危険物甲種の計算問題は、求める量を決める→条件と単位をそろえる→式に代入する→答えを点検するという順で解きます。公式を覚えていても、液体に気体の式を使う、℃をそのまま代入する、指定数量の異なる物質をまとめて割る、といった誤りには注意が必要です。
この記事では、モル・気体・比熱による熱量・ヘスの法則・指定数量の倍数を、自作の練習例で確認します。公式過去問の転載ではなく、出題範囲のすべてを網羅したものでもありません。分野の復習先は物理化学の学習ガイドをご覧ください。
計算問題は何問ある? 捨てる前に確認したいこと
公式に示されている甲種の科目別問題数は、法令15問、物理学及び化学10問、性質・火災予防・消火20問です。計算問題の固定内訳は、この公式科目表には示されていません。「計算は必ず何問出る」と決めて、捨てる範囲を選ぶのは避けましょう。
合格基準は科目ごとに60%以上です。物化の知識問題と計算問題を別科目として判定する仕組みではないため、両方を含めて理解度を点検します。注意事項では電卓の使用も認められていません。練習では、式だけでなく筆算の途中も残してください。
| 求めたい量 | 使う関係 | 代入前に見る条件 |
|---|---|---|
| 物質量n | n=m/M | 質量mとモル質量Mの単位 |
| 気体の体積V | PV=nRT | 気体の状態、温度K、圧力とRの単位 |
| 温度変化に必要な熱量q | q=mcΔT | 比熱c、質量m、相変化の有無 |
| 反応のエンタルピー変化ΔH | 反応式とΔHを加減する | 反応の向き、係数、物質の状態 |
| 指定数量の倍数 | 各数量÷各指定数量を合計 | 品名・性状、同じ場所で扱う条件 |
例題1:質量からモル数と気体の体積を求める
自作問題: 酸素48gの物質量と、0℃・1atmにおける体積を求めてください。酸素のモル質量は32g/mol、気体は理想気体として扱い、この条件のモル体積は22.4L/molとします。
- 物質量は、48g÷32g/mol=1.5molです。
- 体積は、1.5mol×22.4L/mol=33.6Lです。
- gが消えてmolになり、次にmolが消えてLになることを確認します。
質量を割る相手は、単位g/molを持つモル質量です。「分子量」という数値だけで覚えるより、単位を含めてn=m/Mと書く方が換算を点検できます。物質量とモル質量の説明を参照してください。
22.4L/molは、液体や固体にも使える値ではありません。 例えば、水36g÷18g/mol=2molという物質量の計算はできますが、0℃・1atmの水を理想気体として44.8Lに換算することはできません。気体のモル体積を使う前に、物質の状態と温度・圧力を確認します。ここで用いた条件は理想気体の標準状態の説明に基づきます。
例題2:温度が変わったときの気体の体積
自作問題: 300Kで6.0Lの理想気体を450Kにしました。圧力と気体の物質量が一定なら、体積はいくらになりますか。
PV=nRTでPとnが一定なので、V/Tが一定です。
V₂=6.0L×450K÷300K=9.0L
温度が1.5倍になり、同じ圧力を保つために体積も1.5倍になります。温度はケルビンで比較してください。
| 温度の扱い | 点検すること |
|---|---|
| 摂氏から絶対温度に直す | T/K=t/℃+273.15 |
| 問題で273を使う近似が指定された | 指定に従う。27℃を300Kとするのは近似 |
| 2つの温度の比を求める | ℃の数値同士をそのまま割らない |
| 温度差だけを求める | 例えば20℃から32℃の差は12℃、ケルビンでも12K |
圧力も変わる場合、同じ物質量の理想気体ではP₁V₁/T₁=P₂V₂/T₂を使います。気体が漏れたり反応したりして物質量が変わる条件には、そのまま適用できません。気体の法則の条件と合わせて復習しましょう。
例題3:比熱から温度変化に必要な熱量を求める
自作問題: 質量150g、比熱2.0J/(g・K)の物体を20℃から32℃へ温めます。比熱は一定で、相変化はなく、周囲や容器への熱の移動を無視するとき、物体が吸収する熱量を求めてください。
- 温度差は32−20=12Kです。
- q=mcΔTに代入します。
- 150×2.0×12=3,600J=3.6kJです。
比熱の単位がJ/(g・K)なので、質量もgにそろえます。融解や蒸発を伴う場合は、相変化に必要な熱量も別に考えるため、温度差だけの式で全体を求めないでください。比熱と熱量の関係はOpenStaxの熱量測定を参照しています。
例題4:ヘスの法則は反応式ごと足し引きする
自作問題: 次の同じ温度・圧力条件での反応について、計算用に丸めたΔHを与えます。Cは黒鉛、O₂・CO・CO₂は気体です。CO 1molの燃焼に対応するΔHを求めてください。
| 与えられた反応 | ΔH(式の係数どおりに反応したとき) |
|---|---|
| C + O₂ → CO₂ | −394kJ |
| C + 1/2 O₂ → CO | −110kJ |
目標の式は、CO + 1/2 O₂ → CO₂です。2本目を逆向きにし、CO → C + 1/2 O₂、ΔH=+110kJとします。
これを1本目に足すと、両辺のCと、共通する1/2 O₂を消せます。残る式はCO + 1/2 O₂ → CO₂で、目標と一致します。
ΔH=−394+110=−284kJ
負のΔHなので、この反応は発熱です。「放出する熱量の大きさ」を聞かれたら、与えられた条件ではCO 1molあたり284kJと答えます。ΔHの符号と、熱量の大きさを混同しないようにしましょう。
反応式を逆にするとΔHの符号が反転し、係数を倍にするとΔHも倍になることは、エンタルピーとヘスの法則で確認できます。液体の水と水蒸気など、状態の違う物質を同じものとして消すこともできません。
例題5:指定数量の倍数は、物質ごとに割ってから足す
同じ場所で品名や指定数量の異なる危険物を貯蔵・取扱いするときは、それぞれの数量をそれぞれの指定数量で割り、その商を合計します。合計が1以上なら、指定数量以上として扱われます。根拠は消防法第10条第2項です。
第4類の指定数量は次のとおりです。数値は2026年9月13日時点の施行条文で確認しています。受験時は、受験先の案内と法改正の情報も確認してください。
| 第4類の品名・性状 | 指定数量 |
|---|---|
| 特殊引火物 | 50L |
| 第1石油類・非水溶性 | 200L |
| 第1石油類・水溶性 | 400L |
| アルコール類 | 400L |
| 第2石油類・非水溶性 | 1,000L |
| 第2石油類・水溶性 | 2,000L |
| 第3石油類・非水溶性 | 2,000L |
| 第3石油類・水溶性 | 4,000L |
| 第4石油類 | 6,000L |
| 動植物油類 | 10,000L |
数値の出典は危険物の規制に関する政令第1条の11・別表第三です。甲種では第4類以外も扱うため、この表だけで全類の指定数量を覚えたことにはなりません。
自作問題: 同じ場所で、第1石油類の非水溶性液体を120L、第2石油類の非水溶性液体を500L貯蔵します。指定数量の倍数はいくらですか。
| 危険物 | 数量÷指定数量 | 倍数 |
|---|---|---|
| 第1石油類・非水溶性 | 120÷200 | 0.6 |
| 第2石油類・非水溶性 | 500÷1,000 | 0.5 |
| 合計 | 0.6+0.5 | 1.1 |
答えは1.1倍で、指定数量以上です。620Lという合計量を、どちらか一方の指定数量で割ってはいけません。また、指定数量未満だから一切の規制がない、という意味でもありません。
間違えた式から、次の演習を選ぶ
モル・気体・熱で止まった場合は、物理学及び化学のオリジナル練習問題へ進みましょう。指定数量の区分や条件で迷った場合は、法令の練習問題で確認できます。
解説を読んだ後は、答えを隠して「何を一定としたか」「単位がどう消えるか」「反応の向きと符号が合うか」を書き直します。式の背景が分からない場合は、テキストの該当章を併用してください。次の教材は出版社提供書誌で2026年8月の新訂版第1版を確認しています。
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