ガス溶接技能講習は、労働安全衛生法第61条の就業制限業務である「可燃性ガス及び酸素を用いて行う金属の溶接、溶断又は加熱の業務」に就くための技能講習です。ガス溶接技能講習規程 (昭和47年労働省告示第110号) が定める学科8時間と実技5時間の講習の後に修了試験があり、都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関が全国で実施しています。工場・建設・整備の現場で最初に取る資格の一つで、2日間で修了証が交付されます。
「講習を聞いていれば受かる」と言われる試験ですが、落ちて再受講になる人はいます。理由の多くは、130キロパスカルの圧力制限、銅70%以上の合金の使用禁止、発生器から5メートル・発生器室から3メートルの火気禁止、安全器の1日1回点検といった数字と、「酸素は燃えないが燃焼を助ける」「アセチレンは空気より軽く、酸素がなくても分解爆発する」「プロパンは空気より重い」というガスの性質を整理しないまま試験に臨むことです。ぴよパスでは、労働安全衛生規則 (アセチレン溶接装置・ガス集合溶接装置の規定)、容器保安規則、一般高圧ガス保安規則、技能講習規程の条文で接地した四肢択一40問を3科目に分けて用意しました。
学科講習と修了試験の形式 (技能講習規程から)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 労働安全衛生法第61条、労働安全衛生法施行令第20条第10号、ガス溶接技能講習規程 (昭和47年労働省告示第110号) |
| 実施 | 都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関 (労働基準協会、建設業の団体、メーカーの研修施設など) |
| 学科講習 | ガス溶接等の業務のために使用する設備の構造及び取扱いの方法に関する知識 4時間 / 可燃性ガス及び酸素に関する知識 3時間 / 関係法令 1時間 (計8時間) |
| 実技講習 | ガス溶接等の業務のために使用する設備の取扱い (容器、導管、吹管、圧力調整器等) 5時間 |
| 修了試験 | 学科講習の科目について筆記試験又は口述試験 (規程第3条)。問題数・形式・合格基準は機関ごと |
| 受講資格 | 法令上の要件なし。機関の案内では満18歳以上とする例 (新潟県労働基準協会連合会) |
| 受講料 (例) | 新潟県労働基準協会連合会 17,600円 (税・テキスト代1,100円込み)。2026年9月時点 |
| 合格率 | 全国集計は公表されていない (機関ごとに実施するため) |
| 修了証 | 全国で有効。有効期限や更新の定めはない。作業中は携帯する (労働安全衛生法第61条第3項) |
同じ技能講習の仕組みの フォークリフト運転技能講習 や 玉掛け技能講習 と同様、試験は国の一括実施ではなく各機関の到達度確認です。ただし出題範囲は規程の3科目に固定されています。
3科目と練習問題40問の対応
講習時間の比率 (4:3:1) に近い配分で、設備の科目を厚くしています。
| 科目 (講習時間) | 練習問題で扱う論点 |
|---|---|
| 設備の構造及び取扱いの方法に関する知識 (4時間・20問) | 装置の構成、圧力調整器 (高圧計と低圧計・開栓手順)、容器の取扱い (立てて固定・40℃以下)、導管の混同防止、火炎の種類 (中性炎・酸化炎・炭化炎)、逆火の処置、安全器 (吹管ごと・1日1回点検)、130kPaの圧力制限、銅の使用制限、発生器室と格納室、火気禁止の距離、ガス集合装置とガス装置室、容器取替えの立会い、ガス漏れ点検と凍結防止、保護具、ガス切断の原理、作業場所の火災防止、容器の塗色、高圧ガスの定義、消費の基準 |
| 可燃性ガス及び酸素に関する知識 (3時間・14問) | アセチレンの性質 (空気より軽い・燃焼範囲が極めて広い・分解爆発)、溶解アセチレン、酸素の支燃性と油脂、プロパンの比重と付臭、燃焼範囲と発火温度、爆発の種類、酸素富化、一酸化炭素と金属ヒューム、容器の表示 (燃・毒)、着火源の管理、アセチレン炎とプロパン炎、漏えい時の行動、危険性の比較、燃料ガスの圧力 |
| 関係法令 (1時間・6問) | 就業制限と技能講習、ガス溶接作業主任者 (免許) との違い、技能講習規程の科目と時間、修了証の携帯と再交付、アーク溶接の特別教育との違い、罰則 |
解説は正解の肢だけでなく、残り3肢がなぜ誤り (または正しい) のかを条番号付きで書いています。
数字で決まる論点 — 先に覚える10個
| 論点 | 数字 | 根拠 |
|---|---|---|
| アセチレン溶接装置の使用圧力 | ゲージ圧力130kPa以下 | 労働安全衛生規則第301条 |
| ガスだめの安全弁 / 圧力計 | 140kPaに達しないうちに作動 / 最大指度は常用圧力の1.5倍以上500kPa以下 | 同第305条 |
| 銅の使用制限 | 銅又は銅を70%以上含む合金は不可 | 同第305条・第311条 |
| 発生器室の開口部 | 他の建築物から1.5m以上 | 同第302条 |
| 火気禁止の範囲 | 発生器から5m以内・発生器室から3m以内 / ガス集合装置から5m以内 | 同第312条・第313条 |
| ガス集合装置の位置 | 火気を使用する設備から5m以上 | 同第308条 |
| 安全器の点検 | 1日1回以上 (水位を確かめられる箇所に置く) | 同第315条 |
| 容器の温度 | 40℃以下 (加熱は40℃以下の温湯か熱湿布) | 一般高圧ガス保安規則第60条 |
| 高圧ガスの定義 | 圧縮ガス1MPa以上 / 圧縮アセチレン0.2MPa以上 / 液化ガス0.2MPa以上 | 高圧ガス保安法第2条 |
| 容器の塗色 | 酸素 黒・アセチレン かっ色・水素 赤・液化炭酸 緑・液化アンモニア 白・液化塩素 黄・その他 ねずみ色 | 容器保安規則第10条 |
直感と逆の論点 — 落ちる人が間違える5つ
- 酸素は「燃えるガス」ではない: 酸素は支燃性で、自らは燃えずに燃焼を助けます。危険なのは高圧酸素が油脂に触れて発火することと、狭い場所を酸素で換気して衣服に酸素がしみ込む酸素富化です。換気には空気を使います。
- アセチレンは空気より軽い: 漏れると天井付近に溜まります。低所に溜まるのはプロパンです。同じ「可燃性ガス」でも換気する場所が違います。
- アセチレンは酸素がなくても爆発する: 加圧・衝撃・加熱で分解爆発するため、使用圧力は130kPa以下、貯蔵は溶剤に溶かした溶解アセチレンです。容器は横にせず立てて使います。
- 技能講習と作業主任者免許は別: 技能講習の修了証は自分が業務に就くための資格で、アセチレン溶接装置やガス集合溶接装置を使う作業を指揮する作業主任者には免許 (安全衛生技術試験協会の試験) が要ります。容器の取替えには作業主任者の立会いが必要です。
- ガス漏れは火で調べない: 石けん水か検知器で確認します。凍結しても直火であぶらず温水か蒸気を使い、容器を温めるときも40℃以下の温湯か熱湿布です。
落ちる人の共通点と当日の準備
- 数字を聞き流す: 上の10個は講習中に印を付け、休憩時間に見直します。修了試験は講習の直後なので、直前の見直しがそのまま点になります。
- ガスの性質を混同する: アセチレン (軽い・分解爆発)、プロパン (重い・付臭)、酸素 (支燃性・油脂厳禁) を対比表にして覚えると、選択肢の入れ替えに強くなります。
- 形式を知らずに臨む: 四肢択一か○×か、筆記か口述かは機関ごとに違います。申込時の案内と講習初日の説明で確認し、練習問題で「誤っているものを選ぶ」問題に慣れておいてください。
出典 (2026-09-09 確認):
- ガス溶接技能講習規程 (昭和47年労働省告示第110号・厚生労働省法令等データベース) — 学科3科目8時間・実技5時間・修了試験の形式
- 労働安全衛生規則 (e-Gov) — 第36条 (特別教育)、第41条 (就業制限の資格)、第301〜315条 (アセチレン溶接装置・ガス集合溶接装置)
- 労働安全衛生法施行令 (e-Gov) — 第6条第2号 (作業主任者)、第20条第10号 (就業制限)
- 労働安全衛生法 (e-Gov) — 第61条 (就業制限)、第119条 (罰則)
- 高圧ガス保安法 (e-Gov) — 第2条 (高圧ガスの定義)
- 容器保安規則 (e-Gov) — 第10条 (容器の塗色と表示)
- 一般高圧ガス保安規則 (e-Gov) — 第60条 (消費の技術上の基準)
- 職場のあんぜんサイト 酸素のモデルSDS (厚生労働省) — 支燃性・油脂との接触禁止
- 新潟県労働基準協会連合会 ガス溶接技能講習 — 受講料・受講資格・日程の例





