消防設備士乙種第6類 (乙6) は、消火器の整備と点検を行うための国家資格です。消火器は延べ面積や用途の条件に当てはまる建物のほぼすべてに設置されているため、点検の需要が途切れず、消防設備士の中で最も受験者が多い区分になっています。令和8年4〜6月だけで5,212人が受験し、乙種全体の受験者の7割近くを占めました。
「誰でも受けられる」「範囲が狭い」と語られる一方で、同じ期間の合格率は36.9%で、3人に2人は落ちています。このページは、消防試験研究センターが公表している一覧表・試験の方法・直近統計を乙6向けに読み替えて、受験を決める前に押さえるべき数字を1か所に集めたものです。
乙6は消火器だけを扱う、乙種しかない機械系の区分
何ができる資格か — 整備と点検。6類に甲種はない
消防設備士は甲種が工事・整備・点検、乙種が整備・点検を担います。消火器は配管や配線の工事を伴わないため、6類には甲種が設けられておらず、乙6に受かれば6類としては到達点です。業務の中心は消防法第17条の3の3に基づく定期点検で、機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごとに行い、消火器の外観・表示・安全栓・圧力計・本体容器の腐食などを確認して報告します。点検の周期と報告の分かれ目は 消火器の点検と報告 で扱っています。
求人の面では、消防設備点検会社・ビルメンテナンス会社・防災設備業で「乙6と乙4の両方」を条件にする例が多く、危険物乙4・第二種衛生管理者・二級ボイラー技士と並ぶビルメンテナンスの基本資格として扱われています。年収や仕事内容の実像は 乙6を取るメリット と 仕事・転職活用 にまとめています。
扱う消火器の種類
試験で問われる消火器は、消火薬剤と放射方式の組み合わせで整理します。
| 消火器 | 適応火災の中心 | 試験で問われやすい点 |
|---|---|---|
| 粉末消火器 (蓄圧式・加圧式) | 普通・油・電気火災 | 圧力計の有無、加圧用ガス容器、放射時間 |
| 強化液消火器 | 普通火災 (霧状は油・電気にも) | 消火薬剤のアルカリ性、凍結しにくさ |
| 泡消火器 (機械泡・化学泡) | 普通・油火災 | 電気火災に使えない理由、化学泡の反応 |
| 二酸化炭素消火器 | 油・電気火災 | 高圧ガス保安法の容器、地下街などの設置制限 |
| 水消火器 | 普通火災 | 冷却作用、電気火災に不適 |
| ハロゲン化物消火器 | 油・電気火災 | 製造・使用の制限、既設品の扱い |
構造・機能15問と鑑別5問は、この表の「試験で問われやすい点」を写真と数値で答えられるかで決まります。適応火災の整理は 消火器の適応火災3区分、鑑別の見分け方は 鑑別対策 で扱っています。
試験の全体像 (公式の数値のみ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施団体 | 一般財団法人 消防試験研究センター |
| 受験資格 | 乙種は「誰でも受験できます」 |
| 受験手数料 | 乙種 4,400円 |
| 出題数 (免除なし) | 筆記30問 + 実技 (鑑別等) 5問 |
| 試験時間 (免除なし) | 1時間45分 |
| 試験の方法 | 筆記はマークカードの四肢択一、実技は写真・イラスト・図面等による記述式 |
| 合格基準 | 筆記は各科目40%以上かつ全体60%以上、実技は60%以上 |
| 合格率 (令和8年4〜6月公表) | 36.9% (受験者5,212人・合格者1,924人) |
| 免状交付手数料 | 2,900円 (1種類につき) |
| 受験地 | 居住地にかかわらず希望する都道府県で受験できる |
消防設備士乙6 オリジナル予想問題345問で科目ごとの現在地を測る →
試験内容: 四肢択一30問と記述式の鑑別5問を1時間45分で解く
科目と問題数 — 乙6には「電気」の枠がない
消防試験研究センターの「試験の一部免除・試験時間・試験問題数一覧表 (乙種)」に載っている乙6の問題数です。
| 科目 | 区分 | 問題数 | 問われること |
|---|---|---|---|
| 消防関係法令 | 共通 | 6問 | 消防法の全区分共通のルール (設置維持義務・点検報告・消防設備士制度) |
| 消防関係法令 | 類別 | 4問 | 消火器の設置基準 (施行令第10条の対象物・能力単位・歩行距離) |
| 基礎的知識 | 機械 | 5問 | 力のモーメント・応力・金属材料・圧力の基礎 |
| 構造・機能及び整備 | 機械 | 9問 | 消火器6種の構造と作動、点検・整備の手順 |
| 構造・機能及び整備 | 規格 | 6問 | 規格省令の数値 (放射時間・放射距離・表示・安全栓) |
| 実技 | 鑑別等 | 5問 | 写真や図から消火器・部品の名称・用途・点検内容を記述で答える |
乙4・乙7にある「基礎的知識 (電気)」「構造・機能 (電気)」の枠は、乙6では「--」(出題なし) です。基礎的知識は機械5問で、てこ・滑車・応力といった力学の基礎が中心のため、計算といっても四則演算の範囲に収まります。科目ごとの配分は 科目別攻略、法令の数値は 法令の覚え方 で扱っています。
合格基準は三段 — 何問正解で合格か
公式の合格基準は「筆記試験において、各科目毎に40%以上で全体の出題数の60%以上、かつ、実技試験において60%以上の成績を修めた者を合格」です。免除なしの最低正答数に直すと次のとおりです。
| 関門 | 対象 | 最低正答数 |
|---|---|---|
| 各科目40% | 法令10問 | 4問 |
| 各科目40% | 基礎的知識 (機械) 5問 | 2問 |
| 各科目40% | 構造・機能15問 | 6問 |
| 全体60% | 筆記30問 | 18問 |
| 実技60% | 鑑別5問 | 3問 |
筆記が25問取れていても基礎的知識が1問なら不合格、筆記が満点でも鑑別が2問なら不合格です。一夜漬けが通用しにくいのは、この鑑別5問が記述式で、消火器の写真から名称・用途・点検項目を書く必要があるためです。合格基準の読み方は 合格基準のAND条件、実技の型は 実技攻略3つの問われ方 にあります。
公式が公表している出題例
消防試験研究センターは「過去に出題された問題」として乙種の出題例をPDFで公表しており、法令の共通 (第1〜7類) と各類別の問題例が含まれます。四肢択一の文体を確かめたら、ぴよパスの 法令95問・基礎的知識 (機械) 60問・構造・機能及び整備130問・実技 (鑑別) 60問 で科目ごとの正答率を確かめてください。
免除区分ごとに残る問題数と試験時間 — 電気工事士は免除されない
消防試験研究センターの一覧表 (令和7年5月版・乙種) の乙6の行を、残る問題数に直して並べます。
| 持っている資格 | 免除される部分 | 残る筆記 | 実技 | 試験時間 |
|---|---|---|---|---|
| なし (一般受験者) | — | 30問 | 鑑別5問 | 1時間45分 |
| 消防設備士 甲種1〜4類 / 乙種1〜4・7類 | 法令 (共通) 6問 | 24問 | 鑑別5問 | 1時間30分 |
| 消防設備士 甲種5類 / 乙種5類 | 法令 (共通) 6問 + 基礎的知識 (機械) 5問 | 19問 | 鑑別5問 | 1時間15分 |
| 電気工事士 / 電気主任技術者 | 免除なし | 30問 | 鑑別5問 | 1時間45分 |
| 技術士 (機械部門) | 基礎的知識 (機械) + 構造・機能 (機械) + 規格 | 10問 (法令10) | 鑑別5問 | 0時間45分 |
| 技術士 (機械部門) + 消防設備士免状 | 上記 + 法令 (共通) | 4問 (類別4) | 鑑別5問 | 0時間35分 |
| 特定の消防団員 (5年以上勤務 + 消防学校の機関科修了) | 基礎的知識 (機械) + 実技 | 25問 | なし | 1時間15分 |
乙4・乙7との最大の違いは、電気工事士や電気主任技術者の免状が乙6では何も免除しないことです。免除されるのは同じ機械系の資格 (甲5・乙5の免状、技術士の機械部門) と、他の類の免状による法令共通だけです。乙4や乙7を先に持っている人は法令共通6問が外れて筆記24問になりますが、鑑別5問はどの区分でも残ります (特定の消防団員を除く)。免除を受けるには受験申請時に免状のコピーを提出し、申請後の追加はできません。免除するかどうかの判断は 受験の3条件と科目免除 で扱っています。
合格率: 令和8年4〜6月は36.9%、受験者は乙種で最多
| 区分 | 期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 乙6 | 令和8年4〜6月 | 5,212人 | 1,924人 | 36.9% |
| 乙6 | 令和7年4〜6月 (前年同期) | 4,441人 | 1,733人 | 39.0% |
| 乙4 | 令和8年4〜6月 | 834人 | 319人 | 38.2% |
| 乙7 | 令和8年4〜6月 | 762人 | 535人 | 70.2% |
| 甲4 | 令和8年4〜6月 | 3,378人 | 1,319人 | 39.0% |
令和7年度の乙6合格者数は全国で11,541人 (同センター公表の年度別合格者数) で、乙種7区分の合計19,602人の6割近くを占めます。受験者が多いぶん、対策をせずに受ける人も含まれるため、合格率は乙種の中では低めに出ます。年度別の推移と読み方は 乙6の合格率、難しさの実像は 乙6の難易度、落ちる型は 落ちる人の特徴 で扱っています。
勉強時間とテキスト: 30〜60時間、鑑別を最初から並行する
| 区分 | 学習時間の目安 (編集部) | 先に固めるもの |
|---|---|---|
| 消防設備士の他の類を持っている | 20〜40時間 | 消火器の構造・規格値、鑑別の写真 |
| 初めて消防設備士を受ける | 30〜60時間 | 構造・機能15問 → 法令10問 → 鑑別 → 基礎的知識5問 |
この数字は公式の目安ではなく、出題数と科目の性質から編集部が置いた目安です。乙7 (15〜60時間) と近い量ですが、乙6は電気工事士免除が効かないぶん、免除ありの短縮ルートがありません。鑑別は構造・機能と地続きなので、テキストの消火器の図を見るたびに「名称・用途・点検項目」を声に出す形で最初から並行すると、直前に鑑別だけが残る事故を避けられます。何から始めるかは 初心者ロードマップ、時間の配分は 勉強時間の配分、一夜漬けの現実は 一夜漬けで合格できるか で扱っています。
テキストは1冊で足ります。消火器6種の図解と鑑別用の写真が載っている本を選ぶと、筆記と実技を同じ本で回せます。
※価格・評価は変動します。購入前に版・刷と出版社の改訂情報を確認してください。上記はAmazonアソシエイトのリンクです。
教材の比較は テキスト選び と 問題集の選び方、演習の回し方は 予想問題345問の使い方 が担当しています。
申込から免状交付、講習までの流れと費用
- 日程を確認する: 試験は都道府県ごとに実施され、居住地にかかわらず希望する都道府県で受験できます。乙6は受験者が多いため、東京の中央試験センターでは実施回数も多く設定されています。
- 申請する: 電子申請 (受付期間中24時間・証明書類のアップロード可) か書面申請。他の類の免状で免除を受ける場合はこの時点でコピーを提出します。
- 受験する: 免除なしは1時間45分。マークカードの筆記と記述式の鑑別を解きます。
- 合格後に免状を申請する: 免状交付申請書と試験結果通知書を切り離さずに受験した支部へ提出します。手数料は1種類につき2,900円です。
- 講習を受ける: 消防法第17条の10により、免状交付日以後の最初の4月1日から2年以内、その後は前回受講日以後の最初の4月1日から5年以内ごとに講習を受けます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 受験手数料 (乙種) | 4,400円 |
| 免状交付手数料 | 2,900円 (1種類につき) |
| テキスト (年度版の価格帯) | 2,000〜3,500円程度 |
手続きの細部は 申込手順、費用の総額は 乙6の費用、合格後の手順と講習は 合格後の手続き にあります。
乙6の次: 乙4との組み合わせと他類への横展開
乙6の免状があれば、他の類を受けるときに法令共通6問が免除されます。ビルメンテナンスでは自動火災報知設備の乙4と組み合わせるのが定番で、乙4は電気系なので乙6の知識がそのまま使えるわけではありませんが、法令共通と鑑別の解き方は共通です。乙4との比較は 乙4と乙6の違い、乙4の全体像は 消防設備士乙4とは、取得順の設計は 乙6の次に取る資格 で扱っています。
受験を決めたら、科目ごとの正答率を測り、各科目40%を割る科目がないかを確かめるところから始めてください。
消防設備士乙6 オリジナル予想問題345問を科目別に解く →
出典 (2026-09-09 確認):
- 一般財団法人 消防試験研究センター 消防設備士試験 — 試験手数料 (乙種4,400円)、受験資格 (乙種は誰でも受験できます)
- 同センター 試験科目及び問題数 — 乙種の科目構成
- 同センター 試験の一部免除・試験時間・試験問題数一覧表 (乙種) PDF — 乙6の免除区分・試験時間、証明書類
- 同センター 試験の方法 — 四肢択一・記述式、乙種1時間45分、合格基準
- 同センター 受験の申請 — 電子申請と書面申請
- 同センター 試験結果 — 令和8年4〜6月および令和7年4〜6月の受験者数・合格者数・合格率
- 同センター 令和7年度 消防設備士試験合格者数 PDF — 乙種第6類の年度合格者数11,541人、乙種計19,602人
- 同センター 免状の新規交付 — 免状交付手数料2,900円
- 消防法第17条の3の3 (点検及び報告)、第17条の10 (講習)、消防法施行令第10条 (消火器具に関する基準)、消防法施行規則第33条の17 (講習の期間)、消火器の技術上の規格を定める省令
都内のビルで自衛消防活動中核要員や防災センター要員として消火器・屋内消火栓を扱う立場なら、東京消防庁の 自衛消防技術試験の練習問題40問 が、乙6で学ぶ消火の原理と消火器の適応をそのまま実務の設問で使います。








