玉掛けの計算問題は、式を探す前に何を求める問題か、答えの単位は何かを決めると整理しやすくなります。「荷の質量」「ロープ1本の張力」「その掛け方でつれる質量」は、似た数字を使っていても別の量です。
ここでは、単位のそろえ方から計算過程を追い、最後に自分で解く確認問題を用意しました。掲載問題は学習用に作成したオリジナル例題で、教習機関の修了試験や公表過去問ではありません。
| 求めたいもの | 先に確かめる情報 | 答えの単位 |
|---|---|---|
| 荷の質量 | 形・寸法・材質の密度 | kgまたはt |
| ロープ1本に作用する張力 | 荷の質量・掛け数・つり角度・荷重の分担 | kNなどの力の単位 |
| 基本安全荷重 | 切断荷重・安全係数 | 教材の表示に合わせてtなど |
| 掛け方を考慮した安全荷重 | 基本安全荷重・指定されたモード係数 | tなど |
原理の確認には、厚生労働省の玉掛け技能講習補助テキストの質量・体積、ワイヤロープの張力と安全荷重の項目を使っています。実際の作業では荷の表示・図面、用具の使用荷重表、作業計画と指導者の指示を確認します。以下の例題だけで使用するロープを決めないでください。
長さをそろえてから体積を計算する
密度が「t/m³」で与えられたら、縦・横・高さをすべてmに直してから掛けます。長さを1つだけcmのまま残すと、途中式の見た目が合っていても答えがずれます。
| 元の単位 | 換算 | 計算用の例 |
|---|---|---|
| mm → m | 1,000で割る | 40mm = 0.04m |
| cm → m | 100で割る | 60cm = 0.6m |
| kg → t | 1,000で割る | 936kg = 0.936t |
| t → kg | 1,000を掛ける | 0.5t = 500kg |
体積1m³に対して何tあるかを示すのが、ここで使う密度です。比重は基準となる物質との比で、単位を持ちません。教材で鋼の「7.8」を見たときも、計算には「1m³当たり7.8t」と単位を補っておくと混乱を避けられます。
例題1:厚さがmmで与えられた鋼板
長さ1.5m、幅80cm、厚さ40mmの鋼板があります。密度を7.8t/m³として、質量をkgで求めてください。
- 幅は0.8m、厚さは0.04mに直します。
- 体積は 1.5 × 0.8 × 0.04 = 0.048m³ です。
- 質量は 0.048 × 7.8 = 0.3744t です。
- kgに直して、答えは 374.4kg となります。
途中で出た0.048は体積です。これをそのまま質量の答えにしないよう、各行に単位を書きます。密度は問題文の指定を使い、材質が違う荷に鋼の値を当てはめないことも大切です。
円柱は直径を半分にしてから二乗する
円柱の体積は「底面積 × 長さ」、底面積は「半径 × 半径 × 円周率」です。直径をそのまま二乗すると、正しい体積の4倍になります。
例題2:中身が詰まった円柱
直径40cm、長さ1.2mの中実の円柱があります。密度を2.5t/m³、円周率を3.14として質量を求めてください。
- 直径0.4mの半分なので、半径は 0.2m。
- 体積は 0.2 × 0.2 × 3.14 × 1.2 = 0.15072m³。
- 質量は 0.15072 × 2.5 = 0.3768t = 376.8kg。
「中実」は中身が詰まっているという意味です。中空の管なら穴の体積を差し引く必要があり、同じ外径・長さでも同じ質量にはなりません。形の読み取りを計算より先に済ませましょう。
張力係数は「1本にかかる力」を求めるために使う
ここからは、重心を挟んで左右対称に2本でつり、2本が均等に荷重を受ける静止したモデルで考えます。つり角度は2本のロープの間の角度です。ロープと鉛直線の角度ではありません。
荷を支える上向きの力はロープの張力の鉛直成分です。ロープを広げるほど、同じ荷を支えるのに必要な1本当たりの張力は大きくなります。
例題3:2本づりの張力をkNで求める
質量3tの荷を左右対称の2本づりにします。つり角度60°の張力係数を1.16、1tの質量に働く重力を9.8kNとして、1本の張力を求めてください。
- 荷全体の重力:3 × 9.8 = 29.4kN。
- 2本で分担した値:29.4 ÷ 2 = 14.7kN。
- 角度による割増し:14.7 × 1.16 = 17.052kN。
答えは約17.1kNです。「3 ÷ 2 × 1.16 = 1.74」という値だけでは力の単位になりません。教材でtを使って説明する場合は、1.74tの質量に働く重力に相当する力、と読み分けます。
係数が指定されている問題では、指定値と丸め方を使います。荷重が均等でない場合や4本づりなどへ、例題の「2で割る」をそのまま広げないでください。
モード係数は「掛け方を考慮した安全荷重」に使う
基本安全荷重は、ロープ1本で垂直につる場合の基準です。これに指定されたモード係数を掛けると、掛け方を考慮した安全荷重を求められます。
例題4:基本安全荷重から求める
1本の基本安全荷重が1.5t、問題で指定された掛け方のモード係数が1.73のとき、安全荷重は次のように計算します。
1.5 × 1.73 = 2.595t
答えは2.595tです。この1.73には掛け方の効果が含まれるので、さらにロープの本数を掛けません。現物の使用荷重表では角度を区間で扱うこともあるため、表の適用条件を確認します。
張力係数とモード係数は単純な逆数ではない
対称な2本づりの理想モデルでは、張力係数をCとすると、対応するモード係数は 2 ÷ C です。単純な「1 ÷ C」ではありません。たとえばつり角度60°なら、理論値はそれぞれ約1.155と約1.732になります。
係数表は丸めや角度区間の取り方が異なる場合があります。丸めた1.16から別の表の1.73を正確に再現しようとせず、問題で与えられた表を使ってください。
切断荷重から始まる問題は9.8も確認する
切断荷重と安全荷重は別です。切断荷重がkNで示され、安全係数を考慮した基本安全荷重をtで求めるときは、単位換算も必要になります。
例題5:切断荷重から基本安全荷重へ
切断荷重を117.6kN、安全係数を6、1tの質量に働く重力を9.8kNとして計算します。
117.6 ÷ 6 = 19.6kN
さらにtで表される質量に換算して、19.6 ÷ 9.8 = 2t です。まとめると 117.6 ÷(6 × 9.8)= 2t となります。
安全係数を掛けると安全側になる、という読み方は誤りです。切断荷重から使用できる側の値を求めるので、ここでは割り算になります。用具の種類ごとの安全係数や使用禁止基準は、玉掛け学科の学習ガイドで法令の項目も確認してください。
答えを隠して解く確認問題
次の3問は、式を自分で選ぶための確認です。表の下にある解答を見る前に、求める量と単位を書いてください。
| 問い | 条件 |
|---|---|
| A:直方体の質量をkgで求める | 1.2m × 0.5m × 20cm、密度7.8t/m³ |
| B:1本の張力をkNで求める | 左右対称2本づり、荷2.5t、張力係数1.16、1t当たり9.8kN |
| C:掛け方を考慮した安全荷重を求める | 基本安全荷重0.8t、指定モード係数1.73 |
解答と確認点
- A:936kg。 20cmを0.2mに直し、1.2 × 0.5 × 0.2 × 7.8 = 0.936t。最後に1,000を掛けます。
- B:14.21kN。 2.5 × 9.8 ÷ 2 × 1.16。荷全体の重力24.5kNに係数だけを掛けると、2本で分担する計算が抜けます。
- C:1.384t。 0.8 × 1.73。モード係数を割ったり、本数をさらに掛けたりしないことを確認します。
単位で間違えたら例題1、直径で間違えたら例題2、式の選択で迷ったら例題3〜5へ戻ります。解き直しでは、答えを覚えているかより途中式を説明できるかを確かめてください。
講習のテキストと練習問題を組み合わせる
係数表や丸め方、電卓の使用可否、修了試験の形式は受講する教習機関の案内で確認します。厚労省の技能講習補助教材の案内も、補助教材と教習機関のテキストを併用するよう説明しています。
図と係数表は講習テキスト、式を自分で選ぶ練習はこのページ、選択肢の正誤判断は玉掛け学科の科目別演習という使い方ができます。小型移動式クレーンも学ぶ場合は、小型移動式クレーンの力学で作業半径とモーメントの違いを確認してください。






