マンション管理士の令和8年度試験には、他の年度と決定的に違う事情があります。区分所有法の大改正が出題対象になる、最初の回だということです。
令和7年法律第47号(老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律)は 2026年4月1日に施行されました。そして受験案内は、出題に係る法令等を「令和8年4月1日において施行されているもの」と定めています。施行日と基準日が、同じ日にぴたりと重なっています。
つまり令和8年度は、決議要件を扱った過去問の答えが変わっている年です。
何が変わったのか
改正前と改正後で、決議の「定数」と「母数」の両方が動きました。
| 論点 | 改正前 | 令和8年4月1日施行の条文 |
|---|---|---|
| 共用部分の変更(区分所有法17条1項) | 区分所有者及び議決権の各 3/4(総数) | 定足数(各過半数の出席)+ 出席者の各 3/4 |
| 規約の設定・変更・廃止(同31条1項) | 各 3/4(総数) | 同上(出席者が母数) |
| 大規模滅失の復旧(同61条5項) | 各 3/4 | 出席者の各 2/3(緩和された) |
| 建替え決議(同62条) | 各 4/5 | 原則 4/5・耐震性不足等なら 3/4 |
さらに、建物更新決議(同64条の5)・取壊し決議(同64条の8)といった再生手法が新設され、標準管理規約も令和7年改正版で総会の決議要件が出席組合員ベースに書き換わりました。
危ないのは、「区分所有法といえば 4 分の 3」という記憶で解いてしまうことです。それは長らく正しかったので、疑う理由がありません。だからこそ、条文に戻って確認する以外に防ぎようがない類の失点になります。
マンション管理士の練習問題 207 問は、決議要件をすべて令和8年4月1日時点で施行されている条文で作成しています。
合格率 11.0% の正体は「42 問」
| 確定している試験情報 | 値 |
|---|---|
| 出題形式 | 50 問 4 肢択一・マークシート方式 |
| 試験時間 | 13:00〜15:00(120 分)(一部免除者は 13:10〜15:00・110 分) |
| 受験手数料 | 9,400 円(非課税) |
| 令和7年度 合格率 | 11.0%(受験者 10,984 名/合格者 1,210 名) |
| 令和7年度 合格基準点 | 50 問中 42 問以上(一部免除者は 45 問中 37 問以上) |
合格率 11% という数字だけを見ると「範囲が異常に広いのだろう」と思いがちですが、実際の難しさは要求される正答率の高さにあります。42/50 は 84%。しかも科目別の足切りが無いぶん、どこか 1 区分を捨てると総合点でそのまま響きます。
▶️ 8 割を大きく超える精度は、テキストを読む回数では作れません。同じ論点を落とさなくなるまで問題で反復するタイプの試験です。
4 区分の役割分担
公式の出題範囲は 4 つに分かれています。練習問題 207 問も同じ区分で構成しています。
| 区分 | 問数 | 中身 |
|---|---|---|
| 法令及び実務 | 64 問 | 区分所有法が中核。改正論点が集中する区分 |
| 管理組合の運営 | 53 問 | 令和7年改正 標準管理規約(単棟型) |
| 建物及び附属施設の構造及び設備 | 48 問 | 長期修繕計画・修繕積立金・維持管理の法令 |
| 管理の適正化の推進 | 42 問 | 適正化法。管理計画の認定・管理業者の規制 |
A. 法令及び実務 — 改正論点を最優先で
区分所有法は本則 134 条あり、令和7年改正で所在等不明区分所有者の除外(38条の2)・所有者不明専有部分管理命令(46条の2)・管理不全専有部分管理命令(46条の8)・国内管理人(6条の2)といった制度がまとめて新設されました。
いずれも「所有者が分からない・連絡がつかない・管理が放置されている」という現実の行き詰まりに対応したもので、改正の趣旨がはっきりしているぶん出題しやすい論点です。上の決議要件とあわせて、ここから先に潰してください。
B. 管理組合の運営 — 数字が並ぶ区分
標準管理規約は、覚えるべき数字が集中します。理事会は理事の半数以上が出席(過半数ではありません)、総会の招集は2 週間前(マンション再生等に係る決議は2 か月前、説明会は1 か月前まで)、緊急時の短縮は1 週間を下回らない範囲。監事の理事会招集請求は「5 日以内に、請求の日から2 週間以内の日を会日とする通知」。
数字だけを並べて眺めても定着しないので、管理組合の運営 50 問で条ごとに問われる形にして覚えるのが早道です。
C. 構造及び設備 — 制度と数字の側から入る
この区分は建築や設備の話に見えますが、出題されるのは計画と点検の制度です。長期修繕計画の計画期間は「30 年以上で、かつ大規模修繕工事が 2 回含まれる期間以上」、見直しは「5 年程度ごと」で見直し自体に「概ね 1〜2 年」かかる。修繕積立金は均等積立方式が標準で、段階増額積立方式なら初期額は基準額の 0.6 倍以上・最終額は 1.1 倍以内。
加えて、建築基準法12条の定期調査(報告先は特定行政庁)と消防法17条の3の3の点検(報告先は消防長又は消防署長)のように、報告先が入れ替えて出題されやすい組合せがあります。構造及び設備 40 問はこの対比を意識して作っています。
D. 管理の適正化の推進 — 出題数は少ないが取りやすい
適正化法は条文が明快で、覚える単位も小さい区分です。管理計画の認定は計画作成都道府県知事等が行い5 年ごとの更新、マンション管理業者の登録も5 年、業務停止命令は1 年以内。基幹事務の一括再委託は禁止で、財産は自己の固有財産及び他の管理組合の財産と分別する。
出題数は 4 区分の中で最も少ないと見られますが、そのぶん失点が痛い区分でもあります。84% を要求される試験では、取りやすい区分を落とさないことが効きます。
公式が出しているもの / 出していないもの
マンション管理センターは試験問題と正解を公開しています(令和7年度分は令和7年12月1日から掲載)。ただし解説は付きません。
そのうえ令和8年度は、上に書いたとおり改正で答えが変わっている論点があります。過去問で答え合わせをするときは、正解番号が合っているかだけでなく、その根拠条文が今も同じかを自分で確認する必要があります。これは受験生にとってかなりの負荷です。
▶️ だからこの年は、改正後の条文で作られた問題を解くことの価値が普段の年より大きくなります。
不向きな人 / 注意点
- 「過去 10 年分を回す」型の学習で押し切りたい人 — 決議要件まわりは、その方法が今年に限って裏目に出ます。改正論点だけは条文から入り直してください
- 合格基準点を固定で覚えている人 — 基準点は年度ごとに発表されます。令和7年度が 42 問だっただけで、毎年 42 問と決まっているわけではありません
- 管理業務主任者との併願を考えている人 — 出題範囲が大きく重なります。マン管と管業のダブル取得も参考にしてください
チェックリスト
- [ ] 共用部分の変更・規約の設定の母数が「出席者」に変わったことを説明できる
- [ ] 大規模滅失の復旧が 3 分の 2 に緩和されたことを覚えた
- [ ] 建替えが 4 分の 3 になる場合を言える
- [ ] 標準管理規約の期間(2 週間・2 か月・1 か月・1 週間)を区別できる
- [ ] 長期修繕計画の計画期間と見直し周期を言える
- [ ] 建築基準法と消防法の報告先を取り違えない
- [ ] 207 問を 1 周し、区分別正答率を出した
- [ ] 50 問 120 分を通しで解き、42 問に届くか測った
まとめ
マンション管理士は、84% という要求正答率と、改正法の初出題という 2 つの条件が重なった年を迎えます。前者は反復でしか埋まらず、後者は条文に戻ることでしか防げません。予想問題 207 問は、改正後の条文を根拠に置いたうえで、4 区分それぞれの弱点を数字で見えるようにする道具として使ってください。
出典
- 公益財団法人マンション管理センター 令和8年度マンション管理士試験 受験案内(作成日 令和8年6月1日) — 出題形式・試験時間・受験手数料・法令の基準日(2026 年 8 月確認)
- 同 令和7年度マンション管理士試験 合格者の概要 — 受験者数・合格者数・合格率・合格基準点(2026 年 8 月確認)
- e-Gov 法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和7年法律第47号による改正後・2026年4月1日施行)
- 国土交通省 令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)及びコメント
- 国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント / 修繕積立金に関するガイドライン











