泡の数値を落とす原因は、語呂の不足ではない
甲種2類の数値を間違える人の多くは、同じ項目に2種類の数値が存在することに気づいていません。泡消火設備には、
- 一般の防火対象物(駐車場・自動車修理工場・航空機格納庫など。消防法施行令第15条と消防法施行規則第18条)
- 危険物の製造所等(危険物の規制に関する規則の審査基準、いわゆる別記9の3)
という2つの法体系があり、移動式の数値などが真っ向から違います。甲種2類が前提にしているのは前者です。ところが解説記事の多くが両者を区別せずに数値を並べているため、語呂で覚えた数字がそもそも別の制度のものだった、ということが起こります。
まず切り分けてから、残った数値を語呂で固定してください。
最初に切り分ける — 移動式の数値は2種類ある
| 項目 | 一般の防火対象物(甲2はこちら) | 危険物の製造所等 |
|---|---|---|
| ホース接続口までの水平距離 | 15メートル以下(屋内外の別なし) | 屋内25メートル/屋外40メートル |
| 同時に使うノズルの数 | 2個(接続口が1個なら1個) | 4個 |
| ノズル1個あたりの放射量 | 道路等 100リットル毎分/その他 200リットル毎分 | 屋内200/屋外400リットル毎分 |
| 放射を継続する時間 | 15分間 | 30分間 |
| 一の放射区域の面積 | 道路 80〜160平方メートル/その他 50〜100平方メートル(上限がある) | 100平方メートル以上(上限なし) |
一般の防火対象物側の根拠は、水平距離が消防法施行令第15条第2号、泡水溶液の量が消防法施行規則第18条第2項第4号、放射区域の面積が同条第4項第5号です。
覚え方は「移動式はニコイチ、ヒャクニヒャク、ジュウゴフン」。ノズル2個・100/200リットル毎分・15分間、と3つを一息で並べます。25メートルや40メートル、30分間という数字が選択肢に出てきたら、それは製造所等の値だと判断してください。
放射区域の面積に上限があるのも一般の防火対象物側の特徴です。「100平方メートル以上」とだけ覚えていると、上限を問う設問で外します。
薬剤3種の数値は「水成膜がいちばん小さい」で並ぶ
標準放射量(消防法施行規則第18条第1項)は3つだけです。
| 泡消火薬剤 | 標準放射量 |
|---|---|
| 水成膜泡消火薬剤 | 3.7リットル毎分・平方メートル以上 |
| たん白泡消火薬剤 | 6.5リットル毎分・平方メートル以上 |
| 合成界面活性剤泡消火薬剤 | 8.0リットル毎分・平方メートル以上 |
小さい順に 水成膜 → たん白 → 合成界面活性剤 です。「水はサンナナ、たん白ロクゴ、合成ハチ」と3拍で唱えます。
水成膜が最も少なくて済むのは、油面に水成膜を張って再燃を抑える性質があるためで、性能が高いぶん必要量が少ないという理解と数字の順序が一致します。理由と順序がそろっていると、語呂を忘れても復元できます。
発泡倍率も同じ並びで覚える
泡消火薬剤の規格(泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令)側の数値です。
| 薬剤 | 低発泡の発泡倍率 | 高発泡 | 25%還元時間 |
|---|---|---|---|
| たん白泡 | 6倍以上 | 規定なし | 1分以上 |
| 合成界面活性剤泡 | 6倍以上 | 500倍以上 | 低発泡1分以上/高発泡3分以上 |
| 水成膜泡 | 5倍以上 | 規定なし | 1分以上 |
ここでも水成膜だけが5倍で、他の2つは6倍です。標準放射量と同じく「水成膜だけ数字が1つ小さい」という形なので、2つの表をまとめて処理できます。
高発泡(500倍以上)の試験ができるのは合成界面活性剤泡だけです。「高発泡は合成のひとり勝ち」で押さえます。25%還元時間は低発泡が1分以上、高発泡が3分以上なので「低いほうが短い」と向きで覚えます。
水成膜泡だけに拡散係数3.5以上(同省令第14条)という規定がある点も、「水成膜は油面に広がる薬剤だから拡散を測る」と役割で結びつきます。
ヘッドの設置密度は「9と8」
| ヘッド | 設置密度 |
|---|---|
| フォームヘッド | 防護対象物の表面積(建築物は床面積)9平方メートルにつき1個以上 |
| フォームウォータースプリンクラーヘッド | 8平方メートルにつき1個以上 |
根拠は消防法施行規則第18条第2項第1号です。「フォームは9、水つきは8」。名前が長いほうが数字が小さい、という覚え方でも通ります。
⚠️ 「半円形のフォームヘッドは4.5平方メートルにつき1個」という数値は、一般の防火対象物の基準には存在しません。 これは製造所等側の規定です。上の表の2つだけが甲2で使う値です。
水源水量は「固定式10分・移動式15分」
- フォームヘッド方式などの固定式は、設置個数が最も多い放射区域の全ヘッドを同時に使い、標準放射量で10分間放射できる量に、配管を満たすのに要する泡水溶液量を加えます。
- 移動式は前述のとおり15分間です。
「固定はジュウ、移動はジュウゴ」。放射区域が「最も多い区域」を基準にする点も、製図の計算で必ず使うので一緒に覚えます。
加圧送水装置まわりは3つだけ
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 起動から有効な泡水溶液を送るまで | 5分以内(または加圧送液装置からフォームヘッドまでの水平距離500メートル以下) |
| ポンプの吐出量が定格の150%のときの全揚程 | 定格全揚程の65%以上 |
「ゴフン、ゴヒャク、ヒャクゴジュウでロクゴ」と数字を並べて読むと3つ同時に入ります。150%と65%は消防設備士の他の類でも共通して出るので、ここで固めておくと使い回せます。
消火性能試験の数字は「模型」から思い出す
規格省令の消火性能試験(B火災模型)は、条件が多くて丸暗記に向きません。模型を思い浮かべて順に埋めるほうが速いです。
- 縦2メートル×横2メートルの正方形オイルパン
- 水320リットル+ガソリン200リットルを投入
- 点火から1分後に、温度20度の泡水溶液を水圧力0.69メガパスカル・放水量10リットル毎分で放射
- 連続発泡時間は、たん白泡・水成膜泡が5分間、合成界面活性剤泡が8分間
- 消火時間は5分以内、密封性は15分間(合成界面活性剤泡は12分間)
ここでも合成界面活性剤泡だけが長い(発泡8分・密封性12分)という形です。薬剤ごとの数値は、どれが仲間外れかを先に決めると混ざりません。
語呂は条文に戻して確かめる
語呂で数字を思い出したあと、必ず単位(リットル毎分か、リットル毎分・平方メートルか)と向き(以上/以下)を確認してください。標準放射量は「リットル毎分・平方メートル以上」、移動式の放射量は「リットル毎分」で単位が違います。放射区域の面積は「以上」と「以下」の両方があります。
そして本記事でいちばん重要なのは、数値を思い出したときに「これは一般の防火対象物の値か、製造所等の値か」を1回自問することです。甲種2類でこの一手間を省くと、正しく暗記していても外します。
演習で切り分けを確かめる
消防設備士甲種2類の練習問題は全126問を無料で公開しています。構造・機能・工事・整備のカテゴリに薬剤別の数値とヘッドの基準がまとまっており、算定の手順は製図対策、機器の名称と役割は鑑別対策で扱っています。
科目ごとの配点と学習の順序は出題傾向にまとめてあります。











