消防設備士乙1の本番は「水理計算と機器鑑別の数値暗記」で決まる
乙種第 1 類は屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備の整備・点検を担当する区分で、甲種と違い設置工事はできません。試験は 105 分・筆記 30 問 + 実技 (鑑別) 5 問のシンプル構成ですが、出題の中心が水理計算 (圧力・放水量・落差) と機器鑑別 (写真からの機器判別) に偏っているため、一般の暗記型試験と同じ感覚で臨むと時間切れになりやすい試験です。一般財団法人 消防試験研究センターの公表データで合格率は概ね 30〜35% で推移していますが、乙1 は乙6・乙7 と比べて水理計算で落とす受験者の比率が高いと、3,002 問の解説を作る過程で見えてきました。
つまり乙1 の解き方の問いは「3 つの汎用テクニック」ではなく、「屋内消火栓 1 号と 2 号の数値表を頭に固定し、水理計算を式に当てはめて 5 分で出し、機器鑑別を 4 分で判定する」という 3 つの専用ルーティンに尽きます。
消防設備士乙1類 オリジナル予想問題 160 問で実力確認 →
試験全体の時間枠:筆記 30 問 + 実技 5 問を 105 分で割る
乙1 は試験時間 105 分。受験案内の科目構成と現実的な配分は次の通りです。
| 試験区分 | 問題数 | 内訳 | 配分時間 | 1 問あたり |
|---|---|---|---|---|
| 筆記 法令共通 | 6 問 | 消防法・施行令の基本 | 12 分 | 2 分 |
| 筆記 法令類別 | 4 問 | 屋内消火栓・スプリンクラーの基準 | 8 分 | 2 分 |
| 筆記 基礎 機械 | 5 問 | 流体力学・材料力学 | 10 分 | 2 分 |
| 筆記 構造機能 機械 | 10 問 | ポンプ・配管・ノズル | 20 分 | 2 分 |
| 筆記 構造機能 規格 | 5 問 | 規格省令の数値 | 10 分 | 2 分 |
| 水理計算問題 (上記内訳に含む) | 2-3 問 | 必要圧力・放水量・落差 | 上限 5 分 × 2-3 問 | — |
| 見直し (筆記分) | — | 仮マーク再考 + 計算検算 | 15 分 | — |
| 筆記 小計 | 30 問 | — | 85 分 | — |
| 実技 鑑別 | 5 問 | 機器写真の判別 | 20 分 | 4 分 |
| 実技 小計 | 5 問 | — | 20 分 | — |
筆記 30 問のうち構造機能 機械 10 問が最大の比重で、ここに水理計算 2-3 問が紛れ込みます。水理計算 1 問の所要時間は 3-5 分と幅があるため、最初に試験全体に目を通して水理計算問題に印を付ける運用が時間切れを防ぎます。
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屋内消火栓 1 号 / 2 号 / 易操作性 1 号 / 広範囲型 2 号の数値表
消防法施行規則第 12 条が定める屋内消火栓の 4 種別は、本試験で毎回 1-2 問は出題される最頻出論点です。
| 種別 | ノズル先端圧 | 放水量 | 各部分からの距離 | 操作人数 | 用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 号消火栓 | 0.17 MPa 以上 | 130 L/min 以上 | 25 m 以内 | 2 人 | 工場・倉庫等 |
| 易操作性 1 号 | 0.17 MPa 以上 | 130 L/min 以上 | 25 m 以内 | 1 人 | 一般建物 |
| 2 号消火栓 | 0.25 MPa 以上 | 60 L/min 以上 | 15 m 以内 | 1 人 | 事務所・店舗等 |
| 広範囲型 2 号 | 0.17 MPa 以上 | 80 L/min 以上 | 25 m 以内 | 1 人 | ホテル・病院等 |
3,002 問の解説を作る過程で見えたのは、選択肢にノズル圧 0.15 MPa / 0.20 MPa、放水量 70 L/min / 120 L/min、距離 20 m / 30 m のような「ごく近いが間違いの数値」が混ざるパターンが頻出するということ。本番前に上の表を4 行 4 列で暗唱できる状態まで固めるのが、知識問題で 2 分を切るための前提条件です。
水理計算は P=P1+P2+P3+0.17 (or 0.25) の式に当てはめて 5 分で出す
水理計算問題は、ポンプの必要吐出圧を求める形が圧倒的多数を占めます。式は 1 号消火栓なら P (MPa) = P1 + P2 + P3 + 0.17、2 号消火栓なら P = P1 + P2 + P3 + 0.25。各項の意味は次の通りです。
| 記号 | 意味 | 単位 | 典型値 |
|---|---|---|---|
| P1 | 配管の摩擦損失水頭 | MPa | 配管延長 (m) × 単位損失 0.03-0.05 MPa/m |
| P2 | ホースの摩擦損失水頭 | MPa | ホース延長 (m) × 0.04 MPa/m |
| P3 | 落差水頭 (放水口とポンプの高さ差) | MPa | 1 m = 0.01 MPa として換算 |
| 0.17 / 0.25 | ノズル先端圧 | MPa | 1 号 / 2 号で固定 |
典型問題と解き方
「3 階建ての最上階放水口で必要なポンプ吐出圧を求めよ。配管延長 30 m・損失 0.04 MPa/m、ホース 30 m・損失 0.04 MPa/m、放水口とポンプの高さ差 9 m、1 号消火栓」という問題は次の手順で 5 分で解けます。
- P1 = 30 m × 0.04 MPa/m = 1.20 MPa
- P2 = 30 m × 0.04 MPa/m = 1.20 MPa
- P3 = 9 m × 0.01 MPa/m = 0.09 MPa
- ノズル圧 = 0.17 MPa
- 合計 P = 1.20 + 1.20 + 0.09 + 0.17 = 2.66 MPa
選択肢に「2.50 MPa」「2.66 MPa」「2.75 MPa」「3.00 MPa」が並ぶ典型形。2 号消火栓のときは末尾 0.17 を 0.25 に置換するだけで、構造は同じです。
水理計算で落とす典型ミス
3,002 問の解説を作る過程で見えた典型ミスは次の 3 つです。
| ミス | 内容 | 回避策 |
|---|---|---|
| 落差水頭の換算 | 1 m = 0.01 MPa を 0.1 MPa と混同 | 換算式を式の右に明記して解く |
| 配管 vs ホースの損失係数 | どちらも 0.04 MPa/m が典型値だが問題で別値が指定されることあり | 問題文の指定値を必ず使う |
| ノズル先端圧の取り違え | 1 号で 0.25 を足す / 2 号で 0.17 を足すミス | 問題文の消火栓種別を最初に丸で囲む |
鑑別 5 問:屋内消火栓 7 機器 + スプリンクラー 6 機器の写真を頭で反芻する
鑑別 5 問は 1 問 4 分。写真を見て機器名・用途・規格上の特徴の 3 点を即答する形式です。乙1 で出題される機器は次の 13 カテゴリに収まります。
屋内消火栓設備の 7 機器
| 機器 | 出題ポイント | 識別の鍵 |
|---|---|---|
| 消火栓ボックス | 1 号 / 2 号で表示が異なる | 表示マーク・赤色の塗装範囲 |
| ホース 40A / 65A | 1 号は 65A、2 号は 40A が主流 | 口径表示・収納形態 (折りたたみ / 巻き) |
| ノズル (棒状 / 噴霧 / 可変) | 用途で形状が変わる | 先端の形状・操作ハンドルの有無 |
| 開閉弁 (アングル弁 / 玉形弁) | 配管接続部の形状 | 弁体の方向・ハンドル形状 |
| ポンプ | 横軸 / 立軸の判別 | 軸の方向・吐出口位置 |
| 圧力スイッチ | 起動制御に使用 | 配線接続箱・圧力表示 |
| 起動表示灯 | 赤色点滅 | 表示プレート・色 |
スプリンクラー設備の 6 機器
| 機器 | 出題ポイント | 識別の鍵 |
|---|---|---|
| 閉鎖型湿式ヘッド | 標準 / 高感度 / 側壁型の判別 | 感熱部の形状 (ガラスバルブ / ヒュージブルリンク) |
| 閉鎖型乾式 | 寒冷地用 | 配管内に圧縮空気 |
| 予作動式 | 火災検知器との連動 | 流水検知装置に予作動弁 |
| 開放型ヘッド | 一斉開放弁とセット | 感熱部なし |
| 流水検知装置 | 湿式 / 乾式 / 予作動の 3 種 | アラーム弁・差動弁・予作動弁 |
| 一斉開放弁 | 開放型と組合せ | 大型・パイロット配管 |
本番前にこの 13 機器の写真を頭で 30 枚以上反芻し、機器名・用途・規格上の特徴の 3 点をペアで記憶しておくと、鑑別 1 問 4 分のペースが守れます。
筆記 85 分:90 秒ルール + 水理計算 5 分ルールの併用
乙1 の筆記は知識問題と水理計算問題で別ルールを適用します。
知識問題の 90 秒ルール
筆記 30 問のうち水理計算 2-3 問を除く 27-28 問が知識問題。1 問あたり想定 2 分、90 秒経過で詰まったら仮マークして次に進みます。
水理計算の 5 分ルール
水理計算問題は最大 5 分まで粘ります。5 分経過しても答えに辿り着けなければ仮マークして次へ。水理計算で 5 分以上溶かすと、知識問題の 4-5 問が時間切れになる構造です。
仮マーク時の選び方と消去法
| 仮マーク選択肢 | 経験則 |
|---|---|
| 「1」「5」 | 15-20% (端は出題者が避ける) |
| 「2」「3」 | 22-27% (中央が確率的に有利) |
| 「4」 | 18-23% |
5 択消去法は (1) 文脈ミスマッチを消す、(2)「絶対」「すべて」を疑う、(3) 数値・単位を学習内容と照合、の 3 ステップ。屋内消火栓の数値問題は選択肢の数値が極めて近いため、ステップ 3 で消去できるかが勝負を分けます。
残り時間別:数値暗記と機器写真の練習量
| 残り時間 | 数値表暗唱 | 水理計算演習 | 鑑別機器写真 |
|---|---|---|---|
| 残り 2 ヶ月 | 1 号 / 2 号 / 易操作性 / 広範囲型を毎日反芻 | 5 問 × 10 セット (50 問) | 屋内消火栓 7 + SP 6 を 50 枚反芻 |
| 残り 1 ヶ月 | 数値表を 1 日 1 回暗唱 | 5 問 × 6 セット (30 問) | 各機器 3 枚ずつ反芻 |
| 残り 2 週間 | 数値表を朝晩暗唱 | 水理計算 10 問再演 | 機器写真 20 枚 |
| 残り 1 週間 | 数値表を試験前日まで暗唱 | 既出問題の式を再構築 | 機器写真 13 枚 (各カテゴリ 1 枚) |
| 残り 3 日 | 数値表 4 行 4 列の最終確認 | 解法手順の暗唱のみ | 機器写真の最終確認 |
水理計算は手を動かす演習量がそのまま得点に直結します。残り 1 ヶ月で 5 問 × 6 セット = 30 問解いておけば、本番で 2-3 問出題されても 5 分以内で完答できる体感が作れます。
落ちる人の典型 3 パターン
3,002 問の解説を作る過程で、乙1 で落ちる受験者の典型パターンは次の 3 つに集約されました。
パターン 1:屋内消火栓 1 号と 2 号の数値を混同する
「1 号は 0.17 MPa / 130 L/min」「2 号は 0.25 MPa / 60 L/min」を覚えていても、本番のプレッシャーで取り違える受験者が一定数います。とくに易操作性 1 号と広範囲型 2 号を加えた 4 種別になると、混乱率が一気に上がります。
回避策:数値表を 4 行 4 列で覚える際、横軸を「種別」、縦軸を「ノズル圧 / 放水量 / 距離 / 操作人数」に固定し、毎朝 1 回頭の中で再構築する習慣にする。
パターン 2:水理計算で落差水頭の単位換算を誤る
P3 (落差水頭) で「9 m を 9 MPa」と書いてしまうミス。1 m = 0.01 MPa の換算式が頭に入っていないと、選択肢の桁数を見て「あれ?」と混乱したまま 5 分以上溶かします。
回避策:演習段階で式の右に必ず換算式を書く運用に固定し、本番でも同じフォーマットで解く。
パターン 3:鑑別で詰まったら粘ってしまう
機器写真が見慣れない角度から撮られているとき、「思い出せそう」と粘って 1 問 10 分以上かけるパターン。鑑別 5 問のうち 1 問で 10 分使うと、残り 4 問が時間切れになります。
回避策:鑑別 1 問 4 分タイマーを物理的に意識し、4 分経過で必ず次の問題に移る。部分点を取りに行く運用に切り替える。
合格率 30〜35% に入るための解き方チェックリスト
本番で 105 分を回し切るためのチェック項目です。
- 試験全体の時間配分を覚えている — 筆記 85 分 / 実技 20 分 / 見直し 15 分込み
- 屋内消火栓 4 種別の数値表を暗唱できる — 1 号 / 2 号 / 易操作性 1 号 / 広範囲型 2 号
- 水理計算 P=P1+P2+P3+0.17 (or 0.25) を 5 分で解ける — 配管 / ホース / 落差 / ノズル圧
- 落差水頭 1 m = 0.01 MPa の換算式を覚えている — 桁数ミスの最大原因
- 鑑別 13 機器の写真を 30 枚以上反芻済み — 屋内消火栓 7 + スプリンクラー 6
- 筆記で 90 秒ルール / 水理計算で 5 分ルールを使い分けられる — 別ルールの併用
- 見直し 15 分の配分を決めている — 仮マーク 9 分 / 計算検算 4 分 / マークシート 2 分
このチェックリストを模試後に確認し、未達項目を残り時間に応じて潰してください。
消防設備士乙1類 オリジナル予想問題 160 問で実力確認 →
編集部より — 水理計算 1 問の重みを過小評価しない
3,002 問の解説を作って気づいたのは、乙1 の合格者は水理計算 1 問の重みを正しく見積もっているという共通行動でした。落ちる受験者は「水理計算は 2-3 問しかないから後回し」と判断して知識問題から解き始め、結果として水理計算に取りかかる頃には残り時間が 15 分しかなく、5 分 × 3 問が回らずに 2 問を空欄で出す——というパターンに陥りがちです。
逆に合格者は試験開始直後に問題用紙をめくり、水理計算問題に印を付けてから知識問題に取りかかる運用を取ります。水理計算は配管・ホース・落差・ノズル圧の 4 項を足すだけで答えが出る定型問題なので、式さえ覚えていれば 1 問 5 分で機械的に解けます。乙1 で確実に合格圏に入るなら、屋内消火栓の数値表暗記と水理計算の式暗記をセットで固め、本番では「印を付けた水理計算問題から先に処理する」運用にしてください。
出典:
- 一般財団法人 消防試験研究センター 消防設備士試験 — 受験案内・試験科目・合格基準
- 消防法第 17 条の 5、消防法施行令第 11 条 (屋内消火栓設備の設置基準)
- 消防法施行規則第 12 条 (1 号消火栓 0.17 MPa / 130 L/min、2 号消火栓 0.25 MPa / 60 L/min、易操作性 1 号、広範囲型 2 号の規格)
- 消防法施行令第 12 条 (スプリンクラー設備の設置基準)
※数値は改正により変動するため、最新の受験案内および e-Gov 法令検索で確認してください。



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