石綿作業主任者技能講習は、労働安全衛生法第14条に基づく技能講習です。石綿障害予防規則 (石綿則) 第48条の5が「学科講習によって行う」ことと4つの科目を定め、科目ごとの範囲と時間は石綿作業主任者技能講習規程 (平成18年厚生労働省告示第26号) が定めています。都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関が全国で実施していて、修了すると事業者が石綿作業主任者に選任できるようになります。厚生労働省の集計では、令和6年度の修了者は67,912人でした。
修了試験の合格基準は、厚生労働省労働基準局長の通達で全国共通に決まっていて、4科目それぞれに40%の足切りがあります。合計点が足りていても、1科目を落とすと不合格になります。ぴよパスでは、石綿則・労働安全衛生法令・作業環境評価基準などの条文と、環境再生保全機構・厚生労働省の公的資料で確かめたオリジナルの四肢択一60問を、4科目に分けて用意しました。このページでは、その60問の使い方と、修了試験の形式・合格基準・数字で決まる論点をまとめます。
技能講習と修了試験の形式 (規程と通達から)
| 科目 | 講習時間 (告示26号) | 配点 (通達) | 足切り (配点の40%) | ぴよパスの問題数 |
|---|---|---|---|---|
| 健康障害及びその予防措置に関する知識 | 2時間 | 20点 | 8点 | 12問 |
| 作業環境の改善方法に関する知識 | 4時間 | 30点 | 12点 | 18問 |
| 保護具に関する知識 | 2時間 | 20点 | 8点 | 12問 |
| 関係法令 | 2時間 | 30点 | 12点 | 18問 |
| 合計 | 10時間 | 100点 | 合計60点以上 | 60問 |
- 講習時間: 告示の講習時間 (合計10時間) を、通達 (基発第0224005号) は「必要最小限の時間数」としています。多くの機関は2日間で行います。
- 修了試験の方法と時間: 同じ通達は、修了試験を筆記試験で行うことを原則とし、時間を「全科目を通じ、筆記試験にあっては1時間」としています。口述試験は、文字を書くことが難しい場合などに限られます。
- 合格基準: 同じ通達が「各科目の得点が配点の40パーセント以上であって、かつ、全科目の合計得点が60点以上である場合を合格とする」としています。
- 問題数と形式: 問題は登録教習機関が作り、国が定めた共通の問題は示されていません。2026年10月に案内を確かめた5機関 (労働技能講習協会・パナソニック健康保険組合 産業衛生科学センター・日本建設情報センター・東京労働基準協会連合会の三鷹支部と足立荒川・王子・上野支部) は、どれも問題数を公表していませんでした。出題形式は、日本建設情報センターがコラムで選択式 (マークシート方式) と書いています。試験の時間を書いている3機関 (労働技能講習協会・パナソニック健康保険組合 産業衛生科学センター・日本建設情報センター) は、いずれも1時間でした。
- 配点は講習時間に比例していない: 講習時間は2・4・2・2時間、配点は20・30・20・30点です。関係法令は2時間の講習で30点と、時間の割に配点が大きい科目です。ぴよパスの問題数は、配点の比 (12・18・12・18) に合わせました。
足切りの読み方 — 合計70点でも落ちる例
たとえば、健康障害20点・作業環境30点・関係法令14点・保護具6点なら、合計は70点で60点を超えています。それでも保護具は配点20点の30%しか取れておらず、足切りの8点に届かないので不合格です。逆に、全科目がちょうど足切りの点 (8点・12点・8点・12点) でも合計は40点にしかならないので、足切りを越えるだけでは足りません。全科目で6割前後を取り、どの科目も4割を割らないのが現実的な目標です。
4科目と練習問題60問の対応
| 科目 (ぴよパスの分野) | 問題数 | 主な論点 |
|---|---|---|
| 健康障害及びその予防措置に関する知識 | 12問 | 石綿肺・肺がん・中皮腫・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚・胸膜プラークの違い、健康診断の項目と頻度、記録の保存 |
| 作業環境の改善方法に関する知識 | 18問 | 石綿の種類と使われ方、事前調査と分析調査、隔離と負圧、湿潤化、局所排気装置、作業環境測定と管理区分 |
| 保護具に関する知識 | 12問 | 呼吸用保護具の種類と使い分け、吹付け石綿の除去で使える保護具、備え付ける数、使用後の扱い |
| 関係法令 | 18問 | 作業主任者の選任と職務、石綿等の定義、事前調査の記録と報告、作業の届出、特別の教育、記録の保存 |
どの問題も、正しいもの (または誤っているもの) を1つ選ぶ四肢択一で、4つの肢すべてに理由を書いた解説が付いています。過去問 (実際の修了試験の問題) の転載ではありません。
数字で決まる論点 — 先に覚える12個
頻度・期間・数は、取り違えやすい論点です。石綿則 (2026年10月時点で施行の版) などの条文で確かめた数字を、似たものどうしで並べました。
| 何を | 数字 | 根拠 |
|---|---|---|
| 石綿等の定義 (含有率) | 重量の0.1%を超えて含有 | 労働安全衛生法施行令第6条第23号 |
| 作業主任者による装置の点検 | 1月を超えない期間ごと | 石綿則第20条第2号 |
| 作業の記録の作成 | 1月を超えない期間ごと | 石綿則第35条 |
| 局所排気装置などの定期自主検査 | 1年以内ごとに1回 | 石綿則第22条 |
| 作業環境測定 | 6月以内ごとに1回 | 石綿則第36条第1項 |
| 健康診断 | 雇入れ・配置替えの際と、その後6月以内ごとに1回 | 石綿則第40条第1項 |
| 健康診断の結果についての医師の意見聴取 | 健康診断の日から3月以内 | 石綿則第42条第1項第1号 |
| 事前調査の記録・定期自主検査の記録・作業計画どおりに作業したことの記録の保存 | 3年間 | 石綿則第3条第7項・第23条・第35条の2 |
| 作業の記録・測定の記録・石綿健康診断個人票の保存 | 40年間 | 石綿則第35条・第36条第2項・第41条 |
| 事前調査の結果の報告が要る工事 | 建築物の解体は床面積の合計80㎡以上、建築物の改修と特定の工作物の解体・改修は請負代金100万円以上、船舶は総トン数20トン以上 | 石綿則第4条の2第1項 |
| 呼吸用保護具を備える数 | 同時に就業する労働者の人数と同数以上 | 石綿則第45条 |
| 作業場と休憩室の床の掃除 | 毎日1回以上、水洗など粉じんが飛び散らない方法で | 石綿則第30条 |
あわせて、石綿の管理濃度は「5マイクロメートル以上の繊維として0.15本毎立方センチメートル」です (作業環境評価基準)。
覚え方のコツ: 期間は「人の体と空気 = 6月」(健康診断と測定)、「装置の自主検査 = 1年」、「作業主任者の点検と作業の記録 = 1月」に分けると混ざりにくくなります。保存期間は、石綿の病気の潜伏期間が長いことから、毎月の作業の記録・測定・健康診断が40年、事前調査・自主検査が3年と分けて覚えます。ただし、作業計画どおりに作業したことの記録 (写真と、従事した人の氏名・期間。石綿則第35条の2) は、人の名前が入っていても3年です。毎月作る「作業の記録」(第35条) の40年と混ぜないようにします。
直感と逆になりやすい論点
- 吹付け石綿の除去で使える呼吸用保護具は限られる: 石綿則第14条は、隔離した作業場所で吹き付けられた石綿等を除去する作業では、電動ファン付き呼吸用保護具など (またはこれと同等以上の性能の空気呼吸器・酸素呼吸器・送気マスク) に限るとしています。「防じんマスクなら何でもよい」は誤りです。
- 事前調査は資格のある人が行う: 建築物と船舶の解体・改修の事前調査は2023年10月1日から、工作物の解体・改修の事前調査 (告示で定める特定の工作物など) は2026年1月1日から、厚生労働大臣が定める者 (建築物石綿含有建材調査者など) が行うことになりました (石綿則第3条第4項)。「現場の担当者が目で見て判断すればよい」という古い理解は通用しません。
- 事前調査の結果は、規模の基準に当たる工事なら報告する: 上の表の80㎡・100万円・20トンの基準に当たる工事は、あらかじめ電子情報処理組織 (オンライン) を使って所轄労働基準監督署長に報告します。様式第1号の報告書の提出で代えることもできます (石綿則第4条の2)。
- 労働者以外の人にも措置が及ぶ: 立入禁止 (石綿則第15条) や喫煙・飲食の禁止 (第33条) などは、2023年4月1日から、請負人など労働者以外で作業に従事する人も対象になっています。2026年4月1日には、こうした人を「作業従事者」(事業を行う者が行う仕事の作業に従事する者。労働安全衛生法第15条) という言葉でまとめる改正があり、特定元方事業者の措置 (石綿則第7条第2項) なども作業従事者を対象にしました。
まだ施行されていない改正 (2026年10月時点)
2027年4月1日に施行される改正 (作業に従事する役員などの特別の教育、個人事業者による局所排気装置などの定期自主検査) は、2026年10月時点では施行されていません。ぴよパスの練習問題は2026年10月1日時点で施行されている法令で作っているので、これらを正しい肢として扱っていません。講習を受ける時期が2027年4月1日より後になる場合は、講習のテキストと講師の説明を優先してください。
失点しやすい準備のしかたと当日の準備
講習を2日間受けていても失点しやすいのは、次のような準備のしかたです (配点と出題範囲からの見立てで、不合格になった人を調べたものではありません)。
- 関係法令を軽く見る: 講習は2時間ですが配点は30点です。条文の主語 (事業者か、作業主任者か、発注者か) と期間を取り違えると、まとめて失点します。
- 数字を聞き流す: 6月・1年・1月、3年・40年、80㎡・100万円・20トンのような数字は取り違えやすい論点です。日本建設情報センターのコラムも、講師が重要だと強調したポイントとテキストを復習すれば十分に合格できると書いています。上の表で整理してから講習に臨むと、聞きながら確かめられます。
- 病気の名前を区別しない: 石綿肺・肺がん・中皮腫・胸膜プラークなどは、症状や原因の性質が違います。健康障害は20点の科目なので、ここで足切りの8点を割らないようにします。
- 最新の改正を知らない: 古いテキストや先輩の話では、事前調査を誰が行うか (建築物・船舶は2023年10月から、工作物は2026年1月から資格者) が今と違うことがあります。
当日は、講師がテキストに線を引くよう指示した箇所を休憩時間に見直してください。ぴよパスの60問は、講習の前の予習と、講習の後の確認の両方に使えます。科目ごとに解けるので、苦手な科目だけをくり返すこともできます。
まとめ
- 石綿作業主任者技能講習は学科のみで、告示の講習時間は合計10時間 (通達は必要最小限の時間数とする)。最終日に筆記1時間の修了試験がある。
- 合格基準は通達で全国共通に決まっていて、各科目が配点の40%以上かつ合計60点以上。関係法令 (30点) は講習2時間で、時間の割に配点が大きい。
- 問題数を公表している機関は見当たらない。合格率の全国集計も見当たらない。
- 数字 (6月・1年・1月、3年・40年、0.1%、80㎡・100万円・20トン) と、事前調査を資格者が行う決まり (建築物・船舶は2023年10月、工作物は2026年1月から) を先に固める。
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出典
- 石綿障害予防規則 (e-Gov 法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000100021 (2026年10月12日確認)
- 労働安全衛生法施行令 (e-Gov 法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/347CO0000000318
- 石綿作業主任者技能講習規程 (平成18年厚生労働省告示第26号・厚生労働省 法令等データベース): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74aa7786&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働省労働基準局長通達 基発第0224005号 (平成18年2月24日): https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/roudou/an-eihou/dl/k060224005.pdf
- 作業環境評価基準 (厚生労働省 法令等データベース): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74088000&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働省 技能講習の修了者数 (衛生関係): https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001631419.pdf
- 労働技能講習協会 石綿作業主任者技能講習 (東京): https://www.rougi.or.jp/course/tokyo/asbestos (2026年10月12日確認)
- パナソニック健康保険組合 産業衛生科学センター 技能講習の案内: https://phio.panasonic.co.jp/kagaku/ginou-kousyu-annai/01.htm (2026年10月12日確認)
- 日本建設情報センター (CIC) 石綿作業主任者技能講習: https://www.cic-ct.co.jp/anzen-tokubetsu/ishiwata-gino/ (2026年10月12日確認)
- 日本建設情報センター (CIC) コラム「石綿作業主任者技能講習とは?」: https://www.cic-ct.co.jp/column/ishiwata-column/ishiwata-column-column16/ (2026年10月13日確認)
- 東京労働基準協会連合会 三鷹支部 石綿作業主任者技能講習の案内 (2026年度): https://www.toukiren.or.jp/shibu/mitaka/2026isiwata.pdf (2026年10月13日確認)
- 東京労働基準協会連合会 足立荒川・王子・上野支部 石綿作業主任者技能講習の案内 (2024年度): https://toukiren.or.jp/shibu/adachiarakawa/2024/061205.6.pdf (2026年10月13日確認)








