配線区分は「どの条文がどこを準用しているか」で決まる
自動火災報知設備の配線は、耐火配線・耐熱配線・一般配線の3つに区分して覚えるのが通例です。ところがこの区分は、市販の教材やまとめサイトでも食い違うことがあります。実際に当サイトでも、読者の方からのご指摘をきっかけに全記述を点検したところ、この領域だけで複数の誤りが見つかりました。
食い違いが起きる理由は、消防法施行規則の条文には「耐火配線」「耐熱配線」という語が一度も出てこないことにあります。規則が書いているのは「どの電線を使い、どう施工するか」だけで、それを耐火系・耐熱系と呼び分けているのは実務上の通称です。そのため「耐熱配線が必要な箇所」を暗記で覚えると、どの条文が根拠なのかが曖昧になり、似た箇所と入れ替わってしまいます。
確実なのは、準用関係をたどることです。自動火災報知設備の配線は、規則第24条から第12条第1項の2つの号のどちらかを準用する形で決まります。
結論:耐熱配線が明文で要求されるのは2箇所だけ
| 区間 | 区分 | 根拠 |
|---|---|---|
| 非常電源 → 受信機 | 耐火配線 | 規則24条4号ロ・ハ → 12条1項4号ホ |
| 受信機 → 地区音響装置 | 耐熱配線 | 規則24条5号ホ → 12条1項5号 |
| R型・GR型の固有信号をもつ感知器・中継器 → 受信機 | 耐熱配線 | 規則24条1号ホ → 12条1項5号 |
| P型の感知器回路(感知器相互間・感知器→受信機) | 一般配線 | 規則24条に電線種別の指定なし |
| 発信機回路 | 一般配線 | 規則24条8号の2に配線の定めなし |
| 常用電源 | 一般配線 | 規則24条3号に電線種別の指定なし |
| 表示灯(屋内消火栓の位置表示灯を兼ねない) | 一般配線 | 規則24条8号の2ハ・ニに配線の定めなし |
つまり自動火災報知設備で耐熱配線が明文で要求されるのは、受信機から地区音響装置までと、R型・GR型受信機に接続される固有の信号を有する感知器・中継器から受信機までの2箇所だけです。
規則第24条第5号ホは「受信機から地区音響装置までの配線は、第十二条第一項第五号の規定に準じて設けること」と定めています。同条第1号ホは「R型受信機及びGR型受信機に接続される固有の信号を有する感知器及び中継器から受信機までの配線については、第十二条第一項第五号の規定に準ずること」です。条文が対象を限定列挙している以上、ここに書かれていない回路には及びません。
よくある誤り:「感知器回線も耐熱配線」
最も広く出回っている誤りが、感知器回線や発信機回線まで耐熱配線が必要だとするものです。
P型受信機の感知器回路について、規則第24条第1号が求めているのは次の6点です。
- 送り配線とし、回路の末端に発信機・押しボタン・終端器を設けること(イ)
- 絶縁抵抗の確保(ロ)
- 接地電極に常時直流電流を流す回路方式などを用いないこと(ハ)
- 自火報の電線と他の電線を同一の管・ダクト・線ぴ・プルボックス等に入れないこと(ニ)
- 共通線は1本につき7警戒区域以下(ヘ)
- P型・GP型受信機の感知器回路の電路の抵抗は50Ω以下(ト)
電線の種別はどこにも指定されていません。 したがって600Vビニル絶縁電線(JIS記号IV)でも適法です。発信機についても、設置基準を定める第24条第8号の2は歩行距離50m以下・床面からの高さ0.8〜1.5m・直近の表示灯などを規定するだけで、配線には触れていません。
なお「送り配線にして末端に終端器」にはただし書があり、配線が感知器や発信機からはずれた場合または断線した場合に受信機が自動的に警報を発するものは、この限りではありません。
用語の注意:HIV・IV は条文の言葉ではない
条文が指定している電線は「六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線」という日本語の電線名です。HIV・IVはJISの記号で、規則の条文には登場しません。
- 600V二種ビニル絶縁電線 = JIS C 3317(記号 HIV)
- 600Vビニル絶縁電線 = JIS C 3307(記号 IV)
条文は「又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線」を並置しているので、HIVでなければならないという意味ではありません。同等以上の耐熱性があるケーブルでも構いません。
耐火と耐熱の差は「電線」ではなく「工事方法」
もうひとつ誤解されやすいのが、耐火配線と耐熱配線を電線の違いだと考えてしまうことです。条文を並べると、電線に対する要求は全く同じ文言です。
- 耐火系(12条1項4号ホ(イ)):六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線
- 耐熱系(12条1項5号イ):六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線
差が出るのは工事方法です。
- 耐火系:電線を耐火構造とした主要構造部に埋設する等、これと同等以上の耐熱効果のある方法で保護する。ただしMIケーブルまたは消防庁長官が定める基準に適合する電線(耐火電線)を使う場合は埋設不要
- 耐熱系:金属管工事・可とう電線管工事・金属ダクト工事・ケーブル工事(不燃性のダクトに布設するものに限る)による。ただし消防庁長官が定める基準に適合する電線(耐熱電線)を使う場合はこの限りでない
さらに耐火系だけ、開閉器・過電流保護器その他の配線機器を耐熱効果のある方法で保護すること、他の回路による障害を受けないような措置を講じることが加わります。
「耐火配線=FPケーブル、耐熱配線=HIV」と対応づけて暗記していると、600V二種ビニル絶縁電線を埋設して耐火配線を成立させるという条文どおりの方法を見落とします。
加熱試験の数値は規則ではなく告示にある
「耐火は600℃・30分」という数値をよく見かけますが、温度が誤りです。正しい数値は消防庁告示にあります。
| 電線 | 加熱炉の温度 | 加熱時間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 耐火電線 | 840±84℃ | 30分間 | 平成9年消防庁告示第10号 |
| 耐熱電線 | 380±38℃ | 15分間 | 平成9年消防庁告示第11号 |
告示第10号は「試験体を挿入しない状態で加熱した場合において、八百四十度プラスマイナス八十四度の温度を三十分間以上保つことができるものであること」、告示第11号は「三百八十度プラスマイナス三十八度の温度を十五分間以上保つことができるものであること」と定めています。
押さえるべきは数値そのものより、この条件を定めているのが規則ではなく告示だという点です。規則の条文には加熱試験の規定がありません。出典を問う設問で「規則が定めている」と答えると誤りになります。
例外:兼用したときだけ耐熱配線になる箇所
一般配線でよい箇所でも、屋内消火栓設備と兼用すると耐熱配線が必要になります。ここは条文が明確に書いています。
P型発信機が屋内消火栓の遠隔起動を兼ねる場合、規則第12条第1項第7号ヘが「操作部(自動火災報知設備のP型発信機を含む。)」と明記しているため、その起動信号の回路は屋内消火栓設備の操作回路として第12条第1項第5号が直接適用され、耐熱配線になります。
表示灯が屋内消火栓箱上部の赤色の灯火を兼ねる場合も同様です。第12条第1項第5号の対象は「操作回路又は第三号ロの灯火の回路の配線」で、この「第三号ロの灯火」が屋内消火栓箱の上部に設ける赤色の灯火そのものです。兼用した瞬間に耐熱配線の対象になります。
実務で自火報の表示灯が耐熱配線になっているのは、ほぼこの兼用ケースです。「表示灯は常に耐熱」も「表示灯は常に一般」も、どちらも誤りということになります。
混同しやすい数値の整理
配線まわりで数値を問われたときに取り違えやすいものを並べておきます。
- 非常電源の容量は10分間(規則24条4号ロ)。屋内消火栓設備の30分(規則12条1項4号ロ)を準用先ごと引きずらないこと
- 絶縁抵抗の測定は直流250Vの絶縁抵抗計(規則24条1号ロ)。電気設備一般で使う500Vではない
- 絶縁抵抗の値は、電源回路が対地電圧150V以下で0.1MΩ以上・150V超で0.2MΩ以上。感知器回路と附属装置回路(いずれも電源回路を除く)は対地電圧と関係なく1警戒区域ごとに0.1MΩ以上
- 電路の抵抗50Ω以下はP型・GP型受信機限定(規則24条1号ト)。R型・GR型にこの規定はない
- 共通線は1本につき7警戒区域以下(規則24条1号ヘ)。ただしR型・GR型に接続される固有の信号を有する感知器・中継器の感知器回路には適用されない
出典
本記事の条文はすべて一次情報で確認しています。
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条・第23条・第24条 — e-Gov法令検索
- 耐火電線の基準(平成9年12月18日 消防庁告示第10号)
- 耐熱電線の基準(平成9年12月18日 消防庁告示第11号)
法令は改正されることがあります。試験対策・実務のいずれでも、最終的な確認はe-Gov法令検索の現行条文で行ってください。

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