この記事で分かること
- 危険物乙種第3類の全体像と出題傾向
- 自然発火性と禁水性の定義と違い
- 乙3の主要物質(カリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・黄りん等)の性質
- 各物質の保管方法と消火方法
- 水系消火剤が使えない物質の整理
ぴよパスで 160 問 × 17 試験を運用していて気づいたのは、乙3の「性質と消火」は「自然発火性か禁水性か」「水消火の可否」「保護液の種類」の3点を押さえれば、10問中7〜8問が安定して取れるということです。
乙3「性質と消火」の出題傾向
危険物乙種第3類の試験(合計35問)のうち、「危険物の性質ならびに火災予防・消火方法」は10問出題されます。合格は各科目60%以上(足切り)なので、6問以上取る必要があります。
主な出題テーマは以下の通りです。
| テーマ | 頻度 |
|---|---|
| カリウム・ナトリウムの性質 | 非常に高い |
| アルキルアルミニウム・アルキルリチウム | 非常に高い |
| 黄りん | 非常に高い |
| 炭化カルシウム・炭化アルミニウム | 高い |
| 水素化ナトリウム・水素化リチウム | 高い |
| リン化カルシウム | 中程度 |
| 消火方法(乾燥砂・金属火災用粉末) | 非常に高い |
| 保護液(灯油・水中保管) | 非常に高い |
ぴよパスの乙3「性質と消火」練習問題で分野別に集中演習できます。
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自然発火性と禁水性
乙3は消防法別表第一で「自然発火性物質及び禁水性物質」と定義されています。
定義の違い
| 性質 | 定義 | 代表例 |
|---|---|---|
| 自然発火性 | 空気に触れると発火 | 黄りん・アルキルアルミニウム |
| 禁水性 | 水と反応して発熱・可燃性ガス発生 | カリウム・ナトリウム・炭化カルシウム |
乙3のほぼ全品目は「両方の性質を併せ持つ」ものが多く、例外は黄りん(自然発火性のみ、水と反応しない)です。
カリウム (K) とナトリウム (Na)
アルカリ金属の代表で、乙3の出題の要です。
カリウムの性質
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 比重 | 0.86(水より軽い) |
| 融点 | 約 64 ℃ |
| 色 | 銀白色 |
| 炎色反応 | 紫色 |
| 反応性 | ナトリウムより激しく水と反応 |
| 保管 | 灯油中(石油中) |
ナトリウムの性質
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 比重 | 0.97(水より軽い) |
| 融点 | 約 98 ℃ |
| 色 | 銀白色 |
| 炎色反応 | 黄色 |
| 反応性 | カリウムより穏やか |
| 保管 | 灯油中(石油中) |
水との反応
どちらも水と反応して水素を発生し、同時に激しく発熱・発火します。
2K + 2H₂O → 2KOH + H₂↑
2Na + 2H₂O → 2NaOH + H₂↑
消火方法:乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩・金属火災用粉末消火剤(水・泡・強化液・二酸化炭素・ハロゲン化物は不可)
アルキルアルミニウム・アルキルリチウム
有機金属化合物で、最も危険性が高い乙3物質です。
共通の性質
- 空気に触れると自然発火
- 水と激しく反応して発火・爆発
- 溶媒で希釈すると危険性が減少
- 保管は不活性ガス(窒素・アルゴン)中の密閉容器
代表的な物質:
| 物質 | 化学式 | 特徴 |
|---|---|---|
| トリエチルアルミニウム | Al(C₂H₅)₃ | 代表的なアルキルアルミニウム |
| ジエチル亜鉛 | Zn(C₂H₅)₂ | 空気中で自然発火 |
| n-ブチルリチウム | LiC₄H₉ | 有機合成触媒 |
消火方法:乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩(水・泡・ハロゲン化物・二酸化炭素は不可)
二酸化炭素は一見使えそうですが、アルキルアルミニウムは二酸化炭素とも反応するため使用不可です。試験頻出のひっかけポイントです。
黄りん (P₄)
乙3の中で唯一「水中保管」する物質です。
黄りんの性質
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発火点 | 約 50 ℃(極めて低い) |
| 比重 | 1.82(水より重い) |
| 色 | 白色〜淡黄色 |
| 水への溶解性 | 不溶 |
| 保管 | 水中保管 |
なぜ水中保管できるのか
黄りんは自然発火性ですが、水とは反応しないため、水中保管で空気を遮断できます。暗所で青白いリン光を発するのも特徴です。
猛毒で、致死量は約 0.1g と極めて毒性が強いのも試験頻出です。
消火方法:水噴霧・土砂・霧状の水で冷却消火が可能(乙3で唯一水系消火剤が使える物質)。
黄りんと赤りんの違い
赤りん(第2類)は安定な同素体で自然発火性なし。黄りんのみが乙3の対象です。
炭化カルシウム・炭化アルミニウム
水と反応して可燃性ガスを発生する物質です。
炭化カルシウム(カーバイド、CaC₂)
- 灰黒色の固体
- 水と反応してアセチレン(C₂H₂)を発生
CaC₂ + 2H₂O → Ca(OH)₂ + C₂H₂↑
アセチレンは可燃性ガスで、爆発範囲 2.5〜100%(空気中)と極めて広い。
炭化アルミニウム(Al₄C₃)
- 黄色の固体
- 水と反応してメタン(CH₄)を発生
Al₄C₃ + 12H₂O → 4Al(OH)₃ + 3CH₄↑
消火方法:乾燥砂・粉末消火剤(水・泡は不可)
水素化ナトリウム・水素化リチウム
金属水素化物で、水と反応して水素を発生します。
| 物質 | 化学式 | 色 |
|---|---|---|
| 水素化ナトリウム | NaH | 灰色〜灰白色 |
| 水素化リチウム | LiH | 無色〜灰色 |
NaH + H₂O → NaOH + H₂↑
LiH + H₂O → LiOH + H₂↑
両物質とも還元性が強く、酸化剤と接触すると発火する点も頻出です。保管は窒素中または鉱油中。
リン化カルシウム (Ca₃P₂)
水と反応して猛毒の可燃性ガス「ホスフィン(PH₃、リン化水素)」を発生します。
Ca₃P₂ + 6H₂O → 3Ca(OH)₂ + 2PH₃↑
ホスフィンは強毒性で、悪臭(腐った魚の臭い)を発することも特徴です。消火:乾燥砂(水・泡・二酸化炭素は不可)。
その他の乙3物質
| 物質 | 性質 |
|---|---|
| リチウム (Li) | アルカリ金属、比重 0.5、鉱油中保管 |
| カルシウム (Ca) | アルカリ土類金属、禁水性 |
| バリウム (Ba) | アルカリ土類金属、禁水性 |
| 亜鉛粉末 | 自然発火性(粉末状のみ) |
| 水素化アルミニウムリチウム (LiAlH₄) | 禁水性、有機合成で還元剤 |
消火方法の整理(最重要)
水系消火剤の可否一覧
| 物質 | 水 | 泡 | 強化液 | 乾燥砂 | 粉末 |
|---|---|---|---|---|---|
| カリウム・ナトリウム | × | × | × | ○ | ○(金属火災用) |
| アルキルアルミニウム | × | × | × | ○ | ×(リン酸塩系) |
| 黄りん | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 炭化カルシウム | × | × | × | ○ | ○ |
| 水素化ナトリウム | × | × | × | ○ | ○ |
| リン化カルシウム | × | × | × | ○ | ○ |
黄りんだけが水系消火剤 OK という点は必ず暗記。他の乙3物質はすべて水禁止です。
不適切な消火剤
- 二酸化炭素(CO₂):アルキルアルミニウム・マグネシウムに使用不可(反応する)
- ハロゲン化物(ハロン):アルキルアルミニウム・ナトリウム等に使用不可
- リン酸アンモニウム系粉末(ABC 粉末):金属火災には金属火災用粉末(NaHCO₃系)を使う
保管・取扱いのまとめ
| 物質 | 保管液 |
|---|---|
| カリウム・ナトリウム | 灯油(石油)中 |
| リチウム | 鉱油中 |
| 黄りん | 水中 |
| アルキルアルミニウム | 窒素・アルゴン中 |
| 水素化ナトリウム | 窒素中または鉱油中 |
取扱いの共通ルール:
- 容器は密閉
- 湿気・水分を避ける(黄りんを除く)
- 火気・加熱を避ける
- 酸化剤と分離保管
学科試験で取るべき目標点
「性質と消火」は 10 問出題されるので、6〜8 問正解を目指せば合格水準です。
優先して押さえるテーマ
- カリウム・ナトリウムの炎色反応と保管(灯油中)
- 黄りんの水中保管と発火点 50 ℃
- アルキルアルミニウムの二酸化炭素不可
- 炭化カルシウムのアセチレン発生
- 禁水性物質の消火は乾燥砂・金属火災用粉末
まとめ
- 乙3は自然発火性物質及び禁水性物質:ほぼ全品目が両方の性質を持つ
- 例外は黄りん:自然発火性のみ、水中保管で水消火も可能
- カリウム・ナトリウム:灯油中保管、炎色反応(紫・黄)が頻出
- アルキルアルミニウム:空気・水・二酸化炭素すべて不可、窒素中保管
- 炭化カルシウム:アセチレン発生、炭化アルミニウム:メタン発生
- 消火の原則:水・泡・強化液は基本不可、乾燥砂と金属火災用粉末が基本
乙3は対象物質が少なく、物質ごとの性質と消火方法を 1 対 1 で覚えれば確実に得点できます。ぴよパスの乙3「性質と消火」練習問題で繰り返し演習しましょう。