甲種危険物取扱者は、消防法に基づく危険物取扱者の免状のうち、第1類から第6類まですべての種類の危険物を取り扱える区分です(危険物の規制に関する規則第49条)。危険物取扱者でない人がガソリンスタンドや化学工場などの製造所等で危険物を扱うときに立ち会うこともでき、製造所等での6か月以上の実務経験があれば危険物保安監督者にもなれます(消防法第13条)。
この記事は、e-Gov法令検索の消防法(2025年6月1日施行の版)・危険物の規制に関する政令(2026年4月4日施行の版)・危険物の規制に関する規則(2026年6月30日施行の版)と、一般財団法人消防試験研究センターの「受験資格」「試験科目及び問題数」「試験の方法」「試験実施状況」などをもとにしています。
甲種・乙種・丙種の違い
危険物取扱者の免状は、甲種・乙種・丙種の3種類です(消防法第13条の2第1項)。違いは、取り扱える危険物の範囲と、立会い・保安の監督ができるかどうかです。
| 項目 | 甲種 | 乙種 | 丙種 |
|---|---|---|---|
| 取り扱える危険物 | すべての種類(第1類〜第6類) | 免状に指定された類だけ | ガソリン、灯油、軽油、第3石油類(重油・潤滑油・引火点130℃以上のもの)、第4石油類、動植物油類 |
| 無資格者の取扱いへの立会い | できる(すべての類) | できる(指定された類だけ) | できない |
| 危険物保安監督者 | なれる(製造所等で6か月以上の実務経験) | なれる(指定された類。同じ条件) | なれない |
| 受験資格 | あり(下の5つの道) | なし | なし |
| 試験 | 45問・2時間30分・五肢択一 | 35問・2時間・五肢択一 | 25問・1時間15分・四肢択一 |
| 試験手数料 | 7,200円 | 5,300円 | 4,200円 |
取り扱える範囲は規則第49条、立会いは消防法第13条第3項、危険物保安監督者は同法第13条第1項、試験は消防試験研究センターの「試験科目及び問題数」「試験の方法」によります。危険物保安監督者の実務経験は、製造所等での経験に限られます(規則第48条の2)。乙種で扱える類ごとの物質は 危険物取扱者とは の表で整理しています。
甲種が要る場面と、乙種で足りる場面
働く施設で扱う危険物が第4類だけなら、乙種第4類の免状で取扱いも立会いもできます。複数の類の危険物を扱う化学工場などで、1人で全部の類の取扱作業に立ち会ったり、保安の監督をしたりする場合に、甲種の範囲が意味を持ちます。なお、乙種を第1類から第6類まで全部そろえると、取り扱える危険物の範囲は甲種と同じになります。ただしセンターは、危険物保安監督者の資格要件には違いがあるとしています(よくある質問。違いの中身は書かれていない)。乙種をそろえても甲種に切り替わるわけではなく、甲種の免状は甲種の試験に合格して受けます。
甲種の受験資格は5つの道
甲種危険物取扱者試験を受けられるのは、主に次の5つの道に当てはまる人です(消防法第13条の3第4項、規則第53条の3、センターの区分)。ほかに、旧制の大学・専門学校の卒業者などが当てはまる場合があるとセンターは案内しています。消防試験研究センターは、甲種の受験資格チェック表を用意しています。
| 道 | 条件 | 証明する書類(センターの案内) |
|---|---|---|
| 化学の学科を卒業 | 大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(修業年限2年以上・総授業時数1,700時間以上の専門課程)・高等学校や中等教育学校の専攻科(修業年限2年以上)などで、化学に関する学科又は課程を修めて卒業した | 卒業証明書など(学科名が書かれたもの) |
| 化学の授業科目15単位 | 大学・短期大学・高等専門学校(専門科目に限る)・大学院・専修学校(修業年限2年以上・総授業時数1,700時間以上の専門課程)などで、化学に関する授業科目を15単位以上修得した | 単位修得証明書・成績証明書 |
| 乙種+実務2年 | 乙種の免状を受けた後、製造所等で危険物取扱いの実務経験が2年以上ある | 乙種の免状と実務経験証明書 |
| 乙種4種類 | 乙種の免状で、「第1類又は第6類」「第2類又は第4類」「第3類」「第5類」の4種類を持っている | 乙種の免状 |
| 修士・博士 | 化学に関する事項を専攻して修士・博士の学位を受けた | 学位記など |
学歴や実務経験がなくても使えるのは「乙種4種類」の道です。乙4を持っている人は第2類か第4類の枠を満たしているので、ほかに第1類か第6類、第3類、第5類の3種類をそろえれば受験できます。15単位の道は、卒業・在学中・中途退学や通信教育にかかわらず数えられ、放送大学の単位も数えられるとセンターは案内しています。実務経験は、乙種の免状を受けた後の、製造所等での経験に限られます(規則第48条の2)。丙種の免状の後の経験では受験資格になりません。
甲種の試験科目と合格基準
| 試験科目 | 問題数 | 乙種との違い |
|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 | 問題数は同じ |
| 物理学及び化学 | 10問 | 乙種は「基礎的な」物理学及び化学 |
| 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 20問 | 乙種は受ける類だけで10問。甲種はすべての類 |
試験は五肢択一のマークシート方式で、試験時間は2時間30分です。合格するには、3科目それぞれで60%以上の正解が必要です(法令9問・物理学及び化学6問・性質と消火12問以上)。乙種には、ほかの類の乙種免状や火薬類の免状を持つ人に科目の一部を免除する制度があり(規則第55条第5項・第6項)、丙種にも消防団員の経験による免除があります(同条第7項)が、甲種に免除の定めはありません。
科目の中身は規則第55条第1項が決めています。物理学及び化学には燃焼及び消火に関する理論が、性質と消火にはすべての種類の危険物の性質の概論と、類ごと・品名ごとの性質や火災予防・消火の方法が入ります。
令和7年度の合格率は34.0%
消防試験研究センターの「試験実施状況」の令和7年度(令和7年4月〜令和8年3月)の表です。月ごとの表を足した数とも、センターの「令和7年度 都道府県別試験合格状況」の合格者の合計とも一致します。
| 種類 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 甲種 | 20,296人 | 6,900人 | 34.0% |
| 乙種第4類 | 222,545人 | 71,059人 | 31.9% |
| 乙種(全類の計) | 270,965人 | 102,643人 | 37.9% |
| 丙種 | 19,969人 | 9,593人 | 48.0% |
甲種の合格率は乙4に近い3割台で、乙4以外の乙種(令和7年度は第1類65.7%・第2類66.0%・第3類65.1%・第5類62.1%・第6類67.6%)より低くなっています。甲種の令和6年度は受験者21,257人・合格者7,484人で35.2%、令和8年4月〜8月は受験者6,373人・合格者2,228人で35.0%でした。
試験の申込みと、合格した後
試験手数料は7,200円です。センターの手数料一覧表によると、この額は令和6年5月からで、それまでの甲種は6,600円でした(地方公共団体の手数料の標準に関する政令。2024年4月1日施行の版までは6,600円、2024年5月1日施行の版から7,200円)。申込みは書面と電子申請があり、センターは令和10年度からの受験申込みを電子申請を原則とする予定だと案内しています(2026年6月19日のお知らせ)。
試験の日程は都道府県ごとに違います。センターの「令和8年度後期 試験日程(危険物取扱者試験)」(令和8年10月20日時点)では、乙種第4類を含む試験216回に対し、甲種を含む試験は176回でした。居住地以外の都道府県でも受験でき、その場合は受験したい都道府県のセンター支部(東京は中央試験センター)に申請します(センターのよくある質問)。合格した後は、受験した都道府県の知事に免状の交付を申請します(消防法第13条の2第3項、危険物の規制に関する政令第32条)。免状を受けた後の保安講習や写真の書換えは、乙種・丙種と同じです(危険物取扱者とは の後半で整理しています)。
取り違えやすい点
| 文 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 乙種の免状を1種類持っていれば甲種を受験できる | 誤り | 乙種は4種類そろえるか、免状を受けた後に製造所等で2年以上の実務経験が要る(消防法第13条の3第4項、規則第53条の3第5号) |
| 丙種の免状を受けた後の2年の実務経験で甲種を受験できる | 誤り | 実務経験の道は乙種の免状を受けた後に限られる(消防法第13条の3第4項第2号) |
| 甲種の試験でも、乙種の免状があれば法令と物理化学が免除される | 誤り | 甲種の試験に科目免除の定めはない。免除は乙種(規則第55条第5項・第6項)と丙種(同条第7項)だけ |
| 甲種危険物取扱者は、免状を受けた日から危険物保安監督者になれる | 誤り | 製造所等で6か月以上の実務経験が要る(消防法第13条第1項、規則第48条の2) |
| 甲種危険物取扱者は、第5類の危険物の取扱作業にも立ち会える | 正しい | 甲種はすべての種類の危険物に立ち会える(規則第49条) |
ぴよパスのオリジナル予想問題で、甲種の受験資格や立会いの決まりを確かめられます。
出典
- 消防法 第13条・第13条の2・第13条の3(e-Gov法令検索・2025年6月1日施行の版)
- 危険物の規制に関する政令 第32条(e-Gov法令検索・2026年4月4日施行の版)
- 危険物の規制に関する規則 第48条の2・第49条・第53条の3・第55条(e-Gov法令検索・2026年6月30日施行の版)
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令(e-Gov法令検索・2024年4月1日施行の版と2024年5月1日施行の版)
- 一般財団法人消防試験研究センター「受験資格」(https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/qualified.html )、「試験科目及び問題数」(https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/subject.html )、「試験の方法」(https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/way.html )
- 一般財団法人消防試験研究センター「試験実施状況」(https://www.shoubo-shiken.or.jp/result/ 。令和7年度・令和6年度の表、令和7年度の各月と「令和7年度 都道府県別試験合格状況」、令和8年4月〜8月)
- 一般財団法人消防試験研究センター「令和8年度後期 試験日程(危険物取扱者試験)」(令和8年10月20日時点。https://shinsei.shoubo-shiken.or.jp/shoubou_ia/iajs9001.do?download=1&menjo_kbn=1&ki_kbn=2&nendo=2026 )、「危険物取扱者試験について|よくある質問」(https://www.shoubo-shiken.or.jp/faq/index_kiken.html )
- 一般財団法人消防試験研究センター「【危険物・設備士】試験手数料一覧表」「令和10年度から受験申込みは電子申請を原則とします」(2026年6月19日)
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