保険料の年齢・所得税を引く前の額
- 割増賃金:除く手当・時間単価の割る数・時間外と休日の率の入れ替え
- 賞与:標準賞与額と賞与の額の使い分け・所得税を掛ける額
- 定時決定:17日未満の月・等級表の行
- 年度更新:1,000円未満の切り捨て・概算保険料との差額
ぴよパスの給与計算実務能力検定2級の計算問題は、どれも問題文に料率と端数処理の条件を書き、解説に途中式と、誤りの選択肢がどの取り違えから出るかを載せています。知識問題は試験のトップから分野ごとに練習できます。掲載している問題はすべてオリジナル予想問題で、協会が出題した試験問題ではありません(2級の試験問題と模範解答は公開されていません)。
