結論:漢方は「処方名の暗記」ではなく「3層の消去法」で解く
第3章の漢方が苦しいのは、処方名と適応をセットで丸暗記しようとするからです。一般用に使える漢方処方は約300あり、手引きに名前が出るものだけでも数十あります。全部覚えるのは現実的ではありません。
漢方の問題は、次の3層のどれかを問うています。層に分けて処理すれば、知らない処方でも誤りの肢を切れます。
| 層 | 何を問うか | 覚える量 |
|---|---|---|
| 第1層 しばり表現 | 「体力が充実して」など、冒頭の体力表現 | 4パターンだけ |
| 第2層 構成生薬 | カンゾウ・マオウ・ダイオウを含むか | 3つの生薬の注意点だけ |
| 第3層 重篤な副作用 | 肝機能障害・間質性肺炎など | パターンが決まっている |
処方ごとの細かい適応は、この3層を固めた後に「余力があれば」で構いません。配点効率がまるで違います。
第1層:しばり表現は4パターンしかない
漢方の効能効果は、平成20年の通知で「証」という専門用語を避け、「しばり」(使用制限)として書かれるようになりました。虚実の概念は次のように表現されます。
| 病態 | しばり表現 |
|---|---|
| 実の病態が適応 | 「体力が充実して」 |
| 虚実の中間 | 「体力中等度で」 |
| 虚の病態が適応 | 「体力虚弱で」 |
| 虚実に関わらず幅広く | 「体力に関わらず」 |
そして、適応の裾野が広い処方には中間表現が使われます。
- 裾野が虚実中間から実に分布 → 「体力中等度以上で」
- 裾野が虚実中間から虚に分布 → 「体力中等度以下で」
覚え方:「充実 → 中等度以上 → 中等度 → 中等度以下 → 虚弱 → 関わらず」の6段階の物差し
強い側から弱い側へ一直線に並べれば、順序を間違えません。実際の問題は「体力充実して」と「体力虚弱で」を入れ替えて誤りの肢を作るのが定番です。冒頭の体力表現だけを見て、処方のイメージと合わなければ切る。これで相当数の肢が落とせます。
陰陽と五臓の表現も、決まった言い回しに置き換わっています。
| 概念 | 表現の例 |
|---|---|
| 陽(熱) | 「のぼせぎみで顔色が赤く」 |
| 陰(寒) | 「疲れやすく冷えやすいものの」 |
| 脾胃虚弱 | 「胃腸虚弱で」 |
| 肝陽上亢 | 「いらいらして落ち着きのないもの」 |
| 水毒 | 「口渇があり、尿量が減少するもの」 |
| 血虚 | 「皮膚の色つやが悪く」 |
「いらいらして落ち着きのない」と書いてあれば肝、「胃腸虚弱で」と書いてあれば脾胃、という対応だけ持っておけば十分です。
第2層:カンゾウ・マオウ・ダイオウの3つだけを追う
手引きは、多くの処方について「構成生薬として◯◯を含む」と明示しています。この◯◯で試験に効くのは3つだけです。逆に言えば、この3つが書かれていない処方は、そこを問われません。
| 生薬 | 何が起きるか | 注意すべき人 |
|---|---|---|
| カンゾウ | グリチルリチン酸の大量摂取 → 偽アルドステロン症 | むくみ、心臓病、腎臓病、高血圧のある人、高齢者 |
| マオウ | 交感神経刺激 → 心臓血管系・代謝に影響。依存性がある | 心臓病、高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症 |
| ダイオウ | センノシドによる瀉下作用 | 瀉下薬との併用に注意(腹痛・激しい下痢) |
カンゾウの数字は3つ
ここは数字が問われます。
- 1日最大服用量がグリチルリチン酸として40mg以上の製品 → リスクの高い人は事前に相談
- 1日最大服用量がカンゾウ(原生薬換算)として1g以上の製品 → 同上。かつ誰が対象でも長期連用を避ける
- 医薬品ではグリチルリチン酸としての1日摂取量が200mgを超えないよう用量が定められている
40mg / 1g / 200mg。この3つだけ数字で覚えます。
覚え方:「カンゾウは甘い、マオウは興奮、ダイオウは下す」
- カンゾウ → 甘味料としても使われる(一般食品にも入っている) → 知らないうちに摂りすぎる → 偽アルドステロン症
- マオウ → エフェドリンの仲間(アドレナリン作動成分と同じ働き) → 興奮・依存 → 心臓病や甲状腺に響く
- ダイオウ → センナと同じセンノシド → 下す → 瀉下薬と重ねない
3つとも、その生薬が何の代わりに働いているかをたどれば注意点が出てきます。丸暗記する必要がありません。
🔴 防風通聖散だけは3つとも含む
肥満症に用いられる処方のうち、防風通聖散はカンゾウ・マオウ・ダイオウをすべて含みます。手引きの記述の中でこの3つが並ぶのはここだけです。
そのぶん副作用も多く、肝機能障害・間質性肺炎・偽アルドステロン症・腸間膜静脈硬化症が挙げられています。「一番きつい処方」として記憶に置いておくと、他と比べたときの基準になります。
肥満に用いられる3処方は、体力表現で区別できます。
| 処方 | 体力 | 特徴 | 構成生薬 |
|---|---|---|---|
| 防已黄耆湯 | 体力中等度以下 | 疲れやすく汗をかきやすい。いわゆる水ぶとり | カンゾウ |
| 防風通聖散 | 体力充実 | 腹部に皮下脂肪が多く便秘がち | カンゾウ・マオウ・ダイオウ |
| 大柴胡湯 | 体力充実 | 脇腹からみぞおちにかけて苦しい、便秘傾向 | ダイオウ |
🔴 防風通聖散と大柴胡湯はどちらも「体力充実」で便秘傾向なので、体力表現では区別できません。分かれるのは症状の書き出しで、皮下脂肪なら防風通聖散、脇腹からみぞおちなら大柴胡湯です。構成生薬でも切れます(3つ含むのが防風通聖散、ダイオウだけが大柴胡湯)。
⚠️ 手引きは「肥満症又は肥胖症に用いられる漢方処方製剤については、どのような肥満症にも適すわけではない」とわざわざ書いています。生活習慣の改善が重要である旨を説明することも求められており、ここも出題されます。
第3層:重篤な副作用のパターンは決まっている
漢方処方製剤の重篤な副作用は、手引きの記述を通して見ると顔ぶれが限られます。
| 副作用 | どんな処方に付くか |
|---|---|
| 肝機能障害 | 非常に多くの処方に共通 |
| 間質性肺炎 | 同上。肝機能障害とセットで書かれることが多い |
| 偽アルドステロン症 | カンゾウを含む処方 |
| 腸間膜静脈硬化症 | 一部の処方(黄連解毒湯・防風通聖散・清上防風湯など) |
▶️ 「肝機能障害・間質性肺炎」は漢方全体の共通項、「偽アルドステロン症」はカンゾウのサイン、と読み替えられます。第2層と第3層はつながっています。
覚えなくてよいもの
時間対効果が悪いところを先に切っておきます。
- 証の理論そのもの(虚実・陰陽・気血水・五臓の中身)→ しばり表現への翻訳だけ押さえれば足ります
- 処方の構成生薬の全リスト → 手引きが「構成生薬として◯◯を含む」と書いた3生薬以外は問われません
- 数十の処方の適応の丸暗記 → 体力表現+キーワード1つで十分
定番のひっかけ4つ
手引きが明示的に否定している、または注意している記述です。そのまま誤りの肢になります。
①「漢方薬はすべて作用が穏やかで、副作用が少ない」→ 誤り 手引きは、これを「誤った認識」と明記したうえで、間質性肺炎や肝機能障害のような重篤な副作用が起きることがあるとしています。副作用を看過する要因になるため、専門家は積極的な情報提供に努める必要がある、とまで書かれています。
②「小児にも年齢制限なく使える」→ 誤り 用法用量に適用年齢の下限が設けられていない場合でも、生後3ヶ月未満の乳児には使用しないこととされています。
③「中医学の薬も漢方薬」→ 誤り 現代中国の中医学に基づく薬剤は中薬であり、漢方薬とは明らかに別物とされています。韓国の韓医学で用いられるのは韓方薬で、これも区別されます。
④「漢方薬同士なら併用してよい」→ 誤り 複数の処方で共通する生薬があるため、同じ生薬を含む処方を併用すると作用が強く出たり副作用を生じやすくなります。また漢方処方はそれ自体が一つの有効成分なので、自己判断で生薬成分を追加すると処方が成立しなくなるおそれがあります。
なお、医療用医薬品との相互作用としては、小柴胡湯とインターフェロン製剤の組み合わせが手引きに名指しで挙げられています。ここは処方名と薬剤名をセットで覚える価値があります。
効能効果を1つだけ覚えるなら「使用期間の目安」
手引きは、いくつかの処方について「◯回/◯週間位使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談する」と書いています。この日数・回数も問われます。
- 黄連解毒湯(鼻出血、二日酔いに用いる場合)→ 5〜6回
- 防風通聖散(便秘に用いる場合)→ 1週間位
- 大柴胡湯(常習便秘、高血圧に伴う便秘に用いる場合)→ 1週間位
▶️ 「便秘に使うなら1週間」と束ねると覚えやすくなります。漢方は体質改善を主眼とするものが多く比較的長期間(1ヶ月位)続けることがある一方で、便秘のように症状が目的の使い方では期間が短く区切られる、という理屈です。
3層を意識して解く
覚えたら、実際に肢を切る練習が要ります。ぴよパスでは登録販売者の練習問題を無料公開しています。
- 登録販売者の練習問題(医薬品に共通する特性・人体と医薬品・薬事関係法規)
漢方の肢を見たら、①冒頭の体力表現 → ②構成生薬 → ③副作用の順に確認してください。3層のどこか1つで矛盾が見つかれば、その肢は切れます。適応そのものを知らなくても解けます。
まとめ
- 漢方は「しばり表現」「構成生薬」「重篤な副作用」の3層に分けて処理する
- 体力表現は充実 → 中等度以上 → 中等度 → 中等度以下 → 虚弱 → 関わらずの6段階
- 追うべき生薬はカンゾウ・マオウ・ダイオウの3つだけ。数字は40mg / 1g / 200mg
- 防風通聖散は3つとも含む唯一の処方。副作用も4つ挙げられている
- 「肝機能障害・間質性肺炎」は共通項、「偽アルドステロン症はカンゾウのサイン」
- 「漢方は副作用が少ない」「生後3ヶ月未満にも使える」「中薬も漢方薬」はすべて誤り
出典
- 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」第3章 ⅩⅣ 漢方処方製剤・生薬製剤(漢方の特徴と基本的な考え方、しばり表現、代表的な漢方処方製剤と主な副作用、相互作用・受診勧奨)
- 同 第3章 Ⅰ-1 かぜ薬(内服)、Ⅱ-1 咳止め・痰を出しやすくする薬(カンゾウ・マオウの共通の留意点、グリチルリチン酸の数量基準)
- 同 第3章 Ⅲ-2 腸の薬(ダイオウの共通の留意点)
編集部の見方:手引きの原文にあたって、漢方の記述で実際に繰り返し出てくる要素を数えたところ、「構成生薬として◯◯を含む」と書かれる生薬はカンゾウ・マオウ・ダイオウに集中していました。処方ごとの適応をすべて覚えるより、この3つと体力表現を先に固めるほうが、同じ勉強時間で切れる肢が増えます。
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