危険物甲種の試験範囲は第1類から第6類まで全種別が対象で、乙種と比べて問われる物質数が一気に跳ね上がります。特に性質消火は20問と問題数が最大で、ここで落とすと合計点が良くても不合格になります。「何から手をつければいいか分からない」という受験者が多い科目構成を、科目ごとの頻出テーマと優先順位で整理します。
試験の基本構成
危険物甲種の試験の基本数値を先に確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験科目 | 法令・物理化学・性質消火 |
| 出題数 | 法令15問・物化10問・性消20問(計45問) |
| 試験時間 | 2時間30分(150分) |
| 合格基準 | 各科目60%以上(法令9問・物化6問・性消12問) |
| 受験料 | 7,200円(書面申請・電子申請とも同額) |
| 合格率 | 近年35〜40%前後(消防試験研究センター公表データ) |
物化が10問しかないからといって後回しにすると、足切りの罠にはまります。どの科目も「最低6割確保」が最優先です。
この記事で分かること
- 法令・物化・性消の問題数・合格ラインと、科目ごとの特徴の違い
- 法令15問で頻出する指定数量計算・保安距離・手続き区分の出題パターン
- 物理化学10問で得点を固める計算の型と燃焼理論
- 性質消火20問で類別の優先順位をどうつけるか
- 残り期間に応じた3科目の配分の目安
広告
法令(15問)の頻出テーマ
法令は暗記が中心ですが、数値の正確さが勝負です。よく出るのは以下のテーマです。
指定数量と倍数計算はほぼ毎回出題されます。複数の危険物を同じ場所に貯蔵・取り扱う場合、各危険物の量を指定数量で割って合計した「倍数」が1以上かどうかを判定します。品名ごとに指定数量が異なり、たとえば第4類の特殊引火物は50L、第1石油類(非水溶性)は200Lです。倍数計算の式と代表的な品名の指定数量は数値ごとセットで覚えておく必要があります。
保安距離は対象施設の種類と距離の数値が出題されます。保護対象ごとに規定距離が異なり、「住居は何m以上」という数値の正誤を問う形式が多いです。主な保安距離の数値を一覧で整理します。
| 保護対象 | 製造所からの保安距離 |
|---|---|
| 住居 | 10m以上 |
| 学校・病院など | 30m以上 |
| 文化財 | 50m以上 |
| 高圧ガス施設 | 20m以上 |
許可・届出・報告・命令の使い分けも頻出です。製造所等の設置は許可、変更は許可または届出、数量の変更は届出、事故は報告というように行政手続きの種別を正確に区別できることが求められます。
物理化学(10問)の頻出テーマ
物化は10問と少ないですが、計算問題が混じるため得点が安定しにくい科目です。
熱量・熱容量の計算では「Q = mcΔT」の形式で数値を代入する問題が出ます。単位がkcalかJかを問題文で確認する必要があります。式の形は固定なので、単位変換と数値の読み取りを練習しておけば得点できます。
モル計算と濃度では物質量(mol)と質量・体積の換算が問われます。アボガドロ定数の使い方と、気体1molが標準状態で22.4Lという前提を押さえておきます。
燃焼の3要素と燃焼範囲は「可燃物・酸素供給体・点火源」の定義と、燃焼範囲(爆発範囲)の上限・下限の意味を理解していれば正解できます。「燃焼範囲が広いほど危険」「引火点と発火点の違い」はセットで出題されることがあります。
酸化・還元の判断は電子の授受や酸化数の変化で判断する問題です。「酸化されると電子を失う」という基本定義から正誤を判断する形式が多いです。
性質消火(20問)の頻出テーマと類別優先順位
性質消火は問題数が最も多く、攻略の優先度が最も高い科目です。第1〜6類すべてを扱う甲種では、類別の特徴と代表物質・消火方法を横断的に覚える必要があります。
類別の優先順位は問題数の多さで判断します。甲種試験では第4類(引火性液体)が最も出題比率が高く、次いで第1類(酸化性固体)・第3類(自然発火性・禁水性)が問われやすいとされています。第2類・第5類・第6類は出題数は少ないものの、各類の代表物質と消火方法の選択肢として使われるため基礎知識は必要です。
第4類(引火性液体)は引火点による分類(特殊引火物・第1〜4石油類・アルコール類・動植物油類)と、水溶性の有無による指定数量の違いが頻出です。泡消火剤は一般的な第4類に有効ですが、アルコール類や水溶性液体には耐アルコール泡を使う必要があります。
第3類(自然発火性・禁水性)はカリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・黄りんなどが代表物質です。禁水性物質には水系の消火剤が使えない点と、黄りんは自然発火性のみで禁水性ではない点がよく出題されます。
第1類(酸化性固体)は自身は燃えないが他の物質の燃焼を助ける点を確認します。塩素酸カリウム・硝酸カリウム・過マンガン酸カリウムが代表です。消火は大量の水で冷却が基本です。
| 類 | 主な性状 | 代表物質(例) | 消火方法の要点 |
|---|---|---|---|
| 第1類(酸化性固体) | 自身は不燃・他の燃焼を助ける | 塩素酸カリウム・硝酸カリウム | 大量注水・冷却 |
| 第2類(可燃性固体) | 着火しやすい・有毒ガス発生も | 硫黄・赤りん・マグネシウム | 水・砂・乾燥砂 |
| 第3類(自然発火性・禁水性) | 水や空気と反応 | カリウム・ナトリウム・黄りん | 乾燥砂・膨張ひる石(水系禁止) |
| 第4類(引火性液体) | 蒸気が引火 | ガソリン・灯油・アルコール | 泡・粉末・CO₂(水は原則不可) |
| 第5類(自己反応性) | 加熱や衝撃で爆発的に分解 | ニトロセルロース・有機過酸化物 | 大量注水・冷却 |
| 第6類(酸化性液体) | 他の燃焼を助ける | 過塩素酸・硝酸 | 乾燥砂・粉末(水系慎重に) |
第2類・第5類・第6類の基礎知識
出題数は少ない類も、選択肢の正誤判断に登場します。
第2類(可燃性固体)は着火しやすく、燃焼時に有毒ガスを発生するものがあります。硫黄・赤りん・マグネシウム・亜鉛粉などが代表。水による消火が可能な品目も多いですが、マグネシウムなど一部は禁水性に類似した注意が必要です。
第5類(自己反応性物質)は燃焼に必要な酸素を自ら含有するため、窒息消火が効きません。加熱や衝撃・摩擦で爆発的に分解します。大量注水による冷却が基本です。
第6類(酸化性液体)は第1類と同様に自身は燃えませんが、他の物質の燃焼を助けます。過塩素酸・硝酸・過酸化水素が代表。水との反応に注意が必要な品目もあります。
攻略順と残り期間別の時間配分
| 残り期間 | 重点 | やること |
|---|---|---|
| 2か月以上 | 性消の第4・1・3類を先行着手 | 物化の計算型を並行習得、法令は後半へ |
| 1か月 | 全科目で6割確保を最優先 | 物化の足切りを確認、法令の数値を集中暗記 |
| 2週間 | 弱点論点の最終確認 | 間違い問題を集中的に再挑戦 |
残り1か月を切った段階では、7割・8割を目指して苦手分野に時間をかけるより、どの科目も6割ラインを割らないことを最優先にします。
まとめ
危険物甲種の出題傾向を整理すると、性質消火(20問)の類別特徴・消火方法の暗記が合否の中心にあります。物化(10問)は計算の型を固めれば失点しにくい科目で、法令(15問)は数値と手続き区分の正確な暗記が求められます。どの科目も60%以上という足切り基準があるため、得意科目に偏らず全科目を均等に仕上げることが先決です。
まずオリジナル予想問題160問を1周して、どの科目が60%に届いていないかを確認することから始めてください。
出典:
- 一般財団法人 消防試験研究センター — 危険物取扱者試験 受験案内
- 消防法 (昭和23年法律第186号) — 危険物取扱者





































































