乙3 の勉強時間は「保有資格」で決まる — 乙4 を持っているかで 40 時間以上変わる
危険物乙3 の勉強時間を「○○時間で受かる」と一本化して語る記事が多いが、これは実態に合わない。乙3 受験者の大半は乙4 を取り終えた人で、危険物の規制に関する規則第55条の3 により「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び化学」の2科目が免除される。残るは性質・消火 10 問だけ — 試験時間も通常2時間が35分に短縮される。
一方、乙4 を持たずに乙3 から始める人はゼロから 3 科目フル受験となり、必要時間は丸ごと跳ね上がる。同じ「乙3 合格」でも、スタートラインが違えば必要な投入時間も違う。
| 受験パターン | 受験科目 | 試験時間 | 勉強時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 乙4 保持・科目免除 | 性質・消火 10 問のみ | 35 分 | 30〜40 時間 |
| 他類保持 (乙1/2/5/6/7) | 性質・消火 10 問のみ | 35 分 | 35〜45 時間 |
| 完全な初学者 | 法令・物化・性消 35 問 | 2 時間 | 80〜100 時間 |
乙3 が乙4 と決定的に違う 1 点:消火に水・CO2 を使えない物質群がある
第3類は自然発火性物質及び禁水性物質で、消防法別表第一に明記されている類別だ。引火性液体である乙4 (第4類) とは、扱う危険物の物理的挙動が根本から違う。
特に試験で繰り返し問われるのが消火剤の選択だ。第3類10品名のうち、水・CO2・ハロゲン化物が使えない物質が大半を占める。乙4 で「ガソリンには泡か粉末か CO2」と覚えた人は、その常識をいったん封印する必要がある。
| 物質 | 性質 | 水 | CO2 | 乾燥砂・膨張ひる石 |
|---|---|---|---|---|
| カリウム・ナトリウム | 禁水性 | × (爆発) | × | ○ |
| アルキルアルミニウム | 禁水性・自然発火性 | × | × | ○ |
| リチウム | 禁水性 | × | × | ○ |
| 黄りん | 自然発火性のみ | ○ | ○ | ○ |
| 金属の水素化物 (CaH2 等) | 禁水性 | × | × | ○ |
| 金属のりん化物 | 禁水性 | × | × | ○ |
乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩はほぼ全物質に共通して使える「保険」で、まずこの 3 つを覚えてから、各物質で水・CO2 が使えるかを上書きで覚えていく順序が定着しやすい。
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禁水性物質に投入する 15 時間の中身
性質・消火 10 問は配点こそ全体の 29% (35 問中) だが、各科目 60% の足切りを越える条件として 6 問正解が最低ライン。1 問の比重が 10% あり、ここで崩れると他科目が満点でも不合格になる。
第1週 (5 時間): 物質と類別の対応暗記
- カリウム / ナトリウム / アルキルアルミニウム / アルキルリチウム / 黄りん / アルカリ金属及びアルカリ土類金属 / 有機金属化合物 / 金属の水素化物 / 金属のりん化物 / カルシウム又はアルミニウムの炭化物 — 10 品名の暗記
- 各品名の貯蔵方法 (灯油中保存、不活性ガス中保存、水中保存 ※黄りん) を物質と紐付け
第2週 (5 時間): 水との反応式
- Na + H2O → NaOH + 1/2 H2 (水素発生)
- CaC2 + 2 H2O → Ca(OH)2 + C2H2 (アセチレン発生)
- CaH2 + 2 H2O → Ca(OH)2 + 2 H2 (水素発生)
- Ca3P2 + 6 H2O → 3 Ca(OH)2 + 2 PH3 (ホスフィン発生)
発生ガスの種類 (水素 / アセチレン / ホスフィン) を整理しておくと、選択肢の引っ掛けに強くなる。
第3週 (5 時間): 本試験形式の反復
- 10 問×6 セット程度を時間内 (35 分) で解く練習
- 間違えた選択肢の理由を 1 行で説明できるまで戻す
完全初学者が 80 時間を使う場合の内訳
乙4 を持たない人が乙3 を直接受けるケース (極めて少数だが存在する) は、3 科目フル受験となる。試験時間も 2 時間に戻る。
| 科目 | 出題数 | 投入時間 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15 問 | 30 時間 | 指定数量 (10kg/20kg/50kg/300kg/1000kg)・保安距離・予防規程 (危険物の規制に関する政令第31条の2 で保安監督者選任義務) |
| 基礎的な物理学及び化学 | 10 問 | 20 時間 | 燃焼理論・反応速度・酸化還元、特に金属と水の反応式 |
| 危険物の性質と消火 | 10 問 | 30 時間 | 第3類10品名、消火剤の適否、貯蔵法 |
ここで法令の指定数量は乙4 と同じ「危険物の規制に関する政令別表第三」を参照するが、第3類固有の値 (カリウム・ナトリウム 10kg、アルキルアルミニウム 10kg、黄りん 20kg 等) を覚え直す必要がある。
乙4 保持者がやりがちな失敗 — 「免除されたから 1 週間でいける」
乙4 を持っている人の最大の失敗パターンは「免除科目があるから簡単」と判断して直前 1 週間で済ませようとすることだ。免除されるのは「法令」と「物理化学」だけで、第3類の性質・消火 10 問は完全にゼロから覚える別物の知識になる。
よくある誤算
- 「危険物だから水で消せると思った」 — 乙4 のガソリンでは水冷却がダメな理由 (比重が軽くて浮く) を知っているが、乙3 では「水と反応して水素・アセチレンが出る」という別次元の理由で禁忌になる。理屈が違うので暗記し直し。
- 「CO2 でいいだろう」と曖昧記憶 — アルキルアルミニウムは CO2 とも反応するため不適。乙4 では万能扱いだった CO2 が、第3類では NG 品目が複数ある。
- 黄りんを禁水性物質と勘違い — 黄りんは自然発火性のみで禁水ではなく、水中保存・水での消火が正解。同じ第3類でも例外として最頻出。
10 物質×消火剤の対応表を作って、1 物質ずつ「水○/×」「CO2○/×」を埋めるだけで上の 3 つは防げる。表を自力で埋め切れず投入時間が読めない人は、独学と講座の費用対効果を 危険物乙3講座おすすめ で比べてから、動画で性質消火を組み直す手も検討できる。
残り日数で配分を組み替える
科目免除を受ける乙4 保持者の前提で、残り時間別の優先順位を示す。
| 残り日数 | 第1優先 | 第2優先 | やらないこと |
|---|---|---|---|
| 1 ヶ月以上 | 10 品名の性質・貯蔵を全暗記 | 水との反応式 4 種を導出練習 | — |
| 2 週間 | 消火剤適否マトリクスを完成 | 10 問×3 セット反復 | 法令の復習に時間を割く (免除) |
| 1 週間 | 弱い物質を集中暗記 | 反応式を口頭で言える状態に | 新しい教材に手を出す |
| 3 日 | 一覧表を 1 日 3 周読む | 過去のミスだけ振り返り | 知らない論点に深入りしない |
受験前にもう一度確認する数値
- 受験料: 5,300 円 (一般財団法人 消防試験研究センター案内、2026年時点)
- 試験時間: 2 時間 (フル受験) / 35 分 (科目免除)
- 合格基準: 各科目 60% 以上 (足切りあり)
- 平均合格率: 約 66.3% (ただし乙4 保持者の押し上げ込み、初学者の体感はもう一段難しい)
- 根拠法令: 消防法別表第一 (危険物の類別)・危険物の規制に関する政令第31条の2 (保安監督者)・危険物の規制に関する規則第55条の3 (科目免除)
編集部より — 数多くの試験データを読み解いて気づいた合格者の共通行動
乙3 の合格者と不合格者を分けているのは「乙4 の知識を引きずらず、消火剤の常識を組み直せたか」だった。水で消える / CO2 で消える を当然の前提にしていた人は、性質・消火の足切りで崩れる。逆に「水と反応するなら水素が出る」と化学反応式から戻れた人は、初見問題でも選択肢を絞れている。
出典:
- 一般財団法人 消防試験研究センター — 危険物取扱者試験 案内 (受験料・試験時間・合格率)
- 消防法 別表第一 (危険物の類別、第3類「自然発火性物質及び禁水性物質」)
- 危険物の規制に関する政令 第31条の2 (危険物保安監督者の選任義務)
- 危険物の規制に関する規則 第55条の3 (他類取得者の科目免除規定)

































